家庭の味「だいこん家」で大根と角煮煮玉子目光唐揚げ銀鰈煮付けほっこり温もり

daikonya夏も真っ盛りになろうとしている或る日の夕暮れ時のこと。
いわき駅周辺の街中におりました。
いわき市が何処にあるかというとそれは、福島県浜通りの南側。
太平洋に面していて、県内で最大の面積があり、中核市に指定されているらしい。
郡山から行こうとしたらJRの磐越東線にちょうどいい電車がなくて、高速バスの方が便利なのだと知る。
初めて訪れたいわきの街は、意外と大きなものでした。

荷物を降ろしてから早速、
街中を徘徊しようとホテルを抜け出ます。
偶々ホテルの窓から見えていて目星を付けていた、
地魚料理「旬」へと足を向ける。
ところがどうやら人気の店らしく、
ほとんど予約で満席でと謝られてしまう。
席がないと知ると益々、後ろ髪が引かれるもので(笑)。

そのすぐ近くには、
復興飲食店街”夜明け市場”という看板を掲げた、
ひと筋の横丁がある。daikonya0110数軒の飲食店が並ぶ横丁の脇にある、
和楽「魚菜亭」に食指が動いて、
えいっと扉を開くも、こちらも満員御礼だ。

界隈にお店が少ない訳ではなくて、
そこそこに飲食店の灯りが点っている。
それでもやっぱり人気店にひとが集まるのは、
世の常でありますね。

すっと今晩の止まり木を得られるものと踏んでいたのは、
意外と甘い考えだったのじゃないかとちょっぴり焦り出し(笑)、
駅正面の磐城街道を渡った西側へも足を伸ばしてみる。

LATOVラトブという再開発ビルの裏手には、
スナックがメインの妖しい路地がある。
ここでも再開発の巨大な建物と、
旧来からの風情ある街並みとが、
微妙に切ないコントラストをみせています。

そこから陸前浜街道方向へ、
裏通りをぷらぷらと南下する。
酒菜「英」という間口の狭い店が気になって突撃するも、
なんとここも満席。
週の始めだと云うのに一体どふゆふことでしょう。

と、やや暗がりにぽっと灯りを点した店がある。
ここには空席がありますように!と祈るような気持ちで(笑)、
苔色の暖簾を払いました。

なんだかほっこり柔らかな空気に包まれつつ、
店内左手のカウンターへと案内いただく。
背後のテーブル席エリアからは、
さわさわとした賑やかさが伝わってきます。

目の前には、でんでんでんと惣菜を載せた大皿が並んでる。daikonya02暫くしてから気がついたのは、
お店のメンバー全員が女性であること。
店に入った瞬間に感じた空気は、
そんなことにも由来しているのかもしれません。

歩き回った所為もあり、
まずはやっぱり麦酒から。
「大根と角煮と煮玉子」をいただいて、
やっとこひと息つけました(笑)。daikonya03煮崩れずしてとっぷりと煮汁の沁みた大根が、
期待通りに嬉し美味い。

「目光の唐揚げ」は、
深海の暗がりに明かりを照らしたら、
束になって飛び出してきたような、
そんな盛り付けが面白い。daikonya04身柔らかく、ほろほろと脂が旨いんだ。

会津の蔵元のものと聞く、
「飛露喜」の純米吟醸をいただいて、
「銀ガレイの煮付け」。daikonya05ふっくらと柔らかな身をほじほじして、
グラスを傾けキュっと。
カウンターの中で忙しなく動く、
何処か鯔背な気風のお姐さんが、
それでも時折ひと言ふた言、
言葉を投げてくれるのが妙に嬉しい(笑)。

どんな感じかなと想像しながら、
「みそいも」の到着を待つ。daikonya06醤油のあんで絡めたようにもみえるけど、
齧ればまったりと味噌の風味に包まれる。
うんうん、こんなんも嬉しいお惣菜。
こっち方面の家庭料理なのでありましょか。

食事も済ませてしまおうと、
店の名を冠した「だいこん家茶漬け」。daikonya07たらこ茶漬けに刻んだ昆布と大葉を添えて。
四角く刻んだ板海苔を浮かべた感じも面白い。
どの女将さんのアイデアなのでしょね(笑)。

いわき駅南側、
磐城街道と陸前浜街道が交差する辺りの裏通りに、
家庭料理の店「だいこん家」がある。daikonya08「大根と角煮と煮玉子」が、
定番中の定番のお惣菜ではありそうだけど、
大根使った料理がずらっと並んでいる訳では勿論ない。
気取らない家庭の味と、
ほっこりとした店の雰囲気は、
店名にも相通じる温もりでした。

「だいこん家」
いわき市平二町目58-1 [Map] 0246-22-7015

column/03622

札幌ラーメン「前川」で古きカウンターの丸椅子で古の札幌味噌とチャーハンと

maekawa以前は当て所もなく徘徊して、へーこんなところにこんな店があるんだ!などと心の裡で呟いてはひとりほくそ笑んだりしていた(笑)、恵比寿駅の東側界隈。
広尾の駅からゆっくり商店街に進んで、「アクアパッツァ」や「MARCHE AUX VINS」付近を通って明治通りに出て、その昔「Aroma-fresca」のあった側へと渋谷川を渡り、「賛否両論」の前を通って、「園山」のあった路地を眺めて蕎麦「慈玄」の店先の様子を窺う。
そのまま行けば「MASA’S KITCHEN」のある通り。
そこで、素敵な雰囲気を醸すお店の暖簾が目に留まりました。

ちょうど、いつぞやお邪魔した「海南鶏飯食堂2」の向かい辺り。maekawa01木造モルタル二階建て。
おでん「菊代」のお隣さんの暖簾には、
札幌ラーメン「前川」と刻まれていました。

二階の部屋の住人が几帳面に干し下げた、
布団や洗濯物が風景に味をつけている。maekawa04開け放した入口から丸椅子の並びが見れる。
古いカウンターは右手から奥に進んでいるようで、
恐らく10席に満たない、小体なお店であることが窺えます。

少々気後れしつつも、こんちはっと暖簾を払う。
タタキに足を踏み入れてすぐのところの丸椅子に、
ちょっと急くように腰を下ろして品札を探します。

献立表の並びにはまず「麺類」の見出しがあって、
次に「サッポロ麺類」「御飯類」「一品料理」と続く。
「サッポロ麺類」は「麺類」とはやはり別物のようです。

カウンターの一番奥に陣取っている、
如何にも近所のご隠居さんと思しき爺さんが、
年の頃もそう変わらない大将に頻りに話し掛ける。
きっと、ほとんど毎日来ているのに違いない。

そんなことを考えながら実は、
味噌ラーメンにしようかチャーハンにしようか、
ずっと迷ってた(笑)。

そこで女将さんにこう訊いてみた。
味噌ラーメンとチャーハンと両方頼むと多いですかね?
すると空かさず女将さんは、
そうねぇ、若いんだからダイジョブじゃない?
と、そう応えてくれた。

…いや、特に若いということはないのですけれど、
…そりゃ、大将に比べたら若輩者には違いないですけれど、
などと一瞬にしてぶつぶつ考えて(笑)、
では、両方お願いしますとオーダーを告げました。

再開発でもう既にぶっ壊されてしまった荏原町駅前にあった、
札幌ラーメン「どさん子」の風景を思い出したりしながら、
女将さんから受け取ったドンブリは、
サッポロ麺類系「味噌ラーメン」520円だ。maekawa02スープに脂が強過ぎることも、
味噌味が強過ぎることも塩辛過ぎることもない。
そして、当たり前のように大蒜が利いている。
ああ、嘗て街角にあった札幌ラーメンの店のドンブリって、
きっと基本的にはこんな感じだったとよねと独り言ちる。
自家製麺なんて思いも寄らず、
かん水含んだ黄色い麺が通例であった。

そこへ、はい、と「チャーハン」のお皿。maekawa03お米の粒が纏っているのは、
サラダ油かラードの油か。
きっともう少し油を控え目にして煽れば、
もっと気風よくパラッパラになるのかもしれないけれど、
玉子が米粒にコーティングしたようになるかもしれないけれど、
このチャーハンに文句なし。
これでいいのだ(笑)。

洒落街恵比寿の片隅に、
今も変わらぬ札幌ラーメン「前川」の暖簾が掛かる。maekawa05現況ではひる時のみの営業のため、
夜しかここを通らないひとには、
知られていない存在なのかもしれません。

「前川」
渋谷区恵比寿1-22-10 [Map] 03-3442-6083

column/03621

タイの食卓「クルン・サイアム ×アティック×」で特等席バルコニーゆるり寛ぐ夏の夜

krungsiamちょろちょろと徘徊している割には、何故だか通りの名前を覚え切れないのが、自由が丘駅周辺。
奥沢駅前から九品仏川の緑道と交叉して大井町線を渡り、さらに東横線の踏切を横切るヒルサイド通りをクランクするように抜けて目黒通りに至るのが、自由通り。
「SHUTTERS」やMUJI、FrancFranc前の憩いのベンチエリアを抱える九品仏川緑道は、グリーンストリートなんて呼ばれちゃっているらしい。

目黒通りの八雲三丁目から南下してピーコックの前を通って、
大井町線を渡り往くのが、学園通り。
あれ?それじゃぁガーベラ通りはどの道だろう。
片や、正面口のロータリーに繋がる道は、
自由が丘デパートの脇を往く女神通りに、
目黒通り方向へ北上するカトレア通り。
さらにはメープルストリート、しらかば通り、
ヒロストリートなんてのが並ぶ。
マリ・クレール通りは、駅南口の前にある通り。
他にも、サンモア通り、サンセットアレイ通り、
ひのき通りにわかくさ通り、
からたち通りにくりの木通りなんてのがあるらしい。
それって一体どこやねん(笑)。

日の長い夏の夕暮れ時。
北口を出て、鰻「ほさか」の前を通り、
歩き向かうは、すずかけ通り。
すずかけ通り沿いの一軒にお招きいただきました。krungsiam01間口の狭いビルの上方を見上げつつ、階段に挑みます。

階段を4階までぐりぐりっと上がって行けば、
やっとこ女性陣占めるカウンターの一室に辿り着く。krungsiam02ただ、目的の場所はそこではなくて、
奥の階段からさらにもうふたつ上階へと昇るのであります。

やってきたのは最上階のフロアの窓の先。
さっき見上げた道路斜線で切られた斜め壁のところに、
バルコニーが口を開けているのでありました。krungsiam03東側に眼下を見下ろせば、
城南信金のポール看板の先に緑ヶ丘へと至る、
すずかけ通りの道程が走ります。

西側に眼を遣れば、夕焼けの空が美しい。krungsiam04角錐体に尖がったビルは、
メガネドラックや「バンコクキッチン」の入った、
サーカス自由が丘というビルである模様。

乾杯はやっぱり「シンハーSingha-beer」で。krungsiam05一定のコクを含みながらスッキリと吞ませる感じは、
こうして真夏の暑さの残るオープンエアーによく馴染む。
アジアのビールだなぁと思う風味はどこから来ているのでしょう。

お招きくれたGingerちんが真っ先に発注したのが、
「ヤム・ウンセン ぷりぷりエビと春雨のヘルシーサラダ」。krungsiam06パクチー押しなフリして、
レモングラスの風味がキュキュっと攻めるオツなヤツ。
お皿は一気に空っぽになって、お代りの発注が飛ぶのです(笑)。

お、空心菜!と嬉しがらせるのは、
「パックブン・ファイデン 空芯菜のニンニク強火炒め」。
krungsiam07メニューにも謳うくらいに一気呵成に炒め上げたであろう空心菜は、
シャキッとして仄か苦い独特の香りが活性している。
うんうん、美味しいね。

「トード・マン・クン」は、エビのぷりぷりさつま揚げ。
krungsiam08断面から覗く明るいピンク色が海老の気配を知らせてる。
どれどれと歯を立てれば成る程、
プリッとした海老の弾力と甘みが芳ばしくいただけます。

「シンハー」から同じインドシナ半島の、
ベトナムのビールに替えてみる。krungsiam09えーっと、これでなんと読むんだったっけ。
そうそう「333」と書いて「バーバーバー」。
どちらも割とすっきりと呑ませてくれて、
ちょっと汗ばむオープンエアーがやっぱり良く似合います。

ベトナムといえばこれは外せないよねの、
「ポピア・ソット 具沢山もちもち皮の生春巻き」。krungsiam11 krungsiam12そう謳っている通り、
モッチリした米粉の皮の食感が愉し美味しい。
幾らでも食べられそうな軽やかさがいいんだ。

エビ入りチャーハンは「カオ・パット・クン」と云う。
krungsiam10タイ米のパラパラはやっぱり、
こふいふお皿で特長を最大発揮する。
師匠も何気にお気に入りのようであられましたねっ。

暑い夜風の中にいたならモヒートもいただきたい。krungsiam13本格派とはいかないけれど、
頑張ってつくってくれました(笑)。

石垣旅行記を話していたら、
「パット・マラ タイ風ゴーヤチャンプル」がやってきた。krungsiam14そうはいってもなかなかの本格派。
ナムプラーつかってるっぽいところがタイ風でありましょか。

自由が丘すずかけ通りの小さな雑居ビルの上階に、
タイの食卓「クルン・サイアム ×アティック×」がある。krungsiam16ルーフバルコニー持っちゃってる友人宅のよな特等席で、
のんびり寛ぐ夏の夜のひと時に大感謝です。

「クルン・サイアム ×アティック×」
目黒区自由が丘1-13-13 KAWABE BLD 4F [Map] 03-6421-3677
http://www.krungsiam.info/

column/03620

YAKITORI「燃WEST」で知多 ウイスキーのハイボールは風香る和食との相性やよし

moe久し振りに降り立った六本木。
今夜の目的地は、
六本木通りを霞町方面へ向かった、
六本木ヒルズのちょうど向かい辺り。
外苑東通りが潜る、
麻布トンネル入口脇の側道沿いにあるEDGEビル。
西麻布1-1-1所在のビルの半地下にあるのが、YAKITORI「燃WEST」だ。

そして、今夜のお題は、
サントリーウイスキー「知多」。moe01どっしりと存在感のあるカウンターの、
ハイボールタワーにも「知多」の文字が浮かんでる。
それは、この9月冒頭に発売された、
グレーンウイスキーなのであります。

まずは「知多のハイボール」でスコール‼︎
スッキリとしてクセのない味わいは、
“まず麦酒”の習慣に替えて、
この手もあると思わせる万能さ秘めているね。moe02そんな話をし乍ら、
立て続けに2杯のハイボールを干してしまう(笑)。
「知多」のために新しく型を誂えて作ったという、
例えば「白州」のそれとは違うフォルムのグラスが、
なかなか美しい。

実は最近、白州蒸溜所に久し振りに出掛けて、
白州の限定ボトルやグラスと一緒に、
「知多」のボトルも買い込んで来た。moe03白州のグラスで「知多」をいただいたりしていたのだけど、
「知多」でハイボールするなら、
「知多」のグラスがぜひ欲しい(笑)。

サントリーの蒸溜所としては、
山崎蒸溜所、白州蒸溜所がよく知られているけど、
国内にもうひとつ蒸溜所がある。
それが「知多」を生む拠点、
知多半島の付け根辺りにある蒸溜所。
知多蒸溜所は、
白州蒸溜所よりも1年早い1972年に竣工して、
既に40年以上も稼働しているのであります。

知多蒸溜所の特徴は、
何と云ってもモルトウイスキーではなくて、
グレーンウイスキーを製造している処。
玉蜀黍と麦芽なんぞを原料として蒸溜したのが、
グレーンウイスキー。
30m程の高さがあるプラント。
4塔の連続式蒸溜機を用いて、
クリーン、ミディアム、ヘビーと
3タイプに原酒を作り分けているのは、
世界的にも稀なことだという。

さて、嬉しいことに目の前には、
4つのテイスティンググラスが置かれてる。moe04原酒のアルコール度数は50度。
それを順番に舐めてゆきます。

クリーンなタイプの原酒は、
なるほど、甘さを含んだクリアな透明感真っしぐら。
対して、ハードなタイプの原酒は、
対照的にややピリッとした輪郭のもの。
ただ、決して重たいものではなく、
例えるなら、クセのない泡盛古酒といった感じ。
思いの外穏やかで荒々しさはない。moe21そして3つめのやや琥珀色のグラスが、
ボルドーから届いたワイン樽での熟成を経た原酒。
世界的にはバーボン樽を用いることが多いそう。
成る程、クリーンな中にも奥行きを齎すような風味が息衝いています。

こんな風にタイプの違う、
そして年次の異なるグレーン原酒をブレンドして、
ブレンダーの熟練の感性が仕立てたのが「知多」という訳ですね。
同じ蒸溜所で生まれた原酒のブレンドなので、
シングルモルトならぬ、
間違うことなきシングルグレーンだ。

コーンに、蒸溜塔に、樽。
そんな「知多」の特徴が、
和紙を用いたラベルの小さな刻印にも表現されている。moe05「知多」の文字は、
「響」の文字を揮毫したと同じ書道家、
荻野丹雪氏によるものだそう。

「知多」のボトルは、
実は意外と珍しいという無色透明のボトル。moe07moe06グレーンの色味をそのまま表出するような、
そんな意図がありそうで、
キャップにもヘアライン状のデザインを何気なく仕込んだりと、
練られた意匠になっています。

そうそう「響」といえば、
「響」を始め「角」「オールド」といったブレンデットウイスキーに、
「知多」のグレーンが使われている。
いままで名の通ったウイスキーの裏方さんとして、
秘かに活躍していた原酒が、
いよいよ注目を浴びる位置に登場したということでもあるのです。

3杯めのハイボールをいただいたところで(笑)、
口開きの料理が運ばれてきた。moe08スライスした松茸浮かべた出汁の利いた茶碗蒸し。
程良い生地の濃密さと松茸の香りにニンマリです。

コリっとした歯触りに鮮度の良さを思わす砂肝は、
千葉の赤鶏のものだという。moe09薄く湯引きしたささみも成る程の甘い滋味だ。

YAKITORI「燃WEST」たる真骨頂は当然焼鳥に。moe11藁に燻すというひと手間を施した、
媛っこ地鶏のもも肉が旨い。
こんな時には燗のお酒でなんて思うけど、
こんなすっきりしたハイボールの方が、
串の味わいを活かしてくれるのかもしれないね。
1:3.5程度にちょっと濃いめに作るのもポイントみたいだ。

大根おろしを載せて、こだわり卵の玉子焼き。moe12moe14そして、フランス鶉、エル・フランスの串。
塩でいただくふんわりした白身の中は、とろんと半熟の黄身。
「知多」のハイボールが、
様々な和食の味わいを引き立て、
なんの違和感もなく合いそうだというのは、
こんなお皿でもよく判ります。

成る程、肉厚な舞茸の天麩羅。moe15天麩羅などの揚げモノとの相性は、
云わずもがなでありますね。

按配のいいタレを纏ったつくねの串に寄り添う玉子の黄身。moe1765度で温めたという黄身が濃度を増して、
つくねの身にまったりとよく絡む。
含ませたナンコツの食感と併せて、
なかなかどうして、印象的なつくねでありました。

〆には三択の中から「鶏そば」を選んでみた。moe20醤油仕立ての日本蕎麦をイメージしていたところ、
届いた器を覗き込んで、ああ、そう来たかと膝を打つ。
しっかり乳化した鶏白湯スープを作る材料はきっとたっぷりとある。
濃密なスープに一気に満腹に仕上がりました(笑)。

麻布トンネル覗く西麻布の一角にYAKITORI「燃WEST」がある。moe19“燃”と書いて”モエ”と読ませるのだそう。
瀬里奈の裏手にある「燃」に対しての”WEST”であるらしい。
存在感のあるカウンターをメインとしたダイニングでいただく焼鳥は、
まるで白木のカウンターでいただくような、
そんな職人気質の串たちでありました。

これから精細な味わいの和食系を軸に、
出逢う機会が広がっていきそうな予感十分な、
サントリー11年ぶりの新ブランド、
シングルグレーンウイスキー「知多」のハイボール。
“風香るハイボール”のキャッチフレーズが良く似合います。
昼間っからの気軽な一杯にも似合って困ります(笑)。
手っ取り早く、amazonのココでも手に入れられるようです。

今宵は、
シングルグレーンウイスキー「知多」のwebページも注目の、
サントリーの企画でお邪魔しました。

「燃WEST」
港区西麻布1-1-1 EDGEビル [Map] 03-3475-1140
http://rockgogo.co.jp/

column/03619

地粉手打ちうどん「たべもの処 蔵」でつゆも麺も冷え切ったうどんにこりゃ酷い

kura小平駅の南側を走る都立狭山・境緑道。
のんびり散歩もよく似合うその緑道沿いにある、武蔵野うどんの店「指田屋」の女将さんに教えてもらったのが、その緑道の先にある「小平ふるさと村」でした。
小平の地がそもそも、玉川上水の開通に伴って開発が行われた新田村落であり、街道沿いに屋敷森に囲まれた農家が並び、その周囲に畑の広がる土地なのでありました。

そんな郷土の風土と文化を遺そうと、
設けられたのが「小平ふるさと村」。
小平ふるさと村では、
赤い円筒形ポストの建つ郵便局舎の奥にある旧き農家屋敷で、
小平糧うどんと称するうどんをいただけた。
それは、武蔵野手打ちうどん保存普及会会長にして、
“うどん博士”として知られた加藤有次さんが監修したうどん。
間違うことなき武蔵野うどんに秘かに感激したのをよく憶えています。

そして、街並みというか旧き良き建物たちを遺そうという、
そんな取り組みをしている施設が小金井公園の中にもあるらしい。
そして、そこにも武蔵野うどんの店があるらしいと知って、
足を運ぶ機会を窺っていました。

春先の或る週末のこと。
武蔵小金井駅から西武バスに乗って小金井公園へ。kura01kura02kura04広々とした公園内を横切っていくと、
木々の向うにSLのフォルムがみえる。
そして、芝生の連なりの先に、
歴史的建造物「旧光華殿」を改修したという建物が見えてきました。

総栂普請という造りの高橋是清邸の二階は、
是清の書斎や寝室として使われていたそう。kura05そこは、昭和11年の2・26事件の現場になった部屋だといいます。

場内には、強く懐かしさを誘う都電も電停にいたりする。kura06どうやら7500形であるらしいけれど、
それが正しいかとか、
このカナリアイエローが正当の塗装色であるかなどは、
グヤ父さんの見解を待ちたいところ(笑)。

その先のエリアに折れ入ると、
緑青に色付いた看板建築の建物の並ぶ街並みになる。kura07kura08正面にみえる大型の唐破風は、
「子宝湯」という千住にあった銭湯だという。

大開口の小寺醤油店の店先を眺めながらその奥へ進むと、
なんとはなしに見憶えのある暖簾が目に留まる。kura09kura10酒「鍵屋」。
あれ?ここに復元した居酒屋の建物があるってことは、
鶯谷の「鍵屋」がもうないってこと?!と急に動揺したりする。
もう10年も前に一度だけお邪魔したことのある、
根岸・下谷の居酒屋「鍵屋」は今もなお営業を続けている筈。
この建物は、1970年(昭和45年)頃の姿に復元したものだそうだけど、
するってぇと、現存する居酒屋「鍵屋」の建物については、
どう捉えておけばよいのでしょうね。

少しばかりモヤっとした気分になりながら、
踵を返して、園内東ゾーンの通りの真ん中辺りまで戻ってきた。
明治初期に創業した文具店「武居三省堂」の、
これまた看板建築の建物の並びに蔵風にくすんだ建物がある。kura11その二階にあるのが、
地粉手打ちうどんの店「たべもの処 蔵」だ。

金額からして量少な目の予感がしたので、
「武蔵野うどん」のチケットに「大盛り券」を添えて、
一番奥のテーブル席でしばしの待機です。

お品書きを改めて眺めると、
“冷たいうどん”の項に「武蔵野つけうどん」を含めて、
3種類のうどんが並ぶ。
“温かいうどん”の項には、
「武蔵野うどんかけ」を筆頭に7種類のうどんが並んでいます。

お姐さんがお待たせしましたと云いながら、
運んできてくれたお膳を眺める。kura12kura13地粉の色合いは余り感じさせない、
やや細身のうどんには、
成る程、手打ちらしい縒れがみられます。

小皿に載せた刻み葱や玉葱は、
すっかり水に晒したような、
辛味の抜けたもの。kura14それがしっかり冷えている。
これが”糧”だということであれば、
ほうれん草などの青みの野菜を少々、
添えて欲しいところ。

つけ汁には、武蔵野うどん定番の豚バラ肉どころか、
一切の具は、なし。

そんなつけ汁を注いだ器を手にした瞬間、
あれ?っと思う。kura15箸に載せたうどんをつけ汁に浸して、ひと啜り。

ああああああああ!
冷たい、冷た過ぎる!

なんもかもがさっきまで冷蔵庫に入っていたかのように、
キンキンに冷えている。
うどんが細めであることも相俟って、
なんだか冷麦を啜っている気分になる。

酷い、これは酷過ぎる。
誰がつけ汁を冷たいまま供することを思いついたのでしょうか。

お姐さんに、
これっていつもこうして冷たいまま?と訊くと、
なにも戸惑う様子もなく、ハイ、そうですけど、
との答えが返ってきた。
うどんは此処で打っている訳ではないですよね?
と続けて訊ねると、
ハイ、近くの方が打ってくれたものを運び込んで、
こちらで提供しています、と云う。
こんな提供の仕方を許している、
そんなうどん店は一体どこのお店なのだろうと、
更に訊ねると、それはお答えできないと云う。

ううむ。kura16「小平ふるさと村」で、
加藤有次さんが監修したうどんに感激した、
その反動も手伝って、
酷い落胆と妙な憤りに包まれてしまった、
たべもの処「蔵」でのひと時でありました。

都立小金井公園の江戸東京たてもの園に、
武蔵野うどんと称する手打ちうどんの「たべもの処 蔵」がある。kura17都内各所から移築し復元した味ある建物が並ぶ、
そんな園内にあって、
この「蔵」の入った建物は文化遺産でもなんでもなくて、
ただの蔵風建屋に過ぎないものらしい。
消防法あたりの法令への対処も必要なのだろうけど、
なんだかそこにも紛い物をみたような気分で、
とぼとぼと広い公園内をバス停へと戻り歩いたのでありました。
やれやれ。

「たべもの処 蔵」
東京都小金井市桜町3-7-1(都立小金井公園/江戸東京たてもの園内)
[Map] 042-387-3141  http://www.udonkura.com/

column/03618