時々思い出したかのように、大崎駅の南改札を出て新西口へと向かうことがある。新西口はそのままペデストリアンデッキで、明電舎の工場跡地に建てられた再開発ビルThinkParkに繋がっている。
ThinkParkから左手のソニーシティを通り抜け、大崎ウィズシティテラスというビルの裏手を往こうとするところに「六厘舎」の大崎店がある。
出火のため長いこと休んでいたけれど、15年の暮れに営業を再開した。
そんな大崎駅西口の線路沿い、
湘南新宿ラインと新幹線・横須賀線とが交叉する辺りから、
中原街道は桐ヶ谷斎場の方向へと、
だらだらっと上がっていくのが百反坂。
中華料理九麗瑠、Bar&Cafe縁+、近江牛Diningいさかやに、
乾杯食堂くあるた、SAKE BARもんてく等々と、
その名前の意味もちょっと気になる店々が、
通りの左手を中心に並んでる。
いつぞやお邪魔した「さんご」もその中の一軒だ。
小さな五叉路の信号の手前で目に留まるのが、
緑地のテントで庇をつけたお店。
そのテントには、鮮魚・仕出し・刺身屋・出前と書いてある。
店先の空気は、従前からの魚屋さんのそれであります。
サッシ越しに窺う店内のテーブルでは、
先輩諸氏がいい感じに笑顔満開でいらっしゃる。
業務用冷蔵庫の上に置かれたテレビに映った話題をネタに、
社会派談義をしてみたり、
そうかと思えば滅茶苦茶下世話な話に突然、
会話の中身が変わったり(笑)。
如何にも手開きした鰯をさっと煮付けた奴なんかが、
突出しに届いたりなんかする。
そうすっとやっぱり、諸先輩を見倣って、
ちょっと一杯したくなるのが人情ってなことでありましょう(笑)。
ここではまず、お任せで刺し盛りをいただくようにしております。
例えば、脂ののりはじめた鰹にとろとろの鯵なぞ。
おひとりさまのつまみとして、
ご飯の友としても相応しい角皿であります。
突出しと刺し盛り辺りで麦酒にお酒をちょっといただいたら、
鰆の照り焼きかなんかでお食事しちゃう。
諸先輩たちの朗らかにほろ酔いの会話も、
お魚定食の美味しさを後押ししてくれるような、
そんな気分になってきます。
また或る宵の口の刺し盛りには、
鮪の赤身や甘海老に並んで魴鮄があった。
割と最近見掛けることが増えてきたような気もするホウボウ君。
じんわり甘い白身がいいね。
そして、その晩のご飯の主菜は、
鮪の尾の身を煮付けた奴。
鮪のさくを煮付けるとなるとなかなか贅沢なことになるけれど、
端物の尾の身ならばそれを気にせず満喫できる。
ほろほろとした食べ口の中から鮪の旨味が解けます。
お椀には当然のようにさっきの甘海老の頭を入れてくれる。
調理し運んでくれる気風のいいオヤジさんは、
如何にも魚屋の大将という雰囲気を漂わせています。
或る晩の突出しが、小女子の釘煮だったこともある。
イカナゴ鮊子じゃなくてコウナゴ小女子だと大将は仰るが、
実はその違いが判らない。
てやんでぇ、江戸っ子はコウナゴと呼ぶんだ!
と云うことなのかしれません。
今あるタネでどんぶりを作って貰おうと冷蔵庫を覗き込む。
あれこれ載ってる海鮮丼も悪くはないけれど、
気分は一本気などんぶりがいい。
そんなこんなで鮪丼。
ふと思い出すのは、今はなき京橋「京すし」。
きちんとした寿司店の鉄火と比べられても困るだろうけど、
ちょっとそんな気分で背筋を伸ばしていただきました。
百反坂を登り切った辺りにある緑のテントが、
鮮魚・仕出し・刺身屋「魚玉」の目印だ。
店内の貼紙によれば、刺身やオードブル、握りなんかの、
出張サービスにも応じてくれるそう。
ドンブリものや定食なんかのランチも営っていて、
地元の人々には定番となっているみたい。
そして、常連らしき諸先輩にはいつ行ってもお会いできます(笑)。
「魚玉」
品川区西品川3-5-2 [Map] 03-3494-1494