いつものように晴海通りを勝鬨橋方向へ。
「鈴木水産」の店先や「河岸頭」の今日の品書き、
「長生庵」の暖簾なんかを横目で眺め乍ら、
旧築地川の帯を越えて二本目の細い路地。
その先左手には、暫くご無沙汰の、
てんぷら「黒川」の看板が見付かります。
久し振りに「黒川」の天麩羅をとも思うものの、
この日の目的地は、そのお向かい。
提灯が示す店名は、「本種」です。
以前二度ほどお邪魔した頃は確か、今と変わらぬ設えで、
「めし丸」というお店だった筈。
いつの間に店名が変わったのでしょうか。
それはさておき、おひとりさまは、
路地正面のサッシュを開けてのカウンターへと侵攻します。
カウンターも以前のまま、6つの丸椅子があるのみです。
頭上に貼られた半紙には、
「刺身定食」「にぎり寿し」の一人前と1.5人前、
「丸ちらし」に「ねぎとろ丼」と4種のランチメニューが書かれています。にぎりの1.5をお願いしましょう。
あいよってな気風で手許を動かし続ける大将。
その後ろから、もうすっかり出来上がった常連客が、大声であれやこれやと声を掛ける。
それを大将は、去なすでもなく聞かぬでもなく、調子よく受け答えて、時に一緒に大笑い。
捻り鉢巻に白髪の揉み上げが鯔背な大将は、
市場ノリが板について、いい風情であります。
アオサ浮かぶ汁椀に続いて、大き目のお皿が手渡されました。蒸し海老を中心に放射状に並んだ寿司たち。
都合11貫に玉子が2片という構成です。
鮪をはじめとして、ネタに入れた包丁は豪快そのもの。お上品に行こうなどというつもりは基本的にないものの、
決してぞんざいなものではなく、
気取らずたーんと召し上がれってな気概が伝わってきて、いい。
舎利もおにぎりみたいなものではありません。
うん、満足満足。
その時にお隣さんが食べていたのが、「丸ちらし」。
まさに色々なタネがソレソレーとばかりに盛られてる。こんな時には、いちいち小皿の醤油にタネを運んだりすることなく、
練り山葵をたっぷりの醤油に溶いて、割り箸を添えて流し廻す。
そして、端からドンドコやっつけて満足するのが、このどんぶりの醍醐味だよね。
場内の某海鮮丼屋のように鄙びた舎利に凍ったネタを載せるようなことは、
きっと此処ではありません。
てんぷら「黒川」の路地の提灯が目印の魚介料理「本種(もとだね)」。横手から入るテーブル席で常連さんたちのように、
昼前から酔っ払ってみたいような気もします(笑)。
「本種」
中央区築地6-25-4 [Map] 03-5565-1923