改修工事の完了時からシツコイくらいに駐輪禁止のスタンドサインを乱立させた成果か、放置自転車はほとんどない。
表示を無視した自転車が一台でもあると、それを契機にしてあっという間にチャリンコの列が生まれるに違いない。
そんなことを考えながら足を踏み出した通りは、旗の台稲荷通り。
中原街道近くの路地にお稲荷さんの小さな祠があるので、そう名付けられているんでしょうね。
踏切脇ビル2階のCRAFT BEER BAR「TRANSIT」への入口辺りの空気を横目にしながら、中原街道方面へと進みます。
左手に鮮魚「魚夏」という素敵な名前の魚屋さんがあるのだけど、ちらっと覗く硝子ケースには品揃えを絞り込んでいる様子で、一度も買い物をしたことはありません。
一方、そのお隣にあるとんかつ「吾妻」には、時折お世話になっている。鶯色というか菜種油色というか、独特な色合いのテントが目印です。
暖簾を払って、からからと木戸を開ける。
左手にテーブルが2卓あり、右手は小上がり。テーブルに腰掛けようとして目に留まるのは、
「宮城のかき」のチラシと「カキフライ定食」の貼紙です。
早速お願いして壁のテレビを見上げていると、
背中の方から揚げ音が聞こえてくる。
ニュースを伝えるアナウンサーの声とぴちぴち揚げ音が交叉します。
「吾妻」のカキフライは、大振りなものの4個盛り。檸檬をじゅわんと搾り回して、まずはそのままいただきましょう。
やや衣が硬めながら、
じゅんと滲む牡蠣汁も噛む旨味の濃厚さも既に最高潮。やっぱりタルタルでいただくのが一番牡蠣フライに相応しい。
ソースはキャベツにちょろっとかけるだけでカキフライには不要の代物。
カキフライに練り芥子が添えられるのも未だに理解できません(笑)。
「宮城のかき」のチラシを眺めながら訊ねると、
なんと!今食べた牡蠣は当の宮城の牡蠣ではなくて三重の牡蠣だという。
牡蠣漁師さんに人手が足りないから手伝ってくれたら牡蠣を分けると云われて、息子さんが三重に手伝いに行ったまま帰ってこないんだって。
元々は宮城の牡蠣を使っていたものの、まだ数が出ていないからと女将さんは仰る。
息子さんが人質にとられちゃってたら仕方ないけれど、三陸の牡蠣もきっと粒揃いになっていますよとそう伝えてみる。
三陸の牡蠣がまだまだ以前のような流通を回復できていないことに直面する一場面でもありました。
偶にはちょっと奢って「上ロースカツ」。
牡蠣フライと同じように揚げ色は濃いぃめの揚げ口だ。いつものように檸檬と醤油でいただきます。
通常版「ロースカツ」と違って、こちらは横にも包丁が入る。できれば、横に包丁を入れてもなお衣と肉がみっしりと密接しているのが好みだけれど、これはこれで文句はありません。
「吾妻」のお品書きには、「鉄板焼き」ラインナップが3品ある。
そのうちのふたつが生姜焼き。
「ヒレ生姜焼き」なんてのもいいかもと思いつつ、やっぱり「ロース生姜焼き」に食指が動きます。茄子は熱々でなかなか食べられない(笑)。
通常の倍程の厚さのあるロース肉におろし生姜の利いたタレがたっぷり。
でも、やや硬くなるきらいもあって、ロースはよくあるスタイルに切り分けたヤツの方がいいかなぁ。
旗の台稲荷通りに暖簾が揺れるとんかつ「吾妻」は町の食堂。帰りがけ女将さんに、店の名前の由来を訊いてみた。
すると、「吾妻」は女将さんの出身地、長崎県は諫早市の吾妻町からとったものだという。
群馬県のは吾妻(あがつま)郡って読むんですってね、って。
最初は、旗の台駅の東口、昭和大学通りで7年営んで、今の場所に移って30年目になるそうです。
口関連記事:
CRAFT BEER BAR「TRANSIT」で 乗換駅旗の台踏切前のカウンター(13年07月)
「吾妻」
品川区旗の台5-13-10 [Map] 03-3781-4381