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煮干蕎麦と日本酒「丿貫」で福富町の猥雑と煮干classic姜葱醤和え玉伊吹いりこ牡蠣蕎麦

横浜駅を出た京急本線は、大岡川の手前で大きく右にカーブを切り、その後しばらくは大岡川に沿うように走る。
そんな京急線が大岡川に出くわす処に位置するのが日ノ出町駅だ。
日ノ出町駅に改札はひとつ。
改札を出たところにある日ノ出町交叉点は、左手に行けば野毛方面、右手に進んで長者橋を渡れば福富町だ。

長者橋を渡ってすぐに左折して、
大岡川沿いを往く。
宮川橋を左手にそのまま進めば、
川のカーブに沿うように建つ、
あの建物が見えてくる。 それはそう、ご存じ都橋商店街ビルだ。
「ホッピー仙人」や「野毛ハイボール」等々、
愉しくも色気のある店累々の昭和な建物は、
この地のランドマークと云って間違いはない。
いつもの表側ではなく、
裏側通路側の表情もまた悪くない。

さらにそのまま進むと、
商店街の名前にも冠した都橋に辿り着く。
右手には、春に桜咲く福富町西公園。
公園を回り込むように右折すると、
共同ビルの三角な突端が目に留まる。 Y字を公園側へとさらに右に進む道には、
「ノラねこ通り」と示すアーチが架かる。
そんなに野良猫が多いのかなぁ。

目的地に向けてそのまま進んで、
路地を右折する。
すると、空席を待つ列の手前を、
ゆったりと一匹の猫がお出迎え、だ(^^)。

目的地「丿貫」福富町本店の路地は、
店の向かい側に風俗店が並ぶ。
その先で、懐かしの焼鳥「里葉亭」が盛業中だけれど、
やはりそこは横浜市有数の歓楽街のひとつ福富町。
嘗てトルコ風呂営業禁止除外区域に指定されていた、
そんなことの名残りがまだまだあるようで、
夜ともなれば猥雑さが色濃くなってくる。

のんびりと順番を待って、
案内されたカウンター。
店内の壁も床もカウンターも黒塗りで、
これはこれで、妖しいと云えば怪しい(^^)。

ご註文のどんぶりが手渡される。
まずは基本形と思しき、
「煮干classic」に肉増しだ。 境港の背黒、鯵/広島白口と補記されたスープは、
お約束通りの黒色強めのセメント色。
でも啜るスープに煮干しのえぐみ仄かで、
すっきりとした旨味がしみじみと押し寄せる。
塩分さえ控えめなのではと誤解しそう(^^)。
“白口”と云うのは、背が白い鰯のことで、
瀬戸内海などの内海で採れる鰯・煮干しを指すという。

小さめの賽の目状に刻まれた玉葱の、
辛味と甘味と歯触りが、いいアクセント。 どこの部位でしょう、
大判かつ薄切りにした豚肉は成程、
既存の焼き豚・煮豚よりも正しく、
このどんぶりに似合う気がします。

麺はと云えば、
彼の自家製麺「伊藤」を連想させる、
パツパツ系低加水ストレート麺。 煮干しスープにはやっぱりコレだよなー、
そんな風に思って思わず腕を組む(^^)。
店の入口脇に積まれた麺箱には、
匠の麺「東京製麺」との刻印があります。

ここまで来たなら頑張って和え麺もと、
「姜葱醤(ジャンソンジャン)の和え玉」を追加する。 その名の通り、細かく刻んだ葱とおろし生姜の醤。
よーく混ぜてから所望せよとのお達しに従って、
天と地をひっくり返してよーく混ぜまぜする。
葱油でもあるのか、
生姜と葱の香りの油が麺によく絡み、
啜るほどに旨い、美味しい。
はー、満腹じゃ(^^)。

裏を返すように訪れて今度は、
「伊吹いりこと比叡ゆば蕎麦」。 湯葉と合わせるソバのスープは、
一転して非セメント淡麗系。
“伊吹いりこ”が示す伊吹島とは、
香川県西端、瀬戸内海に浮かぶ小島のことで、
日本一とも称されるいりこらしい。

比叡ゆば本舗ゆば八のWebサイトによると、
日本の湯葉発祥の地とされる、
比叡山延暦寺御用達の品で、と云う。 そんな比叡ゆばのきざみゆばのソバ。
あえて、”蕎麦”と書きたくなってくる。
伊吹いりこのスープとの相性や、よし。

ならばと、和え麺も敢えて、
「伊吹いりこバターの和え玉」で。 伊吹いりこをバターの脂の乳化で纏めて、
決して黒くない、どろんとしたあんを、
いりこの魚粉と一緒に混ぜまぜ、する。
なははは、旨いに決まってるじゃんね。

またまた訪れて今度は、
三陸産牡蠣を使った「牡蠣蕎麦」。 煮干しのベースに牡蠣エキスの風味が滲んで、
両者のバランスが絶妙にして、旨い。
錦糸町の麺や「佐市」の牡蠣ラーメンを、
なんとなく思い出しながらだったけれど、
どっちと訊かれれば、こちらに軍配だ。
ベースとなるものが違うので、
比べるのもどうかと思いますけれど(^^)。

ならば、貝モノで和え麺をと、
「浅利の和え玉」を所望する。 うーむ、これもこれで悪くない。
単に浅利をミキサーにかけただけでは勿論ない筈。
和え玉のソースを仕立てる技法や考え方が、
既に完全に確立しているンじゃないかな。

横浜市有数の歓楽街のひとつ福富町の路地に、
煮干蕎麦と日本酒「丿貫」福富町本店は、ある。 セメント系に淡麗系などなど、
世に煮干しラーメンのお店は群雄割拠。
そんな中でも記憶に残る一軒「丿貫」。
丿貫は、戦国時代後期から安土桃山時代にかけての、
伝説的な茶人の名だという。
清貧にして、独自の茶道を追求し、
その一方で数々の奇行をもって知られた茶人に、
共感・共鳴するところがあったのかもしれません。
今度は、日本酒との旨味の相乗効果を謳う、
夜の部にもお邪魔したいところです。

「丿貫」福富町本店
神奈川県横浜市中区福富町仲通2-4 [Map] 045-251-2041
https://x.com/simq_yokohama

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