麗らかな陽射しを浴びる洗足池。水面に浮かぶスワンボートを眺めつつ、
ぷらぷらっ外周をひと周りするのに、
此処はちょうどいいサイズの池なのです。
犬の散歩やジョガーに紛れる周遊の途中では、
神社の階段を上って手水舎で口を濯ぎ、
二拝二拍手一拝するのがお約束。
桜の時季には、程よく並んぶ露店たち。
焼きそばを買って、池に浮かぶデッキで食べたっけ。
池に流れ込む清水窪涌水路には、
でっぷりと育った鯉が何匹も泳いでる。
餌を与えるひとが多いのか、近づくと闇雲に口をパクパクさせて強請ります。
池畔の神社は、千束八幡神社。
貞観2年(860年)に創建された、品陀和気之命(応神天皇)を祭神とする神社で、
「宇治川先陣」の物語に登場する名馬「池月」発祥伝説の由来となった社だと云われていて、
社の横手には、勇壮な馬の銅像が置かれています。
神社の鳥居にアプローチしているのが、池月橋。
意外と急坂の太鼓橋の周囲では、
望遠レンズを差し込んだカメラを手にしたオッチャンたちの姿をよく見掛けます。
スワンボートの乗り場のある建物にあった、
洗足池池畔のレストラン「テラス・ジュレ」は、
今はもう閉じてしまってる。
それがちょっと寂しくて、
此処の大家さんは誰なのだろうかとか、
オーナー自ら積極的に家賃を下げて、
気の利いたそして気取らないレストランを誘致する気概はないだろうかとか、
そんなことを考えながら中原街道を渡る歩道橋の上に佇みます。
そこから見下ろす辺りにあるのが、「クメキッチン」。
歩道の脇A看板とオレンジの看板がさり気なく誘います。
店内は全部でも15席程の小じんまりがいい。
一番奥の明るい丸テーブルが特等席です。
ランチメニューのその日のスープは、
例えば、じゃがいものポタージュとか、かぼちゃのポタージュとか。
その水面にスプーンの先を浸そうとするところで、
窓硝子の向こうに池上線が通過していくのが見えたりします。
正直云って、こちらの揚げ物は、素晴らしい。
例えば、「メンチカツ」の揚げ具合といったらもう、ちょっとした感動モノなのであります。
どこかしっとりささえも憶えつつ、あくまでカラッと軽妙でいて、柔らかな口当たりと歯触り。
厚みたっぷりのそれを噛めば溢れ出る肉汁の透明感。
デミソースにあるキレとふくよかさ。
ああ、なんて美味しいのでしょう。
根岸「香味屋」のとどっちがいいかと訊かれれば、答えは既に決まってる(笑)。
「枝豆コロッケ」なんて裏技も御座います。
正直云って、こちらのソテー物は、素晴らしい。
例えば、「ポークジンジャー」の完成度といったら、
武蔵小山のビストロ「l’Etroit fils」と並んで強く印象に残るもの。
きりっとしたタレにジンジャー風味がしっかり宿り、
硬くせずにフライパンを繰ったポーク肉の赤身と脂とそれぞれに巧みに馴染む。
ああ、なんて美味しいのでしょう。
正直云って、こちらの麺のお皿も、素晴らしい。
例えば、「ナポリタン」の炒めっぷりとケチャップの絡め具合の当意即妙。
油断するとシャツに飛ぶ系の見掛けにして、
炒めによって粘度を上げたケチャップソースがまったりと麺に寄り添って、
水っぽさなく纏め上げている。
ああ、なんて美味しいのでしょう。
正直云って、こちらの牡蠣フライは、素晴らしい。
揚げ物の巧みさは、既に承知し信頼しているので勿論のこと、
牡蠣そのものにもしっかとした拘りを持っている。
マスターがこれだと決めた牡蠣は意外や、岡山の牡蠣だという。
例年、岡山の寄島町産からの牡蠣の出荷を待って始まる牡蠣フライのシーズン。
前季にいただいた牡蠣フライは、濃厚な旨味を含んだ絶品でした。
今年はまだかと訊いたらば、どうやら身入りが遅れていて、
結局漁師さんから牡蠣が届いたのは12月も半ば近くになってから。
それでもまだやや小さめかなぁと思いつつナイフを入れる牡蠣フライ。
添えてくれるタルタルがまた丁寧で味な仕立て。
ああ、なんて美味しいのでしょう。
例年2月辺りが最盛期らしいので、またお邪魔しなくっちゃ。
洗足池のボート乗り場のお向かいに、
町場の枠を食み出す美味しさの洋食屋「クメキッチン」がある。
ちょっとシャイにも映るマスターは、調理に関しては頑固な凝り性かもと思ったりもする。
そんなマスターのお名前が、きっと久米さんなんだろうと思っていたら、然にあらず。
壁の額に収めた営業許可書には、粂谷さんの名前がありました。
「カレーライス」や「ハヤシライス」も気になるし、
「カキフライ」の最盛期も見逃せない。
また、お邪魔しなくっちゃ。
口 関連記事:
bistro「l’Etroit fils」で 大胆たんぽぽ的オムライス記憶に残る生姜焼(14年12月)
「クメキッチン」
大田区上池台2-30-3 ビスタ洗足池 1F [Map] 03-6421-9517


