中華「弘喜楼」のある筋を歩くと、頭上にただひと文字。
”鳥”という看板を掲げたお店が見つかります。
その潔さに暖簾を覗くと、店の名を「辰の字」。
きっとこのお店の大将が、辰之助とか辰五郎とか辰兵衛とか、そんな鯔背なお名前なのでしょう。
おう、辰の字の!なぁんて呼ばれてたりね。
壁にみるお昼メニューは、
「焼鳥重」「揚げ真如」に「親子丼」。
気になる「揚げ真如」をいただくべく、お邪魔してみましょう。
カウンターから頭上を見上げると、主要仕入れ先名と思しき屋号が記された拍子木「辰の字」の額が囲まれている。「共和会」の刻印のある屋号の中には、鶏問屋「鳥藤」や包丁「直次」のものもあるね。
しっかと築地の町に根付いてるお店の背景が窺えるようであります。
さて、待ちかねた「揚げ真如」がやってきました。
豪勢に肉厚に纏めた歪な円盤が、どんと盛り込まれています。
「海老しんじょ」によく聞く「しんじょ」の“じょ“は”薯“で、海老のすり身を山芋なんかの芋でつないで、蒸すか、茹でるか、揚げるかした練り物を指すよう。
ここでは、おそらく溶き玉子に片栗粉をたっぷり叩いて揚げた姿を「真如」と呼んでいるンだね。
ハフハフ。
粗く挽かれた鶏ミンチをがっつり齧る感じが醍醐味であります。
ケチャップと練り芥子が添えられているけど、どっちかっていうと生姜醤油か、いっそ揚げおろしみたいにしたらいいのかもと思ったりする。
でもきっと他所ではなかなか食べられない、飾らない一本気な仕立てが鯔背ではありませんか。
後日、やっぱり気になった「親子丼」もいただきました。これがなかなか旨い。
割下というか、下地のつゆがあっさりしながら出汁がしっかり利いていて、ごろごろっとした鶏肉と半生半熟な玉子との火加減も絶妙だ。既に仕入れ先とも思しき、「鳥藤」の分店を脅かしているぞ。
ハフハフ。
贅沢を云えば、鶏そのものをもっとぐっと味の濃いものにグレードアップした“特製”を作ってくれないかなぁ、なんて思います。
綺麗に並べ提げられた品書きが、夜にも来たいと思わせる。
カウンター左手で厨房を仕切っているのが、
「辰の字」の辰さんでしょうか。
「辰の字」 中央区築地3-14-5 03-3546-2162
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