街の洋食屋「ミツワグリル」で 大岡川沿いの情緒とトルコライス

mitsuwa.jpg恐らく5年振りであろう、みなとみらい線馬車道駅。 目的地は、駅上すぐの横浜第二合同庁舎。 国土交通省関東運輸局の海上安全環境部船員労働環境・海技資格課なる部局窓口であります。 前回同様、小型一級船舶操縦免許の更新手続きにとやってきたのです。 窓口の女性に書類等一式を提出して、受取書を書いているうちに新しい免許が出来上がってきた。 やっぱり、あっという間の対応にびっくりだ。

合同庁舎を後にして、ちょっと懐かしい弁天通や相生町を通り抜け、 大江橋、桜川橋と辿って、大岡川に架かる都橋を渡ります。

そこから見渡せるのが、ご存じ都橋商店街の雄姿であります。mitsuwa08.jpg mitsuwa07.jpg川の湾曲に沿ってカーブする建物のラインがなんとも素敵。 昼間炎天下の商店街はただただひっそりとしています。

さらにその先へと川の脇の日の出さくら道という小道を往く。 長者橋に出ればもう、日ノ出町駅の駅前。 そこに一軒の街の洋食屋「ミツワグリル」があります。

ショーケースには、「ナポリタン」や「オムライス」、 「お好みフライ」に「エビグラタン」などなどの定番洋食メニューのサンプルが並んでる。mitsuwa02.jpgボードに書かれた「本日ノランチ」の「豚バラ生姜焼き」を横目にしつつ、 店内へとお邪魔します。

開いた古のお品書きから、なんだろうと気になったのが「トルコライス」。mitsuwa04.jpg届いたお皿には、ケチャップライスの上にトンカツが載り、千切りキャベツが添えてある。 付け合わせ定番の所謂”素ナポ”は、見当たらない。 これにはスープじゃなくて、と味噌汁のお椀を追加します。

ウスターソースも下地にあるよな、 しっかりした味付けのケチャップライスと薄手のトンカツとが、 不思議と懐かしくも温かい心持ちにさせてくれたりする。mitsuwa03.jpg改めて、此処での「トルコライス」の由縁を訊ねようと思いつつ、 「ご馳走さま!」っと店を出た。 長崎を起源とするものをはじめ、その発祥や命名の由来には諸説あるらしい。 まぁ、ピラフやスパゲティとサラダ、 そして豚カツとでの一緒盛りのあれこれをそう呼ぶみたいだ。

日ノ出町駅前交叉点近く、 大岡川を渡る長者橋近くに佇む街の洋食屋「ミツワグリル」。mitsuwa05.jpgmitsuwa06.jpg飾り気のない白い壁の色褪せた箱文字たちがいい表情。 紙ナプキンにも三つの輪が重なったシンボルマーク。 どうやら二代目は、彼の「センターグリル」ご出身のようですね。


「ミツワグリル」 横浜市中区日ノ出町1-20 [Map] 045-241-0696
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牛串煮込み「藤や」で 焙じ茶割串モツ煮込キャベ玉じゃがバター

fujiya.jpg荒川の河川敷に面して、 千住新橋の南詰に建つのが学びピア21。 放送大学の東京足立学習センターが、 区の図書館や講堂などとともに併設されています。 7階の「さくら」が意外と出色のカフェレストランで、 ナポちんも勿論既食の「ナポリタン」も素敵に美味く、 荒川を望む夕暮れのテラスで呑むビールも堪らん、 知る人ぞ知る場所なのです。 そんな学びピア21の講堂へ、laraさん達による放送大学講座「フルートのさまざまなカタチvol.2」のリハーサルに顔を出しました。

リハーサルが済んで、何処かで一献と向かったのが、 知る人ぞ知る立ち飲みの「徳多和良」。

ところが、丁度お盆の時季ということもあって、 夏季休暇のお知らせに突き当たる。

ならばと振り返ったお向かいのお店。 スタンド看板には、牛串煮込み「藤や」とある。 ひとン家の玄関先にただ暖簾を架けたようにもみえる佇まいも味のあるところ。 闖入を試みましょう。

サッシュ扉を開ければ、そこは正に玄関の土間のよう。 そこにL字形のカウンターを据えていて、その角に銅の鍋が鎮座してる。fujiya01.jpg奥に目を遣れば、テレビに向かう居間がある。 その奥が台所(調理場)となっている。 外も中もひとン家や(笑)。

鍋に臨むカウンターの角に陣取って、まずはジョッキの泡を。fujiya03.jpgfujiya02.jpgお通しの茄子の味噌煮にしみじみしつつ、 壁に掛った黒板の白墨文字を物色すると、気になるもの目白押しだ。

色味鮮やかな「クジラ刺」は、蕩けるような口当たりと美味しさ。fujiya05.jpg臭みなんて勿論ありません。 以前は、如何にも解凍したものです、という代物もあったのに、 冷凍解凍技術が向上したのか、はたまた流通事情に変化があったのか。 何れにせよ、捕鯨に対する風当たりは依然として強い中、 有難くいただくことといたしましょう。

「あじ酢」は、いい塩梅と〆加減。fujiya04.jpgさっと柔らかに旨味が解けるに嬉しき哉。

棚に並んだ焼酎は、キンミヤのラベルのみ。fujiya07.jpg実に柔和で篤実な人柄を窺わせるオヤジさんにどうやって呑るのがよいかと訊くと、 焙じ茶割りを勧めてくれる。 はい、焙じ茶割り、好いであります。

柔くなるまで待ってね、と告げていたオヤジさんが、 うん!という顔をしてから皿に載せてくれたのが、 「牛串煮込み」のハチノスにフワ、牛スジ。fujiya08.jpgfujiya09.jpgハチノスは、ご存知トリッパ。 肺であるところのフワが、歯触り妖しく汁をよく吸っていて旨い。 味噌でこってりとした煮込みも少なくない中、 割ときりっとした醤油仕立てだ。

fujiya10.jpg続いて、玉子と一緒に盛ってくれたのが、ハツモト。 ハツ=心臓の近く、大動脈辺りの部位がハツモトと呼ばれるらしい。 これ、切身によっては、噛んでも噛んでも噛みきれないものがあって、 噛みながら顔を見合わせて笑うこととなりました(笑)。

下町居酒屋でよくキンミヤとセットになっているバイス的なものが、 此処では原液をセルフサービスできたりする。fujiya15.jpgエキスの濃さや甘さを加減しながら呑むことができるンだ。 うん、愉しい嬉しい大好き。

「ポテトサラダ」や「剣先するめ」を肴にグラスを傾けているところに、 先に注文していた「キャベ玉」がやってきた。fujiya12.jpg成る程、そふいふ見映えでありますかと一斉に視線を集めるお皿には、 お好み焼きのような、スパニッシュオムレツの一部ような料理が載っています。 キャベツと玉子の自然な甘さが相俟って、ナハハと美味しい。 粉は使っていないので、お好み焼きとは違う。 家庭の味のようでいて、立派に気の利いた酒肴なのであります。

蒸かしたジャガイモにバター載っけたヤツ。 そんな想像しかしていなかったところに「じゃがバター」。fujiya13.jpgしゃくっとした歯応えを残すように炒めた感じが実にニクい。 これは、注文した方も素晴らしいといえましょう(笑)。

海鞘はどうも苦手でと顔を顰めるlaraさんにと「ホヤ塩辛」。fujiya11.jpg恐る恐る口にして、うん、ダイジョウブ。 新鮮でない刺身や酢の物に出会すとそれがトラウマになってしまうきらいがあるけれど、 こんな塩辛なら、大丈夫、じゃなくて、イケるでしょう。

北千住の裏通りに牛串煮込みの店「藤や」の暖簾。fujiya14.jpg他人様の玄関先で呑んでいる気分もあっと云う間にまったりと解けてきて、 下町情緒の居心地やよし。

並びにいらした下町チックに威勢よくずんずん話しかけてくるオバ様(笑)は、 翌日のレクチャーコンサートに参加してくれると、ちょっと酔った調子でそう仰る。 果たして本当に足を運んでくれるか、正直多少訝しんでいたものの、 しっかり参加していただいたのも、このお店での楽しい出来事でありました。


「藤や」 東京都足立区千住2-35 [Map] 03-3870-6677
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田舎うどん「篠新」で 川俣シャモの軍鶏汁うどんも武蔵野うどん

shinoshin.jpg入院している友人のお見舞いにと、 清瀬駅に降り立ちました。 こじんまりしたバスロータリーが沿線らしい南口駅前。 そこから目と鼻の先にある食堂へと向かうと、 なにやら行列が出来ている。 焼き台から煙と匂いを棚引かせている焼鳥店と並んだ狭い間口の「みゆき食堂」の前に並ぶ行列だ。 前を通り掛かったオバさま達が、最近テレビに出ちゃったらしいのよーと言い合っている。 そう、あの、井之頭五郎が立ち寄ったお店なのだ。 以前から気になっていたお店なのでちょっと覗いてみたいものの、 タイミングが良くなかったみたい。

それではと、その先の商店街を抜けて、小金井街道に出る。shinoshin01.jpg送った視線に「うどん」の文字が映りました。

田舎うどん「篠新」とある看板の下には、手打蕎麦、そして手打うどんと記す木札が並ぶ。 うどん専門店ではないのだねと思いつつ、暖簾を払います。

テーブルが3卓の右手に小上がり風お座敷がある。 調理場は二階にあるようで、女将さんがインターフォン越しに注文を通しています。

壁に貼られたお品書きには、冷たいうどん・そばに温かいうどん・そば。 それぞれ、夏季限定、冬季限定の品があり、冬には牡蠣そばなんかもいただけそう。 武蔵野うどんの代名詞、肉汁がメニューにないことに動揺を隠せないまま(笑)、 それではと冷たいうどんを「軍鶏汁」でお願いしました。

丸い笊に盛られたうどんは、武蔵野うどんとしては、細身に思うもの。shinoshin02.jpgほんの少し褐色がかった色味には、地粉の気配がいたします。

つけ汁には、軍鶏の切身やつくね、葱に占地が浮かんでる。shinoshin03.jpgそこへ浸して啜ったうどんは、細身ではあるものの、成る程地粉の風味がいたします。 小皿に添えたおろし生姜、そして菠薐草のお浸しが”糧”としての施しなのでしょう。

相方は、本日の特撰品「苦瓜のスタミナうどん」。shinoshin04.jpgもしや刻み大蒜がたっぷりだったりしてという心配は杞憂に終わり、 食感嬉しい玉葱チップスに晒したゴーヤの苦味とタレに含ませた酸味が心地よい、 そんな佳品でございました。

清瀬は、小金井街道沿いに田舎うどん「篠新」がある。shinoshin05.jpgshinoshin06.jpg訊けば、使っている軍鶏は、川俣シャモといって、 福島県伊達郡川俣町の特産品を都度都度送ってもらっているのだそう。 かの、人形町「玉ひで」と同じ産地のものらしい。 震災以降、その軍鶏をはじめ、 食材の調達に慎重にならざるを得なくなり、難儀しているという。 肉汁も以前はやっていて、「うちのは武蔵野うどんですよ」と女将さん。 また再び、肉汁うどんを供する日がこないかなぁなんて思っています。

「篠新」 清瀬市松山2-4-6 [Map] 042-494-1514
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とんかつ洋食「豊ちゃん」で 名残のカツ丼と朗らかなお礼の言葉

toyochan.jpg久し振りに場内を訪れた夏の或る日。 またまた久し振りに、つきじろう師匠のお世話になり、 まずは10号館の「磯野家」へ。 「寿司大」を筆頭にした店々の行列を横目にしつつ、 すっと河岸のおっちゃん達に混じるのも乙なもの。 不漁ときく、この時季お初の秋刀魚の刺身の蕩け具合に唸ったのでありました。 其処から場外の「フォーシーズン」へと海幸橋門方面に向かう途中の1号館で、「豊ちゃん」の右手シャッターが半開きなのを目にしました。 訊けば、近々オーナーが変わり、営業形態にも変更があるようだという。 つまり、今までの「豊ちゃん」は、なくなってしまうということなのです。

然らば、お腹を空かせて改めて赴かねばなりますまい。 そう思いながら結局、場内に足を運んだのは、 「豊ちゃん」最後の日になってしまいました。

タイミング良く、カウンターの丸椅子に空きがあり、そのひとつに腰掛けます。toyochan01.jpg女将さんは、シャッターの内側で今日も働いていらっしゃる。 メニューの一部に目隠しがされているのは、 カレーやハヤシを担当していた方がいなくなったため提供を取り止めていたからだそう。 それももうこの日限りのことなのですね。

ご注文はやっぱり、「カツ丼」で。toyochan02.jpgああ、なんの飾り気もないのに端正に想うドンブリ。 三つ葉の緑が無造作にして、品格を高めています。

隅のカツから恭しく食めば、さっくりと軽い歯触りとその直後の豚の仄甘み。toyochan03.jpgtoyochan04.jpgtoyochan05.jpg出汁や玉子でべしゃべしゃしないのが「豊ちゃん」の「カツ丼」の真骨頂。 衣の食感をわざわざ全て殺してしまうような真似は、 間違ってもしない仕立てに御座います。 抑えた量のタレも甘くなく、きりっとしている。 顔を見合わせて、旨いと頷き合うのはなんと倖せなことでしょう。

ドンブリに添えるは、「ギョクオチ(味噌汁卵入)」。 三つ葉を浮かべた熱々濃い目の味噌汁にちょっと崩した玉子の黄身が何を齎すか、 云わずと知れたことですね。

初代オヤジさんの名を冠して1919年創業の老舗洋食店、築地「豊ちゃん」。toyochan06.jpgtoyochan07.jpg市場で働く常連さん達が代わる代わる顔を出しては、 気風良くも朗らかなお礼の言葉と共に最後の食事を終えてゆきます。 「穴子フライライス」「帆立フライライス」や「生姜焼きライス」も食べてない。 そう思うと益々名残惜しくなる。 今後も「豊ちゃん」の名前は残して、カツ丼専門店になるやの噂。 なんだか、市場の豊洲への移転がじわじわ始まっているようにも思います。

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「豊ちゃん」 中央区築地5-2-1 築地市場 1号館 [Map] 03-3541-9062
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市場食堂「さかなや」で 生カキ酢に豪華海鮮丼成程のネタの佳さ

sakanaya.jpgお久し振りに降り立ったのは、 北千住駅西口のペデストリアンデッキ。 勝手知ったるふりをして、 丸井の前を通り、階下へと降りてゆきます。 路地を抜けて、宿場町通りへ。 土日曜は休業の「大はし」の店構えを残念に眺める。 向かいの「バードコート」も同じく、昼どきにはシャッターが降りています。 宿場町通りから左手に住宅地へと折れ入って、 辿り着いたのが市場食堂「さかなや」。 店先には、開店前の行列が出来ていました。 同好の士と落ち合って、行列に混じって暫く。 「さかなや」の入口に暖簾が下がり、続々とその暖簾を払う手が続きます。 奥の座敷へと案内いただきました。

sakanaya01.jpg早速睨むランチのお品書き。 それは、「海鮮丼」に「豪華海鮮丼」「生本マグロ丼」。 そして、刺身の付いた「太刀魚塩焼き定食」と「特大のどぐろ煮付け定食」という5本立て。

基本形の「海鮮丼」か、王道の「生本マグロ丼」か。 時季の太刀魚も気になるし、いっそ高級魚ノドグロに挑んでしまおうか。 想いは千々に乱れてひと廻り(笑)。 「豪華海鮮丼」をお願いしました。

お薦めいただいた「生カキ酢」が、銘々の眼前に届く。sakanaya02.jpg宮城からのものだという牡蠣は、何故か自分だけ身がふたつ。 すっきりとした滋味がつるんと通り過ぎていき、うーむと唸る。 ああ、やっぱり、美味しいね。

恭しく登場のドンブリは果たして、てんこ盛りに魚介が載っている。sakanaya03.jpgイクラの宝石感や蟹脚の突出が豪華さを演出しています。 山葵を溶いた醤油を回しかけ、いざ。

ご飯を魚介の山裾からご飯を穿り出している裡に、 口の中の中トロやサーモンが蕩けるように魅惑して、間に合わない(笑)。sakanaya04.jpgsakanaya05.jpg白身を含め、ネタそれぞれの良さが潔くも明らかであります。 脇役装う和布蕪や中落ちのそれと思しきねぎとろも、 いい役回りを演じてくれています。

でもね。 お隣の「海鮮丼」も負けず劣らずいい風情。 「豪華」にはなんで〆鯖がいないの!なんて隣の芝も良く見えてしまいました。

ランチには行列必至の人気店、市場食堂「さかなや」。sakanaya07.jpgその標題が示すように、足立市場の仲買人が直接営むお店だそう。 旬の魚を新鮮なまま、 そしてそれぞれの魚介に相応しい手を入れた酒肴が自ずと期待できるところ。 お酒も目の利く辺りが揃っていそうだし、やっぱり夜の部も気になるね。

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「さかなや」 足立区千住4-11-6 [Map] 03-3881-4286
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