キッチン「なかよし」で ナポリタンハヤシカキフライいつもの夕餉

nakayoshi.jpgいつものように浅草線を中延駅で降りて、 第二京浜を背にして進む。 さて何処で夕餉にありつこうかと思案しながら、 スキップロードを横目に覗く。 ただ、意外なほど飲食店の少ないアーケードで思いつくのは、お肉屋さんレストランの「成田」くらい。 アーケードの逆サイド、荏原中延まで歩いて行ってしまおうかと思うことも少なくありません。

そのまま何気なく真っ直ぐ歩けばもう、 行き先はほとんど決まってる。nakayoshi01.jpgnakayoshi02.jpgそれは、”昔懐かしい味 自家製ハヤシライス”の看板のある処。 路上のちょっと新しいスタンド看板が、 TX「モヤさま」登場を写真つきで紹介しています。

古びた扉をギイと開ければ、途端に安らぐ昭和の匂い。 壁には、何枚かの蒸気機関車の写真たち。nakayoshi03.jpgメラミンのテーブルにセットした緑色の椅子。 所々補修しながら大事に使われています。

ある晩の注文は、 かのeatnapo王子も召し上がっておられた(笑)、「ナポリタン」。nakayoshi04.jpgはいよ、ってな風情で応じてくれるお母さんが煽るフライパン。 こんなに間近にナポ炒めの音が聞けて眺められるお店は多くはないことでしょう。

着実な炒め音の成果が、
フライパンの絵柄とともに「なかよし」とマークしたお皿でやってくる。
nakayoshi05.jpgnakayoshi06.jpgnakayoshi07.jpg中太の麺を纏うソースの濃密さは、 しっかり炒めとケチャップ以外に手許のデミソースもちょっと加えているよな気配も思わせる。 うんうん、お母さん、こってり旨いです。

別の夜には、鶏肉の部からその名も「ジャンボバター」。nakayoshi08.jpg繊維にめり込ませるように歯の先を立てると、 醤油バターの風味が背中を押してくる。 ジャンボなボリュームも何気に難なく平らげてしまう、そんなお皿であります。

時にはそんな気分で、「オムライス」。nakayoshi09.jpgnakayoshi10.jpgたっぷり垂らしたケチャップの紅が艶かしい。 「ナポリタン」と同じく、しっかり炒めて濃密系のケチャップライスには、 ハムと玉葱の魅力が加勢して、お母さん、美味しいよ。

そしてやっぱり、看板の「ハヤシライス」も定番で。nakayoshi11.jpg三日目のカレーよろしく、とっぷりと煮詰まった旨味で迫るノスタルジー。 フレッシュをくるりと回しかけるのがココのルール。 どこの洋食店のものでもない、「なかよし」の「ハヤシライス」がここにある。

やっぱりと云えば、 ショーケースでも堂々誘う「カキフライライス」も外せない。 nakayoshi12.jpgnakayoshi13.jpgnakayoshi14.jpgなんだろ、そこそこ厚手の衣と小振りな牡蠣とにころんと一体感があって、 衣の芳ばしさでしっかり包み込む、そんな基本が正しいのでありますね。

気がつけば半世紀。 1960年9月創業のファミリーキッチン「なかよし」中延にあり。nakayoshi15.jpg老舗でございます、なんて鯱張るところが一切ないのも「なかよし」のよいところ。 一時お休みしていたことがあって随分心配したけれど、 いつの間にか再開していてほっとした。 お母さん、元気でいてね。

口 関連記事:   レストラン「成田」で 黒豚ロースカツ黒豚しょうが焼き肉屋の食堂(11年02月)


「なかよし」 品川区中延3-12-11 [Map] 03-3782-3230
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手打うどん「甚五郎」で 正統派武蔵野うどん蔦覆う店迫る立退き

jingoro.jpg割と遠いぃイメージのあった国分寺。 でも新宿で乗り換えて、快速で30分、 特快ならば20分足らずで到着する。 久々に降り立つ北口駅前は、 覚えている限り以前のまま。 空き地を囲う緑色のネットフェンスが、 駅前らしからぬ雰囲気を漂わせていました。

そのまま正面のパチンコ屋左脇の路地へと潜り込む。 するとそこにも緑のネットフェンスが続いてる。jingoro02.jpg金網越しに空き地を覗けば、 北口駅前の再開発用地であることを示す看板が立っています。

その先には、外壁のほとんどを蔦で覆われた家屋が残る一角がある。jingoro01.jpgjingoro03.jpgjingoro04.jpgもう立ち退いてしまった跡のようにも見えますが、 近づけは、「手打ちうどん」「武蔵野うどん」を示す看板が路上にある。 昭和レトロの象徴アイテムのひとつ、懐かしのホーロー看板で、 浪花千栄子さんや大村崑さん、松山容子さんがニッコリとお出迎えだ。

店内も琺瑯看板の収集家よろしく、昭和な雰囲気出し捲くり。jingoro05.jpgjingoro06.jpg例の肢体を擁した女優・由美かおるも勿論、 店内を見下ろして微笑んでいます(笑)。

jingoro07.jpg「甚五郎」のお品書きは、 うどんかそばのつけ麺を機軸に、温かな各種うどんの器が揃う。 うどん専門でないのかと斜構えになるも、素直な気持ちで向き合いましょう。

ご注文はやっぱり、「肉づけうどん」を肉増しで。jingoro08.jpg真っ白けでないうどんに俄然期待が高まります。

地粉の代表格、農林61号で打ったものに違いないと決め込んで、 その表情を愛でる。jingoro09.jpgjingoro11.jpg箸の先に載せた量感にニンマリ。 まさに具沢山となったつけ汁に浸して、一気に啜る。 うむうむ、うんうん。 期待通りの旨さに思わず、啜りながら頷いてしまいます(笑)。

出汁のしっかり利いたつけ汁もまたよろし。jingoro10.jpg脂の甘さをゆったり伝えるバラ肉に、 くたっとなった葱の甘さもいい相棒だ。

国分寺に、正統派武蔵野うどんの店「甚五郎」本店。jingoro12.jpg「甚五郎」といえば、他に幾つも武蔵野うどんのお店がみつかる有力銘柄。 やっぱりその系譜を訊ねてみたくなってくるところ。 ただやはり、再開発の立ち退き要請には抗い切れないようで、 この6月末に閉めてしまうことになっている。 蔦が覆い、懐古趣味が十分馴染んだ、趣のある店舗がなくなってしまうとは、 とっても残念だ。 幸いなことに、ちょっと先で既に営業している2号店があり、 立ち退き後はそこへ移転合併して、 「国分寺甚五郎」の看板で営業して行く予定となっているそう。 気になっている「鴨汁」や「ラムづけ」をいただく機会はありそうです。

口 関連記事:   うどん処「松郷庵 甚五郎」で 肉汁うどんは香麦麺の武蔵野うどん(10年06月)   うどんそば「神明庵 甚五郎」でくたくた煮込み肉汁うどんの透明感(10年02月)


「甚五郎」本店 国分寺市本町3-3-13 [Map] 042-325-6916
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「Auberge de la Combe Geay」で モルトー腸詰と黄色いワイン

combegeay.jpg独逸のライン川沿いの町、 ラシュタットRastatt のホテルを発って遠路遥々。 スイスとの国境を越えて辿り着いたのは、 スイス時計製造業の代表的都市とも云われる、 ラ・ショー=ド=フォンLa Chaux-de-Fonds。 スイスの地に足を踏み入れるのは、初めてのこと。 ちょっと感慨に耽っていたら、 電車に乗って隣町に行こう!というプランが急浮上。 目当ての列車にと、息せき切って駅へと向かいます。

30分弱の短い旅を乗せてくれたのは、 スイス国鉄のスマートな列車。combegeay01.jpgcombegeay03.jpgcombegeay02.jpg仏蘭西との国境を越えてやってきたのは、 モルトー Morteau という町です。

ひっそりとした駅を出て目指したのは、レストラン「Jacques Alexandre」。 でも、残念ながらシャッターが降りていて、お休みのご様子。 しばし呆然としてから(笑)、お隣のデリカテッセン「La Fruitiere」にお邪魔して、 チーズやソーセージを物色します。 チーズの熟成月数による味わいの変化を試したり、 形や大きさ、太さの違う、白いのや黒いの、量感のあるの皺々の等々、 色々なソーセージを眺めたり。 チーズとモルトーソーセージをお買い上げして、 ついでにお薦めのレストランを訊いてみました。

降り出した雨の中、線路に沿うように走る街道沿いの町外れまで。combegeay04.jpg白い壁の可愛らしい建物は、 オーベルジュにして郷土料理の店「Auberge de la Combe Geay」だ。

店内は、山小屋風と喩えたくなるようなウッディな佇まい。combegeay05.jpgcombegeay06.jpgサーモン・ピンクのテーブルクロスが、 温かな雰囲気をより増しています。

内陸とはいえ、おフランスですもの、 もしかしら牡蠣のブロンなんかあったりなんかしてと訊ねるも(笑)、応えはNon。 ならばと前菜にいただいたのは、「帆立のコキール」。combegeay07.jpgオーブンの芳ばしさが帆立の身に寄与して、素直に美味しい。

もうひとつのサイドディッシュに、「モルトーのハムとソーセージ」。combegeay08.jpgさっきこのお店を薦めてくれた、 あのデリカの逸品なのに違いないと勝手に決め付けていただきます。 地元モルトーでモルトーソーセージ食べたことあるひと、そんなにいない筈、 なんちゃって(笑)。

いただいたワインは少々変り種の「Château-chalon」。combegeay09.jpgメニューでは、RougesでもBlancsでもRoséのところでもなく、 「Vin Jaune」というカテゴリーのところに載っている。 ヴァン・ジョーヌは、”黄色いワイン”ってな意味になる。 へー、と思いながらグラスに注ぐと成る程、それは蜜をも思わす黄色い雫。 グラスを鼻先にもっていき、そっと口に含めば、あ!っと想う。 サヴァニャンSavagninという葡萄を使った黄色いワインには、 シングルモルトでちょこちょこ出会う、 所謂シェリー樽フィニッシュと同じ香りがするのであります。 なかなかハードな呑み口にはなるけれど、こりゃ面白い。

相棒は、ドーム状にこんもりと盛り上がった「鶏のパイ包み焼き」。combegeay10.jpgパイ生地の中にはたっぷりと挽肉がつまってる。 均一にお皿に敷いたソースもsauce vin jaune。 グラスのワインに同じ、黄色いワインのソースだ。

片や、お野菜ご飯と一緒盛りの「ホロホロ鳥のロースト 蜂蜜ソース」。combegeay11.jpg手羽先っぽいホロホロ鳥じゃなくて、 ころんとたっぷり肉厚な井出達がいい。 しっとり甘いソースには賛否両論ありましょうけれど(笑)、 ホロホロ鳥のローストrôtiには定番なソースなのかもしれません。

combegeay12.jpgデザートには、定番のフランボワーズのシャーベット。 ブランデーが仄かに香ります。

モルトーの街道沿いに、 オーベルジュにして郷土料理の店「Auberge de la Combe Geay」。combegeay13.jpg紅い看板に描かれたイラストを良く見ると、 カケスの仲間らしき鳥がとまっている枝にふたりの女性が寄り添っている。 どうやら応対してくれたふたりの姉妹がオーナーであるようです。

combegeay14.jpgデリカで買い込んだモルトーソーセージは、 レンズ豆と煮込んで美味しくいただきました。 デリカのご主人、ありがとう。


「Auberge de la Combe Geay」 37 Rue Doubs, 25500 Les Fins, France [Map] +33 (0)3 81 67 02 53 http://www.combegeay.com/
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Play Zone「Quint Arrow」で 金太郎改め唐揚げ牛すじ生姜焼き

quintarrow.jpgそれは確か12年の師走のある日。 久し振りにオープン・カフェスタイルのビストロ「ZOЁ」で「ナポリタン」でもと足を向けました。 その並びには、丼呑倶樂部「金太郎」。 キャラの濃いぃオッチャンの存在と「しょうが焼き丼」の印象が強いお店だ。 「ZOЁ」の前まで来たところで、その隣の建物の真ん前にカラーコーンとバーで囲んだトラックが横付けされているのを目に留めました。

あれれ?と店の正面に回り込む。quintarrow01.jpgまさに建物に足場を架けている真っ最中。 「丼呑倶樂部 金太郎」と示した銘板ももう見当たりません。

quintarrow02.jpgまた一軒、個性なお店がなくなってしまったかと、 とぼとぼその脇の裏通りを歩いていたら、 どこかで見たようなフレーズの看板を見つける。quintarrow03.jpgここに移転していたのかぁーと古い雑居ビルの3階へと駆け上がる。 でも、扉の前でまたちょっと戸惑った。 それは、鉄扉に填めた硝子に記してあったのが、 「金太郎」ではなく、「Quint Arrow」であったからです。

おずおずと扉を開くと、意外と広いフロアが広がっていてちょっと吃驚。 それでも、白髪の髪をポニーテールに束ねたオッチャンの姿を認めてひと安心。 注文を終えて、ずいっとフロアの奥まで進みます。quintarrow04.jpgフロアの中央には、フルサイズのビリヤード台が鎮座。 ダーツマシンも置かれています。

ポニーテールを少し揺らしながら、 カマーベストを着けたオッチャンが運んでくれた「唐揚げ」のお皿。quintarrow05.jpgやや衣厚手に芳ばしく、カラッと揚がった唐揚げが素直に旨い。 サラダや味噌汁は、セルフで準備するのがこちらのルールです。

別のおひるの日替わりメニューには、なんと「しょうが焼き」(笑)。quintarrow06.jpg飾らず気取らず、生姜の風味も控えめな仕立て。 豚肉バラの脂の甘さがシンプルに愉しめます。

またまた別のおひる時には、「牛すじ」の定食。quintarrow07.jpgちょっと辛めの汁とくたくたのモツがご飯を誘わない訳がありません。

移転して、ビリヤードやダーツも楽しめるお店に姿を換えた「Quint Arrow」。quintarrow08.jpgquintarrow09.jpg店内を流れるBGMが、ハワイアンだったりするのもまた不思議な開放感。 「Quint Arrow」=「金太郎」。 「Play Zone 金太郎」「Music Bar 金太郎」ではなんなので(笑)、 語呂よく横文字にしようと腕組思案したのでしょうね。

口 関連記事:   丼呑倶樂部「金太郎」 でしょうが焼き丼どんぶりモノを想う(08年02月)   BISTRO & GALLERY「ZOЁ」で 昔ながらのナポリタン玄米ハヤシ(12年09月)


「Quint Arrow」 中央区八丁堀3-7-7 原田ビル3F [Map] 03-3555-5790 http://quintarrow.on.omisenomikata.jp/
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皇室御用達「ビーフン東」で 新橋でお馴染みビーフン中華ちまき

azuma.jpg西天満の京阪国道沿いに建つは、宇治電ビル。 昭和初期のものだというその建物は、 重厚さと壁のレリーフなど、 趣ある意匠が印象的でした。 地階には、御食事処「一力」。 お盆を手に、棚に用意されたお惣菜や小皿を選んで、 自らお好みの定食に仕立てる例のスタイル。 如何にも大阪の昼飯処の風情があったけど、 結局お皿を幾つも取り過ぎて、 豪勢なおひるになってしまうのでありました(笑)。

そんな宇治電ビルは、 今はもう取り壊されて新しいビルの建設が始まっている。 白い万能鋼板で囲んだ敷地の裏側を通った時、 店の前に立つ黒板の文字を何気なく読んで、思わず振り返る。azuma01.jpgだってそこには、「ビーフン東」と書いてあるのだもの!

「ビーフン東」といえば、 言わずと知れた新橋駅前ビル1号館の台湾料理店。 「Az」と切り抜いたステンレスの文字を横目にしてから、 階段を下ります。

新橋の店のアジアンなイメージでいると少々戸惑うことになる。azuma02.jpgシュッと洗練されたデザインの、地階にして抜けの良いフロア。

カウンターから見上げる黒板のメニューは、 台湾料理とバル・ビストロ料理とが違和感なく並存しています。azuma03.jpgそうは云っても、間違いなくあの「ビーフン東」であるのは、 ランチメニューを眺めればすぐ分かる。 「焼きビーフン小」と「バーツァン(中華ちまき)」のセットをいただきましょう。

オープンキッチンで炒める様子を眺めつ待った「焼きビーフン」。azuma04.jpg焼き目もソースや醤油の色もなく、塩焼きな見映えがそれらしい。

そして皇室御用達とも謳われる中華ちまき。azuma05.jpg竹の皮を恭しく解き開けば、堂々たる風格の姿で鎮座します。

飴色に艶やかなその表面。azuma06.jpgその味を知れば、思わず涎の湧き出す景色であります。

齧った中には、角煮のような賽の目の肉片や煮付けた椎茸など。azuma07.jpg肉や野菜やの出汁が濃いめの味付けの中にしっかりと息づいているのが、 「バーツァン」の魅力のひとつでしょう。

azuma08.jpg別のおひるには、「担々汁ビーフン」とのセットで。 摩り胡麻泳ぐやや辛スープに浮かべても、 米粉由来のビーフンはビーフンのシャキっとした食感のまま。azuma09.jpgスープを持ち上げる感じには乏しくとも、 さらっとした軽妙さもまたオツなものでございます。

昼は、皇室御用達の中華ちまきとビーフンの店「ビーフン東」。azuma10.jpg夜は、ワインビストロ「Az(アズー)」。 「ビーフン東」は、新橋にのみ存在するお店だとばっかり思っていたけれど、 1967年に西天満に「台湾料理 東」をオープンしたのがそもそもだという。 二代目が新橋に進出したその後、西天満の店は閉めてしまっていたらしい。 二代目のご子息、三代目・東 浩司さんの手によって、20年振りにご当地に復活したのが、 こちら「Az/ビーフン東」なのです。

口 関連記事:   ビーフンとバーツアン「ビーフン東」で お初の五目焼きビーフン(06年08月)


「Az/ビーフン東」大阪店 大阪市北区西天満4-4-8 B1F [Map] 06-6940-0617  http://www.az-bifun.com/
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