目抜き通り辺りを徘徊して、量り売りの地もののワインを買い込んで、青果市場や魚市場を探索して、その脇のカフェでひと休み。
カフェで所在を訊ねたバス停で目的地へのバスの到着を待ちました。
やってきたのは、San Floriano-Gorizia間を走るヤツ。海外で路線図も判らないまま乗り込むバスは、
ちょっとした冒険心も必要です(笑)。
するすると走るバスは、峠に向かうような坂道に差し掛かり、
なんだか景色が開けてきた。どうやらいよいよスロベニアとの国境スレスレの処を動いているらしい。
うねる坂道の中腹辺りのバス停で慌てて降りる。眼下に広がる葡萄畑を横目にしながら辿り着いたトラットリアは、
なんとびっくり、臨時休業なのでありました!
呆然としながら当て所なく坂道を下る。
坂の突き当たる正面にレストランを見つけるも、
そちらも営業していないご様子。
おひる抜き!な現実がいよいよ深まったそんな頃、
その並びにAgriturismoと謳う看板が目に留まる。木板には「Aperto」の文字。
お、営ってるみたいだと庭先に立ち入ると、
テラスで朗らかな笑顔のおばあさまが、
野菜の仕分け作業のようなことをされている。
食事ができないかと訊ねると、
おーおーよく来たねどうにかできると思うよと、
招き入れてくれました。
ああ、良かった。
なんとかお昼ご飯にありつくことができそうだ(笑)。
良かったねと言い合いつつ、
案内されたテラスに立ってまたびっくり。
そこから見晴らす景色の素晴らしいことったらない!葡萄畑が幾重にも重なり、
その向こうになだらかな尾根が連なっていて、
澄んだ空気が実に清々しい。
オススメのハウスワインをいただいて、
素晴らしい景色にも乾杯とグラスを合わせる。ひと口、口に含んでは視線を景色に置いて、
両方を併せて同時に愉しむと、
それぞれが倍加して美味しくなる、
そんな感じがするから不思議です。
2種類のプロシュート・クルードと自家製サラミ、
そこにオリーブを添えたお皿がまず登場。訊けば、見渡している景色のほとんどがもう、
スロベニアなのだという。
因みに屋内のダイニングは、
チェック柄のクロスが可愛らしいテーブルが並ぶ、
朗らかな雰囲気。アグリツーリズモAgriturismo というのは、
agricultureとturizumoを組み合わせた造語で、
都市生活者が農場や農村で休暇や余暇を過ごすことを指すらしい。
宿泊施設を提供する代わりに農作業を手伝う、
という本来のスタイルから、
自分の土地で採れた農作物を使用した食事を供する、
ツーリスト用の宿泊施設をもったペンションのような処が、
増えてきているらしい。
露地物アスパラのリゾット「PASTICCIO CON ASPARAGI SELVATICI」。。
多めに振り掛けたパルミジャーノがよく似合います。
「GNOCCHI CON GOULASH」のパスタは、
延ばした生地を型抜きして湯掻いたもののよう。これもニョッキの範疇のものなんだねと思いつつ口に含めば、
にゅるんとして粉の風味がたっぷりとして。
グーラッシュのソースのコクが良く似合います。
スロベニアのアルファベットであるらしい、
”Č”を三つも使って表したメニューが「ČEVAPČIČI」。チェヴァプチチと読めばいいのでしょうか。
仔牛肉、豚肉、羊肉の挽肉なぞに、
大蒜やパプリカなどを混ぜ合わせて、
小さいロールに成形したような、
つまりは、ケバブをポークビッツ状にしちゃったような、
そんなヤツ。酸味と辛味の青みの利いたパプリカのソースが良く似合います。
目の前に葡萄畑が広がっているのだもの、
地物のワインのあれこれもきっとイケるねと、
そんな話をしているところへ、
お店のお姐さんが透明のボトルを手にやってきた。
ドルチェじゃなかったら仕上げに強いのヤッツケる?と。Agriturismo FATTOREと紅いマジックで書き込んだボトルがまず、いい。
グラッパかと思いきや、お姐さんが指差したのは、
目の前の葡萄たちではなくて横手の畑に立つ4本の木。
庭のアプリコットで作ったシュナップスなのだ。
澄んだ景色を眺めながら、
鼻腔を抜けるの刺激と香りを愉しむ。
至福の瞬間ではありませか(笑)。
スロベニアに向けて開かれたテラスが印象的な、
Agriturismo「FATTORE」。KMEČKI TURIZEMもおそらくAgriturismo的意味なのでしょう。
Agriturismoのスタイルに則って、
長くゆっくりとここで過ごせる機会があったなら、
それはどんなに素敵なことでしょう。
「FATTORE」