洋食店「大木」で 昭和な佇まいに寄り添う素朴なカツ丼の景色

ooki.jpg浅草のシンボルのひとつ「神谷バー」。 右手には、改装済んで、そのほとんどが「EKIMISE」になってしまった松屋浅草。 フロアの閉鎖前に出掛けた青森物産展での中華そば「長尾」を思い出す。 その間を北へ往くは、馬道通り。 言問通りに近づいたところで見えてくるのが、 名代おでん「丸太ごうし」の赤い提灯だ。

出汁と日本酒の匂いに後ろ髪を引かれつつ、さらにさらに歩みを進める。 馬道、浅草六丁目、浅草五丁目と信号を過ぎて、いよいよ静かになった辺り。

歩道に突き出したテント地の庇の向こうに「大木」の文字。ooki01.jpgよく見ると、庇どころか暖簾までもが半円を描いて突き出しています(笑)。

もう三度目のお邪魔だなぁと考えながら暖簾を払い、硝子越しに店内を覗く。 すると、定位置の事務椅子に腰掛けて、オヤジさんが居眠り中。 起こさないように、そっと引き戸を開け閉めします(笑)。

洋食「大木」の店内はまるで、昭和30年代を舞台にした映画のセットのよう。ooki02.jpgooki04.jpgooki05.jpgooki06.jpgooki03.jpg贔屓筋であったという立川談志をはじめとした噺家たちの千社札が、 あちこちに貼られてる。 およそ変わらぬまま時を経た古色が、なんとも味わい深いのであります。

話好きのオヤジさんとツレナイ世情の話なんぞを交わしながら、 「カキフライ」できます?と前回までに二度訊いたけど、 「お昼で終わっちゃった」などで、結局望みは叶わず仕舞い。 それでもふたたび腰を下ろした華奢なテーブルで、改めてお品書きを眺めます。

ooki07.jpg 夜の部は、ご飯を残さないよう余計に炊いておくようなことをしないので、 場合によってはご飯がないなんてこともある。ooki08.jpgご飯があることを確かめてから、「カツ丼」をお願いしました。

普段着のとんかつに玉葱と玉子。ooki09.jpgジューシーな豚でもなければ、玉子の半熟を残そうとか、そんな気配も特にない。 衣はところどころで剥がれているのはご愛嬌。 素朴なカツ丼の景色が、店やオヤジさんの佇まいにそっと寄り添って。 美味いどうかなんてこととは別の魅力に和んでしまいます。

裏浅草の先でひっそりと、 洋食店「大木」の暖簾が今日も風に揺れる。ooki10.jpgooki11.jpgooki12.jpgooki13.jpg問わず語りに聞くオヤジさんの来歴。 昭和11年生まれで、信州から18歳で上京。 小僧で店に入り、浅草に根付いて今に至る。 つまりは、オヤジさんが「大木」さんなのではなく、 先代が亡くなってからずっと任されているのだそう。 でももう疾うに、間違うことなくオヤジさんの店になっています。

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「大木」 台東区浅草5-45-13 [Map] 03-3872-0610
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くつろぎカフェ「UliUli Cafe」でウリウリパフェ庭先の青い空碧い海

uliulicafe.jpg石垣島北部寄りの伊原間(いばるま)地区。 黒毛和牛の牧場直営の「新垣食堂」で、 「牛そば」を堪能した後にちょっと引き返して、 ふたたび玉取崎展望台の真下辺りへ。 10周年を機に移転新装したダイビングショップ、 「イエロー・サブマリン」に顔を出す。 海を見晴らすテラスがあったりして、いい感じ。 また今度、お世話になりますね。

そこからすぐ、玉取崎展望台の真下にあるのが、 「ウリウリカフェUliUli Cafe」。uliulicafe01.jpguliulicafe02.jpg外へもどうぞということで、青々とした緑の庭先を眺めるテラスへ。 そよそよと風が抜けてきて、暑いけれど心地いい。

uliulicafe03.jpgふと壁の案内を読むと、庭先から海へ出られますとある。 庭の隅の立て札には、”太平洋まで60m”。 キッチンに声を掛けて、さぁ探検に出掛けよう。uliulicafe04.jpg鳥や蛇や蝶や虫たちの出現も愉しみながら、 ガジュマルの木やデイゴの木の茂るぷちジャングルを抜け降りると、 パッと視界が開けて、青い空と碧い海。 誰もいない浜辺が広がります。

テラスのテーブルに戻ったところへ到着は、 店の名を冠した「ウリウリパフェ」。uliulicafe05.jpgそう、久方ぶりに、石垣島で“パフェラッチ”だ!

トップには、バナナにクッキー、紫芋のアイス。 その下に白玉と抹茶のソース。uliulicafe07.jpgバニラアイス&ホイップクリームの下からは、黒糖お豆さんが顔を出す。

下層にたっぷりの豆乳プリンでさらっとさせて出来上がり。uliulicafe06.jpg石垣島のパフェにミントのあしらいがよく似合います。

庭先にプライベートな浜へのアプローチ。 玉取崎展望台の真下に、くつろぎのカフェ「UliUli Cafe」はある。uliulicafe08.jpguliulicafe09.jpg“UliUli(ウリウリ)” とはハワイ語で”青色”を意味し、 フラで使う楽器の名前でもあるという。 青い羽のついたマラカスのようなものが、楽器”ウリウリ”。 青い空と碧い海の景色にハワイアンの長閑な調べが浮かんできました。

口 関連記事:   牛汁牛そば「新垣食堂」で エキスひたひた牛そば牧場直営食堂(13年07月)


「UliUli Cafe」 石垣市伊原間2-511 [Map] 0980-89-2002  http://www.nbb-ishigaki.jp/~uliuli/
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YAKITORI&wine「SHINORI」で ささみたぷなーどひき立てのきも

shinori.jpg吉例となっている、 武蔵小山駅前「アゲイン」での「村田の実験室」。 実験室の主任研究員といえば勿論、 我等が村ちゃんこと、村田和人そのひとであります。 この6月には、他の歌い手に提供してきた曲たちから 厳選した楽曲をセルフカバーしたアルバム、 「Treasures in the BOX」をリリース。 翌7月には、UNIVERSALから発表した「ずーーっと、夏。」三部作からのベストアルバムをノンストップDJ MIXに仕立てたヤツが出た。 DJはあの、マイケル富岡だ(笑)。

そんな、還暦を翌年に控えてなお絶好調の村っちゃんの月例ライブ。shinori01.jpg春先には、「目でみることば」も話題の岡部さんを武蔵小山にお誘いしたこともありました。 岡部さんは昔から村っちゃんを聴いていて、 村っちゃんが京都でもっていたラジオ番組のリスナーであったりなんかして。

心地よいちょっとした興奮も冷めぬまま、 「アゲイン」からも至近のアーケードへ。shinori02.jpgちょっと路地に踏み入ったところにある外部階段を辿ります。

焼き台を囲むカウンターに沿ってテーブル席を配した「SHINORI」の店内。shinori03.jpg一種の臨場感を共有しつつ、 それぞれにゆったり過ごせそうな加減のいいサイズを想います。

一杯だけどビールをいただいて、「SHINORI特製 田舎風パテ」。shinori04.jpg塩抑え目でしっかりした肉の凝集と香り。 マスタードやピクルスが不思議なほど似合うのだね。

ささみの串に載るは、緑オリーブの「ささみたぷなーど」。shinori05.jpg風味鮮やかなタプナードが、 炙られて表面に繊細な張りを宿したささみの仄かな甘さを引き立てます。

グラスのワインは、黒板に読む信州のソーヴィニヨンブラン100%のもの。shinori06.jpgshinori07.jpgおかませの串は、「ねぎま」「つくね」と続きます。

ズッキーニには透けるようなラルドを載せて、脂っ気を補って。shinori08.jpgshinori09.jpg追加していた佐賀の「ホワイトアスパラ串」は、 しゃくしゃくした芳ばしさが嬉しいのだ。

赤のグラスを傾けつついただく、 ひき立ての「きも」の串がなかなかイケる。 レバーの澄んだ香りと濃密さにぶんぶんと頷きます(笑)。shinori10.jpgshinori11.jpgshinori12.jpgこりこりっと「やげんなんこつ」。 香ばしさと甘さ弾ける「プチオニンオン」にも薄切りラルドが働いています。

武蔵小山パルムから路地を窺う階段の先に、 YAKITORI & wineの店「SHINORI」がある。shinori14.jpg焼き台に立つ、フレンチ出身だというyoshinoriさんと、 ホールを行き交う奥様shinoさんとで、その名も「SHINORI」。 焼き鳥ビストロとでも呼べばよいでしょか。 捩り鉢巻の焼き鳥屋も勿論大好きだけれど、 偶にはワイングラス片手にが似合う焼き鳥も悪くないね。


「SHINORI」 品川区小山3-25-14 2F [Map] 03-5749-3144
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牛汁牛そば「新垣食堂」で エキスひたひた牛そば牧場直営食堂

aragaki.jpg那覇から飛んで石垣島へ。 降り立ったのは、懐かしき石垣空港ではなくて、 この3月に開港した新空港だ。 開港を記念してJTAが就航した、 「南西航空」塗装機体を眺めながら、 そのずっと先に白保の海を臨むロータリーに立つ。 本島の街とはやっぱりどこか違う空気に包まれます。

そのままダイビング船の待つ港へというのも手なのだけど、 久々にのんびり島一周してみようと車を借りる。 白保地区を抜けて国道390号を北へと向かいます。

まず寄り道したのが玉取崎展望台。aragaki09.jpgアイスキャンデーを売るオヤジさんの、三線の音色を耳に小高い丘への小道。 そよそよと風の抜ける展望台からは、 伊原間(いばるま)のくびれを挟んで左に太平洋、右に東シナ海が見渡せる。 心地よさにぼーっと佇んでしまいます(笑)。

玉取崎展望台から眺めていた伊原間の集落に立つバス停前。aragaki02.jpgaragaki03.jpg「新垣食堂」の開店時間、11時半はもうすぐだ。

準備中の木札が営業中に裏返る。aragaki04.jpg手前にテーブル席があり、奥に小上がりがあるスタイルに「山原そば」を思い出します。

aragaki05.jpg牛さんのお顔と共に”当店牧場産”を明示する脇に、 お品書き三本立てが掲げられてる。 「牛汁(ライス付き)」に「牛そば」、そして何故か「カレーライス」。 「牛汁ライス」も激しく気になりつつ、「牛そば」の「小」をお願いします。

普通サイズと思しきどんぶりにお肉たっぷし。 麺が見えなくて、もしや「牛汁」かと一瞬訝るも、麺の一角を目にして合点する。aragaki06.jpgしっかりした出汁に牛の旨味エキスがひたひたと。 きっと牛骨もフィーチャーしてることでしょう。

麺はといえば、ある意味当然の丸い断面の八重山そば仕様。aragaki07.jpgこんな力強いスープにもすんなりとマッチして、いい。 どこの製麺所の麺かしらん。

石垣島北部のくびれ、伊原間集落に「新垣食堂(あらかきしょくどう)」はある。aragaki08.jpg黒毛和牛の新垣牧場直営の食堂で今度は、 「牛汁」ライスがいただきとうございます。

口 関連記事:   本場「山原そば」で 三枚肉そばソーキそばやんばるの中の洗練(10年07月)


「新垣食堂」 石垣市伊原間59 [Map] 0980-89-2550
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たん「助六」で 再開を祝いついただく牛たんとろろ牛たん煮込み

sukeroku.jpg1月下旬の日曜日深夜の不審火で、 罹災した三軒の飲食店。 幸いなことに「アン カルネ」は、 一時休業の後、復活を果たしたけれど、 たん「助六」とカレー「プラクリティ」のあった建物は、 ずっと白い耐火シートの仮設に包まれた後、 解体作業が始まりました。

基礎廻りの瓦礫を残すのみとなったある日の敷地。sukeroku01.jpgこうして、次第に此処に何があったか、忘れ去られていくのでしょう。

sukeroku02.jpg敷地の脇に置かれた工事用コーンに巻いたお知らせ文には、 「助六」再開の情報が! 実は、「アン カルネ」のマスターから、 「カレー屋さんも移転して、助六さんも茅場町の方で再開する予定のようですよ」と、 そう聞いていたのです。

どんな様子なのだろうと気も漫ろに(笑)、 再開予定地を眺めに寄り道。sukeroku03.jpgそれは、ワンコインな名古屋めしの店「じゃんだらりん」があった場所。 外構の作業も進んでいるようでありました。

平成通りの歩道上のA看板に開店日を知らせる告知がされた。sukeroku04.jpg罹災からおよそ5ヶ月の時間を経て、「助六」が再開しようとしていました。

いよいよ訪れたオープンの日。sukeroku05.jpg祝花に囲まれた店頭には、あっという間に行列が出来上がる。 「助六」再興の周知は上々のようです。

手狭な店内を奥へと進んで、入れ込みのテーブルに着く。sukeroku06.jpg壁の品札には、「牛たん唐揚げ」や「牛たんつくね」があって、 夜メニューのラインナップであると推察しながら見上げます。

sukeroku07.jpg卓上にみるランチメニューは、きっと以前と同じ定食たち。 テールスープとおしんこつきで、 麦めしのお代わり自由のフレーズも変りません。

やっぱり基本形だと思う「牛たん焼きとろろ付定食」から。sukeroku08.jpgsukeroku09.jpgsukeroku10.jpg焼き網の跡が点線を描く牛たん焼き。 がしがしっと噛んでは、じんわりと牛タンの旨味と香りを味わって。 白飯ではなくて、麦飯が牛たんに妙に似合うのは何故かしらんと、 そう改めて考えながら、とろろとコンビなのもまた麦飯だもんねと、 今更ながら最初にそう組み合わせたヒトに敬服してしまいます。

sukeroku11.jpg裏を返して、翌日のおひる時。 今度は、カウンターの一席に収まって、 「牛たん煮込み定食」を所望します。sukeroku12.jpgサイコロ状がほろっと解けていい具合。 味の滲みた大根や人参、そしてキャベツのおしんこを合いの手に、 一気に平らげてしまいます。

火事罹災から再開なった、たん料理の店「助六」は兜町の裏道に。sukeroku13.jpg歌舞伎の定式幕を思わせる三色の縞模様に刻んだ「助六」の文字。 女将さんに「大変だったですね」と声を掛け、「二度目の移転になりますね」と続けたら、 「あら!お若いのにそんなことご存知?」と驚かれた。 いえもう、随分と永く此処辺りを彷徨っているもので(笑)。

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「助六」 中央区兜町16-6 [Map] 03-6667-0155
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