ところが、久し振りにその前を通ると、 何やら別の名前の小さなサインが壁にある。店先では、笊に載った瓢箪が「やってるよ」と手招きしています。
こんちは、と覘いた店内はどうやら、 おでんや「かてて」の居抜きな様子。カウンターに入口脇のテーブルひとつで、 〆て10席のこじんまりしたハコであります。
カウンターの天板には、おばんざい的大皿料理的なお惣菜が四つ並んでる。煮炊きや「おわん」のお昼ごはんは、 主菜とこれら四つのお惣菜からふたつを選ぶ仕組みになっているのです。
お皿の上を眺めたり、お品書きを読み上げたりしながら、 楽しく悩んでふたつのお惣菜を決定します。入口側には、おでんの鍋が据えられていて、木蓋の隙間から洩れる湯気。
例えば、しとしとと秋の雨が降る日には、「鶏の柚庵焼き」。選んだおばんざいは、「にんじんのきんぴら」に「ジャーマンポテト」。 主菜に副菜が囲んで、なんだか正しい食事をいただけそうな気分に、 少しだけ背筋がしゃんとしてきます(笑)。
主菜の柚庵焼きは、柚子の風味が程良く利いて、 きちんと御飯を誘う奴。他の小鉢とのバランスもあって、控え目ボリュームなのも悪くない。
天高く晴れた秋の日には、主菜「豚の生姜焼き」。カウンターの大皿から選ぶは、 「高野豆腐と椎茸の煮物」に「南瓜のサラダ」。
おばんざいに加えて必ず添えてくれるのが、おでんの小鉢。しっかりした出汁を充分に煮含めたおでんに、しみじみとして、 日暮れ時に訪れるのもきっといいに違いないと頷きます。
豚ロースの甘さを素直に引き出す生姜醤油タレの艶っぽく。こんな主菜ってきっと、女性ウケもするのでしょうね。
茅場町の裏通りにこの八月にオープンした、煮炊きや「おわん」。夜のお品書きをちらっと覗くと、おでん種が20種類くらい並び、 選りすぐった一品料理に酒肴あれこれ、そして〆のご飯までひと揃い。 寒さに少し背中を丸めて歩くようになったら、燗酒とおでん目掛けて寄り道したいな。 門前仲町に「おはしKitchen」という兄弟店があるそうです。
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「おわん」 中央区日本橋茅場町2-5-11 [Map] 03-3669-2888
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