中国料理「三本足」で円やか辛み麻婆豆腐麻婆ナス四川タンタン

sanbonashi.jpg仕事を済ませて急ぎ新幹線に乗り込んだ。 名古屋で乗り換えて長駆訪れたのは、 一年ちょっと振りの岐阜の街。 北口に出てタクシーを待ちながらその表情を窺うは、 黄金の信長像。 信長が駅前を堂々と飾るほど岐阜の地と深い縁があったのかなぁと訝るようにすると、やや暗がりに何かの灯りを照らして鈍く光る。 そして何ゆえ金ピカなのでしょう(笑)。

タクシーで向かったのは、長良橋通りを金華山方向に走って若宮通りを左に折れた辺り。 柳ヶ瀬の一角ということになるのでしょうか。 不思議な名前のお店だよなぁと思いながら通り沿いの店々を眺めていたら、 脳裏で探していたその店の在り処を示す黄色い看板が目に飛び込んできました。

目的地の中華料理店は、その名を「三本足」。 遅くなりましたと奥の座敷の円卓へとずずずいっと侵攻します。

訊けば、こちらのご主人は、 日本における四川料理の祖とも父とも謳われる、かの陳健民の直弟子だそう。 つまりは、陳健一の兄弟子ということになるね。

そうとなればまずはやっぱり、 「麻婆豆腐」からいただかねばなりませんと満場一致(笑)のオーダーが通ります。sanbonashi01.jpgもしかして、ひ~!となるよな攻撃的な「麻婆豆腐」であったらどうしようと、 秘かに危惧していたのだれど、それはまったくの杞憂でありました。 円やかな辛みと旨み。 芳しい山椒の風味と仄かなヒリつき。 なんだか頑固爺も年嵩を経て穏やかな味わいに落ち着いたような、 そんな風情の麻婆豆腐だ。

「焼きぎょうざ」に添えられたのは、 南京町を思い出すよなちょっと辛味を含んだ味噌ダレ。sanbonashi02.jpgsanbonashi03.jpg「から揚げ」に軽く塗したタレの辛味も、 齧って弾ける鶏の旨みにすっと輪郭を与えてくれる加減のもの。 どうやら全体的に戦闘的な四川とはベクトルの違う仕立てのようだ。

お品書きの隅っこに見つけた「特別料理」枠で見つけたのが「カキぽん」。sanbonashi04.jpg揚げた衣に包まれて凝集した牡蠣の旨みと豆豉の発酵風味が好相性。 優しい酸味のタレの按配も悪くない。

紹興酒の勢いもついてきて(笑)、「麻婆ナス」もいただきたいと所望する。sanbonashi05.jpg浅目に素揚げして茄子をシャクッとさせた麻婆茄子をイメージしていたら、 それに反して、蕩けるようにクタっとした茄子が麻婆ソースに浸ってる。 はふはふほふふ。 なはは、美味しさがじわっとくる感じがいいぞ(笑)。

意表を突いて何気に劇辛だったりして、と秘かに期待してみたりもした「水ぎょうざ」。sanbonashi10.jpg受け取った器は至極真っ当な。 たっぷりのスープに浮かぶは、 ぶりっとした皮にぎっしりとあんの詰まった餃子であります。

そしてやっぱり最後はこれで〆ようと満場一致(?)したのが「四川タンタンめん(漢方)」。sanbonashi11.jpgとうとう赤いヤツが登場したかと思いつつ、小皿にとったスープを啜る。 芝麻醤でぐいぐいっとくるタイプでなく、なるほど”漢方”と括弧書きしてある通り、 薬膳チックな風味が利いている。 そして意外なくらいに角の立った辛さがないのが印象的なのです。

陳健民直弟子のご主人が迎える岐阜・若宮町の中国料理「三本足」。sanbonashi12.jpgsanbonashi13.jpgカウンターの真ん中辺りで長く白い顎鬚を摩りながらニコニコされているのが、 当のご主人。 訊かずはおれない、店名「三本足」の由来を訊ねると、 ほれそこに、とばかりに壁に留めた額装を指し示す。 そこには、相田みつをばりのタッチで「三本足とは」で始まる書が認められていました。

「論語」の述而篇からの出典で、「三人行有我師正焉(三人行えば必ず我が師あり)」。 三人で事を行えば、他の二人のする事の中に見習うべき手本、真似てはならない悪い見本と自分の先生となるものが必ずあるものである、という意が添えられている。 直接の出来事は分からないけれど、自らのお店を構えるまでの経歴のどこかで、 この論語の一節に感じ入ったのでありましょう。 どうやら規模のあるホテルの料理長であったらしいと聞けば、尖り過ぎず万人に優しい仕立てにもなるほど合点がいく気がいたします。


「三本足」 岐阜市若宮町4-22 [Map] 058-263-1446
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