潤菜「どうしん」で ゆき菜むかご海老芋団子八ッ頭煮百合根ご飯

doushin.jpg新富町でワインバーといえば、 そう、happy wine bar「11plats」。 そして、そのカウンターを訪れた帰り際。 建物に向かって右手の硝子戸に小さな額が下がっているのを見つけました。 「潤」と落款を添えた丸っこい筆文字には、 「潤菜 どうしん」。 八丁堀同心の「どうしん」、なのでしょね。
そのうち訪ねたいなぁと思っているうちに、 それが意外と知られたお店であることを知る。 とある冬の夜、予約を入れてお邪魔しました。 「11plats」と同じ建物の幅に階段があるンだもの、 「どうしん」の店内は実にこぢんまり。 階段を上がるとまず、やや背の高い数席のカウンターが目に入る。 今上がってきた階段との間を飾り仕切るように、階段状の棚が据えられていて、なんだかそのまま屋根裏にでも潜り込めそうな錯覚が一瞬する。 「どうしん」での居場所はきっとほとんどの場合、通りに面したふたつのテーブルのどちらかになる。 そして、メニューはなく、予約の際にそう聞いていた通り「おまかせ」です。 麦酒をちょっといただいて、三品の先付けを愉しみます。 ひとつが、「ゆき菜と京揚げ煮浸し」。doushin01.jpgちぢみの入った雪菜は、こうしていたくのがなにより正しいのだと、頷いてみたりする。 doushin02.jpg ふたつめの小鉢には、「香箱ガニ 茶碗蒸し」。 中央で構える暗緑色の味噌の廻りに、小さな小さな外子が鏤められていて、その周囲に蟹の身が解されて。doushin03.jpg茶碗蒸しそのものにもしっとりと旨みが沁みていて、香箱ガニの各部との相性、悪かろうはずもない。 やっぱり、蟹味噌がそそるのだねと思いつつ匙を動かすと、たっぷりとした外子(内子?)が現れて嬉しがらすんだ。 白い造形美をもって登場したのが「蕪の田楽」。doushin04.jpg八丁味噌のどろっとした濃厚な旨みが、すっと箸の入る蕪自身の甘さを引き立てる。 厚手のナチュラルな板を八寸に、海のもの山のものの盛り合わせ。 doushin05.jpgdoushin06.jpg 姫さざえの潮煮、鯵南蛮漬け、むかご、くわい揚げ煮、大根と干柿の紅白なます、京人参味噌漬け、大徳寺納豆、五郎島金時素揚げ、れんこんきんぴら、勝栗密煮、あさつき入り出汁巻き、と盛り沢山。 野菜やお豆の優しい滋味をちょっとづつ愉しめる趣向になっている。 椀はといえば、「海老芋団子 白味噌仕立て」。doushin07.jpg白味噌のこっくりした味わいと海老芋団子のこっくりのグラデーション。 ちょんと載せた和辛子の風味をほんのりアクセントに、しみじみ啜る。 doushin08.jpg ポン酢ゼリーで和えた水菜と数の子を挟んで、 鰆の焼き物。doushin09.jpgあるがまんま丁寧に焼いた照りの表情がいい。 doushin10.jpgそうそう、もうかれこれ何本も熱燗のお銚子が空いている。 ちょっとチャイナちっくに変わったフォルムのお銚子なんかを交えて、三人それぞれ手酌でね。 旦八さんとはほぼ同じペースで、しずりんさんはのんびりマイペース。 時々お酌したりして、そんなのもまた、いい(笑)。 強肴に、にしん、干筍、干しいたけ、八ッ頭、プチヴェールの煮物。doushin11.jpg流れの中での、ザ・酒の肴。 あれ、これもさっきの雪菜かなと思った青菜がプチヴェールだ。 doushin12.jpg そして、百合根ご飯にあさり清まし汁、香の物。doushin13.jpgおコゲの上に載ったほっこり百合根が、そっと優しく迫るのだ。 デザートに、柚子ゼリー。 doushin14.jpgdoushin16.jpgdoushin15.jpg そして、茶釜の湯で点てた抹茶に黒豆を添えて。

新富・平成通りの隠れ家、「心、潤う野菜料理」の「潤菜(るさい)どうしん」。doushin18.jpg見送りに出てくれた主人は、32歳のつるんと若い。 訊けば、「馳走卒啄」の7年、「福寿」の半年、山口、京都。 そこここでの修業と経験が、野菜に対する思いを培ったのでしょうね。 □関連記事:  happy wine bar「11plats」で 第一楽章ソムリエの手料理たち(08年11月)


「どうしん」 中央区新富1-9-11 亀田ビル2F[Map] 03-5542-8851 http://dousin.jugem.jp/
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