下町洋食「キッチン トキワ」で 隅田川の景観とカキフライの景色

tokiwa.jpg新富町の駅の上。 そこから市場通りを離れて月島方面へ向かう道は、 聖路加病院の横辺りからカーブを描きつつ、 隅田川を越えるべく視界を高くしてゆきます。 試しにその橋の下を抜けていこうとしたところで、 堤防の手前に石碑らしきものがあるのが目に留まり、 なんだろうと足を向けます。

石碑に刻むは「佃島渡船」の文字。 その並びに掲示された佃島渡船場跡を解説するプレートによると、 家康の時に摂津国佃村(大阪市西淀川区)の漁民を招いて住まわせたところらしい。 対岸の船松町との間に正保二年(1645年)に通ったのが佃の渡しで、 昭和39年の佃大橋の完成によって300年の歴史を閉じた、と。 tokiwa02.jpgtokiwa03.jpgtokiwa04.jpgtokiwa01.jpgこの辺りに渡し舟があったのかぁと思いながら「隅田川テラス」への階段を上がると、 パッと視界が開けて、向かい側の大川端リバーシティ21から中央大橋の架かる隅田川の景観が目に飛び込んでくる。 なかなかの眺めであります。

そこから陸側を振り返るようにすると、 佃大橋のカーブの影に目指す雑居ビルがある。tokiwa05.jpgtokiwa06.jpg以前あったキリンビール提供のスタンド看板が見当たらない。 ますます飲食店の存在がステルスに傾いている下町洋食「キッチン トキワ」に、 久し振りのお邪魔です。

tokiwa07.jpg満席間近の店内。 カウンターの端っこに空席を認めて、此処よいですかと目配せします。 例によって、あれこれ目移り必死の短冊を見上げつつ、 冬の時季のご注文といえばやっぱり、「カキフライ」でありますね。tokiwa08.jpgtokiwa09.jpgtokiwa10.jpg 広島は地御前(じごぜん)産の大粒の牡蠣です、と謳う「カキフライ」。 やや平たい形状の牡蠣を包む衣サクサクとして、 磯っぽさも纏いつつ弾ける旨みは期待を裏切らない、味の景色。 ドレッシングのようにも思う、水っぽい仕立てのタルタルが個性的なんだよね。

もっと通って、メニューのあれこれを制覇しなくっちゃと思わせる、 下町洋食の「キッチン トキワ」。tokiwa11.jpgそのファサードにふと、王子の向こうの煮干し中華そば屋「伊藤」を想い出す。 看板なんかなくたって、魅力ある店にはヒトが集まるものですね。

口 関連記事:   下町洋食「キッチン トキワ」で ウィンブル丼に海老フライカレーに(09年07月)   中華そば屋「伊藤」で 質実なる潔さと大盛りつゆ増しへの欲求(09年04月)


「キッチン トキワ」 中央区湊3-12-7 「Map」 03-3552-4081
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オイスターバル「KAKIYA」で 大黒神島かき料理あれこれ旨し嬉し

kakiya.jpg道頓堀川も間近な宗右衛門町界隈。 如何にもタチの悪そうな酔っ払いオヤジや客引きのおねえちゃんが交錯する玉屋町筋。 そこに協会創設者Génさんに、大阪のことは任せた!と云わしめたマイスター営むオイスターな店がある。 その名もそのまま、オイスターバル「KAKIYA」は、 この10月のオープンだ。

実は、この7月にキタの「THE PARTY」というオイスターバーを訪ねたことがありました。 マイスターに挨拶しようとしたら、今はもういないという。 どうやら、独立のために辞められた直後のタイミングだったらしい。 そんなことでマイスター不在な「THE PARTY」だったけど、 マイスター特典を適用してくれて、とっても有難かった記憶が蘇ります。

さて、オイスターバル「KAKIYA」のファサードはというと、 Rを描く硝子面とその周囲を縁取るブルーのチューブライトが印象的。kakiya01.jpgRを描く硝子の中央にも配置したちょっとサイケなロゴは、 “OYSTER”を表しているように見える。 R硝子の内側がコンパクトなテーブル席コーナーで、 その奥が数席のカウンター。 全体にシュッとスリムでスタイリッシュな造りになっている。

カウンターの隅に腰を据え、 やっとこオイスターマイスターにして総料理長の高島さんにご挨拶。 目の前のトレーに並んだ牡蠣を物色します。kakiya02.jpgあの「先端」もメニューに載っていますが、 その夜は残念ながら入荷なし。 然らば、同じ海域から届いた「大神黒島」に兵庫「坂越バージン」を。 グラスのシャンパンを添えてもらいます。

流石、生活排水から隔絶した海域で育んだ「大黒神島」。kakiya03.jpg清澄な旨味が一気に煌めいて、すっと消える。 殻の中の海水ともども、すかっと明瞭に海の恵みが美味いのだ。 ああ、甘露甘露。

「KAKIYA」には、殻付き生以外の「かき料理」メニューもしっかりと。 「カキのスモークオイル漬け」は、 オイスターバーならではのフルっと加減良くレアな牡蠣。kakiya04.jpg漬けた牡蠣は、ご存知「かき小町」。 スモークの芳ばしさとオイルの円やかさを纏って、素直に旨い。

オイスターバーにも欠かせない「カキフライ」は、 もしかして「先端」?としげしげ眺める小振りな佳作。kakiya05.jpgkakiya06.jpgたっぷりのタルタルを載せていただけば、弾ける旨さ嬉し。 思わず、ギネスを注文んじゃいます(笑)。

「カキフライ」に負けじと「カキのガーリックバター焼き」もまた気になって(笑)。kakiya07.jpgほんのりガーリックにバターのコクが牡蠣の身を包み込む。 バジルの香りも相俟って、期待通りのホフハフな美味しさだ。

するってぇーと「カキのクラムチャウダー」はどうだろうと所望する。kakiya08.jpgベシャメルにふつふつと含む野菜魚介の旨味みを愉しんでから、 ちょっと大きくスプーンを動かすと、ジャーンと顔を出す牡蠣。 特段縮んだ様子もみせないまま、 スプーンに素直に載っかるサイズの牡蠣がいい。 「先端」のクラムチャウダーも食べてみたいなぁ(笑)。

〆にと、「かき飯」じゃなくて、焼き牡蠣をひとつと相談すると、 メニューには載っていなかった「室津かき」を焼いてくれた。kakiya09.jpgいやはや、旨味がしゅっと凝集して、焼いた牡蠣もやっぱり美味い。

大阪ミナミに登場した日本オイスター協会推奨店、その名も「KAKIYA」。kakiya10.jpg「KAKIYA」は、南船場のおさかなやたい「まつり」も営むGOM井川さんと高島さんのお店。 出来れば、「KAKIYA」を守る高島さんからカウンター越しに牡蠣の薀蓄をあれこれ頂戴したいところだけれど、キッチンが一番奥にあって、「かき料理」を注文すると総料理長が引っ込んでしまうという。 でも、かき料理も注文みたい(笑)。 このジレンマがちょっとした悩みかもしれません。


「KAKIYA」 大阪市中央区宗右衛門町5-6 センチュリービル1F [Map] 06-6213-3238
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CURRY STAND 「KHADONO」で黒毛和牛とひき肉なす旨々カレー

kadono.jpgまだまだ続く暑い夏が、 ほんの少し和らいだ頃だったでしょうか。 新富町の裏通り界隈でお昼にありつこうと早足で向かう道すがら。 入船一丁目信号の銀行裏手にあった「香もと」という店が改装工事中なのを見つけました。

白く塗った壁に黒いシャッター。 まだ、看板らしき額部分には、目隠しのようなものがされている。kadono00.jpgどんなお店になるのかなぁとしばし立ち止まって眺めていました。

束の間の秋が通り過ぎて、一気に冬の装いとなった頃。 WINE & CURRY STANDと謳うお店のオープンを知りました。

硝子越しに覗くカウンター。 そのまま引き戸をスライドして、こんにちは。kadono01.jpg見上げる壁の棚にランチどきのメニューが飾られています。

向かい側のアパホテルのエントランスがじっくり眺められそうな窓際席へ、 まず届いたのが「サービス栄養サラダ」100円也。kadono02.jpg硝子ケースに用意されたサラダは、日替わりでちょっとづつ景色が違う。 最初にサラダをお腹に入れるのが、ちょっとした健康の秘訣と最近知りました(笑)。

そして、半裁した半熟茹で玉子の表情も印象的な「黒毛和牛のカレー」がやってきた。kadono03.jpgkadono04.jpg直裁に云えば、実に好みのお味。 沢山を丁寧に炒めたであろう玉葱の甘さと、 和牛や他の香味野菜から挽き出したであろう旨みを溢れんばかりに含んでいる。 それでいてベッタリせず、シャバシャバ具合も好ましい。 辛さほどほどの英国風カレーに思わず嬉々としてしまいます。

オーダーする時に牛!と叫べば「黒毛和牛のカレー」だけど、 豚!と叫ぶと「ひき肉なすカレー」がやってくる。kadono05.jpgkadono06.jpgキーマっぽいようでいて、なにかと具沢山。 ひよこ豆の歯触りに続いて、挽肉の中から顔を出す茄子がいい。 盛大な音と煙はこの茄子を北京鍋で炒めた際のもの。 そして、カレーソースの中に何気なく潜む青っぽい風味はピーマンのそれ。 むむむ、やるなぁ。

昼はカレースタンドにして、夜はワインスタンドな新店「KHADONO カドノ」。kadono07.jpg西長堀に移転した中華そば「カドヤ食堂」とか、 同じ新富町のオバちゃんの店「かどや」とか、 両国の「かど家」あたりを想いつつ、 「カドノ」っていうのは、門野さんとか角野さんとかのお名前ですか?と訊ねてみました。 するとやっぱり「いえ、角にあるからそれが判り易いンじゃないかって」とお姐さん。 期待通りのお応え、ありがとうございます(笑)。

口 関連記事:   中華そばのお店「カドヤ食堂」で 限定品青森県産焼干し醤油そば(10年04月)   食事処「かどや」で 吾が町新富45年お好み惣菜とおにぎり定食(09年12月)


「KHADONO」 中央区新富1-15-3 新富ミハマビル1F [Map] 03-3555-0050 http://khadono.com/
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BAR「サフラン」で 柳ヶ瀬ハイボールとゆったりオーセンティック

saffron.jpg中国料理「三本足」の仙人にご馳走さまと告げて、 柳ヶ瀬の残り香を帯びた裏道に入り込む御一行さま。 なかなかいい具合に満腹でほろ酔いな足取りで辿り着いたのは、総煉瓦タイル貼りのやや古びたビル。 入口には、槍先を載せたジャバラな門扉。 イチゲンさんを拒むような、妖しい雰囲気が色濃く漂っています。
迎える扉は、 樽材を加工して鉄の帯で留め込んだようにも見える重厚なもの。saffron01.jpgそれを勝手知ったる勢いでぐいっと開いて雪崩れ込む御一行さま。 その最後尾に付いて続きます。

するとそこには、奥へと伸びるオーセンティックなバーカウンターがある。 バックバーはもとより、その向かい側の棚一面にもボトルが並んでる。

カウンターに並んで腰掛けるのかと思いきや、 そのままカウンターの前を通り過ぎて、突き当たりにある階段を進む。saffron02.jpg階段の途中から見下ろす景色でカウンターのキャパが確認できます。

二階もあるオーセンティックバーなんて、 「Radio」ぐらいしか思い当たらないぞと呟きつつ階段を上がり切ると、 左右にゆったりしたラウンジが広がる。saffron03.jpg全体にマホガニーな色合いに統一してあって、 なかなかの落ち着きっ振りであります。

さて、柳ヶ瀬のバーで、まず一杯となれば、「柳ヶ瀬ハイボール」。 以前一度、お目に掛かかることがあったので、それはひとまず心得たもの。

ウイスキーは、岐阜県の県の鳥「雷鳥」をシンボルマークとしたスコッチ、 「ザ・フェイマス・グラウス」。saffron04.jpg小皿ないしはグラスの上に添えるは、 檸檬のスライスのみならず、胡瓜のスライスに生姜のスライス。

キュウリを入れると不思議とメロンの風味のする。 ジンジャーを加えれば、ピリッとスパイシーなキレ味が出る。saffron05.jpgこのキュウリとジンジャーとを挿し色にするのが柳ヶ瀬スタイルのハイボールなのだ。

ここ「サフラン」は、一軒目使いするのもまったく心配がないほど、 フードメニューが充実してる。 「朝天椒と青山椒の炒め」とか「カエルの唐揚げ」とか、 さっきまでお邪魔していた「三本足」より本格派アプローチの中華タイトルも並びます。 でももう、お腹一杯なのだー(笑)。

saffron06.jpg山崎蒸溜所訪問を果たしたというseppさんの話を聞きながら、 それならと、やっぱり「山崎12年」をトワイスアップで。 ゼロ年の生まれたてモルト原酒なんかを口にできるのは、 蒸溜所を訪れてこそのエピソードだね。

1968年創業の「サフラン SAFFRON」は、 きっと岐阜市中の重鎮的オーセンティック・バー。saffron08.jpgsaffron10.jpgsaffron07.jpgsaffron09.jpg古いアルバムの写真なんかを見せていただきながら話を訊けば、 「サフラン」の名は元々、バーへと衣替えする前の喫茶店の名前。 バーとしての店名に変更しようと思っている裡に愛着が湧いて、今に至るの巻だそうです。

口 関連記事:   中国料理「三本足」で円やか辛み麻婆豆腐麻婆ナス四川タンタン(12年11月)   Bar「Radio」で ストローハットとXYZとお猿さんモチーフのその訳(08年09月)


「サフラン」 岐阜市御浪町9 [Map] 058-263-2015
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蕎麦「山形田」で 定番限定十割外一夏の冷やし地鶏冬けんちん

yamagataya.jpg鍛冶橋通り沿い、京橋の雑居ビルの中二階。 そこから「山形田」が銀座に移転したのは、 いつのことだったかな。 壁に向かうカウンターに座っていると、 背中を通るひとの狭さが気に掛かかって。 でもそんなに悪い気もしない妙な感覚を思い出す。 時折思い付いてはお邪魔している「山形田」へは、 取り壊しが決まってしまったと聞く三原橋地下街を背にして進みます。

地下への階段を下りると、 絣風の暖簾の下から男性の下半身が覗く。 それは、券売機に正対して注文する品書きに思案する、 よくみる後姿なのであります。

yamagataya01.jpgまず試したくなるのはきっと、 一日限定20食の「十割そば」。 たっぷりと整えるように盛った板で届きます。yamagataya02.jpgyamagataya04.jpgやや濃いめの灰色に野性味を想いつつ、 つゆに浸して、ツツツと啜る。 うむ。 見掛けと符合するよに、そば粉が静かに主張する。 滑らかな中の剛さがよいね。

揚げ立てでなくとなかなかの舞茸天ぷらが定番なところ。 時にはゲソ天なんかも一興で。yamagataya03.jpgお燗つけて!なんて云いたくなるのが困りもの(笑)。

yamagataya05.jpg 同じ一日限定20食の品に「外一そば」がある。 その名が示すは、そば粉の十に対して一割の小麦粉の配合。yamagataya06.jpg漢気で迫る生粉打ちが、ちょっと嫋やかな物腰を携えはじめる辺り。 とても良いバランスに思います。

そして、「山形田」の夏の定番と云えば、 「蔵王冷やし地鶏そば」。yamagataya07.jpgyamagataya08.jpg歯応えしっかりめの蕎麦が、 白出汁を思わせる旨味の利いた冷たいかけ汁に浸ってる。 噛むほどに滋味の滲む地鶏の刻みが、納得の好相性。 三つ葉の涼やかさも嬉しいところ。

ぐっと冷えた冬場には、「かも南そば」も勿論よいけれど、 山形らしさにも触れたくて、「けんちんそば」を注文んじゃう。yamagataya10.jpgyamagataya11.jpg味の沁みた大根や里芋、時折顔を出すに占地に蕨。 けんちんにすると格段に温まる気がするのは何故だろね。

熱々のつゆに浸っても、ナヨナヨしない蕎麦も頼もしい。 「山形田」では、十割、外一用、ニ八用、温用等、提供するそばの種類ごとに配合した蕎麦粉を山形から仕入れているとのことだから、これは温かいそば用に配合した粉で打った蕎麦ということになるね。

在京山形蕎麦の店の代表格、銀座「山形田」。yamagataya09.jpg店の名の由来は、ただ真っ直ぐに「やまがただー!」。 ふと、奥田シェフの店「ヤマガタ サン ダンデロ」も思い出す(笑)。 元々はといえば、山形商工会議所青年部が企画した山形そばの店なのではあるけれど、 今は山形出身にしてチャキチャキな女将さんの温かさ和やかさと 山形産の蕎麦の魅力とが相俟って、 絶えずひとを引き付ける安心感を深めています。

口 関連記事:   そばきりや「山形田」 で冷やし地鶏おろしそばワシワシ田舎そば(07年04月)   山形イタリアン「YAMAGATA San-Dan-Delo」で山形食材じっくり(09年09月)

「山形田」 中央区銀座3-8-15 アパ銀座中央ビルB1F [Map] 03-3535-9490  http://yamagatada.jp/
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