
堀川通りの西側を南北に流れる千本通り。
烏丸通り沿いの京都御苑の御門と北野天満宮の鳥居とを繋ぐように走る中立売通り。
ふたつの筋の交叉点が、そのまま千本中立売。
せんぼんなかだちうり、へお願いしますとタクシーの運転手さんにお願いして車窓を眺める。
中立売という通りの名前は、沿道に店舗を構えない立ち売りが多かったことに由来してのものらしい。
客引きっぽいひと影の多い今の木屋町通りを一瞬思い浮かべたけれど、はて、立ち売りが多い通りってどんな様子だったのだろうね。
そんなことをぼんやり考えているうちに、千本中立売交叉点に到着。
目的地は、交叉点近くの老舗居酒屋、銘酒「神馬」の縄暖簾。

酒蔵を思わせる老舗の風情に、暫し佇んでしまいます(笑)。
案内いただいたのは、入ってすぐのコの字カウンターの正面柱前。

ふと頭上を見上げると、小さな鞭掛風の屋根が設えてある。
その下には、ふたつの馬蹄に挟んで、一升瓶のラベルらしきものが奉げられている。
金の文字が示すは、店の名に同じ「神馬」だ。
まずは大葉で包んだ白身魚や空豆なぞを小皿に盛った突き出しで、
麦酒をちびちびと。


ちびちびしながら、
既に黄ばんだ品札やボードの文字を物色します。
銅で巻いたおでん鍋から、「すじ」「ひろうす」「丸大根」。

醤油に黒くせず、出汁の旨味が活きるように。
そんな汁にひたひた浸かったおでんが美味しい。
「鯨コロ」は、値段に一瞬怯んで注文できず(笑)。
何かお造りをと思案してお願いしたのが、甘鯛の。


添えてくれた三杯酢が甘鯛の身の嫋やかな甘さを引き立てて、成る程よく似合う。
塩焼きや酒蒸しも乙だけれど、アマダイはお造りもまた佳いね。
そして、素魚でなくて白魚(しらうお)の天麩羅がやってきた。

シャクっと優しい歯触りの中に含む儚げな甘さ。
どこかとっても贅沢なことをしているような気分になります。
「神馬」の燗酒は、灘の酒6種をブレンドしたものだそう。



これまた銅の赤が味わい深い燗銅壷。
女将さんが柄杓で掬う甕がその横に並んでいます。
そうそう、厠へは、店内の太鼓橋を渡り行く。
奥の引き戸の向こうには、お神酒を奉げた小さな白木の祠がある。
トイレからの帰り道で、ちょっと神妙な気持ちになったりもいたします(笑)。
やっぱりこれは外せないと「鯖きずし」。

その麗しき表情に暫し見惚れる。
ハッと我に返って(笑)、刻んだ茗荷と一緒に口に運ぶ。
ああ、艶かしさにまで凝集し活性した食べ口に唸ってしまう。
燗のお酒が合わない訳がありません。
煮付けをひとつとお願いしていた、「めばると筍煮付」。

春告げ魚と竹の子の組み合わせがそもそも素敵。
メバルは厚い身ではないけれど、煮汁に染まりかけてふっくらとして、乙な美味しさだ。
千本中立売の老舗居酒屋、白壁には銘酒「神馬(しんめ)」。

昭和九年の創業が頷ける、古色を磨いた風情と心意気。
季節が代わる度に訪れたい処とは当に此処のことを云うのだなぁ。
「神馬」
京都府京都市上京区千本通中立売上ル西側玉屋町38 [Map] 075-461-3635
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