カレーの店「デリー」で蔵のある町の黒塗りの蔵にあの有名店の看板を見付けたら

delhi松本といえば、新宿からあずさ号に乗って行く所な気がしてる。
昨夏にサントリー白州蒸溜所へと小淵沢を訪ねた時と同じく、JR新宿駅の中央本線特急のホーム、10番線あたりからスーパーあずさ号に乗り込めば、ちょうど2時間半ほどの旅程になる。
都内に降雪の心配もあった冬の或る日。
席を得たのは中央本線特急の一番電車、スーパーあずさ1号。
偶数号車の「あずさ2号」は残念ながら新宿発の下りではなく、松本始発の通勤特急になっているらしく、新宿発8時ちょうどの特急は、スーパーあずさ5号である。
そんなことをポチポチ調べながら、列車は一路、松本へと向かうのでありました。

小淵沢あたりは雪景色なのかと思っていたら、
予想は外れて塩尻あたりでやっとこ風景に白が占めてくる。
降り立った松本駅は、吹く風はキリリと冷たいものの、
豪雪の地とはまた違う。
どうやら余り雪が多い土地柄ではないみたい。

ちょうどひる時となったあたりで、
いつぞやお邪魔した「源智のそば」のある、
髙砂通りをふたたび歩いてみる。delhi01まったく雪のないシーズンもあると聞く松本だけど、
この日は道の両脇にしっかりと雪が残ってる。
尻餅搗かないように気をつけながら、
辺りを束の間の散策と洒落込みます。

髙砂通りからぐるりとして、
中町通りという通りに回り込む。
中町通りを歩けば成る程、
“蔵のある町”のキャッチフレーズが頷ける街並みだ。

有名そば店の筆頭に挙げられる、
「野麦」の表情でも拝もうと歩みを進めると、
ちょうど「野麦」のある筋との角で蔵造りの建物が目に留まる。delhi02何気なく近づいて小さな突出看板をみるとなんと!
カレーの店「デリー」と書いてある。
あの”デリー”が松本にあるなんて噂でも訊いたことがありません。

「野麦」で手打ちの蕎麦を啜る筈が、
気がついたら蔵の中のカレー専門店にいた(笑)。
どこぞの喫茶店のようにすっきりとした店内です。delhi03カレーメニューは〆て7種類。
マイルド、中辛、辛口と例によって唐辛子マークが附されています。

お願いしたのは中辛の人気メニュー「インドチキンカレー」。delhi04カレーを湛えた器にはチキンな具がその身を潜めていて、
なんとなくジャバジャバな右の本格派のインドカレーの気配も漂う。

どうなんでしょうと考えつつ、
小さめのお皿から零れないように一気にライスの上へと注ぎかける。delhi05ジャバジャバかと思ったカレーには小麦粉の表情もしっかりあって、
「デリー」に連想するエッジの利いた味わいではない。
簡単に云うと、とっても普通に穏やかなカレーなのでありました。
まぁ、辛いから刺激的だから、本格的だとか美味しいだとか、
そんな風には思わないのだけどね。

松本の蔵のある町、中町通りの角地に建つ、
黒塗りの蔵にカレーの店「デリー」がある。delhi06明治時代の蔵を利用したカレー専門店は、
1970年(昭和45年)の創業であるらしい。
一応、念のため、訊いてみた。
湯島のデリーとは関係ないのですよね(笑)?

「デリー」
松本市中央2丁目4-13 [Map] 0263-35-2408

column/03657

GASTWIRTSCHAFT「Zum fidelen Affen」でカプツィナーベルクの丘と白のグラスと

fidelenaffen短い年末休みにザルツブルクを訪ねていました。
比較的安くてトランジットに乗り継ぎ損ないのリスクや体力的負荷の少ない便をずっっと探していて見付けたのが、ミュンヘンまでの直行便。
楽チンなエアーを得られた背景には、パリで起きてしまったテロの衝撃や流入を続けていると聞く難民の状況があると考えると複雑な気持ちになるけれど、空いていた並びの席を使って横になって来れたのはラッキーだったと考えることにする。
ミュンヘンからは、事前に国家免許ガイドsepp氏より仕込んでいた通りに、ザルツブルク駅への直通バスによる、これまたスムーズな移動となりました。

クリスマスを過ぎた目抜き通りのゲトライデガッセは、
落ち着いた賑やかさ。fidelenaffen02いつぞやお邪魔して何本ものシュナップスを買い込んだ、
「SPORER」もゆったりした雰囲気に包まれていました。

徘徊した旧市街からシュターツ橋Staatsbrückeを渡り、
リンツァーガッセLinzergasse方向へ。
モーツァルト住居一階の「Cafe CLASSIC」のある、
マカルト広場に面した教会Dreifaltigkeitskircheの裏手の道へと、
折れ入ってみる。fidelenaffen03fidelenaffen04見上げた看板には、チンパンジーが描かれていて、
よくよく眺めると右手には麦酒のグラスを掲げ、
つるんと伸びた尻尾にはプレッツェルを幾つも引っ掛けている。
縁取りには「Zum fidelen Affen」。
人気のレストランであるようです。

夕食にはまだまだ早いと踵を返せば、
通りの先に小高い丘を望み見る。fidelenaffen05fidelenaffen06リンツァーガッセとの突き当たりには、
急な坂道を刳り貫いた先に見通すアーチが、
手招きするように口を開けている。

誘われるまま坂道を辿れば、
忽ち息も絶え絶えになる(笑)。
ひーこら云いつつ辿り着いた丘の中腹からは、
眼下にザルツブルクの街が見下ろせる。fidelenaffen07fidelenaffen08息を整えて(笑)、もう少し進むと、
ホーエンザルツブルク城が目線を上げた角度で眺められます。

丘の上のお城まで辿り着くには、
夕暮れまでの時間が足りないとそれを言い訳にして、
中腹をくるりと廻ってさっき登った急坂を下りてきた。

陽が落ちてちょっと冷えてきたリンツァーガッセ。fidelenaffen09fidelenaffen10灯りの燈った「Zum fidelen Affen」を訪ねると、
なんと予約で満席であるという。
成る程、聞いていた通りの人気店なのであります。

改めて出掛けたのは、やや深い時間帯。fidelenaffen11lara姐さんが乗っている楽団の練習場が近くにあって、
どうやら楽団の皆さんの止まり木になっている模様。
シルベスターコンサートのプローべ上がりのところに合流して、
オーストリアの白をいただいて、Prost!おつかれさま。

フロアの中央には、Rを描いて美しい天井の下に、
グラスやボトルの並ぶ砦がある。fidelenaffen12fidelenaffen16fidelenaffen17ワインをグラスに注ぐ、
手慣れた所作とその気風の良さを眺めていたら、
いつの間にかグラスが空いていた(笑)。
お代りをいただきましょう。

カプツィナーベルクの登り口近くの裏道に、
GASTWIRTSCHAFT「Zum fidelen Affen」がある。fidelenaffen19お店の名前は、壁のサインにあるように、
“陽気な猿”といった意であると思えばいいのかな。
でも、そうだとしたら、それってどふいふ訳なんだろう(笑)。

「ZUM FIDELEN AFFEN」
Priesterhausgasse 8, 5020 Salzburg [Map] +43 662 877361
http://www.fideleraffe.at/

column/03656

手打「大助うどん」で肉もりうどんに肉うどんキツネ入り武蔵野うどんの正しき風景

daisuke大泉学園のうどん店と云えば、まず思い浮かべるのが、今は手打饂飩「長谷川」と名乗る英気盛んな店。
「エン座長谷川」から今は”エン座”の冠を外して、自らの名のままにて自立している。
そんな「長谷川」の店先の様子を想像しつつ立っていたのは、同じ北口のバス停前。
ちょっと整備されて綺麗になった小さなロータリーから乗り込んだのは、福祉センター行きの西武バス。
大泉学園通りを北上して北園の信号を抜けたバスは、関越道の処で左折して高架に沿って進む。
道に沿ってさらに左折したところで降車ボタンを押しました。


駅からは離れた住宅地の一角に年季の入った暖簾が揺れる。daisuke01木造モルタルの民家の物干し場の下に、
後から急造で設えたような囲いがある。
履き込んだデニムのような暖簾の脇には、
風雨に鍛えた表札が、
手打「大助うどん」であることを示してる。

両脇にある券売機の上には檜の板で誂えた品札の列。daisuke02まずはやっぱり品書き筆頭の「肉うどん」でありましょう。

店内はいい味に少し飴色帯びていて、
初めてなのに懐かしい。daisuke03ギュウギュウになるでもなく、
八割方の客入りの状態を維持しながら、
客の顔立ちがどんどん入れ替わっていく。
行列をつくるでもなく、
まるで示し合せたかのように回転していく様子に、
飲食店のひとつの理想を見たような気になりました(笑)。

テーブルの間を行き交ってくれるのは、
すべてベテラン顔のオバサマたち。daisuke04渡したチケットの行方と厨房の湯気を眺めつつ、
待っていたところへバラ肉をたっぷり浮かべたつけ汁の椀と、
皿に盛った手打ちのうどんがやってきました。

うどんを眺めては、
うむうむ、そうそうと思わず膝を打つ。daisuke05こうして茶褐色を帯びたうどんが、
正統な武蔵野うどんの証のひとつ。
このうどんなんでこんなにくすんだ色してるのと、
訝ってはなりません(笑)。

割り箸でひっ掴んだうどんを無造作につけ汁に突っ込んで、
それでも矢鱈撥ねないようにすっと引き上げる。daisuke06出汁の旨みと醤油の風味に、
豚バラから滲む滋味とコクを一身に纏った、
うどんが口の廻りで躍る。
うむうむ、そうそう、武蔵野うどんはこうでなくっちゃいけません。
美味いなぁ、どうして今まで知らなかったのでありましょう。

日を改めてふたたび同じバスに乗り、
やってきました関越道脇の住宅地。daisuke07空いていたテーブルの真ん中の椅子に腰掛けると、
正面に使い込まれた洗面台がある。
その脇の壁に表情のある文字で書かれた、
「うどん」と題する詩が貼られてる。

例によって入口両脇にある券売機でポチっとしたのは、
「肉うどん・肉もり・あつもりキツネかタヌキ入り」のチケット。daisuke08もりうどんではなく、
温かいの!キツネ入りで!とお願いすると、
はいよとばかりにオバサマがチケットの角を折り曲げる。
ここを折り曲げるのは、
大方のお客さんが註文するであろうもりうどんでなくて、
温かいどんぶりのサインなのかもしれません。

なんだか仄々した気分になっているところへ、
お願いしていたどんぶりが湯気を上げてやってくる。daisuke09daisuke10これでスタンダードな中盛りなんだもんな、
豚バラ肉もプラスオンのお揚げも、
加減することなく載っていて嬉しい。
ナルトの一片にまた仄々だ(笑)。

手打ちのうどんは勿論、
農林61号の地粉を思わせる明快な茶褐色。daisuke11うどんの、粉そのものから引き出した滋味。
豚バラ肉との相性の良さは、
一度このコンビネーションを憶えたら、
決して欠かせないものに思える程なのであります。

関越道抜けてゆく大泉学園の住宅地に、
正統派武蔵野うどんを想う「大助うどん」がある。daisuke12武蔵野うどんの中心エリアと思しき、
東村山や小平地域からはやや離れた大泉に、
こんなにも正しき風景のお店があったとは、
今まで知らずに御免なさい。
お代を渡した割烹着のオバサマに、
大助さんは何処にと訊ねると、
厨房の奥を指差して、
あれ?いないわねぇ、だって(笑)。

「大助うどん」
練馬区西大泉3-27-23 [Map] 03-3922-3028

column/03655

洋食「キッチン パンチ」で目玉焼きのっけにナポリタン生姜焼きに牡蠣フライ

punchいつから共用が始まったのかなと思いつつ、中目黒駅の南改札口を出る。
GTタワーの敷地を斜めに横切るように抜けると小さな祠の脇に出る。
目黒銀座入口の端にひっそりとある小じんまりとした神社が、第六天社。
小さな境内にまだ細い桜の木がある。
高層ビルの谷間にこんなスペースを確保して祀っているんだねと思いつつ、その向かいの横道へと入り込みます。

入って右手へとさらにクランクするように忍び入ると、
両サイドに飲食店の灯りがいい具合に点ってる。punch01「草花木果」「いふう」に大阪串かつ「殿金」、
「なかめくん」「セイロンイン」に「コロッセオ」。
有名どころでは、ピッツェリア「聖林館」。
そして、そんな気になるお店が並ぶ裏道に、
昭和41年創業の洋食店があるのです。

店先にはお約束のショーケース。punch02例えば、白金北里商店街「ハチロー」や、
百反坂の食堂「さんご」のショーケースのように、
草臥れて褐色を帯びたサンプルが並ぶものでなく、
例えば、五反田の「さんばん」のそれのように、
生き生きとした発色が眼を惹きます。
まずは覗き込ませ、迷わせ誘う、
ショーケース本来の役割を十二分に果たしています。

ショーケースの脇の扉を入れば、
左手にカウンター、右手にテーブル席。punch03一番奥のテーブルを定位置にした、
創業者とも思しきオヤジさんが、
あれこれと愛想を送ってくれる。
時におひとりさまでもテーブル席を勧めてくれます。

ショーケースでも生まれた迷いは、
黄色地赤文字のメニューを手にしても、
治るどころか増すばかり(笑)。
まずは”看板メニュー”から
「ハンバーグ目玉焼き付き」をお願いしましょう。

追加アイテムあれこれから選ぶ、
“いろいろのっけメニュー”からポテトサラダを選んで、
添えてもらうのが定番になっている。punch04ロコモコならずとも目玉焼きひとつがこうも、
地味色になりがちなお皿を朗らかにしてくれるのですね。

ジャストサイズの目玉焼きの下を覗き込むようにして、
認めたハンバーグはなかなかに端正なフォルム。punch05punch06粗引きとしっとり挽肉とが交雑するハンバーグに、
目玉焼きの黄身のコクとデミソースの旨みが交錯する。
はい、美味しい。
ハンバーグはこれでよいのだ(笑)。

メニューには勿論「ナポリタンスパゲッティー」もある。punch07punch08ナポちんが2皿目までも食べているナポリタンは、
摩り下ろしたチーズが蕩けて網状になりかけているのが特徴で、
ハンバーガーのと同じデミソースの気配もする炒め口だ。

メニューには勿論「豚バラ肉の生姜焼き」もある。
punch10punch11じんじゃーちんスペサルプッシュ(*^_^*)な生姜焼きには、
その頂に薄っすらと七味の雪が降る。
縒れて寄り添う豚バラ肉にキリッとしたタレがよく似合います。

これもひとつの看板メニューらしいのが、
4~9月の期間限定「鳥レバーフライ」。punch09噛めばじわっと小粋なレバーの風味。
癖のない滋味の軽やかさに大感心。
春から夏にかけての人気のメニューであろうことに頷きます。

そして季節が秋へと移り変わると、
厨房の壁に掲げられた黒板にはこんな白墨の文字が躍る。punch12例年のことながら、
シーズン早々はまだ仕入れが不安定なこともある、牡蠣。
震災から復興の道を辿る三陸産の牡蠣を使うことが多いようです。

10月半ばの牡蠣フライは、期待通りのジャストサイズ。punch13punch14軽やかな揚げ口の衣の中から澄んだ滋味エキスの迸る。
出来ればもうちょっと玉子玉子したタルタルが好みなのだけど、
それも満足感を歪めるものではありません。

年が替わった冬の時季には、
「オムライス」を所望したりする。punch15punch16デミソースではなく、
お腹の真ん中にくっきりしたコントラスのケチャップ化粧。
やっぱり欲しいとカキフライをのっけしてもらうという、
そんな暴挙もどこ吹く風に受け止める、
玉子包みのチキンライスもいい塩梅であります。

目黒銀座界隈の裏道に、
昭和41年創業の洋食店「キッチン パンチ」がある。punch17マガジンハウスが発行していた男性向け週刊誌「平凡パンチ」が、
冬眠と称して休刊してしまったのが1988年(昭和63年)のこと。
なんとなく”パンチ”という言葉には、
昭和の時代の勢いと甘酸っぱさが含まれているような、
そんな気もするのです。

「キッチン パンチ」
目黒区上目黒2-7-10 [Map] 03-3712-1084

column/03654

やき鳥「まさ吉」で越の鶏の名焼鳥抱き身低温調理特製鶏焼売絶品鶏中華そば

masakichi日記を捲るとそれはもう、5年以上も前のことになる。
きっとまだ、地下化した目黒線の跡地の整理事業を進めている最中だったのではないかと思われるそんな頃。
線路跡の空地に面した、鰹節鯖節の「ボニート・ボニート」の前を通り、その先を右に折れて天ぷら「ハトヤ」の店先の表情を横目で眺めながら商店疎らな通りを往く。
往時の築地王と今や師匠となったつきじろう氏なぞと集ったのが、やき鳥「まさ吉」なのでありました。

店先のショーケースには、
大小の福助人形が並んでる。masakichi01二体のコケシを両脇に従えて置かれた色紙にはこうあります。
当店は、新潟県産銘柄鶏”越の鶏”、
野菜にもこだわり、100%海水塩を使用。
調理上での化学調味料添加物は一切使用していません。

予約の名を告げるとカウンターの背中を通って、
ズズズイッと奥のテーブルへと通される。
いつぞやもこのテーブルだったことを思い出す。masakichi02生麦酒とかノンアル麦酒とか、銘々の呑み物のお供の口開きは、
茹で玉子部分もたっぷりの「ポテトサラダ」から。
何気なくも重ねた研究の成果のようにも映る、オツ具合であります。

「おまかせ串焼き五本セット」をお願いして、
迎えた串は、ささみ焼きの「わさび」。masakichi03ささみとおろし山葵の相性の良さは云うまでもなく、
丁寧に包丁した様子のささみの鮮度と、
レアな焼き口に早くも小さな悶絶が始まります(笑)。

黒板のおすすめメニューからお願いしたもののひとつが、
「ダキ身低温調理」なる逸品。masakichi04ダキ身というのは、鶏の胸肉のことを指すらしく、
特に鴨について云うらしい。
両羽で抱くような部位だから”抱き身”というのかな。
流行の続いて定番になったであろう低温調理が、
成る程もっとも適した料理方法なのだとブンブン頷く。
しっとり上品な旨味を意外と濃密に内包した美味しさなのであります。

二本目の串が「せせり」の串。masakichi05ネックとも呼ばれ、希少部位のひとつとも云われる、
せせりも此処では通常メニューのカテゴリー。
独特の歯応えとくっきりとした旨味がいい。

「特製鶏シュウマイ」は、菊花スタイル。masakichi06細切りの皮に包んだたっぷりとした鶏ミンチはきっと、
仮に端肉も使っているとしてもつくねあたりと同等のもの。
熱々をいただけば、
ハフハフしながらただもう頷くばかりでございます。

銘柄が特定されていことは、
二本の串を包んだ「つくね」にも一層の完成度感を与えてくれる。masakichi07脂が過ぎることなく、凝集した滋味が解け出します。

ちらっと覗いた厨房の先では焼き台からの煙があがる。masakichi08炙られ焼かれ刻一刻と変化していく、
串たちの表情と瞬間をじっと見守る背中を頼もしい。

艶めかしき「レバー」は生のままでもいけそうだと、
鮮度の良さを思わせる。masakichi09炙って自らを薄く包んだ表面の儚さと、
噛んですぐさま溢れだす大胆さに、また唸ります。

いただいたお酒は、
純米「風の森」キヌヒカリ。masakichi11旨みが明瞭ですっと呑み易い。
鶏の串たちを引き立ててくれるお酒でもありそうです。

「つなぎ」というのは、
鶏の心臓と肝臓をつなぐ大動脈あたりのものだという。masakichi12ハツを処理するときにきっと、
上手に切り分ける所作が必要なんじゃないかと思う希少部位。
細かい手間が掛かっていることでしょう。

「ふりそで」はといえば、
手羽元と胸肉の間を云うらしい。masakichi13ジューシーでいて上品な感じに、
妙に得心のいった気分になります。

そして「おたふく」は、鶏の胸腺にあたる希少部位。masakichi14ちょっとコリっとするような歯応えを潜ませて、
これまたうんうんと頷き、唸らせるのです。

そしてあらかじめお願いしていたのが、
謂わば「まさ吉」の名物のひとつとなった「鶏中華そば」。masakichi15masakichi16濁りなき上質な滋味旨味が襟を正して湛えられたどんぶり。
鶏ガラでここまでのスープが抽出できるのだと、
思わず腕組みしてしまう(笑)。
腿肉の鶏チャーシューも半熟煮玉子も勿論、美味い。 なんだか5年前のどんぶりより一層美味しくなっている気もする。
絶品スープによく似合うストレート麺は今も、
鬼師匠なき「支那そばや」麺工房からのものなのかな。

武蔵小山の静かな裏通りに、
端正な焼鳥と絶佳な中華そばで知られる「まさ吉」がある。masakichi17ひとつ残念なのは、その人気ゆえに、
ふらっと寄っていくような気構えでは、
なかなか居場所を得られないこと。
開店する客席によって仕入れた鶏が綺麗に捌け、
それがきっと新鮮で上質な銘柄鶏の次の仕入れに繋がる。
そんな好循環も美味しさの秘密のひとつなのかもしれません。

「まさ吉」
目黒区目黒本町5-2-8 [Map] 03-3792-5216

column/03653