うどんそば処「勢川」本店で豊橋カレーうどん土鍋の底からとろろご飯のひと捻り

路面電車の走る街はいい街だ。
新幹線のひかり号もしくはこだま号で降り立つことになる豊橋駅。
愛知県内にあるはずのその位置がどうもいつも曖昧なままなので、改めて地図を眺めてみる。
すると、鈎針のような形をして対岸の三重県の鳥羽辺りへ向けて突き出し、知多半島とのコンビで三河湾を構成している渥美半島のその根っこ、東三河の中心にあるのが豊橋であることが判ります。

そんな豊橋の駅東口からデッキに出る度に、
豊橋鉄道市内線のプラットホームを見下ろすのがお約束。豊鉄市内線は、広告主によって車輌の彩りが七変化。
ご存知、走る屋台”おでんしゃ”にはなんと、
電停に正午前集合の昼便もあるようです(笑)。

白黒ツートンの”パト電”なんてのもあるのかと感心しつつ、
路面を走る電車に揺られて終点まで行ってみる。小じんまりとひっそりとした操車場に郷愁を覚えつつ、
今来た経路を乗り戻る。
交叉点を大きく曲がる姿はなかなか見応えがございます(笑)。

テッチャン気分を充分満喫したならば、
駅前の電停からの足をいつぞやの割烹料理店の方向へと向けてみる。
この角を曲がれば「千代娘」の横丁だというその角に、
気になるネオンサインがあったのです。扁額示すは、うどんそば処「勢川」本店。
以前訪れた際の夜の景色とはまた違い、
蒼空の下に佇む建物は、朗らかにして枯れた味わいが実によい。
空席待ちのひと達で賑わうことも少なくないようです。

そうとなれば店内もまた活気があって、
ホールのお姐さんたちが忙しそうに立ち動く。
そんな店でのお目当てはやっぱり、
豊橋名物だと伝え聞く「豊橋カレーうどん」であります。注文を終えてから、卓上のご案内をしげしげと眺める。
豊橋カレーうどんと名乗るには、
次の5箇条に適うものでなくてはならないらしい。
①自家製麺を使用する。
②器の底から、ご飯、とろろ、カレーうどんの順に入れる。
ふむ。
③豊橋産ウズラの卵を使用する。
④福神漬けまたは壷漬け・紅生姜を添える。
そして、⑤愛情を持って作る♡。
なるほど!

全身が店内に漂うカレーの風味に浸り切るに時間はいらない(笑)。
間もなくお目当ての土鍋がやってきました。大振りに三角に刻んだお揚げにお約束の鶉の玉子がみっつも。
具沢山の表情の裡には、
熱々の想い(?)が秘められていると推察する(笑)。

そこへやおら割り箸の先を突っ込んで、
秘めた想いを引き摺り上げる。然すれば忽ち立ち昇る湯気。
ふーふーふーふー、ずるずる、つるりん。
あ、汁が跳ねた(笑)!

如何にも黄色いカレー色。
特段辛い訳ではないものの、じわりと汗を掻かせるヤツ。
蕎麦屋のカレーの中でも素朴な仕立て。
その材料たるやS&Bの赤缶かしらと思いつつ、
ご指南に沿うようにまずはうどんを平らげる。改めて福神漬けをトッピングして彩りを整えていざ。
ご飯を鍋底に仕込むだけではなくて、
とろろを咬ませたひと捻りに感心だ。

“教義”に適う豊橋カレーうどんの店は、
この界隈に40軒を超えるお店で供されているらしい。お店毎に色々と工夫が施されて、
バラエティーに富んでいる模様。
他の店では全然違う様子の豊橋カレーうどんと出会えるかもしれません。

「勢川」本店もまた、豊橋カレーうどんを供するお店を代表する一軒だ。Webページによると「勢川」は、
1914年(大正3年)に割烹旅館「勢河」の屋号で創業。
1951年(昭和26年)頃に「勢川」と改名したという。
今や、東三河にグループ11店舗を数えるまでになったその本店は、
成る程、割烹旅館の頃の残り香を感じさせる佇まいを魅せています。

「勢川」本店
豊橋市松葉町3丁目88 [Map] 0532-52-3360
http://www.segawaudon.com/

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