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燗酒とコの字カウンター「井のなか」
茅場町「五穀家」でかつて活躍していた人物が満を持して開けたという「井のなか」目掛け、随分と久し振りの錦糸町まで足を運んでみました。駅北口から間もなく。落ち着いていながらところどころにセンスを感じさせるファサードです。予約の名を告げ、右手小上がりの奥へと案内されました。喉を湿らす小ビールのお供にと、衣のサクッとした軽快さとその身の甘さがそそる「白海老のからあげ」、キッシュとゴルゴンゾーラのパテを取り合わせた「ゴルゴンゾーラタルト&ムース」を。仄かに青かびが香るところに、後半は蜂蜜に浸して、というのも面白い。さてさてお酒はと考えながらお品書きを捲ると、3種の日本酒が楽しめるという「利き酒セット」が目に留まりました。やってきたお猪口は、相模の地酒だという「いづみ橋」の80%精米歩合のものに「神亀」、そして「萩の鶴」はぬる燗で。こうしてみると、微かに含む風味の違いが感じられて面白い。以降は広島は「竹鶴」にターゲットして、「純米にごり」「無濾過生原酒雄町」「小笹屋番外編原酒」「合鴨農法雄町」といただく。鴨が水田を泳ぐ光景が浮かんだりしてこれまた楽しいね。鯖の糠漬け「鯖のへしこ」、すけそうだらの子を神亀粕と仙台味噌で漬けた「助子の粕漬け からすみ風」、福井の幻の魚「げんげ」、と如何にも日本酒にあう酒肴たちもラインナップ。また呑んじゃうじゃん。ちょっとお肉系の量感もほしくなったら、「豚ロース富士酢〆」「自家製鶏しゅうまい」「井のなかコロッケ」なんて手もいい。茨城・かくま牧場産だという滋味深くかつあっさりした脂の豚肉に「富士酢」のソースが絶妙の酸味を添えていて、こいつぁ旨い。一方、店名を冠したコロッケは、蕎麦のマッシュを使っているンだという。こいつもまた、旨いんだ。そして、ん~、見れば見るほど端から食べ倒したいと思わせる品々の載る品書き。ちょっとづつでも、より日本酒の味わいを識るのにもいいね。お猪口の底やコースターの角など店内のあちこちにいる”蛙”は、店先の行燈看板の「井のなか」にも見付かります。
「井のなか」 墨田区錦糸町2-5-2 03-3622-1715