「大空と大地の北海道」カテゴリーアーカイブ

カレーショップ「インデアン」なかまち店でインデアンカレーと似て非なるもの

或る夏の思ひ出。
元祖豚丼「ぱんちょう」のどんぶりの表情と外連味のない旨さが印象に残る帯広駅前にふたたび立っていました。
北の大地といえども強い陽差しがジリジリと照りつけ、内地よりも気温が高くって、カラッと過ごし易いことを期待していた身に堪えたことを思い出します。

そんな陽差しを最も浴びそうな場所から眼下を見下ろすと、
なにやらどこかエキゾチックなサイコロ状の建物が目に留まる。どの造形が宮殿チックを醸すのかと思いつつ近づくと、
壁に紅い文字で「インデアン」「Indian」とある。
え!インデアンって!まさか、あの??
実は相当びっくりしたのです(笑)。

まさか丸パクリだったりしねーよなーなんて、
多少訝りながらさらに近づく。パクッたにしては威風堂々。
この横顔は、”あの”「インデアンカレー」の意匠によく似て見える。
これはどうしたことかとぶつぶつ呟きつつ(笑)、
おずおずとドアの前に立ちました。

馬蹄型のカウンターに席を得て、
覗き込むように見定めるメニュー。
「インデアン」にはじまるラインナップは、
「野菜」「ハンバーグ」「エビ」、
「チキン」「カツ」「シーフード」と続く。
「ベーシックルー」「インデアンルー」「野菜ルー」と、
三つのルーの名が補記されています。

腹ペコ君が選んだのは、ベーシックルーの「カツ」。とろみ強めの見栄えを確かめつつ、
隅っこから匙を動かしてルーを拾う。
“あの”「インデアン」のカレーと云えばなにより、
フルーティな甘さの後にエッジの利いた辛味風味が湧き上がる、
その二段階攻撃が特徴なのだけれど、
こちらの「インデアン」のカレーは、
そのメリハリの気配はほぼなし。
ちょっと拍子抜けしつつも、
これはこれでよいと素朴に思う。
ただ、”あの”「インデアン」との関わり様が、
十勝の霧に霞んだことも確かでありました。

ちょうど帯広駅周辺を離れるバスまで時間があったので、
裏を返すようにふたたび寄ってみる。
今度はインデアンルーの「ハンバーグ」をいただきます。卓上の「ホットオイル」案内を眺めつつ待つこと暫し。
ベーシックルーに比べ多少スパイシーな感じは伝わるも、
およそ同じベクトルのインデアンルー。
やはり”あの”「インデアンカレー」の印象が強過ぎるのかもと、
そんな風に独り言ちる。
似て非なるも「インデアン」のカレー。
でもやっぱり、これはこれで悪くない(笑)。

帯広駅最寄りの市街地に、
カレーショップ「インデアン」なかまち店がある。ショップカードを眺めるとなんと、
帯広近郊に10店舗、釧路に2店舗もある!
本家と思しき“あの”「インデアンカレー」のwebサイトには、
帯広店の記載は勿論ないし、
こちら「インデアン」のWebサイトには勿論、
大阪や東京の店舗の記載はない。

ここでやっと、このあたりのことについて以前、
やまけんさんが記述していたことを思い出す。
帯広「インデアン」を営むフジモリ食堂の社長が、
大阪で「インデアンカレー」を食べて感動し、
自分なりに作ったのがこの店らしい、とある。
太っ腹による暗黙の了解なのか、
実はそこそこ懇意にしているのか、
そのあたりは不明ながら商標争い騒ぎになっている様子はない。
もっとも「インデアン」での商標登録はし難いかもしれません。
特段の競合もなさそうだし、
帯広のソウルフードとまで云われる今となっては、
争う必要もないのかもしれませんね。

「インデアンカレー」なかまち店
帯広市西2条南10-1-1 [Map] 0155-20-1818
http://www.fujimori-kk.co.jp/indian/

column/03747

元祖豚丼「ぱんちょう」でこれぞ当地にして元祖の味と気風十勝平野の真ん中で

高知竜馬空港に徳島阿波おどり空港。
出雲縁結び空港に米子鬼太郎空港。
たんちょう釧路空港に、とかち帯広空港などなど。
空港の呼称がいつの間にか、ニックネームを前面に出した運用になっています。
なんだか擽ったい気もしますが、
多少なりとも知名度向上や利用促進に役立っているのかもしれません。

その中ひとつ、
十勝国のターミナルとして”とかち”を冠した帯広空港へ、
齢ウン歳にして初めて降り立ちました。
Wikiによると”十勝”というのは、
アイヌ語で乳を意味する「トカプチ」が語源と言われ、
十勝川の河口が乳房のように二つに分かれていたのが、
その由来とされているようです。

所用を済ませた夕暮れ前の雨上がり。
JR根室本線の帯広駅の北口ロータリー近くで、
目指す目的地の看板を見付ける。さりげなくもはっきりと「元祖」と示す、
豚丼のお店へとやってきました。

入れ込みのテーブルの一席に収まって、
赤星の瓶と一緒に「豚丼」をご註文。
箸袋を眺めつつ、麦酒のグラスを傾けます。元祖「豚丼」の「ぱんちょう」の創業は、昭和8年。
まだまだ開拓が盛んで、農耕が活発であった昭和初期の頃に、
当地で育った豚をより美味しく食べたいとの想いから、
先代が数十年という歳月と苦労を重ねて極めたのが、
「ぱんちょう」の「豚丼」であり、
「豚丼」発祥の店として当時の味を守り続けている、とある。

お願いしていたドンブリがやってきた!ドンブリの器と蓋の間からグルっと一周、
焼き炙った豚肉が食み出しています。
昨今の演出ありきの盛り付けなら鼻白むところですが、
きっと予てよりそうであったであろうことを想いつつ、
素直に、おおっ!と呟いて、
感慨深く眺めてしまいます。

そして、恭しく蓋を返してまた、
おおー!と小さく呟くのがお約束(笑)。鼻先を擽るのは、仄甘くかつ芳ばしい匂い。
タレとともに豚の脂も炭火で炙られて、
魅惑のテリとそそる匂いを発しています。

どれどれとその一片に齧り付く。
すっと歯の先を受け入れつつ、
だらしなくない柔らかな食感。
そこへ、加減のいい芳ばしさと豚肉の甘さが華開く。
ありゃー、めちゃ美味しいじゃないですか!
こう云っちゃなんですが、
戸越銀座の某店はじめ、
都内の豚丼の店の幾つかでいただいた豚丼とは、
一線を画す感が鮮明であります。
豚肉そのものがパサつかず、かといってギトつかず、
しっとりと甘いのが堪らんのです。

裏を返すように(といってもひと月後)、
ふたたび帯広駅前にいました。今度は少しは勝手知ったる風情でドンブリに正対し、
これまた恭しく蓋をひっくり返す。
グリーンピースの彩のなんと効果的なことでありましょう。
一番肉の量の多い「華」よりも、その下の「梅」が、
「ぱんちょう」の「豚丼」を堪能するに適量に思う。
世の一般では、上等な(量の多い)方から松竹梅であるところ、
なんでも、先代の奥様のお名前が「うめ」だったから、
順番をひっくり返して、(当時)一番上等なのを「梅」としたようです。

十勝平野の真ん中、帯広駅の駅前に、
豚丼の元祖「ぱんちょう」がある。店名「ぱんちょう」は、中国語で「飯や」を意味するらしい。
肩肘張らない老舗元祖の気風と風格に、
支店を出さずに営み続ける気概が滲みます。

「ぱんちょう」
帯広市西一条南11-19 [Map] 0155-22-1974

column/03740

独酌「三四郎」で名物新子焼き牡丹海老〆秋刀魚に生鯨落葉おろしで独酌す

札幌、小樽にニセコのゲレンデ。
五稜郭のタワーに登った記憶があるので函館にも行っている。
道東方面のパックツアーかなにかで女満別空港へ飛んだことは憶えているものの、その後何処へ行ったか憶えていない。
生まれて此の方ウン十年経つものの(笑)、道内で訪れたことのある街は今のところそんなもの。
そんな中、旭川へ初めて訪れる機会がありました。

真新しさと硝子張りの偉容を誇る旭川駅へと、
空港からの連絡バスを降りる。
ホテルに荷を降ろして、昭和通りを渡り向かったのは、
創業来70余年と聞く居酒屋の前であります。梔子色の壁に囲んだ二階建て。
縦格子に飾った窓には葦の外掛け簾。
炉燗酒洞、四季の肴と謳う独酌「三四郎」の戸口に、
白い暖簾が掛っていました。

修繕の手を入れてはいても、
積年の艶を思わす設えのカウンターにも、
同じく炉燗酒洞独酌三四郎と染め抜いた座布団が待つ。どっしりした座卓を配した、
背中越しにある小上がりもいい感じです。

この日のお通しは、女将さんが拵えた酢大豆。四角く切った経木をクリップで留めて、
そこにその日の酒肴が手書きされている。
定番メニューはそれとは別に用意されています。

お造りに天売産「ぼたんえび」と「〆さんま」。期待通り通りの官能的な甘さの牡丹海老。
天売島(てうりとう)というのは、
北海道西岸の羽幌町という港の沖合に浮かぶ島。
今季記録的な不漁と聞く秋刀魚はやはり、
脂のノリに物足りなさを否めないものの、
オツな食べ口に仕上がっています。

「落葉(らくよう)おろし」とは何ですかと女将さんに訊くと、
落葉松(からまつ)の下なぞに生えるキノコ、
落葉きのこのおろし和えとのこと。多少のぬめりとともにいただけば、
癖のないキノコの滋味がそっと伝わります。

カウンターから正面を見据えれば、
木札にお酒の銘柄が数の加減もよく並ぶ。やはりご当地のお酒をいただきたいと、
女将さんのお薦めを所望する。
髙砂酒造の「風のささやき」。
夢民村という農業者集団の産した酒造好適米を用いた純米酒。
淡麗にして旨口という印象がいたします。

大判の絵本のように製本された定番メニューを開くと、
その見開いた右下に「新子やき」。
若鶏の柔らかな肉を創業以来のタレで、とある。
お願いすると早速、
炭火の上の網へと漬け込んだであろう肉塊が載せられました。おひとりさまにはなかなかのボリューム。
たまり醬油を思わせる黒褐色のタレをたっぷり纏っている若鶏。
どれどれと口に含んで吃驚!
想定を大きく上回る身肉の柔らかさ。
決してレアなのではなく、火は程よく通っていて、
甘めのタレに引き出されるように若鶏の旨味が弾け出す。
こりゃ旨い。
成る程、「三四郎」に「新子やき」ありと謳われるはずだ。

〆にと経木メニューで気になっていた「きのこ汁」をいただく。愛別産とあるところの愛別町とは、
旭川の北西に位置し、周囲を山に囲まれ石狩川や愛別川が流れる、
そして、北海道一の「きのこの里」として知られるそう。
まさに滋味深い汁でゆるっと仕舞うのもオツなものです。

裏を返すように同じカウンターを訪ねると、
前日にはなかった「生くじら」がある。新鮮なミンククジラの身に、
おろし生姜をちょんと載せていただけば、
一点の濁りなき香りと旨味のする。

卓上には、女将手作りのお惣菜四品のご案内。そこから「魚貝酢味噌(ぬた)」をいただく。
色々入ってます!というぬたには、
貝のヒモやら海老の端っこやら魚の身の隅やらが、
酢味噌に導かれていい味出している。
調理から出る半端な部分も立派に働いてくれています。

「風のささやき」と同じ、
地元髙砂酒造の「国士無双 烈」をぬる燗にしてもらう。徳利を置いたコースターには独酌「三四郎」の刻みがある。
嗚呼まさに「三四郎」で独酌しております(笑)。

ありそでなさそな「干しさば焼き」は、
刷毛塗りしたであろう醤油タレも芳ばしくて美味。女将さんが漬けた「季節のおつけもの」で、
お猪口の最後をやっつけます。

旭川に老舗居酒屋、独酌「三四郎」あり。その創業は、1946(昭和21)年という「三四郎」の看板には、
“炉燗酒洞”の文字もある。
カウンター越しに眺める燗付け器にも年季を感じるところ。
雪の多いと聞く真冬にもきっと、
いい情緒を醸してくれるに違いありません。

「三四郎」
旭川市2条通5丁目左7号 [Map] 0166-22-6751

column/03734