「天満 菊水」というお好み焼き屋さんをふたたび訪ねようとした時のこと。
店名にも“天満”とあるのに、どういう思い込みだったのか、降り立った駅は天満橋。
あれれ?こんなオフィス街だったっけかなぁと辺りをきょろきょろ。
一度連れられて足を運んだことがあるのに土地勘がないというのは恐ろしい。
今みたいにスマホで調べ直してなんて時代じゃなかったので、結局再訪を断念してしまい、そうこうしているうちに「天満 菊水」は閉店してしまいました。
「天満 菊水」では、太平洋戦争で負傷した足を庇うようにしつつ店内を動き回り、客に触らせずにそれぞれの卓の鉄板の面倒を見て廻るオッチャンが印象的だった。
例えば、梅田の串揚げの店「百百」と同じく、食べカスや煙草の吸殻を足元へ蹴飛ばし入れるのも驚きだった。
お好み焼きを勝手にひっくりかえした客にマジギレするオッチャンの印象が、蓮沼「福竹」の女将さんのそれとちょっぴり重なります(笑)。
天満は天満でも、この日は西天満の裏通り。
「福島上等カレー」の脇から妖しいエリアの兎我野町方向へちょっと進んで鉄板焼き「ちゅらり」の前を通り過ぎ、そば処の「権兵衛」とトラットリア「IL mano」の角を右に折れる。
するとすぐに「ノックライス」のグリル「喜多一」の看板が見えてくる。
その手前を右手に進んだところにあるのが、割烹「重乃家」です。
袖看板には割烹とある。
ルーバーを回したファサードを脇に、こんもりさせた鉢の緑の奥に白い暖簾が小粋に揺れる。けれど、表に掲げたボードのお品書きからは肩肘張らない感じが伝わってきます。
暖簾を払った先には、白木のカウンター。それぞれの椅子の前にあらかじめ膳が置かれていて、その上には大きな急須がデンと鎮座してる。
お茶は自前で注ぐようです。
それを思うと急に涎が湧いてきたので「うなぎ丼」。流石にどんぶりにみっしりの蒲焼という訳にはいかないけれど、その代わりにタレはたっぷり。
遜色のない焼き加減炙り加減の鰻を齧っては、タレの滲みたご飯を掻き込むを繰り返す。
オヤジさん、ご馳走さまです。
別の日には「鳥唐揚げ定食」を所望する。
カウンターの隅では、年季の入った油殿からピチピチとする音が聞こえてきます。鳥の唐揚げかと思ったら、鰈を泳がせているところでありました(笑)。
端正な佇まいの唐揚げをしばし見詰める。茅場町「宮川」の唐揚げを思い出させるような酸味のあるタレがいい。
オヤジさん、ご馳走さまです。
西天満の裏道に静かに佇む割烹「重乃家」がある。どうやらそんなに混雑するお店ではないようなのだけど、何故だろう。
目立たない立地ではあるけれど、昼に夜に常連さんが集っているものと信じたい。
鰈や公魚の唐揚げや鮴(めばる)の煮付けなんかにも惹かれます。
「重乃家」
大阪市北区西天満6-6-8 [Map] 06-6364-2047