「八丁堀界隈の日常」カテゴリーアーカイブ

和食「松うら」で一品勝負の天丼の湯気と六月の晦日の夏越ごはん

市場通りと鍛冶橋通りが交叉する八丁堀駅前交差点。
交差点の北東側の角に建つ「WISE OWL HOSTEL」の一角には、昼に夜にお世話になっている「フクロウ」がある。
同じ区画には夙に知られたスタンドバー「maru」や大食漢たちのオアシス「八丁堀食堂」がある。
町の中華「十八番」の方へと折れ入った処には、イタリアワイン呑まぬひとお断りのワインバー「metameta」がひっそりとある。

その先の「串八珍」の脇から、
「フクロウ」の横手へと抜けて行く裏道がある。
春先のある日。
移転した居酒屋「海」の前を通り過ぎた処で、
散り掛けの花を咲かせた梅の枝振りに目を留めました。当の梅の木の前に立つとその奥の行燈に灯りが点ってる。
此処は確か、以前「日比」という居酒屋ではなかったでしょか。

店先のA看板にあったように、
此方のランチは基本的に一品勝負。
カウンターから厨房の様子をぼんやりと眺めて暫し。
「天丼」が湯気を上げてやってきました。単純に海老の二尾いる光景が嬉しい(笑)。
それに茗荷の天ぷらもまた想定外の嬉しさ。
濃くて黒いヤツなんかでない、
ほんのり甘めのツユにさっと潜らせた塩梅も悪くない。

季節は移ろって空梅雨の頃。
稲庭うどんのお誘いに乗ってカウンターに就く。
するとたった3食限定にて「夏越ごはん」もあると云う。夏越と書いて、なごしと読む。
卓上に小さな冊子があってそれによると、
「夏越の祓い」とは、
一年の前半の最終日にあたる六月の晦日に行われるお祓いの神事。
神社で「茅の輪くぐり」を行うのは、
一年の前半の罪や穢れを払い、
残りの半年間の無病息災を祈るもの。
半年の区切りに行うものだとは、
恥ずかしながら知らんかったであります(汗)。

然らばということでお願いした「夏越ごはん」。
茅の輪の由来からくる粟や豆を用いるのが基本線のようですが、
ざっくり云えば夏野菜の掻き揚げ丼。夏野菜をたっぷり摂って、
夏を乗り切る準備をしようねと囁いてくれていると思えば、
それもまた有難いことではありませんか。

八丁堀駅前交差点近くの裏道に和食「松うら」はある。旬のお造りの盛り合わせから尼鯛一潮焼き、帆立香り揚げ、
蓮根餅揚げ出しに自家しゅうまい煮、ばち子等々。
或る日の夜の品書きにはそんな気取りのない酒肴の件が並ぶ。
気の置けない気分でふらっと、
宵の口にも寄ってみたいなと思います。

「松うら」
中央区八丁堀3-23-9 カネコビル1F [Map] 03-5543-6268

column/03728

酒場「酒じゃらしの唄」で古民家の風情に気の利いた酒肴と酒がよく馴染む

茅場町を抜け往くすずらん通りと平成通りの間には、幾筋もの横丁がある。
著名なご主人は疾うに門前仲町へ引っ込んでしまっているてんぷら「みかわ」も手作りのお惣菜ランチが嬉しいat home Dining「スイッチ」もワシワシ喰らう豚そばの量感で誘う大衆酒場「JUJU分家」もそんな横丁の一角にある。

すずらん通り沿いに建つホテル、
Villa Fontaine東京八丁堀の裏手路地には、
芸者さんが暮らした古民家に手を入れた落ち着いた雰囲気の中で、
気の利いたランチもいただけるお肉割烹「三つ味」。
でもその暖簾も過日降ろしてしまったことを知りました。

ある日、足を向けた件の路地。
暫くそのままだった「三つ味」の跡を覗くと、
ジビエフレンチ「NicoChelsea」なる紅い突出看板が掲げてある。
そしてその並びの壁に見付けた小さな黒板には、
「酒じゃらしの唄」という店名とも判別のつかない件が、
書き込まれていたのです。

八丁堀のカメラマン氏と待ち合わせた縄暖簾。嘗ての「三つ味」の建物と棟続き故、
迎い入れられたL字のカウンターもいい風情。
硝子越しに覗けるお向かいさんには、先輩諸氏のお姿が。
近頃のオヤジたちは、
野郎ばかりでジビエフレンチに繰り出すのだと、
心強くも感心したりなんかして(笑)。

雲丹豆腐の突き出しに始まった、
日本酒の盃愉しむひと時。時季の酒肴を黒板や壁の貼紙から探し、
店のオニイサンの話も訊きつつ、
それに合いそうなお酒を選ぶ。
それが似合って愉しい酒場であります。

また後日、同じカメラマン氏とふたたび。
今度は狭くて急な階段を上がっての畳の間。
座卓に向き合い、胡坐を掻いての小宴と相成ります。古民家の風情を満喫できる二階でのひと時もまた佳し。

茅場町の路地にある古民家酒場「酒じゃらしの唄」。雰囲気ばかりの酒場ではない処が嬉しい誤算。
Webページに「居酒屋以上、割烹未満」とあるのも頷ける。
永く永く続いてくれることを願います。

そうそう、二階にある厠は、
お隣の「NicoChelsea」と繋がっていて、
そのため両側の扉の鍵を閉めてから用を足さないと、
妙なことになりますのでご注意の程を(笑)。

「酒じゃらしの唄」
中央区茅場町3-3-3 [Map] 03-3808-5566
http://yumemania.jp/

column/03721

地酒おでん肴「フクロウ」でご存知肉吸い上品版に生姜の利いた豚汁に温まる

市場通りと鍜治橋通りが交わる八丁堀駅前交叉点。
いつの間にか、信号機にそんな名前が掲げられるようになりました。
その交叉点の角のひとつに古びた雑居ビルがある。
銀行のATMコーナーが廃止されたかと思っていたら、いつしか改修工事が始まっていました。

工事の養生が取り払われた後に姿を現したのは、
雑居ビルとしてはちょっと不思議な表示物。どなたかのサインがあるのをみると何処かのイラストレーターか、
デザイナーの手による描画なのでしょう。
そして壁面には、WISE OWL HOSTELS TOKYOとの文字。
ビルの隅切り部分に開口があって、
そこがカフェにしてホステルのロビーとなっているらしい。
コンセプチュアルなお宿が出現していました。

カフェの入口に向かって右手に回り込むようにすると今度は、
壁にモスグリーンで描いた梟の図柄が現れる。楽しいお酒で酔いませんか?と、
真っ昼間っから呑兵衛呼ばわりしてくれる(笑)。
横丁側には群青色の暖簾が風に揺れていました。

「フクロウ」の店内は、
入って右手に厨房を両側から囲むカウンターがあり、
中央にテーブル席、酒棚に向かって左手にも、
カウンターの連なりが配置されています。店内の場所場所でちょっとずつ趣の異なるレイアウト。
その随所に大振りな真鍮の薬缶が置かれています。

そんな「フクロウ」のおひるのお品書きは、
三品の定番が季節に応じてアレンジされている模様。

その品書きの筆頭にいつも掲げられているのが、
知ってるひとはよく知っている「肉吸い」であります。「肉吸い」と云えば、吉本新喜劇の舞台でもある、
「なんばグランド花月」の近くにある「千とせ」を思い出す。

澄んだ旨味をしっかり煮出した出汁が、
薄口の醤油に色づけ風味づけされたツユ。
そこへ大きめ角切りの豆腐に豚バラ肉、
おとし玉子を浮かべた器。
「千とせ」の「肉吸い」の思い出よりも断然品の良い(笑)。
気忙しい仕事の間をほっこりさせてくれるような、
そんな優しい味わいに癒されます。

決して珍しいことではありませんが、
「フクロウ」のおひるのゴハンは、
「白米」か「玄米」かを選べる。炊き加減よろしき玄米ゴハンを、
たっぷりトッピングしてくれた削り節と一緒に掻き込むのもまた、
オツなものでありますね。

時には路地側に眺めた群青の暖簾のところにも潜んでみる。「肉吸い」用にたっぷりと出汁を湛えた真鍮の鍋とか、
もうふた品ほどの大鍋が眼前に据えられています。

そんなカウンターでいただいたのが、
「生姜たっぷりの豚汁」。豚汁定番の具材に加えて、
小松菜にブロッコリーとか丸十(薩摩芋)とか長芋が参戦してくれる。
その名の通り、たっぷりのおろし生姜を頂いて、
それを様子をみながら解しつついただきます。
いやはや、温まる温まる。
ひきかけの風邪なんて忽ち治ってしまいそう(笑)。
そして、「フクロウ」の椀は、見掛け以上の大容量。
満腹満足で温まってしまうランチとなるのです。

更にもうひと品欲しいという紳士淑女におかれましては、
追加小鉢のご註文も宜しいかと存じます。揚げ立ての鶏唐揚げ二個とか、
奥久慈玉子とかね。
唐揚げは、慌てて食べると勿論火傷します(笑)。

八丁堀駅前交叉点に出現したWISE OWL HOSTELS TOKYOの一角に、
地酒おでん肴と謳う「フクロウ」がある。スタッフの応対も温かで柔らかで、なかなかどうして悪くない。
夜の止まり木としてもきっと、
その魅力を発揮してくれるものと期待しています。

「フクロウ」
中央区八丁堀3-22-9 WISE OWL HOSTELS TOKYO 1F [Map]
03-6222-8453
http://izakayafukuro.com/
https://www.wiseowlhostels.com/

column/03716

味噌らーめんの店「しなり丸」で甘め濃厚白味噌スープ赤味噌くっきり鶏がらスープ

八丁堀で市場通りを横切って亀島橋を渡った八重洲通りが、鍜治橋通りと斜めに交わる交叉点。
新川二丁目信号の角地近くには、「三好 新川本店」というラーメン店がありました。
味よし!値よし!愛想よし!と謳うオレンジ色のターポリン幕を回した外観が印象的でしたが、いつの間にか閉店してしまいました。

そんな新川二丁目信号のところに最近、
行列を作っているラーメン店があると、
会社の同僚から伝え聞く。成る程、「三好」があった建物の並び、
正に交叉点に面して面取りしたような建物に、
「味噌らーめんの店」と題した看板が掲げられていました。

券売機のボタンを覗けば勿論、
並んでいるのは味噌らーめんのあれこれ。
白味噌か赤味噌かを選べるとホールのお姐さんが知らせてくれます。

まずは「ネギチャーシューメン」を白でいただきます。二郎張り、とは云わないものの、
なかなかのこんもり盛りが目を瞠るどんぶり姿。
でも、どうだと言わんばかりの盛り付けではありません。

下地のスープが素直に旨い。
豚に牛に鶏と動物系主体の濃厚スープだというが、
札幌系を十分に髣髴とさせつつも、
しつこくないバランスに仕立てている感じ。信州味噌だという白味噌のコクと甘さが心地いい。
そんなスープにかん水が適度に利いたわしわし麺が似合います。

裏を返すようにして今度は、
「野菜盛りラーメン」を赤で所望する。その名の通り野菜たっぷし。
成る程、赤味噌仕立てのスープは白に比べて、
きりっとすっきりと輪郭のある味わいだ。

こふいふ時はと、
久方ぶりに”天地変返し”を繰り出してみたりする(笑)。こうすると、最初は野菜ばっかりにならず、
バランスよくより美味しくいただくことが叶います。

行列を避けるようにややフライング気味に、
新川にやってきて「豚唐揚げ盛りラーメン」なんて日もあって。パーコーちっくな唐揚げにガッツリ満足の後には、
眠気来襲必至の一杯とも申せましょう(笑)。

厨房には2台の圧力釜が活躍中。
麺箱には「麺の麻生」の刻印がある。
白味噌にはワシワシ太麺、
赤味噌にはシコシコ細麺、
スープに合わせた2種類の麺は、
麻生の麺であるようです。

「しなり丸」では定番のあれこれに加えて、
週替わりと思しき限定ラーメンもスタンバイ。例えば「あんかけ味噌ラーメン」なんて日もあれば、
白味噌で「担々麺」なんて日もある。
でもまぁ、結局ベーシックな「らーめん」か、
野菜たっぷしな「野菜盛りらーめん」あたりに、
戻っていくのですけれどね。

新川二丁目交叉点に行列のある光景を生んだ、
味噌らーめんの店「しなり丸」。メニューの隅には、”成”の文字を丸で囲んだアイコンがある。
カウンター越しに店の名の由来を訊ねたら、
“しなり”は、有志竟成(志ある者は事竟に成る)の”志成”から、
当てたものだそう。
柔らかそうな響きの店名は、
何気に想いと意気込みの滲んだものだったのですね。

「しなり丸」
中央区新川2-12-12 [Map] 03-6222-1175
http://www.grast2009.co.jp/

column/03715

蕎麦「茅場町 長寿庵」で牡蠣南蛮牡蠣フライに柚子切蒸篭茅場町の街角で百余年

市場通りと永代通りが交叉するのが、茅場町交差点だと思い込んでいたことがある。
茅場町交差点は、東京証券取引所前に至る平成通りと永代通りとが交わる処で、そこからひとつ永代橋寄りにある信号機は、そこが茅場町一丁目交差点であることを示している。
そんなことどうでもいいことのようにも思うけど、永いことこの辺りを彷徨っているのに、兎に角ずっとそこが茅場町交差点だと思い込んでいたのだ(笑)。

そんな茅場町一丁目交差点の角。
ビルの地階を覗き込めばそこに見つかる暖簾が、
「茅場町 長寿庵」の暖簾なのであります。

秋も深まった頃に足を運べばテーブルの上に、
こんな二行の短冊がある。毎年のこと乍らこうして今年も、
「長寿庵」にも牡蠣の季節がやってくるのです。

真ん中に酢橘の輪切りと紅葉を象った麩を浮かべた「カキ南ばん」。用いている牡蠣は広島産。
やや醤油強めの甘汁にひたっとした牡蠣を口に含めば、
昼からのお酒が欲しくなります(笑)。

蕎麦そのものはやっぱり蒸籠の方が似合う仕立て。でもそこに、伊達に歴史を刻んでいないなと思わせる品格が、
どうしても滲んでしまうようです。

ランチ限定の牡蠣メニューがご存じ「カキフライ定食」。細やかなパン粉を丁寧に纏わせた牡蠣フライに、
偶にはとうどんを合わせてみる。
そば屋のうどん、という例え話がどこかになかったっけ?
なんてことをふと思ったりなんかいたします(笑)。

そしてまた、冬場の興のひとつとして、
「ゆず切りせいろ」なんて一行が品書きに顔を出す。例えば、同じ木鉢会に名を連ねる神田のそれも印象的だけれど、
茅場町のこれのそこはかとない風味も悪くない。
いずれにしても、就業中にはなかなかお銚子を傾けられないのが、
なんとも無粋でありますね(笑)。

茅場町の蕎麦屋と云えばまず「茅場町 長寿庵」の名が挙がる。その創業は、1907年(明治40年)のことだという。
戦前に銀座7丁目辺りにあった長寿庵の暖簾分けであるらしい。
100年前の往時をいま直接偲ぶことはできないけれど、
もしも次にビルを建て替えることがあったなら是非、
創業時の姿を模した路面店にして欲しいなぁなんてことを、
ひとり勝手に思っています。

「茅場町 長寿庵」
中央区日本橋茅場町1-9-4 [Map] 03-3666-1971

column/03708