関内駅の北東側は、赤レンガ倉庫方向へと抜けていく馬車道界隈の印象がある。
もう一方の南西側はと云えば、ご存じ伊勢佐木町。
元々は入り江を埋め立てた土地で、遊郭があったと知れば、どこか猥雑さを含むような空気も滲むのにも合点がいく。
そんな伊勢佐木町へと関内駅を背にして向かい、
イセザキモールに入ってすぐに右に折れる。
ずっと昔に訪ねたことのある「野毛おでん」の手前にあるのが、
天麩羅「登良屋」だ。
味のある佇まいを魅せる外観をしばし眺める。
縦格子の扉と暖簾が迎える隅切り部が正面玄関か。
「野毛おでん」側にももうひとつ暖簾が下がっていて、
どちらの暖簾を払えばよいのかと一瞬躊躇ったりする。
勝手が判らないので、
謙虚なる横手の入口から参りましょう(笑)。
訪ねたのは、或る秋の日の遅めのおひる時。
白身魚に穴子、烏賊、野菜四品の一人前盛りに、
海老を追加した天麩羅を定食にしてもらいました。
当たり前と云ってしまえば身も蓋もないけれど、
それぞれのタネを均一にかつ薄く包んだ衣に仕事を想う。
正しき天麩羅定食に大満足であります。
こいつぁゆっくり一杯呑るのもきっといいに違いない。
なにせ昼から夜までの通し営業なので、
半端な時間にもきっと受け入れてくれる。
過日お邪魔した時にそう思い、機会を窺っていました。
それは、冬を迎えようとする頃。
暖簾の色が既に代わっていました。
前回と同じ白木のカウンターの角の席。
まず赤星で喉を湿らせます。
部屋を仕切る格子の向こうは、
正面玄関から入ったあたりになるけれど、
どんな様子なのでしょうか。
白木のカウンターの角の辺りを愛でながら(笑)、
小粋な「ぬた」をいただく。
忽ち、こいつぁお酒だね、となってぬる燗を所望する。
焼いた皮目を丁寧に剥いた「焼きなす」が、
おろし生姜の風味と合わさって、蕩けるように旨い。
調子に乗って追加したお銚子と同時届いたのが「かさご煮」。
白身をほじほじしつつ煮汁に浸して口へ。
そこへぬる燗をつつーっと。
実にいい感じであります(笑)。
天麩羅鍋を覆うものと思うステンレスのカバーは特注品か。
そんなことを想いつつ最後にいただくは、
過日と同じ海老を追加の一人前盛りの天麩羅だ。
イセザキモールからちょいと折れ入った横丁に、
天麩羅「登良屋」はある。
1958年(昭和33年)創業と聞けば成程、
老舗と呼んで違和感やなし。
当たり前に仕事して、
驕らず気取らずずっとそこにある感じが、いい。
今度こそは、正面玄関からお邪魔したいと思います(笑)。
「登良屋」
神奈川県横浜市中区吉田町2-3 [Map]
045-251-2271