ホルモン「在市」芝大門で旨い赤身肉とホルモンのごちゃ混ぜ焼きとジントニと

zaichiそれは、師走の平日の夜のこと。
大門駅から地上に上がって、第一京浜の横断歩道をてけてけ渡る。
この処、間置いて何度か通った芝神明商店街を北へと上がる。
両側に点在する飲食店の表情を眺めつつ、このまま真っ直ぐ往って商店街を抜けると老舗とんかつ店「燕楽」のところに出るなぁという辺りで、今宵の目的地の提灯を見つけました。

店先にはメラメラと囲炉裏の炎が揺らいでる。zaichi01その囲炉裏の背中の壁のディスプレイをよくよく見ると、
丸型の焼肉グリルが何枚も飾られている。
枡に突き刺したプレートの文字を辿ると「ごちゃ混ぜ焼き」と読める。
はて、「ごちゃ混ぜ焼き」って何でしょう。

寒い中お迎えいただいた方たちや、
先陣切って着座していた愛ちゃんにコンバンハ。zaichi02今夜は、円形の排気ダクトの傘の下、
焼肉グリルを囲んでの忘年会なのであります。

口開きは、武蔵野ビール工場での一杯も思い出す、
気品あるコク味「MASTER’S DREAM」から。zaichi04zaichi03蓮根なんぞのお通し的ナムルが手始めに控えています。

本日のメニューが予め配られて、
それは流れを知れて安心のカタチでもあると確かめる。zaichi05正肉コースのメニュー後段に店先で気になった、
「ごちゃ混ぜ焼き」もオススメアイコンと供に載ってるね。

メニューに則ってまずは「上タン塩」のお皿がやってきた。
濁りのないピンク色の上に粗挽きした胡椒の粒が踊ります。zaichi06zaichi07グリルにてさっと炙った上タンが、
想定以上に軽快な歯触りだったのは、
裏側に均等に施した包丁のお陰でもあるのでありました。

そして、メニューの下枠に大きなフォントで提示されていたのが、
「ジントニ」なるお呑み物。zaichi08“肉専用サワー”と謳う、
「ジントニ」専用のジョッキには、”ジンと肉”の文字。
ジョッキにガチャっと盛られた角氷の上にたっぷりと黒胡椒を盛る、
そんなスタイルのジントニックだ。
ん?”ジンと肉”? あれ(笑)?

そのジンが何かと問えばそれはご存知「BEEFEATERビーフィーター」。zaichi09zaichi10バックバーには欠かせない四角い透明ボトルは、
ロンドン塔を護る近衛兵の図柄がシンボル。
恥ずかしながら認識していなかったのは、
「BEEFEATER」の名前の由来。
それはつまりは、BEEF(牛肉)+EATRER(食べる人)。
その昔、国王主催のパーティーの後に、警護にあたっていた衛兵たちが、
パーティーで残った牛肉の持ち帰りを許されたことから、
“牛肉を食べる人”と呼ばれたという。

そうか”牛肉を食べる人”だったのか!と感心しているところへ、
ドドドンとジングルでも鳴りそうな威容で牛肉塊のお披露目。zaichi11zaichi12塩焼きでと運ばれてきたお皿には、
さらに艶めかしさの増した見映えのミスジにハラミ。
細やかにサシの入った様子は、
柔らかに蕩けそうなことを容易に想像させる。
こうしてまた、美味しく、牛肉を食べる人、になる(笑)。

醤油焼きにはリブ芯辺りのものだというzaichi13zaichi16サシの入り方がまたちょと違う。
包丁の入れ方も厚みも部位や食べ方によって、
当然のように変えているのでしょうね。

店内を精力的に動き回ってくれているスタッフが、
腰に巻いている前掛けが紅くてよく目立つ。
それは「ビーフィーター」の紅。zaichi15zaichi25檸檬半個分が基本レシピの、
「ビーフィーター」使った「ジントニ」であるそうなのだけど、
檸檬に代えて、グレープフルーツを使ったバージョンもなかなか旨い。
グレフルの苦みがオトナな味わいとなるのです。

紅い前掛けのお兄さんが今度は、
薄めにそして大判にスライスしたお肉たちを運んできてくれた。zaichi17zaichi18zaichi19zaichi20zaichi21それをグリルに載せてはすぐさまひっくり返し、
それはまるで鉄鍋の底でお肉を煽るかのように。
「サーロインすきやき風」は勿論、解した玉子でいただくスタイル。
なはははは、思わず哂っちゃうくらい旨いであります。

そしてそして、本日メニューの殿に控えていたのが、
名物にして看板メニューのひとつと思しき「ごちゃ混ぜ焼き」。zaichi26zaichi22九条葱もたっぷり盛られたお皿を、
グレフル・ジントニでの改めての乾杯で迎えます。

「ごちゃ混ぜ焼き」とはつまりは、
上質なホルモンあれこれに赤身肉も含めてやや甘めの味噌で、
その名の通りごちゃ混ぜにして焼いちゃうヤツ。zaichi23それってメッチャズルいヤツやん!と、
小さく叫んで(笑)、次々と箸を伸ばす。
たっぷりした旨味とコクと脂が混然となったグリルに、
ほろ苦いグレフル・ジントニがよく似合います。

芝神明商店街の北寄りに、
赤身肉もホルモンも旨い「在市(ざいち)」がある。zaichi24それなりに歳を重ねてくると(笑)、
少しずつのお肉を変化をつけながらいただくのが、
食べ方として美味しいのを再確認できた夜でした。
そのお供に洒落も含めた「ジントニ」が面白い。
そんな「ジントニ」を推すサントリーのWebページはコチラです。

「在市」芝大門
港区芝大門1-2-8 [Map] 03-3431-5233
http://zaichi-shibadaimon.com

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割烹「おお杉」で牡蠣胡麻油鍋に逆立ち炭火焼琵琶湖産本諸子絶品なる簳魚天麩羅

ohsugi琵琶湖の南西に位置する大津市。
一応県庁所在地なんですけどねと聞かされて、疑う訳ではないけれど県庁がどこにあるのかと調べると成る程、滋賀県の県庁は大津にあるのですね。
件の県庁は、JR大津駅北口から割りとすぐの場所にある。
泊まったホテルからもすぐなので表情を窺いに足を向けると、ひっそりとした中にこじんまりとしつつも風格のある建物が拝めた。
明治4年に建てられた登録有形文化財であるらしい。

県庁のある場所は、どこかの時代で町の中心であった筈なので、
周囲にはそれなりに飲食店街があるように思っていたのだけれど、
滋賀県庁の周りは実に静か。
旧来の繁華街は浜大津寄りの方になるのかなと考えつつ、
県庁を背にして歩き出す。
と、そこでいい表情をした店の灯りが目に留まる。
ちょっと敷居が高そうだけど、一丁お邪魔してみましょうか。

店先のお品書きを眺めてから、
右手のアプローチを進む。ohsugi01道路からすぐに入口を置かない設えは、
やはり一定の風格を思わせます。

縦格子に匿った道路寄りはテーブル席になっているようで、
お一人さまは入って正面のカウンターへと迎えられました。ohsugi02ご主人と思しき御仁に会釈を送り、
小さな麦酒をとお願いした肌理細やかな泡からスタートです。

お通しがいきなり面白い。ohsugi03高さを三段に変えた小皿に、
煮付けた鰯や白和えなんかが盛り付けてある。

この日の品書きを捲れば、
気なる行が続いていて、困る(笑)。
三品ある牡蠣の料理から「かきごま油鍋」をお願いしました。ohsugi04出汁の利いた醤油の仕立ての鍋に胡麻油の色が浮かび、
漂う匂いが香ばしい。
牡蠣の滋味に胡麻油のコクが備わって、
成る程、牡蠣はこふいふ鍋にすればいいんだと膝を打つ気分になる。

その並びに書かれてあったのが「琵琶湖産 本もろこ炭焼き」。
公魚とは違うんですよねとご主人に訊くと、
これが諸子ですと見せてくれた。ohsugi05そもそもが、琵琶湖特産魚で、
京都でも取り扱われる高級魚であるらしい。

カウンターに炭火の網が据えられて、
ご主人から焼き方のご指南がある。
まず両面をじっくり目に焼く。ohsugi06ohsugi07次に泳いでいるような姿に諸子を網に置き、
魚のお腹側をじっくりと焼きます。

お腹側が焼き上がったらなんと、
網目の間に諸子を頭から突っ込んで、
逆立ちスタイルで頭もじっくりと焼くお作法。ohsugi08中々拝めない光景であります。
誰ですか、スケキヨスタイルだなんて云っているのは(笑)。

こうして兎に角、四方からじっくり焼いた諸子は、
生姜醤油にちょん漬けしていただきます。ohsugi09公魚よりも濃いぃ滋味があり、
じっくり焼いた皮目が香ばしくて儚くも旨い。
決して清澄ではないと知る琵琶湖の魚が故の、
じっくり焼きではあろうと想像するも、
網の上の逆立ちとじっくり焼いた滋味がいいね。

近江地酒から「喜楽長」を燗でお願いして、
改めてこの日の品書きを物色する。
「近江牛あぶりみすじ」の隣に見付けたのが、
「やがら天ぷらカレー塩」。
ヤガラって、あの、細長い魚のヤガラですよねと、
そう訊ねると、にっこりと頷くご主人。
赤いのとか黄色のとかがいますよねと重ねると、
あれ、よくご存知ですねとなる(笑)。
ダイビング中に割りとよく出会うヤツですなんて話をしていると、
ダツと同じように突っ込んできて危ないみたいですねと、
ご主人はそう仰るけれど、
目の前にいてもゆったり泳いでいる様子しか見たことがありません。

そんなこんなで註文した簳魚の天麩羅がやってきた。
添えてくれたカレー塩をほんのちょっとだけ付けて、
お初のヤガラだなぁと思いつつ口に運びます。ohsugi10おおおおおおおお。
これは旨い!
鱧なんかより断然美味しいじゃないですか!と思わず口走る。
あ、京都も近い関西圏でこう云うと引かれちゃうかな(笑)。
心地いい弾力の中から濃密な旨味が炸裂する。
頃合いよく天麩羅にしているからこそのことなのかもしれないけれど、
いやはや吃驚した。
水中で割りとよく出会う簳魚が、
こんな美味しさを秘めていたなんて。
専ら赤い体躯のヤガラが入るようです。

お代わりした燗酒を、
「田上産 菜の花漬け」あたりでちびちびといく。ohsugi11黄金色に映る菜の花漬けは、
大津の田上地域が産する菜の花を用いた、
大津の特産品であるという。
乳酸の風味も手伝って、粋な菜の花の漬け物。
大津は琵琶湖沿岸の町だとばかり思っていたら、
山間に近い地域もあるのですね。

そろそろ〆ちゃおうかなとお品書きのお食事の項を眺めると、
「かまあげそうめんカルボナーラ風」なんて一行がある。
なんだか愉しそうですねぇと訊くと、ご主人がにやりと応えます(笑)。ohsugi12適当に混ぜてお召し上がりください、
ということでグルグルクニュクニュ器の中を回すと、
カルボナーラ風というにはちょっと弛め軽めの、
玉子和え釜揚げそうめんができあがる。
この、つるんと太目の素麺はどこのものなのかなぁ。
重たくしないのがキモなのかもしれません。

滋賀県庁至近の静かな場所に割烹「おお杉」がある。ohsugi13お店に踏み入る前にちょっと身構えた気持ちは、
あっという間に和らいで途端に居心地がよくなった。
身近なる京都での修行も経ていると仰るご主人に、
その修行先を訊ねるとそれはあの「たん熊」であるという。
残念ながら「たん熊」経験はないけれど、
京料理の手練を格式張らない雰囲気で供してくれる感じがいい。
もしも今度があるのなら、その折にはぜひ、
「おお杉」名物と謳う「うなぎしゃぶ」をいただかなくっちゃ。

「おお杉」
大津市中央3-4-30 [Map] 077-526-3824

column/03650

そば「やまもと」で天せいろにかき玉蕎麦林立する大崎のタワーと町の蕎麦処

yamamoto五反田駅を東急ストアの前に出て、目黒川に沿うように歩く。
びすとろ「UOKIN」の前を通り過ぎて、川沿いにテラスを抱えたカフェの前を往き、キッチンカーや「メゾン・カイザー」を素通りして真っ直ぐ進む。
妙に高いタワーマンションなぞを横目にしながら、これらが建つ前には何があったんだろうなと考える。
答えが見つからないまま御殿山小学校の敷地の角を右に折れると、そこにずっとあったよな暖簾の揺れにほっとします。

如何にも自宅兼用店舗の構えの三階建て。yamamoto01賃料をテナントとして払うのではなく、
所有しているのであろう店舗で営むことの安定感を、
なんとなく感じつつ潜るのは、
御殿山のそば処「やまもと」の暖簾です。

壁の上には額装黒札の正しき蕎麦店のお品書き。yamamoto02yamamoto03わらわらと集まってくるご近所勤めのひと達は、
そのほとんどの註文が「天ざる」600円也であります。

急に自分の中の天邪鬼が顔を擡げてきて(笑)、
このひるのご註文は「天せいろ」。yamamoto04yamamoto10揚げ玉の入った温かいつけ汁を添える「天ざる」に対して、
「天せいろ」は海老天を一方の枠に収めた重箱でやってくる。
少なめにも見える蕎麦の盛りは、見掛け以上にたっぷり。
機械打ちではありましょうが、
町の蕎麦処の誠実なる姿に映ります。

辛くも甘くもない正調の江戸前つゆに注ぐは、
白濁もしっかりの蕎麦湯。yamamoto05美味しい蕎麦は蕎麦湯も旨くて、
ついつい沢山いただいてしまうものですね(笑)。

お蕎麦に使わなくなって久しいので、
薬味の葱を降ろした小皿に練り山葵が残る。yamamoto06“三つ違い山形”が「やまもと」さん家の家紋のようです。

秋口の或る日には、
何故だか「かき玉そば」の気分になる。yamamoto07yamamoto08やや甘めの甘汁に掻き玉子の甘さが加わって和む味わい。
熱い汁に浸っても日和ることのない蕎麦に好感です。
ところで「かき玉」と「玉子とじ」との違いって、
どの辺りにあるのでしょうね(笑)?

タワーマンションに囲まれつつ今を営む御殿山のそば処「やまもと」は、
きっと今日のおひるも大人気。yamamoto09営業は平日の昼のみと、
圏外に勤めている者にはなかなか伺う機会が得にくいけれど、
今度は素直に「天ざる」にしようか、
それとも「かき玉」「玉子とじ」の謎を解こうか、
ひっそりと思案しています(笑)。

「やまもと」
品川区東五反田2-22-12 [Map] 03-3444-4457

column/03649

bistrot「Quatre Avril」で鯖のキッシュ鶏腿のラグーまたひとつ失う闇市跡の情緒

quatreavril00例えば、新宿西口の通称ションベン横丁や花園神社裏のゴールデン街。
例えば、若者文化を取り込んで変化しつつ賑う吉祥寺のハモニカ横丁や再開発の圧力が日増しに迫っているような、そんな気もする荻窪北口の商店街。
そして、何度歩いても不思議なワクワク感の途絶えない大井町の東小路など、あちこちにまだまだ残る、闇市を起源とした昭和の味わい濃いぃ駅前の横丁が大好きだ。

そんな闇市の残滓漂う横丁が交叉する町のひとつが、
ご存知武蔵山駅前東南側に広がる一帯。
武蔵小山飲食店街「りゅえる」という看板も頭上に浮かぶ。
「鳥勇」の焼き鳥を立ち喰いするひと達を横目に路地に闖入すると、
その先にこれまた人気の立ち呑み処「晩杯屋」があった。quatreavril07quatreavril08あった、と過去形で表現せざるを得ないのは、
地域の再開発の本格的な施行を前にして、
その賑わいを一旦畳み、
都道420号線沿いの店舗に移ってしまったから。
ひと気のない店舗跡が妙に寂しく映ります。

交叉する路地に沿って味のある表情の店々が並び、
独特の風情と文化を内包する闇市跡の飲食店街。
こんなに魅力的な、謂わば歴史の遺産でもある場所を、
防災なぞの旗頭の下に一掃するしかないなんて、
なんて切ないことでしょう。

周囲がどんどん店を閉め始めてしまった界隈にあって、
流されぬ風情で営業を続けてくれている店のひとつが、
「晩杯屋」の路地の奥にありました。quatreavril角地の二辺を覆うテントには、
bistrot saisonnier「Quatre Avril」。
その下に透けている文字が以前ここに、
チュニジア料理の「イリッサILLISSA」があったことを示しています。

「イリッサ」の女性店主は今どうしているかなぁと、
そんなことも思いつつ入り込んだ店内は勿論、
小さな小さな店なので変更しようもなく、
レイアウトそのものは「イリッサ」当時のまま。quatreavril01狭いキッチンにカウンターが張り付いていて、
そこに幾つかの丸椅子が並ぶ。
特等席のテーブル席を予約して臨みました。

白のワインをいいただいて、
お食事はおまかせでお願いします。quatreavril02シェフがまずテーブルに届けてくれたのは、
「サーモンのハーブの香りのマリネ」。
マリネによってよりトローンとしたサーモンが、
ハーブの風味によって鮮やかな印象でいただけます。

そして、キッシュロレーヌを含めた前菜の盛り合わせ。quatreavril03quatreavril04定番のピスタチオ入りの鴨のパテや、
ジェノベーゼソースを載せたロティなぞなぞを、
中心のサラダに寄り添うように盛り込んでくれています。

頃合いよろしく次に届いたのが、
「ブルゴーニュ風 牛肉の赤ワイン煮」。quatreavril05ゴロゴロっとフルフルっと角切りの牛肉が踊るのは、
畏まったフレンチには望めない気どりなさ。
ワイングラスではなくて、
タンブラーでワインを呑みたい気分になってきます。


牛肉に続いて「鴨胸肉のロースト オレンジソース」。quatreavril06当然のように狭いキッチンから、
出来るものは出来るヨとばかりに繰り出してくるお皿たち。
ほとんど歩かずに360度回転しながら調理するのは、
最高に作業効率がいいのかもなって思ったりもいたします。

裏を返すように今度はランチタイムに訪ねると、
界隈の不穏な空気を察したひと達が、
あちこちから集まってきている様子が窺える。quatreavril09あっと云う間に埋まったカウンターの一席で、
フランスの有名ビール「1664セーズ・ソワソン・キャトル」。
1664年に設立された醸造所Kronenbourgクローネンブルグは、
ドイツとの国境近くのアルザス地方にあるらしい。

この日のキッシュは好物の鯖のヤツ。quatreavril10サバスキーの同志でも、
これに出会う機会が多くはないかもとほくそ笑む(笑)。
青魚の風味が期待通りに威力を発揮してくれています。

本日のお魚料理は、
イトヨリの、つまりはブイヤベース。quatreavril11quatreavril12アスパラガスの下に何気なく、
蟹が隠れていたりなんかして、
ひる間っからなんて贅沢なのでしょう。
お皿の底のスープが美味しいのは云うまでもありません。

何かを惜しむようにして、ふたたび訪ねたおひる時。quatreavril13ひよこ豆なぞなぞを炊いたスープで、
バゲットを齧りつつメイン料理の仕上がりを待つ。

選んだのは「鶏肉のラグー」。quatreavril14ぶつ切りにした鶏なのかとなんとなく考えていたら、
シェフから渡されたお皿には、
骨付きの腿肉がデデンと載っている。
大口開けて齧り付けば、閉じ込めた鶏の身と脂の旨みが、
ここぞとばかりに炸裂。
骨の際も美味しいのだよね(笑)。

武蔵小山飲食店街「りゅえる」の横丁の角に、
bistrot saisonnier「Quatre Avrilキャトルアブリール」があった。quatreavril15Quatre Avrilの意味は、4月4日。
何故に4月4日を店名に据えたのかと訊ねたら、
シェフの答えは、ウチの娘の誕生日だから!
そんな「Quatre Avril」は再開発を画策したヤツラの圧政に抗えず、
今は、不動前・かむろ坂に移転して営業中。
またそのうちにお邪魔しなくっちゃ。

「Quatre Avril」
移転前:品川区小山3-19-5 [Map] 03-6676-1802
移転後:品川区西五反田4-9-16 [Map] 03-6431-9363

column/03648

大衆料理「川治」で天然鰤に柳の舞煮付馬頭鯛塩焼烏賊大根ショウサシのひるの贅沢

kawadi人形町通りに交叉する新大橋通りに甘酒横丁、そして地下を浅草線が走る金座通りに繋がる通り。
その辺りが住居表示でいうところの日本橋人形町。
人形町通りから明治座のある清洲橋通りや隅田川方向へ向かい、浜町川の跡に残る緑道を渡ると住所が日本橋浜町になる。

そんな裏通りのおひる時。kawadi01時として行列を作る店がある。

足早に向かって二回転目の先頭になんとか潜り込む。kawadi02全18席と訊く店内はぎっしりと埋まります。

大衆料理「川治」のおひるは、日替わりの四品。
四品の定食には”ショウサシ”なるものを添えることができる。
初めて訪れた時はなんの符丁かと思い聞いていたのだけど(笑)、
それはつまり”小刺し”のことであるらしい。kawadi03“ショウサシツキデ”とお願いすれば、例えばこんな、
小というにはたっぷりな「ねぎとろ」のお皿がやってくるのです。

或る日には、小刺し付きで「天ブリ煮つけ」。kawadi04麗しき煮上がりの艶に針生姜。
繊細にして大胆な天然鰤の身と脂。
それが煮汁に促されるようにぐぐっと迫って、
思わず瞠目してしまいます。

或るおひるの小刺しは、平目とワラサ。kawadi05ワラサの切り身が真っ昼間から美しい(笑)。
そしてそのふた切れがひるのひと時に贅沢にして丁度よい。

鰆の塩焼きなんぞと悩んで選んだのが、
「やなぎのまい煮つけ」小刺し付き。kawadi06ガオー!と口を開けた一尾の煮つけに、
これまた贅沢さを思いつつ箸を動かす。
皮目や骨の際の白身がたいそう美味しゅうございます。

またまた或る日には「一汐まとう鯛」。kawadi07馬頭鯛の塩焼きなんてのをいただくのは、
もしかしたら初めてことかもしれないなぁと考えつつ、
お皿の上の切り身二片に、
独特の菱形の体躯の真ん中に所謂”図星”の斑点のある姿を思い浮かべる。
そうか、馬頭鯛ってなかなか淡白な、
こふいふ食べ口なのでありますね。

これまた或る日の小刺しは、ビンチョウのブツ。kawadi08いい具合にブツ切りの包丁の具合。
夜の部の煮魚も焼き魚もそしてお造りも惣菜すらも、
絶対いいに違いないと思う瞬間です。

そして例によって四品から選んだのが「いか大根」。kawadi09鰤大根と同じく、主役は大根。
烏賊の風味が滲み込んだ大根が旨い。
その分烏賊そのものは部位により噛み切り難くかったりはするけれど、
それも美味しい大根のためであるのです(笑)。

人形町の向こう、日本橋浜町の裏通りに大衆料理と謳う「川治」がある。kawadi10絶対いいに違いない宵闇の「川治」へ、いつ行けるかな。
きっと予約が必要なのでしょね。

「川治」
中央区日本橋浜町2-8-5 [Map] 03-3666-1100

column/03647