地酒おでん肴「フクロウ」でご存知肉吸い上品版に生姜の利いた豚汁に温まる

市場通りと鍜治橋通りが交わる八丁堀駅前交叉点。
いつの間にか、信号機にそんな名前が掲げられるようになりました。
その交叉点の角のひとつに古びた雑居ビルがある。
銀行のATMコーナーが廃止されたかと思っていたら、いつしか改修工事が始まっていました。

工事の養生が取り払われた後に姿を現したのは、
雑居ビルとしてはちょっと不思議な表示物。どなたかのサインがあるのをみると何処かのイラストレーターか、
デザイナーの手による描画なのでしょう。
そして壁面には、WISE OWL HOSTELS TOKYOとの文字。
ビルの隅切り部分に開口があって、
そこがカフェにしてホステルのロビーとなっているらしい。
コンセプチュアルなお宿が出現していました。

カフェの入口に向かって右手に回り込むようにすると今度は、
壁にモスグリーンで描いた梟の図柄が現れる。楽しいお酒で酔いませんか?と、
真っ昼間っから呑兵衛呼ばわりしてくれる(笑)。
横丁側には群青色の暖簾が風に揺れていました。

「フクロウ」の店内は、
入って右手に厨房を両側から囲むカウンターがあり、
中央にテーブル席、酒棚に向かって左手にも、
カウンターの連なりが配置されています。店内の場所場所でちょっとずつ趣の異なるレイアウト。
その随所に大振りな真鍮の薬缶が置かれています。

そんな「フクロウ」のおひるのお品書きは、
三品の定番が季節に応じてアレンジされている模様。

その品書きの筆頭にいつも掲げられているのが、
知ってるひとはよく知っている「肉吸い」であります。「肉吸い」と云えば、吉本新喜劇の舞台でもある、
「なんばグランド花月」の近くにある「千とせ」を思い出す。

澄んだ旨味をしっかり煮出した出汁が、
薄口の醤油に色づけ風味づけされたツユ。
そこへ大きめ角切りの豆腐に豚バラ肉、
おとし玉子を浮かべた器。
「千とせ」の「肉吸い」の思い出よりも断然品の良い(笑)。
気忙しい仕事の間をほっこりさせてくれるような、
そんな優しい味わいに癒されます。

決して珍しいことではありませんが、
「フクロウ」のおひるのゴハンは、
「白米」か「玄米」かを選べる。炊き加減よろしき玄米ゴハンを、
たっぷりトッピングしてくれた削り節と一緒に掻き込むのもまた、
オツなものでありますね。

時には路地側に眺めた群青の暖簾のところにも潜んでみる。「肉吸い」用にたっぷりと出汁を湛えた真鍮の鍋とか、
もうふた品ほどの大鍋が眼前に据えられています。

そんなカウンターでいただいたのが、
「生姜たっぷりの豚汁」。豚汁定番の具材に加えて、
小松菜にブロッコリーとか丸十(薩摩芋)とか長芋が参戦してくれる。
その名の通り、たっぷりのおろし生姜を頂いて、
それを様子をみながら解しつついただきます。
いやはや、温まる温まる。
ひきかけの風邪なんて忽ち治ってしまいそう(笑)。
そして、「フクロウ」の椀は、見掛け以上の大容量。
満腹満足で温まってしまうランチとなるのです。

更にもうひと品欲しいという紳士淑女におかれましては、
追加小鉢のご註文も宜しいかと存じます。揚げ立ての鶏唐揚げ二個とか、
奥久慈玉子とかね。
唐揚げは、慌てて食べると勿論火傷します(笑)。

八丁堀駅前交叉点に出現したWISE OWL HOSTELS TOKYOの一角に、
地酒おでん肴と謳う「フクロウ」がある。スタッフの応対も温かで柔らかで、なかなかどうして悪くない。
夜の止まり木としてもきっと、
その魅力を発揮してくれるものと期待しています。

「フクロウ」
中央区八丁堀3-22-9 WISE OWL HOSTELS TOKYO 1F [Map]
03-6222-8453
http://izakayafukuro.com/
https://www.wiseowlhostels.com/

column/03716

浦村かき直売「中山養殖場」で水に濯ぐ採れ立て生牡蠣と手焼きの焼牡蠣に感服

ふわっとした量感のある麺とコックリとしたたまりの汁の「ちとせ」の伊勢うどんとか、居酒屋「一月家」の「鮫だれ」とか。
「美鈴」の絶品焼餃子とか、蔵に潜んだ居酒屋「虎丸」の佇まいと「かき土手ねぎ焼き」とか。
おかげ横丁の賑わいの先にある、神宮の宇治橋を超えたところで包まれたなんとも云えない神聖な空気もまた印象的な伊勢の街とその表情たち。

日本全国から、いや世界からも人々が足を運ぶ伊勢だもの、
三重県の県庁所在地でもあるのだよねなんて思いがちなのは、
ワタシだけでありましょか。

この日は、伊勢市でも四日市市でもない、
三重県の県庁所在地、津の駅を通り過ぎ、
更に近鉄伊勢市駅や宇治山田駅さえも通過して、
やって来ました鳥羽の町。

寄らせてもらった駅前の古びた旅館の窓からは、
伊勢湾の入口から遠州灘が見渡せる。駅前からの通りに面した男性用大浴場は、
思い切り素通しの硝子張りでありました(笑)。

その旅館から目と鼻の先にあるのが、
ご存知ミキモトの真珠島。
今もさぞかし、質のいい真珠を育んでいるのだろうと思っていたら、
予約しておいたタクシーの運転手のオヤジさん曰くは、
もう随分前から鳥羽では真珠をつくっていないそう。
こんなに綺麗に見える海でも、
真珠養殖に求められる海水の清澄さとか温度とかがきっと、
すっかり変わってしまっているのでしょう。
昨夏またまた大きな被害となった珊瑚の白化を思い出させます(泣)。

そんな現状に照らすと少々物悲しくも響く、
“パールロード”を辿って辿り着いたのは、
永らく気になっていた「中山かき養殖場」。小屋の裏手は生浦湾。
まだ午前9時だというのに人が集まり始めています。

まずは、引き戸の硝子に貼られている表に、
名前と個数を書き込むところから一日が始まる(笑)。これは焼き牡蠣の註文リストとなっていて、
中にはひとりで、20も30も喰らうひともいるようだけど、
控えめが美味しいと心得ているところ。
そんな個数を書き込みました。

焼き牡蠣の註文を済ませたら、小屋の中の列に並ぶ。
そのすぐ脇でお姐さんがせっせと殻を剥いてくれている。積み上げた駕籠の中は勿論、
採れたての牡蠣牡蠣牡蠣。
売るほどあるとはこのことだ(笑)。

お姐さんに剥いてもらった生牡蠣五つ。浜から揚がったばかりとも思う、
剥きたての牡蠣をいただくのは久し振り。

牡蠣剥いてくれたお姐さんの食べ方ご指南はなんと、
殻から外した牡蠣の身を一緒に添えてくれたお椀の水に泳がせて、
塩っ気を濯いでから召し上がれというもの。
海水が塩辛いのは至極当然のことなので、
こうすることでしょっぱさの呪縛から解き放たれて、
塩梅のいい具合で新鮮な牡蠣を堪能できるんであります。
いやぁ、いいね、旨いね。

卓上にはポッカレモンの用意もあるけれど、
ここはひとつ、前夜慌てて探して、
鳥羽のコンビニで見つけた檸檬をちょいと搾りたい。 そして、同じコンビニで仕込んでおいた、
カヴァの小瓶を周囲の目を盗む気分で傾ける。
いやはや、朝っぱらから御免なさい(笑)。

旨い旨い生牡蠣とカヴァをスルンといただいた後は、
註文していた焼き牡蠣の順番待ちの時間となる。
湾の水辺まで降りていってしばし佇んだりなんかしているうちに、
自分の順番が近づいてきてちょっとドキドキしたりいたします(笑)。

ドラム缶を半裁したコンロにふたりが付きっ切りで、
金網に牡蠣を並べ、牡蠣の様子を見えては殻を外す。手馴れた所作と焼き具合の見極めはきっと、
数をこなして自ずと体得したものなのでありましょう。

待ちに待った手焼きの焼き牡蠣が、
ひとつまたひとつと手許のお皿に届く。周囲の汁がまだ沸いていて、
その真ん中にふっくらとした牡蠣が湯気を上げる。
はふはふ、ほふほふ。
なはははははは(笑)。
生もいいけどやっぱり火を入れた牡蠣は最高、いやホント。
お願いしていた控えめの数も絶妙な設定だったと、
自画自賛するのでありました(笑)。

鳥羽駅から南下すること車で20分ほど。
かき直売「中山養殖場」は生浦湾見下ろす浦村町にある。きっと今日も駐車場を埋める車と牡蠣の焼き上がりを待つひと達で、
大いに賑わっていることと思います。

「中山養殖場」
三重県鳥羽市浦村町1208-1 [Map] 0599-32-5053

column/03715

味噌らーめんの店「しなり丸」で甘め濃厚白味噌スープ赤味噌くっきり鶏がらスープ

八丁堀で市場通りを横切って亀島橋を渡った八重洲通りが、鍜治橋通りと斜めに交わる交叉点。
新川二丁目信号の角地近くには、「三好 新川本店」というラーメン店がありました。
味よし!値よし!愛想よし!と謳うオレンジ色のターポリン幕を回した外観が印象的でしたが、いつの間にか閉店してしまいました。

そんな新川二丁目信号のところに最近、
行列を作っているラーメン店があると、
会社の同僚から伝え聞く。成る程、「三好」があった建物の並び、
正に交叉点に面して面取りしたような建物に、
「味噌らーめんの店」と題した看板が掲げられていました。

券売機のボタンを覗けば勿論、
並んでいるのは味噌らーめんのあれこれ。
白味噌か赤味噌かを選べるとホールのお姐さんが知らせてくれます。

まずは「ネギチャーシューメン」を白でいただきます。二郎張り、とは云わないものの、
なかなかのこんもり盛りが目を瞠るどんぶり姿。
でも、どうだと言わんばかりの盛り付けではありません。

下地のスープが素直に旨い。
豚に牛に鶏と動物系主体の濃厚スープだというが、
札幌系を十分に髣髴とさせつつも、
しつこくないバランスに仕立てている感じ。信州味噌だという白味噌のコクと甘さが心地いい。
そんなスープにかん水が適度に利いたわしわし麺が似合います。

裏を返すようにして今度は、
「野菜盛りラーメン」を赤で所望する。その名の通り野菜たっぷし。
成る程、赤味噌仕立てのスープは白に比べて、
きりっとすっきりと輪郭のある味わいだ。

こふいふ時はと、
久方ぶりに”天地変返し”を繰り出してみたりする(笑)。こうすると、最初は野菜ばっかりにならず、
バランスよくより美味しくいただくことが叶います。

行列を避けるようにややフライング気味に、
新川にやってきて「豚唐揚げ盛りラーメン」なんて日もあって。パーコーちっくな唐揚げにガッツリ満足の後には、
眠気来襲必至の一杯とも申せましょう(笑)。

厨房には2台の圧力釜が活躍中。
麺箱には「麺の麻生」の刻印がある。
白味噌にはワシワシ太麺、
赤味噌にはシコシコ細麺、
スープに合わせた2種類の麺は、
麻生の麺であるようです。

「しなり丸」では定番のあれこれに加えて、
週替わりと思しき限定ラーメンもスタンバイ。例えば「あんかけ味噌ラーメン」なんて日もあれば、
白味噌で「担々麺」なんて日もある。
でもまぁ、結局ベーシックな「らーめん」か、
野菜たっぷしな「野菜盛りらーめん」あたりに、
戻っていくのですけれどね。

新川二丁目交叉点に行列のある光景を生んだ、
味噌らーめんの店「しなり丸」。メニューの隅には、”成”の文字を丸で囲んだアイコンがある。
カウンター越しに店の名の由来を訊ねたら、
“しなり”は、有志竟成(志ある者は事竟に成る)の”志成”から、
当てたものだそう。
柔らかそうな響きの店名は、
何気に想いと意気込みの滲んだものだったのですね。

「しなり丸」
中央区新川2-12-12 [Map] 03-6222-1175
http://www.grast2009.co.jp/

column/03715