お食事処を漁ろうと当てずっぽうに徘徊を始めました。
JR大津駅近くのホテルを出て大通りを渡り、例によって細い道細めの道へと気の向く方へ進路を取ります。
大津には”京町”と呼ぶ住居表示のエリアもあり、町屋造りの家屋が所々に見付かる。
その内の幾つかは、小料理屋や割烹に仕立て直されていたりする。
知らなかったが故に余計にいい風情に思えて、一々立ち止まって眺めたりなんかいたします。
なんとはなしに浜大津駅方面へクランクしながら歩いていると、
突然にアーケードの入口に出会した。暗がりに浮かぶは、丸屋町という大きな文字。
ひと気の少ないアーケードに闖入すると、
店先に大樽を置いた間口の広い店がある。
木彫りの文字が示すのは「平井酒造醸」。
「平井商店」は、万治元年(1658年)創業の酒蔵であるらしい。
アーケードを抜けて、京阪の京津線がスルスルと走る西近江路を渡り、
更にその裏手の方へと廻ってみる。
スナックの灯りが幾つか浮かぶ裏道を抜けると今度は、
京阪の石山阪本線が通る軌道に出た。京阪の車輌がすぐ脇を通る角地に見付けたのが、
酒亭「おふく」の灯りです。
暖簾を潜ると早速、
ふわんとお出汁の匂いに包まれる。そうとなれば抗うことはなし。
壁に貼られたおでんメニューの短冊から、
基本ラインの大根、玉子、すじ肉辺りをいただきます。
やっぱり寒い頃のおでんの湯気って、いいものですよね(笑)。
品書きに、クジラコロやひろうすがある辺りに、
京都の「神馬」や「蛸長」のおでんを思い出します。
おでんをいただきながらその日メニューを眺めて思案する。
「カキフライ」か「カキバター醤油炒め」か、
はたまた両方か(笑)。選んだのは、炒めの頃合いも文句のないバター醤油炒め。
大津だとどの辺りからの牡蠣が多いのかと考えます。
やっぱり日本酒だよなぁと呟きつつ振り返って認めた短冊に、
「浅茅生(あさぢを)」という銘柄の行を見付けた。さっき店先の前を窺った、
あの酒蔵のお酒だと合点して女将さんに御燗を頼む。
お猪口を手にうんうんと判ったような所作でほくそ笑みます(笑)。
すっかり日本酒モードになったので、
「鯖へしこ焼き」なんぞにも挑んでみる。燗酒には勿論合うのだけれど、
如何せん塩辛いのは、血圧が気なるお年頃だからでしょうか(笑)。
琵琶湖の浜辺にいることを実感させてくれる肴はないかしらんと、
改めてこの日メニューを紐解けば、
「若サギ天ぷら」には”琵琶湖産”と冠がついていた。これが琵琶湖の公魚かと、これまた訳知り顔になる(笑)。
大将に訊けば、まだ小振りな時季であるらしい。
もうちょっとカラッと揚げてくれるとより美味しいものと思います。
ここいらで〆てしまおうと更にメニューを物色すると、
お店の名前を冠した「おふく鶏うどん」というのがある。ぶつ切りした鶏の身が、
ゆったりした汁に浮かんでいい感じ。
うどんそのものは、
コシつきで迫るでもやわやわに溺れるでもない、そんなヤツ。
いつぞやのおひるに近所の「麺せい」でいただいたのが、
鍋焼きうどんであったことをふと思い出す。
この辺りは何気にしっかり根付いたうどん文化圏なのでは?
なんてことも思ったりいたします。
浜大津駅前、京阪石山坂本線の軌道のすぐ脇に、
酒亭「おふく」がある。近所のスナックのおねぇちゃん達が、
煙草ぷかぷか吸っているのがちょっぴり迷惑だったけど
彼女らがきっと常連だもの、
まずは気にしないように努めるのが、
一見さんの振る舞いでありますね。
「おふく」
大津市浜大津2-4-13 [Map] 077-524-0933