手打そば「風月庵」で三色の出雲そば滋味濃いぃ蕎麦の美味しさは何気なき出色哉

fugetsuan何度思い返してみても、山陰に出掛けた時のシーンが思い出せない。
やっぱり今まで山陰に赴いたことがなかったと知って、自分で自分を驚いてしまったりする。
山陰両県といえば、島根県、鳥取県を指すと知っていても、広義では、京都北部から兵庫の北部、島根県、鳥取県、そして山口県の北部までをも含むエリアを山陰地方とする場合もあるらしいとは知らんかった。
そして、東京から山陰に飛ぶ空港はと自分に問いて、ちょと思案。
そうそう、島根と云えば出雲の空港があるじゃないですか。

やっとこ出雲にまで思考が繋がれば、
愛ちゃんに訊ねるべし!と膝を打つように思い付く。fugetsuan01晴れて出雲のお店のネタを仕込んでから、
機上のひととなったのでありました。

宍道湖西岸にある出雲縁結び空港から、
連絡バスで出雲市駅に到着。
駅北側に広がる飲み屋街が気になりつつも(笑)、
まずは出雲そばをお店に足を向けたい。
そんな気分になりました。

駅周辺にも勿論、出雲そばを供するお店はあるものの、
一番気になったのは、駅からはちょっと離れた、
島根大学医学部方面に南下した辺りにある手打ちそばの店。fugetsuan02タクシーを降りた目の前に、
板塀のアプローチで迎える「風月庵」の佇まいがありました。

奥に暖簾の入口を見定めてからふと、
その脇に建つ小屋のような家屋に回り込むと、
その板壁にには「そば工房 風月庵」の文字。fugetsuan03此処で製粉までしてるのか、
はたまた蕎麦打ち教室が営まれているのかと、
そんなことを考えながら臙脂色の暖簾を払います。

店内は、そう遠くない頃に改装を済ませましたと、
そう想像するよな設えになっていて、
テーブル席に小上がりにカウンター席と、
そんな配分がされている。
席を埋めているのはどうやら、
地元の方々がほとんどではとお見受けします。fugetsuan04fugetsuan05カウンター席の前は、硝子越しに覗ける蕎麦打ち部屋。
篩いの向こうには漆塗りの捏ね鉢ではなくて、
陶器のがっしりした鉢が置かれています。

お願いしたのは「三色割子」。fugetsuan08届いた膳には朱塗りの丸い器が4つ。
ひとつには、刻んだ浅葱や紅葉おろし、
花かつおなどの薬味が載っています。

まずは大根おろしをちょんと載せたお蕎麦から。
薬味を加えたところにツユを軽く注いで、いざいざ。fugetsuan06あれま、想定以上に滋味濃いぃというのが第一印象。
香り高い蕎麦と思いたいことは沢山あっても、
それを満たしてくれる蕎麦にはなかなか出会えないものだけど、
味わいの、旨味の濃いぃ蕎麦をはっきり思うのもまた、
なかなかに珍しいことではありませんか。

鶉の卵に揚げ玉を頂いたお蕎麦にも、
急くように箸を伸ばす。fugetsuan07注いだツユは、鰹の旨味と香りが明確に、
そして濁りなく煮出されていて潔い。
派手さは勿論ないれど、
実に美味しいお蕎麦であると云えましょう。

そうとなればきっと蕎麦湯も美味い筈と、
ハードル上げてツユに溶く。
fugetsuan09うんうん、含む旨味は今さっき手繰った蕎麦の延長線上にあるもので、
それもわざわざ拵えた風でないのが嬉しいですね。

ご当地出雲でいただく出雲そば。
出雲そば供するお店の中でもきっと、
地元にも根強い人気の手打そば「風月庵」。fugetsuan10お品書きには「割子そば」と並んで「釜揚げそば」が、
出雲そばを代表する品であるとある。
その「釜揚げそば」も気になる一方で、
地元のひと達が注文している「らーめん」や「うどん・らいす」、
そして「カツ丼」までもが気掛かりなのは何より、
いただいたお蕎麦が美味しかった所為なのでしょう。

「風月庵」
出雲市塩冶町揚765-2 [Map] 0853-21-1597
http://fugetsuan.web.fc2.com/

column/03686

鮮魚仕出し刺身屋「魚玉」で魴鮄刺身や小女子釘煮で一寸一杯鮪尾の身で晩ご飯

uotama時々思い出したかのように、大崎駅の南改札を出て新西口へと向かうことがある。
新西口はそのままペデストリアンデッキで、明電舎の工場跡地に建てられた再開発ビルThinkParkに繋がっている。
ThinkParkから左手のソニーシティを通り抜け、大崎ウィズシティテラスというビルの裏手を往こうとするところに「六厘舎」の大崎店がある。
出火のため長いこと休んでいたけれど、15年の暮れに営業を再開した。

そんな大崎駅西口の線路沿い、
湘南新宿ラインと新幹線・横須賀線とが交叉する辺りから、
中原街道は桐ヶ谷斎場の方向へと、
だらだらっと上がっていくのが百反坂。

中華料理九麗瑠、Bar&Cafe縁+、近江牛Diningいさかやに、
乾杯食堂くあるた、SAKE BARもんてく等々と、
その名前の意味もちょっと気になる店々が、
通りの左手を中心に並んでる。
いつぞやお邪魔した「さんご」もその中の一軒だ。

小さな五叉路の信号の手前で目に留まるのが、
緑地のテントで庇をつけたお店。uotama01そのテントには、鮮魚・仕出し・刺身屋・出前と書いてある。
店先の空気は、従前からの魚屋さんのそれであります。

サッシ越しに窺う店内のテーブルでは、
先輩諸氏がいい感じに笑顔満開でいらっしゃる。uotama02業務用冷蔵庫の上に置かれたテレビに映った話題をネタに、
社会派談義をしてみたり、
そうかと思えば滅茶苦茶下世話な話に突然、
会話の中身が変わったり(笑)。

如何にも手開きした鰯をさっと煮付けた奴なんかが、
突出しに届いたりなんかする。uotama03そうすっとやっぱり、諸先輩を見倣って、
ちょっと一杯したくなるのが人情ってなことでありましょう(笑)。

ここではまず、お任せで刺し盛りをいただくようにしております。uotama04uotama05例えば、脂ののりはじめた鰹にとろとろの鯵なぞ。
おひとりさまのつまみとして、
ご飯の友としても相応しい角皿であります。

突出しと刺し盛り辺りで麦酒にお酒をちょっといただいたら、
鰆の照り焼きかなんかでお食事しちゃう。uotama06諸先輩たちの朗らかにほろ酔いの会話も、
お魚定食の美味しさを後押ししてくれるような、
そんな気分になってきます。

また或る宵の口の刺し盛りには、
鮪の赤身や甘海老に並んで魴鮄があった。uotama07割と最近見掛けることが増えてきたような気もするホウボウ君。
じんわり甘い白身がいいね。

そして、その晩のご飯の主菜は、
鮪の尾の身を煮付けた奴。uotama08鮪のさくを煮付けるとなるとなかなか贅沢なことになるけれど、
端物の尾の身ならばそれを気にせず満喫できる。
ほろほろとした食べ口の中から鮪の旨味が解けます。

お椀には当然のようにさっきの甘海老の頭を入れてくれる。
uotama09調理し運んでくれる気風のいいオヤジさんは、
如何にも魚屋の大将という雰囲気を漂わせています。

或る晩の突出しが、小女子の釘煮だったこともある。uotama10イカナゴ鮊子じゃなくてコウナゴ小女子だと大将は仰るが、
実はその違いが判らない。
てやんでぇ、江戸っ子はコウナゴと呼ぶんだ!
と云うことなのかしれません。

今あるタネでどんぶりを作って貰おうと冷蔵庫を覗き込む。
あれこれ載ってる海鮮丼も悪くはないけれど、
気分は一本気などんぶりがいい。uotama11そんなこんなで鮪丼。
ふと思い出すのは、今はなき京橋「京すし」。
きちんとした寿司店の鉄火と比べられても困るだろうけど、
ちょっとそんな気分で背筋を伸ばしていただきました。

百反坂を登り切った辺りにある緑のテントが、
鮮魚・仕出し・刺身屋「魚玉」の目印だ。uotama12店内の貼紙によれば、刺身やオードブル、握りなんかの、
出張サービスにも応じてくれるそう。
ドンブリものや定食なんかのランチも営っていて、
地元の人々には定番となっているみたい。
そして、常連らしき諸先輩にはいつ行ってもお会いできます(笑)。

「魚玉」
品川区西品川3-5-2 [Map] 03-3494-1494

column/03685

「KOHLMAYR’S GAISBERG SPITZ」で山頂ブランチ眼前の超絶大パノラマにああ凄い

kohlmayrs雨が多いと云われるザルツブルク。
でも、スカッと晴れ渡る日も勿論あって、湿度の低い気候と相俟って、とても気持ちよく過ごすことの出来る日も少なくない。
凍て付く冬が弛み始めると同時に一斉に木々の新芽が芽吹き始め、くすんだ印象だったミラベル宮殿の庭園の彩りや雰囲気が一気に華やかになる。
今は市役所として使用されている宮殿の建物を背にしたベンチでの、頭上の八重桜を愛でつつのお花見が、晴れた日に当たったならさらに素敵なひと時になる。
尤も、花曇の空の下でもなかなかオツなのですけれどね(笑)。

そんな晴れて空が広い日にザルツブルク市街から、
およそ真東の方向を眺めると、
ポッコリと隆起したかのような山が望め、
そこにストローを挿したような紅白の支柱が見付かります。kohlmayrs01紅白の支柱は、Sender Gaisberg の電波塔。
ガイスベルク送信所と呼べばいいのかな。
そう、ザルツブルクを訪れる度に見上げていた山が、
ガイスベルクGAISBERGと呼ばれる山なのであります。

そのガイスベルクの山頂を訪れる機会に恵まれました。
そして、その日は最高の天候にも恵まれて、
抜けるような青空。kohlmayrs02まだ雪の残る頂上附近から、
市街方向の景色を眺めに向かいます。

ああああ、凄い!kohlmayrs03これぞパノラマ!と云うべき風景が、
眼下の街並みと背景の山並みとで奥行きを構成して、
左の端からぐるりと視界を広げて右の端まで、
ドワーンと広がる絶景哉絶景哉!

とてもそのままの感じは表現できていませんが、
以下のパノラマ写真でその一端をご披露できるかもしれません。
※PCにて写真をクリックください。
 そして、この写真の左右を10倍に引き伸ばした感じを想像ください。kohlmayrs04吹き上げるやや冷たい風に吹かれながら、
雄大に大地に屹立しているような特異な気分に包まれる。
いやはや、眼福にただただ感謝の瞬間でした。

ハングライダーやパラグライダーの団体に寄与したらしき、
御仁の碑の向こうに山小屋風の建物がある。kohlmayrs05kohlmayrs06それがガイスベルク山頂に建つ憩い処、
「KOHLMAYR’S GAISBERGSPITZ」なのであります。

テラスの支柱のひとつに、
ご存知「Stigel」のサインがあるなと思えば、
ブランチの一杯にとグレープフルーツとカクテルした、
「Stiegl-Radler Grapefruit」がテーブルに。kohlmayrs07kohlmayrs08kohlmayrs09グレープフルーツのジューシーな苦味とビールの苦味とが、
不思議と似合って晴天下にも相応しい。
ジョッキの向こうに遥か、独逸国境側の山並みが見通せます。

パノラマな!ってな勢いでお願いした「PANORAMA-FRÜHSTÜCK」は、
意外や、シンプルなパンとバターと蜂蜜等とのプレート。kohlmayrs10kohlmayrs11相棒の目玉焼きなんぞにも手を伸ばしては、
「Stigel」のジョッキを傾けます。
澄んだ空気を照らして、
じりじりと暑いくらいの陽射しと山頂を抜ける風。
ダイナミックな景色を眼前にしたテラスでのブランチは、
とっても素敵なひと時でありました。

テラスから左手の方を眺めたら、
青空に何やら飛行物体を発見!
断崖に近寄ってみると、
沢山のひと達がカラフルな翼を整えて、
順々に飛び立ってゆく。
kohlmayrs12kohlmayrs13kohlmayrs14かなり高いところまで舞い上がって、ゆらんゆらん。
なんだかとっても気持ち良さそうだ。

ザルツブルクの街や周囲の山々を見下ろすガイスベルクの山頂に、
パノラマな絶景を堪能できる癒し処
「KOHLMAYR’S GAISBERGSPITZ」がある。kohlmayrs15例えば、グラーシュなどのオーストリア伝統料理もいただけるみたい。
そして、白銀に包まれる冬の時季から春、夏、秋と、
季節によって、日によって、時間帯によって、
色々な表情を魅せてくれるであろう目の前の景色も勿論、
なによりのご馳走なのであります。

「KOHLMAY’RS GAISBERGSPITZ」
Gaisberg 32 5026 Salzburg Aigen Österreich [Map] +43-664-657-6895
http://www.goas.at/

column/03684

洋食スタンド「むさしや」で定番ナポにオムライスハンバーグ丼にカレースパもいい

musashiya既に取り壊しが始まってしまった武蔵小山を筆頭に、駅前の再開発が話題に上る場所が幾つもある。
国分寺駅の北口はきっともう随分と様変わりしちゃったのだろうなと思ったり。
横にも縦にも大規模な再開発が動き出している渋谷駅の北側にあるのんべい横丁から宮下公園の区画にも魔の手が伸びるのもそう遠くないのではと思ったり。
嘗てその1/3が消失するという火災に遭った、新宿西口の俗称ションベン横丁に対しても、地図を塗り替えてやろうと画策している輩がいるに違いないと思ったり。

ハモニカ横丁と呼ばれて人気の、
吉祥寺北口駅前の商店街も元はと云えば戦後の闇市が起源。
闇市の後の横丁路地の粋でオツな風情が今や、
失いたくない稀少なものになりつつあるのです。

新橋駅西口駅前にデンと構えるニュー新橋ビルも、
戦後の闇市をルーツとする区画に建つビル。
此処は既に、疎ましく思う再開発を半世紀近くも前に断行して、
昭和の匂い芬々の雑居ビルとして親しまれてきています。

そんなニュー新橋ビルの一階商店会、
南西の角寄りにあるのが、皆さんご存知「むさしや」。musashiya01嘗ての白い暖簾から今は、
シャビーな縄暖簾で匿ったカウンターの上には、
当地の旧住所が示してある。
東京市芝區烏森四。
現在の23区部に相当する地域であった東京市は、
1878年(明治21年)の当初設けられた東京15区から、
1932年(昭和4年)の東京35区、現在の東京23区と、
市を構成する区が変遷している。
その中に、芝区とか神田区とか、日本橋区、京橋区なんかがあったンだ。
大田区の前身が実は大森区と蒲田区であることは、
知られているようで知らないひとも結構いたりするよね(笑)。

久し振りに「むさしや」の「ナポリタン」。musashiya02musashiya03もうひと超え炒め切ってくれたらいいのにな、
っていうのが正直な感想になる。
ナポリタンって、一定の地点までは、
鍋を返した回数が美味しさに比例するのではと秘かに思ってる。
そこでどうしても思い浮かべ比べてしまうのが、
同じビルの二階にある喫茶店「POWA」のナポリタン。
いやいや「POWA」のナポが美味し過ぎるからイケナイのです(汗)。

ガッツリめに喰らう感じでいきたいなと考えながら、
空席待ちの列に並んだなら、
自家製煮込みの「ハンバーグ丼」がいい。musashiya04musashiya05濃密なデミソースに包まれたコロンとしたハンバーグ。
たっぷりのソースがなにより嬉しい。
スプーンの脇でハンバーグを切り崩しては、
デミソースと一緒にライスを掬う。
刻みハンバーグ付きのデミソースライス、
ってな食べ方をどうかお赦しください(汗)。

「むさしや」のカウンターは、ひとりでも多く座れるように、
厨房側への入口にも板を渡してくれている。musashiya06図らずも覗く格好になる厨房は、
当然のように狭くて年季が入っていて、
雑前とはしているけれど、
小忠実に掃除している様子が窺えます。

「むさしや」自ら謳う代表メニューのひとつが「オムライス」。musashiya07musashiya08フライパンを操ってくれている御仁は、
これまで通算して幾度、玉子で包む所作を繰り返しているのでしょう。
半熟の表情を湛えながら薄く均一にケチャップライスを包んだ玉子に、
手練の為せる技を思います。

シンプルに「カレー」でもいただこうと思い描きながら、
空席待ちの列に並んだおひる時。musashiya09気が付けば何故か、
カレーはカレーでも「カレースパゲティ」を註文していました。
カレー粉によるものが故か、
太麺の炒め具合必要十分で、なかなかいい。
ふと「ジャポネ」の「インディアン」もこんな炒麺だったら、
もっといいのになと思ったりして(笑)。

闇市の気配を残すニュー新橋ビルのメインコーナーに、
明治創業と謳う洋食スタンド「むさしや」がある。musashiya10中央の幕板に示した創業年は、明治拾八年。
ニュー新橋ビルの竣工が1971年(昭和46年)のことなので、
ビルが建つずっとずっと前に創業していたお店ということになる。
時代はぐるっと巡って、二度目の再開発が発表されたニュー新橋ビル。
南側の桜田公園あたりまでに陣地を広げての二棟立てらしいけど、
その一角にも「むさしや」の名があることを秘かに願っています。

「むさしや」
港区新橋2-16-1 ニュー新橋ビル1F [Map] 03-3501-3603

column/03683

おでん一品料理「三幸」で梅貝春菊わかめの美味おでん白海老唐揚蓮根団子を菊姫で

miyuki香林坊交叉点近くの柿木畠商店街にある老舗おでん処と云えば「一寸一パイ」と暖簾に標した「高砂」。
味噌だれでいただく「牛すじ」とか「しのだ巻き」「ねぎま」、そして冬の時季の「かに面」等々、魅力溢るる酒肴で堪能させてくれました。
国道を挟んで対面には、カラフルな看板が誘う「菊一」があり、犀川寄りに下った片町の信号近くにある「赤玉 本店」は、創業昭和2年の老舗おでん店。
そして、観光客には実に便利な金沢駅構内の金沢百番街「あんと」にある、季節料理・おでんの「黒百合」も知られた存在であるらしい。

「赤玉 本店」が”金澤おでんの代表店”と、
自らを謳っているように、
金沢のおでんはそのまま”金沢おでん”と一般に称されている。
ただ、”金沢おでん”には、明確な定義や約束事がある訳ではなく、
特有のおでんの具を供することがある一方で、
つゆも関西風であったり関東風であったりと、
画一的なものでないというのもその特徴でありましょう。

とある地元の方が発した、
私はあそこが一番スキだという謂いに従って足を向けたのは、
片町エリアの外れ、犀川通りの大工町の信号近く。miyuki01通りから横丁を入るとすぐに見付かる赤提灯。
そこには”おでん”の文字がくっきりと浮かんでいました。

開店早々に窺うも店内は既にほぼ満席状態。miyuki02幸運にも一席だけ空いていたカウンターの隅にするりと収って、
すぐに穏やかに賑やかなざわめきの中のひととなる。

まずは「おでん」からとずらっと並んだ定番のあれこれから、
「車麩」に「ふかし」「梅貝」を註文んでみる。miyuki03大きな麩がたっぷりと出汁を吸っていい塩梅。
「ふかし」とは、浅く揚げたはんぺんのようなもの。
ふわふわっとして、するんと胃の腑に滑り込んでゆきます。
そして、正直びっくりしたのが「梅貝」の美味しさ。
肝の部分にも磯のエグ味なんて微塵もなく、
スカッと突き抜けるような滋味が外連味なく弾ける。
いやはや、こりゃ旨いウマい。

カウンターの中の黒板には、
本日のおすすめ品がこれまたズラっと書き留めてある。miyuki04miyuki05miyuki08その黒板の下に貼られた品札のひとつにあったのが、
「加賀丸葉春菊」と「わかめ」。
どちらもあっさりとおでん出汁に潜らすようにしたお皿なのだけど、
その火入れの加減が絶妙で、
繊細なテクスチャを感じさせつつ、兎に角美味しい。
特に加賀の春菊の美味しさときたら、
思わず絶句しちゃう愕きを含んでいます。

そんな、イケてるおでんと一緒にいただいていたのが、
「菊姫」の純米酒「先一杯」。miyuki06アルミのたんぽから、加賀菊酒との銘のあるコップへと燗酒を注ぐ。
ふーふーしてから啜るようにグラスを傾けて、
またおでんに手を伸ばします。

「加賀丸葉春菊」の品札の隣で何気なく、
その名を示していたのが「れんこん団子」。miyuki07ちょっと粗めに下ろした蓮根を丸めて炊いた、
その歯触りが素晴らしい。
ひいたお出汁も勿論美味い。
割烹料理の井出達で御座います。

朗らかに賑やかなカウンターの上を眺めると、
幾つかの大皿料理の存在も目に留まる。miyuki09miyuki10その中から「ポテトサラダ」をいただけば、
これまた記憶に残るポテサラの。
こりゃ、芋自体が美味いヤツじゃないかと目を瞠る。
細かくねっとりとさせた中に、
ざっくりほっくり食感が時々顔を出す。
塩梅や酸味の織り交ぜ方もお上手で、
思わず拍手しそうになりました(笑)。

黒板メニューからもお願いせねばと「白えび唐揚げ」を。miyuki11それは丁寧な薄衣。
儚げなその身をそっと噛めば、期待以上の甘さと芳ばしさ。
嗚呼、これもひとつの冬場の贅沢なのでありましょう。

「菊姫」の御燗のお代わりをいただいて、
それに合わせてと改めて定番メニューを捲ってみつけた、
金沢名物の糟漬けです、の文字。miyuki12「こんかいわし」「こんかさば」「こんか皮はぎ」とある中から、
どれも気になりつつ、やっぱりこれかと選ぶは鯖のヤツ。
凝集した鯖の旨味と香りがもろみの風味に曳かれて大活躍(笑)。
呑兵衛御用達の酒肴でありますね。

〆るでもないけれど、既に大満足ゆえ、
今宵の仕舞いとしたいと最後に選んだのが、
「とろろの鉄板焼き」。miyuki13miyuki14和風と洋風の二種類があって、
ハーフハーフにもできるというので、その様に。
花かつおのかかったサイドが和風でしょうね。
木の匙でひと口づつこそげるようにしながらハフホフと食べ進めば、
あっと云う間にするんと平らげてしまう軽やかさ。
名物と謳われる理由に合点がいった気がします。

金沢は片町エリア隅の大工町信号近くに、
おでんと一品料理で大人気の「三幸(みゆき)」がある。miyuki15定番の最右翼「みゆき揚げ」を食べ損なったと、
ふたたび訪れたらその夜はもう、店先から溢れる空席待ちの影。
偶然見付けた姉妹店も満席札止め。
夏でもおでんをいただくという金沢では、
四季を通じて人気のお店なのかもしれません。

「三幸」
金沢市片町1-10-3 [Map] 076-222-6117

column/03682