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食事処「かどや」で 吾が町新富45年お好み惣菜とおにぎり定食
ナポリタンも魅力な新富町の喫茶「バロン」。
その窓際のソファーからふと見下ろすと、視線の先におでんや鯛焼きの「にしみや商店」の赤い暖簾。
そしてその隣の角地に緑の縞模様のテントを庇に張った建物がある。
その昔、なにかの商店として使っていたのかなぁという風情の佇まい。
「バロン」で食事を終えて眺めてみると、「お食事処」と白抜いた茶色い暖簾が出ていて、引き戸に小さな黒板をぶら下げている。
その黒板には、鮭中塩、たら焼き、あじ、野菜天、けんちん汁。
素朴なフレーズが並んでいて、600、700、800と値段が小さく書いてある。
入るのにちょっとした勇気のいる雰囲気が反って気になるのはへそ曲りの証左(笑)。再びその暖簾の前に立って、一瞬の躊躇。
さりげなさを装って、さもいつも訪れているように、ガラガラっと引き戸を動かします。
コンクリートの土間に古びたテーブルがふたつ置かれ、右手のカウンターには渋い風情の丸椅子が並んでいる。と、オバチャンがそのカウンターの上からこちらを覗き込むように顔を出して、「いらっしゃーい」と応じてくれる。
少々所在なげにその丸椅子に腰掛けると、
「これ、鮭のおにぎり、これでどう?」とオバチャン。
思わず、へ?という顔をすると、「野菜の煮つけとかね、菜っ葉炊いたヤツとか、あ、やきそばあるよ」とつけ加えるオバチャン。
「普段はその場で掻き揚げ揚げたり茄子炒めたりするんだけど、今日はまだできてないなぁ」「そうそう、麻婆もあるよ」。
どうやら黒板に品書きはあるものの、いろんなお惣菜を組み合わせて定食にしてくれちゃうらしい。
おにぎりの定食ってのも面白いかも~と「オバチャン、おにぎりでいいよ、それとね、菜っ葉と野菜の煮物にお椀ちょうだい」とお願いする。
オバチャンはふんふん、てな感じで軽く頷いて年季の入った厨房で背を向ける。
おにぎり定食のお皿が揃いました。
おでんな煮物と高菜の炒め煮とお新香を交互に口に運びつつ、しっかり海苔の巻かれた丸いおにぎりを頬張る。
こふいふ懐かしい雰囲気の中でいただくに相応しくって、和んでしまうお昼ご飯だなぁとなんだか嬉しくなる。
「以前は、大鍋でとん汁沢山作って、それがよく売れた」。
「しょくりょうしんてん(食料品店)やってから、その後食堂んなって、45年かな」。
問わず語りにお店の経歴を話してくれるオバチャンは、ここ最近で10軒飲食店がなくなって、新しく8軒できた、などと界隈の状況にも何気に詳しい。
勝手知ったる吾が町の日々の変容をずっと眺めてきたのよ、そんな感じかな。
塩鯖焼いた定食とか、野菜の掻き揚げの定食とか。
暖簾を潜ると、「今日はなんにする?」と訊いてくれるオバチャン。
あるものならなんでも作ってくれるなんて、「深夜食堂」みたいだね(笑)。
枯れた風情とオバチャンの手料理がいい、新富町の食事処「かどや」。試しに、なんで「かどや」って云うのと訊いたら、予想通りの応えが返ってきました。
「角にあるからよー(笑)」。
口関連記事:喫茶「バロン」で ケチャップ官能ナポリタンとナポリタンなグラタン(09年11月)
「かどや」 中央区新富1-10-7 [Map]