column/02660 @9,900-
Cuisine FranÇaise「sans faÇon」で 衣纏うフォアグラポワレ
偶には神楽坂に繰り出そう。
そんな思いつきでやって来た、久し振りの神楽坂通り。
坂から右に入って、お箸で食すフレンチと謳う「かみくら」や銀座から移転した「芝蘭」の黒塀あたりを巡ってみたりする。
ロジスキーには堪らない路地情緒でありますな(笑)。
路地に佇む、“石畳”と呼ぶカウンターバーもいい感じ。
そしてそのままその先へ抜けた、軽子坂にあるのが今宵のお食事処「サン・ファソン」です。白い壁と紅いテントが作る外観に、店内の設えもどこか可愛らしいテイスト、そんな印象。
オンナノコ同士4人で訪れて、というのが一番似合いそうです。
供するメニューは基本、プリフィクスのA、B、C。
いずれも口開きのところが、オードブル”または”スープ、となっている。
Bあたりでいいのだけれど、Bでオードブルを選び、ヴィシソワーズを足してもらうって訳にはいきませんか?と訊くと、ホールのお兄さんは意図を汲みかねているようで、そうするとCになりますと云ってみたり、アラカルトにしますかと云ってみたり。
ま、その組み合わせで提供するからこそのプリフィクスだとすれば、お皿を加えるとアラカルトになるというのも分からんでもないけど、そのあたり融通利かせてくれてもいいのになぁとも思う。
素直にメニューBとして今度は、その中身の選定に腕組み思案。
こうやって悩むのも愉しいよね(笑)。
まずは、「赤ピーマンのバヴァロア トマトのオレンジ風味添え」。まさに赤ピーマン!な香気がたっぷりとして、思わずニンマリ。
添えてあるムースは、黄色いのが人参、白いのがアスパラで、こちらもそれぞれの野菜の風味が上手に発する仕掛けになっている。
「本日のお魚料理」は、カリサクっと揚げた鱸の身をスープに浮かべたもの。
スープはサフラン仕立てかブイヤベースのどちらかで、後者を選んでみました。海老をはじめとした魚介の風味がぐぐっと利いたスープに、ほの甘い鱸の身とそれを包む衣の香ばしさがよく似合う。
ラングドックの「FITOU 2001 Chateau de Vignes」をいただいて、肉料理。
10数行のメニューから選んでいたのが「フォアグラのポワレ ポルト酒の風味で」。
素にソテーしたフォアグラをイメージしていたのだけれど、じっとみるそれは明らかに衣を纏っている様子。 ポルトの濃いィ色ソースに浸して口運ぶと、コーンスターチを含んだかのような衣の食感が全体を占める。 その中に、薄切りのフォアグラが顔を覗かせる感じ。
ポワレってこういうことなんだっけ?と首を傾げながらもふと、量感を増すために叩いて広げて揚げた三原橋地下の「牛かつ」に連想が飛んでしまいました(笑)。
お値段的に仕方のないところもあるのかもねと、でもちょっと寂しさも一瞬過ぎるのです。
デザートにと、カシスとマンゴーのシャーベットを添えた桃のコンポート。
優しく解ける甘さがほどよく整えてあって悪くない。
神楽坂のカジュアルフレンチ「サン・ファソン」。「sans faÇon」は、「ざっくばらんに」という意味だそう。
張り切って快活にホールを動き、各テーブルに対応してくれている若い男性スタッフにその言葉の意味を重ねて妙に感心したりしてしまったのだけど、今のボクはほんのもう少しオトナな店の方が好きかもしれません。
「sans faÇon」 新宿区神楽坂3-1 03-3267-3316