「所沢じもちぃ西武線」カテゴリーアーカイブ

うどん小屋「アサイチ」で全粒粉と背脂使いの肉汁うどん築75年の古民家にて

住所で云えば、清瀬市中里。
直線距離で云えば、武蔵野線の東所沢駅が最寄りの駅になる。
西武線の清瀬駅北口からのバスがあって、下戸か台田というバス停が降車場になる。
都県境を流れる柳瀬川の緑地公園も程近いバス通りに風に棚引く「うどん」と示す幟が見付かります。

やや広めにとった駐車スペースの奥に、
越屋根を載せた平屋家屋。そこにも藍の暖簾に染め抜いた「うどん」の文字が見付かります。

暖簾を潜ると正面に数脚のカウンターがあり、
その右手に視線を移せば、
庭に面した廊下に沿って二間をぶち抜いた座敷が広がっています。なんだか郊外の叔父さんの家に上がり込んで、
お手製のうどんをいだたく気分になってきます。

最初のご註文は勿論「肉汁うどん」。人参と竹輪の天ぷらも添えてもらいます。

茹で立て〆立てを思わせる、
そしてツルンとしてモッチリとした食感を思わせる姿。よく見ると、小麦粉の表皮等が練り込まれていて、
全粒粉によるうどんなのかもねと考えつつ箸を伸ばします。

肉汁のツユも武蔵野うどんスタンダードな肉汁とはやや趣が違う。
所謂”背脂チャッチャ系”らーめん店のソレ程ではないものの、
明らかに意図して背脂を浮かべている。
成る程、こうすることでツユのコクが格段に増して、
旧来からの武蔵野うどんの麺に比べてモッチリ感の増したうどんと、
バランスをとろうとしているのだ。

揚げ立て天ぷらってやっぱり美味しい。人参の甘さや噛んで滲む竹輪の旨味も、
いい合いの手を演じてくれます。

またまたカラッと晴れたおひる時。
今度はふたつあるテーブル席のひとつに陣取って「カレー汁うどん」。小麦粉炒めた感たっぷりの、
蕎麦屋のカレーにも通じるカレー汁。
ちょっと醤油を垂らしたくなって、
旗の台「でら打ち」でいつもいただいていた時を思い出します(笑)。

お座敷を囲む障子の面数の多さなんかを数えつつ、
掻き揚げの揚げ立てに対峙する。玉葱の甘さを堪能するにも天麩羅が一番なのかもしれませんね。

清瀬市中里。
柳瀬川に沿って走るバス通りに武蔵野うどん「アサイチ」がある。店名「アサイチ」は、座卓に置かれていた冊子によれば、
母親のアサさんの名と父親のイチロウさんの名に因んでのもの。
なので、NHK「あさイチ」との協業ではない(笑)。
アサさんイチロウさんの子供たち兄弟が、
築75年の実家を改装して営むのが「アサイチ」なのです。

「アサイチ」
清瀬市中里5-11 [Map] 070-5594-9930

column/03727

拉麺「はち屋」で海老そば中華そばドンブリの愛想に思うところと再開発計画と

西武池袋線と西武新宿線が交差するターミナルとなっている所沢駅。
沿線を知らないひとにとっては、池袋から一時間くらいかかるんでしょ!とか、場合によっては、飯能よりも遠いンでしょ!みたいな声も聞く(笑)。
まぁ、都心に近いということは決してないので、声を大にして間違いだと云うものでもない。
だって行ったことないもん!となれば、そりゃそうだよねと応じることになる。

今から彼此2年程前のこと。
そんな所沢駅の西口からプロペ通りを抜けて、
イオンに転じた元ダイエーの前を通り過ぎた辺り。
俗にいう”所沢ファルマン通り”の中程で、
“激安 パソコン教室!”と謳う看板に目を留めたことがありました。何気なく近づいてみて少々吃驚いたのは、
そこがパソコン教室なんかではなく、
すっかり営業中のラーメン店であったことでした。

しばしの後日、ものは試しと寄ってみる。
券売機にてお願いしたのは、品書き筆頭の「海老そば」。鶏がメインと思われる白濁スープに、
海老の風味が漂うどんぶり。
品書きには、甘海老と桜海老のエキスを合わせた、とある。
どことなく愛想がないというかなんというか、
そんな印象も抱きつつ、蓮華をふた口三口。
うん、まぁ悪くはない。

そんな濃度あるスープをたっぷりと掬った麺は、
多加水の平打ち縮れ仕様。麺の周りをスープが纏わりつくようになって、
麺から粉が溶け出しているかのような、
そんな錯覚を覚えた瞬間もありました。

いつの間にでしょうか、
お店の額に掲げている格好だったパソコン教室も看板が、
店名を大きく刻むものに代わっていました。中華そば、とキリッと認めた暖簾もいい感じです。

間が空いてのとある夜、
再び寄り道する機会を得てのカウンター。券売機で入手したチケット、
「中華そば」「海苔」「もやし」を手渡そうとすると、
いやそこに置いておけ的なことを顎で示すよな不満顔。
あれ?今来たばかりですけれどワタシなにかしましたか(笑)?
まぁ虫の居所の悪い時もあるだろうと註文の品を待つこととします。

届いたドンブリのスープは比較的澄んでいる。
「海老そば」とは別の寸胴で別のスープを仕込んでいると、
どうやらそふいふことのよう。ふたつのメインとなるスープを仕込むのに、
果たしてどれだけの手間がかかるのか。
そう思いつつも、どうもグッとこないと云うか、
旨味の発露が真っ直ぐ届かないと云いますか。
お店のスタッフの愛想とドンブリの愛想が、
妙に重なるように思えたのでありました。

所沢ファルマン通りに拉麺「はち屋」の暖簾が揺れていた。過去形で表現せざるを得ないのは、
15年5月の開店来2周年を迎えたところで閉店となってしまったから。
どうやらこのエリアで再開発事業が稼動しはじめているようで、
その影響もあったのかもしれません。

「はち屋」
所沢市東町12-10 [Map]

column/03725

そば処「巴屋」で映画あんの桜並木のある舞台牡蠣南蛮に天ざるに

西武新宿線に久米川という駅があります。
ひとつ新宿寄りの駅が大きな霊園があることでも周知の小平駅。
ひとつ先が志村けんの出身地にして”音頭”でも有名な東村山駅だ。
そんな久米川駅を新青梅街道とは反対側の南口に出る。
ロータリーを背にして進んでT字路の信号に至ればそこはちょうど、曇天の下ながら桜の花が満開でありました。

通りの両側に羽根を広げるように、
薄紅色のベールを捧げる桜の木たち。この桜並木やその周辺が、
’15年公開のある映画のロケ地となっていました。

先程のT字路の処にも桜の枝々。交叉点を渡る横断歩道の正面にあるのが、
そば処「巴屋」です。

店頭の品書きを覗き込むとその隅に、
その映画「あん」についての一行がある。そば処「巴屋」もまた店名もそのままに、
映画「あん」に登場しているのです。

どら焼き屋「どら春」の雇われ店長役の永瀬正敏が、
座っていたと同じテーブルに腰掛けて、
壁に掛かる品札なぞを眺め上げます。大き目で骨太な捏ね鉢が飾られているね。

お品書きに「カキ南ばん」を見付けて、
名残りの一杯とばかりに註文の声を掛けます。どんぶりに載る牡蠣は勿論、加熱用の牡蠣。
割ときりっとした甘汁に二八辺りの素直な蕎麦。
町のそば屋さんの蕎麦をきっちりと体現してくれています。

去年訪れた時はもうひとつ奥のテーブルへ。円で囲んだ巴の文字を標した朱色の湯桶が印象的でした。

映画「あん」で、「どら春」店主千太郎が注文した、
「天ざる」に刻み海苔載る景色。千太郎は確か、麦酒一本と一緒にやっつけていたっけね。

天保元年(1830年)創業、そば処「巴屋」は久米川の南口。Webページによると、
麹町に創業し、戦時の疎開で久米川に移転したという。
疎開以来70年、今は五代目と六代目で頑張って営業しているとある。
また来年、桜の時季にお邪魔して、
昼から燗酒呑っつけたいなと思います。

「巴屋」
東村山市栄町2-21-29 [Map] 042-391-0313
https://tomoeya.jimdo.com/

column/03717

自家製麺無添加「うど吉」で灰褐色が旨い肉汁うどん研鑽が生むハイブリッド麺なぞ

西武池袋線が新宿線と交叉する所沢駅から3駅先にあるのが、狭山ヶ丘駅。
まるで狭山丘陵を代表するかのような駅名ではあるものの、何があるでもない長閑な環境の住宅地であります。
西口を出てそのまま所沢バイパス方向へと西進する。
八百屋の店先に置いた椅子にいつも座っているオッちゃんの姿を確かめればもう、目的地は目と鼻の先であります。

見上げたワインレッドな看板には、
「自家製麺無添加」「うど吉」の文字と共に、
「笑所福来」「一団和気」「一日一麺」の四字三行が並んでいます。ぱっと見で二階にはきっとスナックがありそうな、
そんな雑居ビルの並び(笑)。
うどんと標した幟はためく「うど吉」の暖簾をいざいざ、払いましょう。

カウンターではふっくらした座布団の上に、
猫がのんびりと横になっている。看板にもしっかり描いている通り
間違いなくネコ好きさんによるお店なのであります。

とるものもとりあえず註文したのは勿論「肉汁うどん」。武蔵野うどん的地粉の色気をあっけらかんと表現した、
“もち麺”と謳う灰褐色の麺がまず目を惹きます。

少々これでもか感は滲みますが(笑)、
業界で、はじっ娘とも一反木綿とも呼ばれる幅広部分は勿論、
手打ち麺の証左であると歓迎しましょう。ただ硬いばかりの麺ではなく、
独特の弾力に粉の甘みをフフンと湛えたところに、
腕組み大感心(笑)。

つけ汁は甘さを引き出した葱とお揚げがたっぷりで、
メインの具であるはずのお肉が隠れてる。でもでもその下からはたっぷりめの豚バラ肉が顔を出す。
サービス精神をも滲むつけ汁にふと感謝の念すら湧き起こってきます。

入口近くの窓辺を振り返るとそこには、
ひとつのポットが置かれてる。貼紙を読めば、二番出汁です。
つけ麺店のスープ割りよろしく、
つけ汁を割っていただくに加減よく。
これもまた気持ちの伝わるサービスであります。

また足を運んだ五月晴れのおひる時。
今度のご註文は、その名も「磯香る塩肉汁うどん」。煎り胡麻をたっぷり利かせた塩つけ汁には、
これまた塩出汁によく似合うもみ海苔も、
たっぷりと添えられています。

例によってうどんそのものは間違いなく灰褐色を帯びている。
掴んだお箸で引き上げれば、
想定外に長い長いうどんであるのもまた、
自家製ならではのサプライズでありましょう。

武蔵野うどんファン向けにと、
麦香る硬い麺と副題に謳う数量限定の、
「田舎うどん」に変更する手もあるようです。
こんなことから、硬い麺=武蔵野うどん、
という一種の誤解が生じるのではないかなぁ(笑)。

そうそう、卓上には「おうどんの話」と題する手作り冊子が置いてある。埼玉県のうどん生産量が、
香川県に次いで全国第二位であることに始まり、
諸説あって定義が定まらないながら、
武蔵野うどんを代表するのが「肉汁うどん」であること。
武蔵野うどんに使われる地粉の話から、
小麦の外側や全粒粉を含んでいるが故に、
黒っぽいうどんとなること等々、
「うど吉」のうどんが美味しい秘密や背景を丁寧に解説しています。

試行錯誤の中から生まれくるであろうメニューも様々で、
例えばこの日のお題は「ハイブリッド麺肉汁」。カカオでも練り込んじゃったのかとも訝る麺はと云えば、
最高級のうどん粉になんとかん水を加えて全粒粉を追加したもの。
ハイブリッドと謳うのは、
うどんとつけ麺の麺との二面性を併せ持つからなのですね。

もちっとしつつさくっと歯切れる芳ばしき麺に負けじと、
添えたつけ汁も力強い仕立て。たっぷりの魚粉で濁らせて、
背脂でぐぐっとコクを増したつけ汁だ。

狭山ヶ丘駅を最寄とする静かな住宅地の一角に、
弛まぬ研鑽の昇華した稀有な武蔵野うどん店「うど吉」がある。きっと、どこかのラーメン店・つけ麺店のように、
折りに付け繰り出してくる限定麺を常に追い掛けている、
「うど吉マニア」がいるに違いないと目論んでいる。
そんな「うど吉」は、16年11月に近くの新店舗に移転してなお、
盛業にして鋭意営業中のようです。

「うど吉」
所沢市和ヶ原1-41-8(移転前)
所沢市和ヶ原1-691-62(移転後)[Map] 04-2947-0500

column/03711

手打「大助うどん」で肉もりうどんに肉うどんキツネ入り武蔵野うどんの正しき風景

daisuke大泉学園のうどん店と云えば、まず思い浮かべるのが、今は手打饂飩「長谷川」と名乗る英気盛んな店。
「エン座長谷川」から今は”エン座”の冠を外して、自らの名のままにて自立している。
そんな「長谷川」の店先の様子を想像しつつ立っていたのは、同じ北口のバス停前。
ちょっと整備されて綺麗になった小さなロータリーから乗り込んだのは、福祉センター行きの西武バス。
大泉学園通りを北上して北園の信号を抜けたバスは、関越道の処で左折して高架に沿って進む。
道に沿ってさらに左折したところで降車ボタンを押しました。


駅からは離れた住宅地の一角に年季の入った暖簾が揺れる。daisuke01木造モルタルの民家の物干し場の下に、
後から急造で設えたような囲いがある。
履き込んだデニムのような暖簾の脇には、
風雨に鍛えた表札が、
手打「大助うどん」であることを示してる。

両脇にある券売機の上には檜の板で誂えた品札の列。daisuke02まずはやっぱり品書き筆頭の「肉うどん」でありましょう。

店内はいい味に少し飴色帯びていて、
初めてなのに懐かしい。daisuke03ギュウギュウになるでもなく、
八割方の客入りの状態を維持しながら、
客の顔立ちがどんどん入れ替わっていく。
行列をつくるでもなく、
まるで示し合せたかのように回転していく様子に、
飲食店のひとつの理想を見たような気になりました(笑)。

テーブルの間を行き交ってくれるのは、
すべてベテラン顔のオバサマたち。daisuke04渡したチケットの行方と厨房の湯気を眺めつつ、
待っていたところへバラ肉をたっぷり浮かべたつけ汁の椀と、
皿に盛った手打ちのうどんがやってきました。

うどんを眺めては、
うむうむ、そうそうと思わず膝を打つ。daisuke05こうして茶褐色を帯びたうどんが、
正統な武蔵野うどんの証のひとつ。
このうどんなんでこんなにくすんだ色してるのと、
訝ってはなりません(笑)。

割り箸でひっ掴んだうどんを無造作につけ汁に突っ込んで、
それでも矢鱈撥ねないようにすっと引き上げる。daisuke06出汁の旨みと醤油の風味に、
豚バラから滲む滋味とコクを一身に纏った、
うどんが口の廻りで躍る。
うむうむ、そうそう、武蔵野うどんはこうでなくっちゃいけません。
美味いなぁ、どうして今まで知らなかったのでありましょう。

日を改めてふたたび同じバスに乗り、
やってきました関越道脇の住宅地。daisuke07空いていたテーブルの真ん中の椅子に腰掛けると、
正面に使い込まれた洗面台がある。
その脇の壁に表情のある文字で書かれた、
「うどん」と題する詩が貼られてる。

例によって入口両脇にある券売機でポチっとしたのは、
「肉うどん・肉もり・あつもりキツネかタヌキ入り」のチケット。daisuke08もりうどんではなく、
温かいの!キツネ入りで!とお願いすると、
はいよとばかりにオバサマがチケットの角を折り曲げる。
ここを折り曲げるのは、
大方のお客さんが註文するであろうもりうどんでなくて、
温かいどんぶりのサインなのかもしれません。

なんだか仄々した気分になっているところへ、
お願いしていたどんぶりが湯気を上げてやってくる。daisuke09daisuke10これでスタンダードな中盛りなんだもんな、
豚バラ肉もプラスオンのお揚げも、
加減することなく載っていて嬉しい。
ナルトの一片にまた仄々だ(笑)。

手打ちのうどんは勿論、
農林61号の地粉を思わせる明快な茶褐色。daisuke11うどんの、粉そのものから引き出した滋味。
豚バラ肉との相性の良さは、
一度このコンビネーションを憶えたら、
決して欠かせないものに思える程なのであります。

関越道抜けてゆく大泉学園の住宅地に、
正統派武蔵野うどんを想う「大助うどん」がある。daisuke12武蔵野うどんの中心エリアと思しき、
東村山や小平地域からはやや離れた大泉に、
こんなにも正しき風景のお店があったとは、
今まで知らずに御免なさい。
お代を渡した割烹着のオバサマに、
大助さんは何処にと訊ねると、
厨房の奥を指差して、
あれ?いないわねぇ、だって(笑)。

「大助うどん」
練馬区西大泉3-27-23 [Map] 03-3922-3028

column/03655