column/01582再会
うなぎ「ひょうたん屋」一丁目店で 名残惜しむうな重の中
切ないことに遠からずその風情を失うことになるという「ひょうたん屋」に、名残惜しむべく足を向けました。「千ふじ」「さか田」のあった並びのビルを含めた再開発によるものなのだという事態。並木通りを進む足が何故だかだんだん早くなる。誰が急かす訳でもないのにね。看板が見え始めたところで、あの煙混じりの匂いが嗅げてひと安心。大丈夫、まだやっていました。出来れば焼台前でその臨場感を再び味わいたかったけど、通されたのはカウンターの一番奥。白木の天板の、面取りしてある角が長年に亘って擦られ拭かれしてさらに丸くなっているあたりをジッとみてしまう。足元を見れば、今やコンクリートの土間のお店も少なくなってきたもんね、と感慨する。「はい~、中の方~」。注文していた「うな重 中」が届きました。今日のうなぎは少々焼き目が強い。どうしても慌てて食べる感じになりそうなので、深呼吸ひとつして(笑)、落ち着いていただくことにします。この佇まいの中でいただくのは最後になるかもしれないのですから。香ばしさとともにそっと押し返してくるような歯応えの一瞬があり、すぐさま力強い旨味を迸らせてくれる。どこか野生的でありながら決して野卑じゃない。蒸さない蒲焼きの魅力を教えてくれた一丁目「ひょうたん屋」。今まで通り、黙々と団扇を扇ぐオッチャンの背中や右へ左へと走り回るオバチャンたちの、なにごともないかのような情景が妙に印象に残っています。やっぱり、も一度、夜に来ようかな。
≡取り壊し予定に残念の情を伝える「食い道をゆく」のヒロキエさん
≡焼き台前でオヤジサンの所作を改め垣間見た「ひるどき日本ランチ日記」のtakapuさん
≡界隈の不穏な空気にも接した「ゆる~り、ゆるゆると~」のkisakoさん
「ひょうたん屋」一丁目店 中央区銀座1-5-13 03-3561-5615
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