
仮囲いの向こうに古いアパートが見えるのみで、
殺風景だった旗の台南口駅前。
その後、激混みの田園都市線で都心に向かう客を大井町や目黒、五反田へ逃がす作戦が発動されて、
駅の改修工事が始まった。
大井町線ホームにあった木製の長椅子なんてとってもいい表情をしていたけれど、今はない。
駅前の空き地にはマンションが建ち、改札前には何故だかパームツリーが聳えてすっかり様変わり。
ちょっぴり南国ムードも漂う旗の台駅南口に接するのが、
踏切に向けてゲートを構える「ふれあいロード・稲荷通り」。

線路と通りとが斜めに交わり、
敷地なりに建つ角の建物は、その鋭角がそのまま外観に及んでいます。
一階には、英会話教室に焼き鳥「とり半」、
「Andy」から名を替えたピッツェリアが入居中だ。
長い角パイプの先に残る看板や二階窓の庇は、
二階フロアにスナック喫茶「フォックス」があったこと示しているけれど、
そのあるじを失ってもう随分経つ様子でありました。
遡ること一年ちょっとほど前のこと。
その建物の二階へ上がる階段の入口に、
開店を祝う花が飾られているのを目に留める。


ギネスのスタンド看板のチョーク文字が示すは、
Craft Beer Bar「TRANSIT」。
後日、その階段をゆっくりと上がってみました。

小じんまりしたスナックの居抜きを想像していた所為もあるけれど、
ドアを開けることもないまま突入していた店内は、意外な広さでありました。
ちょっとした倉庫の奥に洒落て設えたようにも映る横一線のカウンター。

向かって右手にビールサーバーが並んでいます。
メニューに並ぶクラフトビールの銘柄たちはきっと、
その道の通も納得のラインナップだ。
薄玻璃グラスに注がれてビールが届く。
“ホップ”を意味するらしい、ベルギーの「ホメル」は、
真っ直ぐに苦味が旨い。

対して、スコットランドの「パンク」は、
ぶわわっと花の香りがきて、そこへ苦味が追い駆けるタイプ。

そんなクラフトビールやシングルモルトのお供も、
お決まりモノに留まらない、気の利いたお皿たち。



例えば、「砂肝のコンフィ」や「鳥取大山鶏レバーパテ」。
スパイシーなソーセージにパチクーをわさっと載せた「パクチーソーセージ」。
そんな、云わば、洋ものアジアものの一派があれこれあるかと思えば、
和モノ系の「本日のフード」もある。



例えば、「愛知産イワシのタタキ」だったり、「茶豆の燻製」100円だったり。
「カツオの酒(縁喜)煮」200円なんて、
日本酒の冷やが欲しくなりそうな酒肴も何気にあるところもまた愉しい。
「本日のフード」には、「キーマカレー」や「アスパラとベーコンのスパゲッティーニ」などと、
〆の食事も考慮されていて、いい。
箕面ビールの「スタウト」は、ロースト感なるほどな黒い雫。

クリーミーさをも含むような口当たりに続いて、
潔くもすっきりとした後味で、スパッと切れ上がる。
それでいて、ほんのりとした苦味の余韻を残して後を引く。
飲み干したグラスの底には、
手描き文字が味なコースター。

こんなところにも店主の趣味とセンスが現れているようです。
旗の台駅南口、踏切脇の老朽ビルにクラフトビア・バー「TRANSIT」。

トランジットというと空港での乗り継ぎを想い浮かべるけれど、
池上線と大井町線が交差する旗の台駅前ゆえの店名なのか、
それとは別の意味合いからなのか、今度訊いてみなくっちゃ。
「TRANSIT」
品川区旗の台5-13-12 佐藤ビル2F
[Map] 03-6426-7788
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