酒肴「ひょうたん」別館で百味再開喜ぶも束の間竹林のアプローチと飴色の風格の行方

コロナ禍が世界で猛威を振るい、抑圧的な空気が日々の暮らしに暗澹たる気持ちにもさせる影を落としていた’20年05月。
所沢プロぺ通りの真ん中で、半世紀以上も憩いの場を提供してくれていた「百味」店頭に閉店の貼り紙が貼られました。
その衝撃は、みるみる巷間に広がり、多数の”百味ロス”な呑兵衛を生み、界隈の飲食店関係者の話題の筆頭にもなったに違いありません。

そんな「百味」の店先に再開を告げる貼り紙が貼られたのは、
それから半年ほどが過ぎた師走の月初め。
オーナーは代わったものの、
お店のスタッフには同じ顔が幾つもみられて、ひと安心。
喫煙ルームが増設されただけで、店内の造作も雰囲気もそのままだ。

「百味」の再開を素直にそう喜んだのも束の間、
所沢の老舗居酒屋のもう一方の雄、
「ひょうたん」別館に閉店を知らせる貼り紙が掲げられてしまいました。
休業のために灯りを消しているものとばかり思っていたのですが…。

「ひょうたん」別館は、
暖簾までのアプローチがまず、いい。 小さな竹林に囲まれた風情は、
なかなか真似出来るものではありません。

厨房をぐるっと囲むカウンター。 混み合う前のテーブル席にも、
飴色に落ち着いた風格が滲みます。

季節の酒肴が大振りな短冊にぎっしりと。 お造りならば例えば、ほっけの刺身やや蝶鮫の刺身。

茶処ゆえに「狭山茶割り」も選択肢のひとつ。 ご存じ「ばくだん」は海苔に巻きつつ、
「たこ吸ばんかき揚げ」は大口開けて、いただきます。

店内に入って右手が厨房とカウンター。
左手には、小上がりというよりは、
座敷と呼ぶのが相当の畳の間が用意されている。 実は上がったことはないのだけれど、
二階には宴会用の広間がある模様。
厠の前には壺に活けた生花とともに、
待機用の椅子がオブジェのように鎮座している。

定番の一品料理から例えば、
「手作りシューマイ」や「ポテトサラダチーズ焼き」を選んでもいい。 一転、少々創作チックでちょっと不思議な、
「鯖みそトマトふろふき大根」なんてもの面白い。

〆てしまいたい時には、
「ところざわ醤油焼きそば」も選択肢のひとつ。 所沢産の醤油、麺、野菜を使うことが、三ヶ条。
所沢で醤油と云えば、深井醤油でありますね。

最近になって”うらトコ通り””コーヒーストリート”とも呼ばれる、
丁度よい加減の裏通りに酒肴「ひょうたん」別館はある。 箸袋でも改めて確かめる酒肴「ひょうたん」”別館”。
別館があるなら本館もあるのかと云えば、
道を挟んだ向かい側にあった本来の店は、
疾うの昔に更地になっている。
嘗ての本丸の心意気はそのままに”別館”に場所を移して、
盛業を続けてきた。
もしも情緒と風格ある”別館”もこのまま更地になってしまうとしたら、
それはなんとも寂しく切ないことであります。

「ひょうたん」別館
所沢市東町13-1[Map]04-2922-7799

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大衆食堂「フクロウ」京橋で小皿小鉢にも腕組悩む八丁堀でもお馴染みの豚汁などなど

時折お邪魔しては、生姜の利いた豚汁メインのランチでお世話になっている、八丁堀駅前交叉点の「フクロウ」。
冬場には特に、嗚呼あの豚汁が食べたい!と思い至ることが増えてくる。
それは、そんな冬の気配が色濃くなってきた3年前の初冬のこと。
八丁堀から楓川久安橋公園の上で首都高環状線を渡り、高速道沿いの新しいビルの前を通り過ぎようとしたその時。
八丁堀「フクロウ」と同じ店名が目に飛び込んできました。

大衆食堂「フクロウ」と題した黒板には、
ひる時のメニューと夜の品書きとを左右に描き込んでいる。
“豚汁”のフレーズがあることで、
お、やっぱりあの「フクロウ」と同系統のお店なんだと、
ひと目も憚らず腕を組む(笑)。
どうやら豚汁以外の汁モノにバラエティがあって、
それも特徴のひとつなんだとお見受けします。

雨のそぼ降る肌寒い日には、
八丁堀でもお馴染みの「生姜豚汁」。 白飯か玄米を選べるのも、八丁堀と同じ。
おかかをちょいと載せるのも慣れた景色となりました。

一方、週替わりで「お味噌汁」が三種類用意されているのは、
「生姜豚汁」か「肉吸い」かの八丁堀と異なるところ。
長いカウンターの上にずらっと総菜の小鉢が並んでいて、
そこからあれこれ悩みつつ副菜なぞに加えることができるのも、
比較的小振りなお店の八丁堀と異なるところでしょう。

例えば、硝子の小鉢の「鴨ロースのマリネ」。 鰺フライや唐揚げなどの揚げ物は、
温かくしたものを用意してくれます。

年の瀬の或る晴れた日には、「塩麴入りけんちん汁」メインで。 塩麴由来と思しき香りと甘み、そして旨味。
根野菜をたっぷりといただけてしまいます。

京橋「フクロウ」には、テラスのテーブル席が一卓だけある。 春や秋のいい季節は勿論のこと、
少しひやっとする頃にも清々しく食事が摂れるのであります。

牡蠣フライの季節にはやっぱり、その小皿に手が伸びる(笑)。 そして、奥久慈卵のプリンがデザートの定番であります。

そんなテラスのテーブルでは、
「わかめ塩のけんちん汁」なる椀をいただいたこともある。 甘さほどよい玉子焼きも嬉しい小皿であります。

「コーンバター豚汁」に「韓国風豚汁」「ネバネバけんちん汁」。
店先の黒板を確認しては、腕組みして悩むのがルーティーン(笑)。 「酒粕鶏汁」に「胡麻味噌鶏汁」「日本海麹味噌鶏汁」などなど、
週変わり味噌汁への工夫が弛まず繰り返されて面白いンだ。

ただ、そうは云ってもグルッと回ってやっぱり、
「生姜豚汁」に戻ってくるというのもひとつの真実でありまして。 小皿で選ぶのは例えば、
長崎県産真鯖と九州醤油の「胡麻鯖」とか、
「うずらの煮玉子」とか「いんげん胡麻マヨ和え」とか、
「特製和風おろしポン酢ハンバーグ」などなど。
時に千円を超えてしまうのは、ご愛敬ということで(笑)。

ゆったりしたフロアの壁の中央にも大きな黒板が掛けられていて、
大衆食堂「フクロウ」の夜メニューの一端が紹介されている。皆さん既にお気づきのように、
豚汁の定食に添える小皿・小鉢だけでも、
二杯でも三杯でも十分に呑れる(笑)。
そして、”大衆食堂”というコンセプトに寄り添うような、
もつ煮・肉豆腐で始まる夜メニューもきっと、
それぞれにひと工夫があって、良いに違いない。

首都高を八重洲通りが跨ぐ楓川久安橋公園近くに、
大衆食堂「フクロウ」京橋は、ある。主菜・副菜にご飯・味噌汁なぞを棚や硝子ケースに並べて、
自らトレーの上に自由に定食を構成するスタイルは、
大阪市中で何度も見掛けた様式。
八丁堀「フクロウ」は、ランチメニューの双璧のひとつ「肉吸い」は、
難波千日前の「千とせ」本店が発祥とされているものだし、
「フクロウ」に注ぎ込んだプロデュースはどうやら、
関西人に手によるものなのではないかと秘かに思っているところ。
八丁堀と京橋の「フクロウ」は、どんな会社が仕掛けているのかなと、
ふと思って調べてみたらなんとそれは、
何度かお邪魔したことのある、
池袋は東通りのポークジンジャー専門店「Ginger」、
夜の部は「SOUR HOUSE」)を営む、
GRIPグループの1軒であるようです。

「フクロウ」京橋
中央区京橋1-19-8 京橋OMビル 1F[Map]050-5597-7705
https://www.facebook.com/fukurokyobashi/

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