
中原街道を五反田に向かって上ってきて、
ちょうど荏原ランプのスロープが見え始める辺りで、
「うどん」と大きく誘う看板が左手の歩道に見つかります。
半地下のフロアへと視線を落とす手前で、幕板に大きく書かれた文字が否応もなく目に飛び込んでくる。
「太麺富士吉田うどん」。
円に永印の「まるなが」は、
富士吉田うどんのお店なのだ。
神田駅前にあった「樂家」も確か吉田うどんの店じゃなかったかな。
そんなことを考えながら、左脇にある券売機の前に立つ。
暖かくなってきた夜ゆえ「肉つけうどん」に玉子をつけてみたい気分、とボタンをポチとする。
湯気に湿気た店内はL字のカウンター。
威勢のいい、らっしゃいませ!で迎えられます。

ゆったりしたドンブリがふたつやってきて、ひとつには肉片と玉子の泳ぐつけ汁。
もうひとつに、茹でたキャベツを載せたエッジの利いたうどん。

キャベツと一緒にむんずとうどんを掴んで引き上げると、形状記憶気味に主張する。
そのままとぷんと汁につけ啜ると、撓垂れてなるものかと頑張るうどんが汁をあちこちに跳ね散らかせる(笑)。
といっても、ズズズと啜る感じにはならないで、ズズ、もそもそ、ズズもそ、ハグハグ。
味噌煮込みうどん的な一種強ばるような硬さではない。
といって、讃岐のしなやかかつ骨太なコシつきとはベクトルが違う。
親愛なる武蔵野うどんを硬く湯掻いた、そんな感じかな。
太麺といってもバカみたいに太い訳ではなくって、すいとんのような歯応えを残せる程度の太さだ。


醤油に味噌までも使った汁は、濃いめで塩辛め。
茹でキャベツの柔らかい甘さがいい合いの手になってるね。
温かいのはどうだろうと、店主一押し印の「肉天わかねぎうどん」の夜。
掻き揚げが載り、刻み葱が載り、その脇から若布や玉子の黄身が顔を見せる様子は、当たり前だけど、駅の立ち食いそばと変わらない。

掻き揚げを掻き分け、うどんに辿りつき、ぐいーっと引きずり出すようにする。
やっぱりそんなに妙に「硬い~」という印象はなくて、想定の範囲内。
でもこのモッソリした感じが食べつけるとクセになりそうな予感を孕んでる。



馬肉を煮染めたような「肉」トッピングはちょっと甘すぎるか。
デフォルト330gあるという麺を途中までハグったところで、お約束の「すりだね(=こがし一味)」。
胡麻、山椒、唐辛子から作るという辛味の薬味だ。
入れ過ぎないように気をつけながら再び、ハグハグ。
うん、そこそこに辛いのもいいかも。
今や都内で唯一とも噂される、富士吉田うどんの店「まるなが」。

武蔵野うどん土着のひとりとしては、やっぱり武蔵野うどん派なのだけれど、たまには吉田うどんの日があってもいいかな。
口関連記事:
吉田のうどん「樂家」神田店で 肉うどん細長いすいとんと馬肉(06年07月)
「まるなが」 品川区荏原1-22-4
[Map] 03-3786-4777
http://www.marunaga.net/
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