駅舎からすぐの大東京信用組合の建物の左脇。 そのロータリーを起点にして、「プチロード」という横丁がある。十条銀座とも小さく謳う、横丁の左手すぐにあるのが、 有名居酒屋「斎藤酒場」であります。
「大衆酒場」と大きく揮った濃藍の暖簾。 その脇には、創業昭和三年とある。半分開け放ったままの戸口。 暖簾をちょっと払って覗き込むと、ほぼ満席ながら、 ぽつぽつと空いた席がありそうな様子。 待ち合わせの旨を伝えて、席を確保する。 大木の根の辺りを真横に刻んだ一枚板がそのままテーブルになっています。
腰を下ろしたのは、畳を敷いた、謂わばベンチシート。きっと人数増えても座れちゃう、柔軟にして味な設えでご座います。
おはこびのお姐さん達が巡回してくれているので、 間をみて、ちょっと手を挙げれば、テンポよく注文できる。 まずは瓶の麦酒、所謂赤星をいただいて、 向かい側の壁の天井近くにずらっと並べて掛け下げられている黒い品札を眺めます。 色々あって、悩ませる悩ませる。
「ポテトサラダ」は、しっとり仕立ての柳腰。 中学小僧の頃は、含んだ玉葱の苦味が苦手でした。
夏の名残りの「みょうが甘酢」は、オツな小鉢。 茗荷が大好物な子供っているんだろかと腕を組む。
「もつにこみ」は、すっきり味噌仕立て。 “モツ”を初めて口にしたのって何時何処でだろう、憶えてないや。
賽の目の「マグロ煮」は、じっくり味滲みてほろっとしたヤツ。 新幹線の社内販売でこんなの買えたら嬉しいだろな。
もっとヘルシーにと、「セロリ マヨネーズ」。 中学生までは嫌いだったけど、今はもう美味しくいただける。
「しめさば」は、ギュっとシマった男伊達。 大塚「江戸一」の美しき「〆鯖」と妙に比べてはいけません。
「カレーコロッケ」は、二個並びが標準形。 コロッケをカレー味にしちゃうなんて、売り出し当初はハイカラだったに違いない。
赤星の瓶が空いたら、シンプルに「酎ハイ」なんてのもいいでしょう。 品書きに読む「生葡萄酒」に何故か、「ささもと」の「葡萄割り」を思い出したりして。
男性客九割五分の高打率。 ザワザワガヤガヤとした穏やかな喧騒に包まれる心地よさ。 紫煙漂うのは此処では已むなし。 おはこびのお姐さん方の気遣いと間合いも悪くない。
創業昭和三年、銘酒場として知られる十条「斎藤酒場」。戦前戦後の町の変遷、通い来る幾多の酔客たちの表情を見てきた暖簾は、 今日も横丁を抜けて吹く風に揺れています。
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「斎藤酒場」 北区上十条2-30-13 [Map] 03-3906-6424
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