数週間前のこと。
何気なく覗いた路地の中程の古びた民家の玄関先に開店祝いと思しき花が飾られているのを目に留めて、
その玄関先のお品書きを覗き込んでみました。
そこには「黒澤」の文字。
なるほど、永田町の「黒澤」、そして十番の「くろさわ」の延長線上にある展開が、
こんなところでなされていたのですね。
今度は鉄板焼き。
日を改めてお邪魔してみました。
玄関から靴のまま右手のダイニングに通されます。綺麗に磨かれた鉄板を囲むようにコの字に席が配されていました。
さらに右手隅へ。
品書きの筆頭にあった、10食限定という「kurosawa特製ハンバーグ」をお願いしました。
蛸のマリネ、サラダが届くと同時に鉄板の前に材料を手にした調理師がやってきて、一礼。
例のコテをカシャカシャとさせながら焼き始めます。
茄子、マッシュポテト、獅子唐、赤ピーマンを捏ね繰り回すように手を入れていく。裏表そして側面にもひと廻り焼き色のついたハンバーグに目玉焼きがのせられ、完成のようです。
折角の吟味されたであろう肝心のお肉を目玉焼きで隠してしまうのはどうなんだろうと思いながら、ど真ん中からナイフを入れてみる。
挽肉の塊りを切る感触ではなく、その時点でかなり粗く切られた肉をパテにしたものだということが分かります。
中はレアな状態で、のせられた目玉焼きの玉子の黄身と合わせてみるとユッケを食べてる感じになる。脂の蕩ける旨さではなく、肉そのものの醍醐味を提供しようとする意図はヒシと伝わってくるものの、うまい!というサプライズが感じられないのがちょっと肩透かし。しっかりご飯も味噌汁もお代わりしたけどね(笑)。
コーヒーは2階のサロンでいかがですか、と案内されて、築80年になるという古民家の階段を上り、往時の風情を感じさせる縁側のソファでコーヒーを頂く。ゆったりとした空気の中で雑誌を捲っていたら、いつの間にかしばし微睡んでしまいました。
「黒澤」 中央区築地2-9-8 03-3544-9638
http://www.9638.net/tsukiji/
column/01620