column/01751
Restaurant「(S2) s-deux」
南麻布のマンションの一室「1102号室」。ホストとシェフとソムリエと、何役をもこなすウメさんなる「ちょい不良」オヤジ風な主人のご自宅にこっそり招かれたような粋な食事と時間が楽しめるのだという。電話ではなくドコモのアドレスが連絡予約の手段だというのも、どこかベールに包まれた装いで心憎い。予約の趣旨を含めてメールを入れる。ところが、厨房設備の故障で去る「1102号室」で営業できなくなり、別の箱で営業をしているのだという。それが外苑東通りから星条旗通りへと折れたところにある「S2」です。その以前はフレンチのお店だったそうで、想像に違い、照明を絞ったりしない明るくゆったりとした印象の店内です。おまかせコースの口開きは、未だ国内ではほとんど流通にのっていないというスプマンテ「MONTENISA」から。芳醇ですっきりした余韻の残る呑み口だ。前菜には水牛のミルクと豆乳を合わせたプディングに柚子風味のコンソメジュレとイクラがのったもの。そして炙ったパイナップルにししゃも、さらにハムのスライスをのせたもの。はたまた、トマトを香ばしい焼きなすとモッツァレラチーズのスモークで挟んだもの。それぞれに食感も味わいも違うものを重ね合わせていて、それがなんら違和感のない妙味を生んでいて自ずとニヤついてしまう。パンはウメさん自家製。イチジクを練り込んだものもある。ワインはシャルドネの「PLANETA」からサンジョヴェーゼの「Prunaio」へ。濃いルビー色とは裏腹な澄んだ後味がいい。カッペリーニと云われて覗き込んだプレートには白髪葱が盛られている。え~?。よく見るとその下に極細麺が隠れているんだ。葱にからめられた、云わばタレが絶妙じゃん。さらに一味を加減しながら振りかけていただきます。だんだんとウメさんワールドの深遠に嵌まり込んでいくような気分になってくる。続くペンネはゴルゴンゾーラソースに空豆、やっとカジュアルなイタリアンかとも思わせつつ、真ん中にのっているのはなんと京の柴漬けだ。酸味を添えてひと皿に格段の広がりを持たせている。オイスターのリゾットには青海苔、メインの牛肉のフリットには青梗菜が添えてある。デザート後には、珈琲でも食後酒でもなくてほうじ茶が出てきて和む和む。いやはや、身近な和の食材を奇を衒うことなく取り込んでいるところにさり気無いサプライズがあって、美味しい上に楽しいね 。こんなオヤジになりたいもんだなぁと眺めるウメさんの名刺の写真は、篠山紀信によるものだそうだ。ウメさんはまた別のペントハウスでのよりプライベートな雰囲気と構成のスペースを構想・計画そして準備中とのこと。そう云えば、「(S2)」という店名はかつて小山薫堂氏が名づけたものだそうです。
「(S2)」 港区六本木7-4-4 龍土町ビル