浪花の味「明治軒」でポークチャップにオムライスナニワの洋食の特徴を思う

meijiken一時期、心斎橋のホテルに宿をとることがありました。
荷物を部屋に降ろして、さて何処で夕餉をいただこうかと思案しつつ、何故だか結局足が向くのは、周防町(すおうまち)筋から清水町筋辺り。
マスタの店、なにわフレンチ「びぎん」はその周防町筋にあるし、過日の和食居酒屋「わのつぎ」は清水町筋にある。
そんなこんなで多少は勝手の判る界隈だからなのでしょう。

御堂筋、心斎橋筋にも近い畳屋町筋と清水町筋とが交差する辺り。
頭上を見上げるとちょっと不思議なフォルムの看板が宙に浮かんでる。meijiken01紙ナプキンを折ったシルエットがモチーフになっているのかもしれない、そんな気がします。

カウンターの隅に居場所を見つけました。meijiken02オープンな厨房では、コックコートのオッチャンニイチャンが忙しそうに、でも手馴れた雰囲気で立ち動いています。

麦酒と一緒にお願いしたのが、”自慢の逸品料理”コーナーから「ポークチャップ」。meijiken03フライパンでカリカリに焼き込めた豚肩あたりの肉がお皿の中央にドンと載り、その半円をケチャップ色のソースで覆っています。

歯応えガッチリの豚肉に絡めていただくソースは、ケチャップとウスターソースに醤油や日本酒を足したもののような感じ。meijiken04豚肉を焼いたフライパンで熱したためか、油が強くってクドいので、麦酒で洗うようにしていただくのがちょうどよい(笑)。

“定番メニュー”コーナーから「オムライス」。meijiken05牛乳やクリームなんぞは使っていなさそうな素朴な玉子の生地だ。

スプーンでざっくりと崩すようにすると薄衣の中からケチャップライスが顔を出す。meijiken06パラパラに炒めるスタイルではなくて、ぐちゃっとさせておくのが「明治軒」流か。
牛肉のミンチや玉葱なんかが具の要素として含んでいるようなのだけど、ペーストにしてしまっているとのことで、その所在は判らないし、ペーストにする意味もまた判りません。
上に載せたソースは、所謂デミソースとは趣が違っていて、どこかお好み焼きソースを思わすもの。
うーむ。
所変われば品変わる、なんて言葉が脳裏を過ぎるのでありました(笑)。

創業昭和元年、浪花の味「明治軒」は、清水町筋の一角にある。meijiken082015年には90周年を迎える老舗洋食店の店名は、初代が和歌山にあった「明治軒」で修行を積み、独立する際に屋号を継いだものだそう。
「串カツ」や豚ヘレと野菜のフライだという「銀カツ」も人気らしい。
冬に界隈を訪ねる機会がふたたびあれば「カキフライ」をお願いするんだけどなぁ。

そう云えば、グリル「喜多一」、欧風料理「グリルロア」、グリル「しき浪」、グリル「アイ」、シチューの店「グリル モリタ」と訪ねたことがあるだけでも”グリル”と題する店が多いのが判る。
そんな傾向もナニワの洋食店の特徴なのかもしれません。

「明治軒」
大阪市中央区心斎橋筋1-5-32 [Map] 06-6271-6761
http://meijiken.com/

column/03542

割烹「嶋村」で金ぷら重に錦どんぶり嘉永三年創業の藍の暖簾

shimamura八重洲~日本橋界隈への所用を済ませて、例によって辺りをふらふらと徘徊(笑)。
桜通りが華やかになるにはまだちょっと早いなぁとか。
カキボールちっくな牡蠣フライの「日本橋 今泉」は健在かしらんとか。
「お多幸」本店の「とうめし」には随分ご無沙汰しているなぁとか。
めん徳「二代目つじ田」のお隣の「三洲屋」八重洲店は今、ランチ営業を止めちゃってるんだなぁとか。

ぐっと八重洲通り寄りにやってきて目に留まったのが、赤い煉瓦タイルの外装に専用の三角屋根をいただいた提灯を提げた建物。shimamura01櫻正宗提供の袖看板には、割烹「嶋村」とあります。

店先に佇んで横木の品書きを覗き込む。shimamura02夜の様子は不明ながら、お昼食ならなんとかいただけそうな料理もありそうです。

藍色の暖簾を潜ると、手前にテーブル席が数卓あって、その奥には厨房に向かうカウンター席がある。
カウンターが一杯のタイミングだったのか、テーブルへのご案内です。

きびきび立ち動く仲居さん的な姐さんにお願いしたのが「金ぷら重」。shimamura03丸いお重の蓋の隙間から海老の尻尾が飛び出しています。

蓋をパカリと外せば、意外とシンプルな見栄えのお重。shimamura04それは、背腸を外して摘んで伸ばして形を整えて衣をつけて揚げる様子が素直に想像出来る佇まい。
矢鱈胡麻油芬芬とか、矢鱈濃いぃタレに漬けるとかの押し出しの強い江戸前天婦羅ではなく、気取らず端正な海老天婦羅。
卵黄を多く使って衣がやや黄色味がかっているのも「金ぷら」たるところなのでしょう。
ご飯そのものも心なしか美味しいような気がします。

裏を返すようにして、今度は厨房覗くカウンター席。shimamura05 見上げる藍染の暖簾には、蔦のような家紋が刻まれています。

お願いしたのは「錦どんぶり」。shimamura06その名の通り、錦糸玉子がどんぶりの全面にフューチャーされ、中央に煌びやかにイクラの粒がごっそりと載る。

秋口に訪ねたら、採れ立て漬け立ての新鮮なイクラが載るのかなぁなぞと考えつつ山葵醤油を回し掛けて、箸を動かします。shimamura07錦糸玉子の下には意外や、ひじきが一面に敷かれていて、錦糸玉子とのコントラストが増す仕組み。
うん、成る程ね。

帰り際、扉の手前の壁に掲げた額が目に留まる。shimamura08所謂御料理番付で、右肩に安政六初冬とある。
安政6年は、1859年のこと。
その中央の枠の、行司と題した部分の最下段に檜物町(ひものまち)嶋村とある。
最下段に並んだ山谷・八百善、深川・平清と嶋村はともに、勧進元という最高ランクの位置付けであったらしい。
これだけで150年を超える歴史があることが判ります。

老舗割烹「嶋村」の創業は、嘉永三年(1850年)のこと。shimamura09仕出しの店として日本橋に興したのが始まりであるらしい。
時の将軍徳川家慶の頃に創業し、明治維新後に仕出しの店から料亭となったという。
そんな歴史を湛えつつ、客を妙に畏まらせるような気高い気取りを感じさせないのがいいね。

「嶋村」
中央区八重洲1-8-6 嶋村ビル [Map] 03-3271-9963

column/03541

手打ちそばうどん「東小金井 甚五郎」で肉づけ合盛り牡蠣うどん武蔵野うどんDNA

jingoro蔦が覆い、懐古趣味が十分馴染んだ趣のある佇まいのお店。
国分寺駅の北口にあった「甚五郎」は、とっても印象に残る、そして本気で打ったうどんが旨いお店でありました。
残念ながらそんな味ある店は、北口駅前の再開発により取り壊されてしまいました。
ただ、倖いなことに既にその近所に構えていた店に移転統合して「国分寺 甚五郎」として営業が継続されています。

そんな「国分寺 甚五郎」からスピンアウトした店があると知って、お邪魔する機会を窺っておりました。jingoro01降り立った東小金井駅は、装い新たな感じ。
蒼穹を背にした駅舎を見上げていると、ここへ以前立ち寄ったのは高架化される前のことなんだろうと気がつきます。

「東小金井 甚五郎」は、南口を出て徒歩2分弱。jingoro02角を折れると、建物側面の壁に木目の看板が見つかる。

店先に暖簾を収める場所はあるのに暖簾は提げてない。
出し忘れってことはないよなーと思いつつ、案内されたテーブル、いやカウンター席に腰を据えます。jingoro03壁にぶつけたテーブル、いやカウンター(ややこしい)は、おひとりさま用にしっかり分かれているのがちょっと不思議な感じがいたします。

ご注文は勿論「肉づけのおうどん」!
ではなくて、「肉づけのおうどんおそばの合盛り」。jingoro04「国分寺 甚五郎」でもいただいたメニューです。

うどんは、如何にも手打ちの灰褐色。jingoro05食べ啜る前からその歯応えが伝わってくるようです。

肉汁は、醤油控えめの具も汁もたっぷり系。jingoro06飲み干せるタイプの汁だとお見受けします。

啜れば納得の粉の風味にゴリムニュ食感。jingoro07やや柔らかめの感じもするけれど、文句はない。
品書きでは、地元武蔵野台地で生産された小麦粉を使用した手打ち麺「武蔵野うどん」と明快に謳っていて、頼もしくも気持ちいい(笑)。
武蔵野台地の何処で生産された粉なのかな。
農林61号ではないのかな。

北風の強い日にふたたび東小金井駅に降り立てば、駅前の「宝華」という中華料理屋の前に数人の空席待ちがある。
油そば的「宝ソバ」とか炒飯が人気らしいのかと考えながら徒歩2分。

寒風に晒されたそんな日には、壁の品札にあった「牡蠣のおうどん」を所望します。jingoro08こね鉢のような大きめのドンブリでドーンと届いた器には、広島産という牡蠣の身がごろごろっと載っている。
早速そのひとつを口に運ぶと、清澄な海域で採れたであろう様子が浮かぶ澄んだ旨味が弾けます。

熱々の汁は味噌仕立て。
その熱々の中にはあっても一定の歯応えを当然のように主張するうどん。jingoro09汁にも牡蠣のエキスが滲んで迫る。
つけ汁でいただくのがやっぱり一番似合うけど、温かいのも負けず劣らず悪くない美味しさです。

「国分寺 甚五郎」からスピンオフして東小金井に陣取れば、その名は「東小金井 甚五郎」。jingoro10「国分寺 甚五郎」の武蔵野うどんDNAを真っ当に引き継ぐ店として覚えておきたい拠り所です。

「東小金井 甚五郎」
小金井市東町4-43-10 [Map] 042-383-0151

column/03540

串焼「文福」本店で生ホッピー元祖カレー煮込み玉三郎イタリアン焼かえるのへそ

bunnpuku或る日出掛けた町田の街。
とっても久し振りだったのだけど、小田急とJRとを結ぶペデストリアンデッキのあたりを歩くと、なんだか賑やかな大きな街を闊歩しているような気にさせる。
川崎や横浜に喰い込んだ形で東京の隅っこにある町田もいまや、人口42万人を超える街なのですね。
そんな町田を離れ、横浜線で菊名に出て、東横線の武蔵小杉で途中下車しました。

武蔵小杉に降り立つのもこれまた久し振り。
南武線側の北口へと廻って、ロータリーを渡ったところでふと振り返る。bunnpuku01ああ、これが武蔵小杉再開発の象徴とされるタワー群でありますか。

そんな再開発の図を背にして東横線の高架沿いを進んで脇道を覗き込む。bunnpuku13串揚げの店なぞの赤提灯の灯りが嬉しい道を歩きます。

その先左手に見つけたのが、串焼「文福」本店の袖看板。
金文字の揮毫の粋な看板と縄暖簾が迎えてくれます。

お店の兄ちゃんに一本指を立てると、一瞬ムムムという表情になって、御予約のお時間までの一時間くらいでよろしければと云う。
はい、勿論、そのようにと御予約席に収まります。bunnpuku02周囲はその通り、ぎっしり満席。
悪くないタイミングで辿り着けたようです。

まずは呑み物からと「生ホッピー白」を貰う。bunnpuku03きっと「ホッピー仙人」同様に、樽からちゅるちゅるジョッキに注いだホッピーでできている。
串焼きの煙を眺めながら傾けるは、「文福」と刻まれたジョッキ。
なんだかちょっとメロウなお味、そんな気がします。

ここ「文福」のスペシャリテが「元祖カレー煮込み」。bunnpuku04目の前のレンジでチンした器は勿論、器ごと熱い。
その名の通り、濃密なカレーで煮込み和えたモツ、というよりモツ入り焼きカレーといった風情のもの。
カレーの中からモツ以外に豆腐も顔を出したりする。
ホッピーのツマミにもいいし、白飯よこせと叫んでもよさそう(笑)。

ちょうど目の前で串を載せた焼き台が煙と湯気をあげている。bunnpuku05職人さんの手際を眺めているだけで愉しくなってきます。

届いたお皿は、「カレー煮込み」とセットのおまかせ「焼きとん」。bunnpuku06かしら、たん、はつ、こぶくろ、レバー、しろの6本が綺麗に並びます。

キリッとしたタレを含んだしろやレバーが柔らかく旨味を内包していて、いい。bunnpuku07練り芥子をちょんとつけるとまたオツな感じになりますですね。

ホッピーをお代わりしてお願いしたのが、そっれってなーにの「玉三郎」と「イタリアン焼き」。bunnpuku08「玉三郎」はやっぱり、鶉の玉子をタレに漬け込んで焼いた串。
「イタリアン焼き」は、大き目のプチトマトに極薄切りのベーコンを捲いた串。
トッピングの粉チーズとトマトからの連想が”イタリアン”なのでしょう。
なるほど、ぷちっと弾けるトマトの甘酸っぱ熱い汁に粉チーズの風味が相俟って、旨いであります。

「かえるのへそ」は、訊けばご存知烏賊の口の串。bunnpuku09所謂「いかとんび」の歯の部分を外したものを串焼きにしてくれている。
噛めば心地いい歯応えで、小さな身に凝縮した烏賊の旨味がひと粒ひと粒味わえます。

「ピーコン」は、その名の通り、ピーマンのベーコン捲き。
ただ、よくありそうなベーコン巻きの串ではなくて、中に蕩けるチーズとコーンを潜ませていて、それを半裁して届けてくれる。bunnpuku10焼いたピーマンとベーコン、そしてチーズの取り合わせが不味かろう筈がありません。

二杯目のホッピーもなくなろうとする頃に、そろそろお時間が近づいてきましたとお兄さんのアナウンス。
然らばと、〆のお食事を所望する。
岩のりの「おにぎり」と味噌汁で小さな小さな大団円。bunnpuku11ぱりぱりの海苔で包んだおにぎりの中から岩海苔が顔を出す。
うんうん、ご馳走さまでした。

武蔵小杉北口の裏道に串焼「文福」がある。bunnpuku12「文福」はその人気ゆえか、南口の方にも姉妹店を展開しているらしい。
人気の程は今宵の賑わい具合や常連の多さでも様子が判る。
こんなエリアはぜひ再開発しないままで置いておいて欲しいなと、そう思う宵の口でありました。

「文福」
川崎市中原区新丸子町915 [Map] 044-722-8828

column/03539

肉専門の店「津多屋」で厨房通ってお茶の間生姜焼き炬燵のロースかつ

tsutaya小伝馬町にそんな店があるのかぁ。
そう思っていた矢先に、グヤ父さんが闖入していて愉しく読んだ記事がある。
店の名を「津多屋」といって、”お茶の間、おばちゃん付き!”が、父さんが評したキャッチフレーズ。
それは、横浜赤レンガ倉庫の「chino-ma」のようにちょっと小洒落たカフェなんかでは決してない。
どんなことになっとるかこの目で確かめようと、小伝馬町駅のホームへと降り立ちました。

所在地へ着いてみるとそこには、ビルを背中にし、両サイドを駐車場に挟まれた二階建の家屋がある。tsutaya01なんだか解体して一筆の敷地にしてビルにする日を待たれているような気もします。

暖簾を払ってサッシュのドアを開けるとグヤ父さんのレポート通り、いきなりそこに厨房がある。
お邪魔しまーすと入っていくと横からオヤジさんが奥へどうぞと促してくれる。
云われるまま上がり込んだ処がまさに、お茶の間なのであります。tsutaya02硝子越しに、今通ってきた厨房の様子が覗けます。

よっこらしょっと座卓に座り込むと、正面に茶箪笥が見える。tsutaya04草臥れた感じがなかなかいい味わいです。

するとそこに別のお客さん達がやってきて、勝手知ったる我が家よろしく、階段を二階へと上がってゆく。tsutaya03あ、一階のこの茶の間だけが客席ってことではきっとないもんね。

オバちゃんが淹れてくれたお茶を脇に、卓上の割り箸袋を眺めると、表側には肉専門の店「津多屋」、裏側には「梅澤商店」の名があります。tsutaya05肉屋さんとしては、梅澤商店で商いしているんでしょうね。

肉専門店ゆえ、肉料理のオンパレードでしょうと、ビニールファイルに挟んだ手書きメニューを眺める。tsutaya06でも中には「エビフライ」なんてのも紛れ込んでいて、微笑ましい。

さて、そんなメニューから選んだのは、「豚生姜焼き」。
「ヒレ生姜焼き」が別にあるってことは、豚ロースなんだろなとあたりをつけて。tsutaya07ただそれは若干予想に反して、玉葱やピーマン炒めを載せた絵面でやってきました。

お肉が結構硬めかもねと咀嚼しながらそう思う。tsutaya08タレは後から方式のような気はするんだけど、その辺りはどふいふ加減なのでしょう。
いえいえ、オバちゃんオジちゃんの作る料理に文句はありません。

別の晴れた日にふたたび訪ねると、今度は既に一階のお茶の間に先客たちがいらした。
これ幸いと(笑)、二階への階段をゆっくり上がります。
すると、視線の先に映ったのは、暖かそうな炬燵のこんもり。tsutaya09tsutaya10振り返った階段の踏面は、何人もの足で綺麗に磨かれていました。

二階には続きの間があって、三卓ぐらいは置けそうな感じ。
炬燵入れましょうねと、電源をいれてくれたオバちゃんに「ロースかつ」をお願いします。

炬燵の一角に「ロースかつ」が来た。tsutaya11お店でこふいふ光景って、そうそう見れるものでもないよう気もします。

衣とお肉がみっしり噛み合って、何処にも遜色のないロースかつ。tsutaya12例によって、お醤油と練り芥子少々にて有難くいただきます。

小伝馬町の裏道に肉専門の店と謳う「津多屋」がある。tsutaya13如何にも”肉専門店”らしい料理がある訳ではなさそうだけど、逆にそれがお手製を思わせて和ませる。
盛り付けなんかしているところで、お代を払うって場面もちょと新鮮。
ぜひ一度、小伝馬町のオバちゃん付きお茶の間を訪ねてみませんか(笑)。

「津多屋」
中央区日本橋本町4-9-6 [Map] 03-3661-7638

column/03538