東京流うなぎ「菱東」で うなぎ丼セミダブル路地長屋の老舗風情

hishito.jpg大阪駅のお隣、福島駅。 ブランドショップが居並ぶ梅田のHERBISプラザからリッツ・カールトン前を抜け、公園を横切るように阪神高速の高架を潜れば、福島界隈に辿り着く。 高層のホテルやレジデンスを見上げながら、なにわ筋方向へと向かうと、いつの間にか懐かしい空気をも含む路地に突入していました。

道なりに、粋なインド料理店の角を曲がると、古びた長屋の続く路地に出た。hishito01.jpghishito02.jpg振り返れば、長屋の情緒とその先の高層な建物とのコントラストに立ち止まる。 成子坂の北側エリアから西新宿のビル群を眺めた時に似た、一瞬のデジャヴ。

いい雰囲気だよねと佇んで眺めたお店には、暖簾の掛かった入口が二つ。 割烹と書かれているその下で、「東京流 うなぎ」の文字もある。 これは、寄り道しない訳には参りません。

ちょっと呑んでしまいます御免なさいの昼下がり(笑)。 ラストオーダー間際だと聞いて、一品だけでも麦酒のお供をと「うまき」をひとつ所望します。hishito04.jpgあらかじめふた皿に取り分けてくれる気遣いに感謝しつつ、 玉子から立ち昇る湯気に心和みます。 熱々をハフホフといただけば、柔らかで明快な出汁の旨みに鰻のそれが重なって、 うん、美味しい。

hishito03.jpg壁に貼られたお品書きをちょっとチャーミングで愉しく思うのは、 「シングル」「ダブル」「セミダブル」という文字が並んでいるところ。 ベッドのお話ではなく、勿論、鰻のボリュームについての事柄です。

ちょうど、ゆっくりと麦酒の瓶が空いた頃、 「うなぎ丼」の丼重が届きました。hishito05.jpg3川並んでいるのは、”セミダブル”をお願いした証です。

外光を少々照らして艶やかに誘う、うなぎ。hishito06.jpgでも、ぼってりしたタレの感じではなく、端正な印象を覚えます。

口に含めば、軽やかな香ばしさと品のいい脂と旨み。 はい、美味しゅうございます。hishito07.jpg柔らかなその身の感触に鰻を蒸す工程を想うところ。 そして特筆すべきは、後味にふっと残る酸味。 これはもしや、タレに梅酢のようなものを仕込んでいるのではないかしらん。 そのお陰で、一種のキレのようなものが生まれ、軽快かつ個性的な食べ口になっています。 これって、割と常道なことなのでしょうか。

大阪・福島は、ホテル阪神の裏手地蔵寺路地裏の長屋に、 大正10年創業の鰻の老舗「菱東(ひしとう)」が佇む。hishito08.jpg訊けば、建物そのものはもう百年を越えるものだそう。 どうやら、初代が、東京流の流れを汲む「菱富」という店で修行し、 「菱富」の”菱”と東京流の”東”を取って「菱東」と命名した、らしい。 しばしその佇まいを眺めてから路地裏を離れようとしたころで、 一服されている二代目のご主人らしきご老人とお話しする機会に恵まれた。 東京流と看板に示している通り、背開きで蒸しを入れる蒲焼きなのだそう。 あ、しまった、梅酢っぽい味わいの秘密についても訊ねればよかったな。

「菱東」 大阪市福島区福島5-7-9 [Map] 06-6451-5094
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武蔵野うどん「じんこ」で肉ネギつけ汁武蔵野うどんの定義と境界

jinko.jpg96年のキャロットタワーの完成で、 もうすっかり再開発が済んだような気もしていた、 三軒茶屋駅周辺。 ところが、駅の真上の三角地帯は、 今も取り残されたように昭和の匂いを残してる。 迷路のような路地を往けば、なんだかそれだけで愉しくなってきます。
そのさらに裏手のような場所にあるのが、武蔵野うどんの「じんこ」。 居抜きの元呑み屋にうどん打ちの小部屋を設えた感じで、 硝子越しに打ち粉の白が浮かぶ麺打ち台が覗けます。
jinko02.jpg お品書きには、 あれこれと居酒屋メニューも並んでる。jinko01.jpg でもここは敢えて、お目当ての武蔵野うどんのみに注目しましょう。

「当店イチオシ!」とアピールしているのが、「肉ネギつけ汁うどん」。 量のレベルが小から特々盛りまで5段階用意されていて、特々盛りは、1,000g。 たんまり食べたい気分ではあるけれど、流石に1kgは無理(笑)。 それでも多いかとも思いつつ、店のおねえさんが「ワタシでも食べられます!」という、 大盛り500gをいただくこととします。

麺を湯掻く湯気の様子を眺めながら、 ゆっくりと出来上がりを待つひと時。 ややあって、「肉ネギつけ汁うどん」のお膳がやってきました。jinko03.jpgjinko04.jpg うどんは、想定よりも太く、縮れっぷりや捻れっぷりからも麺の力強さが想像できます。

jinko06.jpg 箸の先に載せても感じる量感のうどんを、 豚バラ肉や葱、刻んだ油揚げがたっぷり浮かぶつけ汁にどっぷりと浸します。jinko07.jpg ずずずず。 と、啜り上げる感じで啜ろうとするも、麺の剛性逞しく。 縮れや捻じれがほぼそのまんまなので、どうもつるんと啜る訳にはいきません。 結果として、ほんの数本のうどんをちょっとづつ咥えて齧る感じになる。

コシが強いというよりは、硬くて噛み応え満点のうどん。 きっと、茹でが足りない訳ではなくて、こふいふ打ち方のうどんなのでしょう。jinko05.jpg成る程、粉の風味が活き活きとかんじられて、いい。 お気に入りの一軒、「豚や」の「黒うどん」に似ていなくもないけれど、 わざわざ硬くすることに注力しているのではと思うと、ちょっと残念にも思えます。

jinko08.jpgお品書きには、「武蔵野うどん」が、埼玉県北部から東京多摩地域にかけての武蔵野平野発祥の伝統のうどんであることを記してる。 ただ、うどん生地への足踏みを一切しないところが、他の店との違いという。

体重を利用しないで、手の力だけで生地を折り畳んで延すのは、重労働な筈。 その点を含め、足踏みをしないことの良さがどこにあるのか判らないけれど、 それがうどんにしなやかさを欠くことの要因なっていやしないか、 なぁんて余計なことまで考えたりして(笑)。

後日、「カレーぶっかけうどん」も試してみました。 ごわごわっと麺が硬い印象は大きくは変わらない。jinko09.jpgカレーのうどんもやっぱり、ずずずと啜りたいことを想うと、 それが適うテクスチャのうどんが好ましいということなる。 でもそうすると、此処の個性や拘りを希薄にすることに繋がるだけなのか。 またまた余計なことながら、ひとり腕組みして考えてしまいました(笑)。

三軒茶屋の裏路地に、武蔵野うどんの「じんこ」あり。jinko10.jpg店先の丸い看板をよくみると、「神粉」という文字も窺える。 神の粉もしくは粉の神と書いて、「じんこ」。 埼玉県が香川県に次いで小麦粉の消費量が多いことを伝えているお品書きにも、 そんな埼玉産や群馬あたりの地粉を使用しているとは示していない。 この辺りも「武蔵野うどん」の定義と境界の曖昧さを現していることのような気がします。

口 関連記事:   手打ちうどん「豚や」で 粉ぶわわんの豚肉汁の黒うどん(07年11月)


「じんこ」 世田谷区三軒茶屋2-11-11プレジオ三軒茶屋1F 03-3411-0588 http://jingo-udon.com/
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バー「カルバドール」で ジャック・ローズとカルヴァドスの基礎知識

calvador.jpg千本中立売の銘居酒屋「神馬」。 その世界にじっくり浸り、 大満足の体でタクシーに乗り込みました。 向かった先は、鴨川を西へと渡った二条通りが、 寺町通りでクランクする辺り。 以前、二階のフルーツパーラーにお邪魔してパフェをいただいた、梶井基次郎の小説「檸檬」の舞台のひとつ「八百卯」の前で車を降ります。

「八百卯」はどうやらもう、閉めてしまったようですね…。 そこからほんの数十歩、角のコンビニ方向へ。 一階はシャッターの閉じた雑居ビル。 そこから上のファサードは、洋館のそれのような煉瓦積みの意匠。calvador01.jpgその一角に小さく切りとった窓がある。 額縁のようなその窓に飾られた、妖艶に紅い一輪の花が印象的だ。

その額縁の在り処を探すように、雑居ビル二階の狭い通路に出る。 通路の突き当たりにあるドアには誘うような気配があるものの、そこに店の名はない。 その代わりに、Apple社よろしく、林檎を象った白抜きのロゴマーク。 それが、バー「カルバドール」への入り口となる。

ファサードの煉瓦と繋がるデザインに思うシックなインテリアの店内は、 ゆったりとした変則L字のカウンター。 「カルバドール」は、ご存じ林檎の蒸留酒、カルヴァドスのラインナップ漲るバーなのだ。

calvador02.jpgオーナーバーテンダーの高山さんに正対して、お邪魔しますとペコリ。 矢張り折角なのでカルヴァドスを何杯かいただきたいと告げると、 カクテルから始めてみては如何でしょうと、そう仰る。calvador03.jpgそしてシェイクしてくれたのが、柘榴とカルヴァドスのカクテル「ジャックローズ」。 柘榴の酸味と独特の香気がカルヴァトスと素敵に融和して、美味しい。 ちょっと垂らした「Carib」が全体を円やかに纏めてくれています。

カウンターに並んだボトルたちは、クラシカルでアンティークな雰囲気と表情を魅せている。calvador05.jpg訊けば、カルヴァドスだけで200本以上のストックがあるそう。

全部がそうという訳ではないけれど、 壁一面のボトルの多くがカルヴァドスのそれであり、なかなか壮観な眺め。calvador04.jpgと、バックバーの棚に飾られた一枚のコースターに気がついた。 それは、今はなき、新橋のオーセンティック・バー「Tony’s Bar」のコースター。

あれって、「Tony’s Bar」のコースターですね。 そう問い掛けられた高山さん曰く、 老舗バー「Tony’s Bar」とは、「サンボア」他のマスター共々交流があって、 閉店に際しても足を運んで、終末を見守りました。 寂しいものですけどね、と。

柔和で温厚な表情に、素朴で真摯なリスペクトが混じる高山さんに、 今度はストレートでおススメをとお願いします。calvador06.jpgcalvador07.jpgハーフショットで試してみてくださいと手にしたボトルには、 煙草で焦がした跡のような虎縞バックのエチケット。 「アドリアン・カミュAdrien Camut」の蒸瑠元が、 「カルバドール」のために瓶詰めしてくれたものだという。 成程、エチケットをよく眺めると、「Bar Calvador」とある。 舐めるようにいただくとこれが、意外なほどに丸くメローな呑み口で、 ふわっと林檎由来の香りが過って、イケる。

もう一杯はと、高山さんが選んでくれたのが、 「ルモルトン ヴュー・カルヴァドスLemorton Vieux Calvados 1968」。calvador08.jpgcalvador09.jpg 恥ずかしながら、 カルヴァドスは林檎のみで作るものとばかり思い込んでいたけれど、 このグラスの滴のように洋梨のジュースを多く含んで仕込むカルヴァドスも少なくないそう。 これは襟を正して、カルヴォドスの基本の基本を知らねばなりません。

高山さんのお話を要約すると、 カルヴァドスは、フランス北西部のノルマンデー地方でつくられる、 林檎を主原料とした蒸瑠酒。 例えばシャンパンと同様に原産地呼称規制(AOC)の対象で、 ノルマンデーの所定の地域でつくられたものしかカルヴァドスとは呼べない。 中には洋梨を含むものも少なからずある。 ということになる。 しまった今まで縁遠かったものなぁと、少々後悔したりして(笑)。

一杯だけと訊ねた別の夜。 ほぼ満席のカウンターの隅でいただいたのは、「ビュネルBusnel VSOP Pays d’Auge」。calvador10.jpgcalvador11.jpgトニックで割ってみれば、 ウイスキーのそれとは勿論また違う、オツな一杯だ。


カルヴァドスに力点を置いた稀有なオーセンティック・バー「カルバドール Calvador」。calvador12.jpg高山さんに訊けば、店の名「カルバドール」は、 スペインの無敵艦隊「カルバドール」からいただいたもの。 スペイン軍艦「エル・カルバドール」が英国艦隊に敗れ、 座礁したのがノルマンディー海岸近く。 ノルマンディーに漂着した乗組員が故郷の製法でアップルブランデーをつくった。 それが後に、その地方で作られるようになったリンゴのブランデーを「カルヴァドス」と呼ぶようになったと云う。 「カルヴァドス」が、遡れば軍艦の名であったとは、これまた知らなかったなぁ。

口 関連記事:   フルーツパーラー「八百卯」 で小説檸檬とフルーツパッフェ(08年03月)   Bar「Tony’s Bar」で 酩酊の帳に訊く埼玉モルトIchiro’s Malt(09年09月)


「カルバドール」 京都市中京区妙満寺前町446 若林ビル2F [Map] 075-211-4737
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居酒屋「河本」で にこみとホッピーと女将さんのいる風景と

kawamoto.jpgまだまだ残暑厳しき頃のこと。 久々に降り立ったのは、東西線木場の駅。 改札を抜け、地上に上がれば、 交叉点を西に傾きかけた灼熱の陽射しが炙ってる。 忽ち汗ばんで参ります。 そこから永代通りを門仲方向へちょっと戻って、 左に折れる。 するとすぐに出会す川は、大横川という小さな川で、平野橋という小さな橋が架かっています。

その橋の袂から川の側道に出れるようになっていて、 そのまま川に沿って進めば、平久橋という橋の下に回り込む。kawamoto01.jpgちょっとした水辺の散歩道になっているようです。

時間調整も兼ねて、散歩道を往って帰ってしてから、 ヨーカドーなんかが入る「深川ギャザリア」方向へ足を進めれば、 手前の角に、歩道脇に草木茂らせた、 江戸茶色のリブ波トタンを貼り込んだ建物が見えてくる。kawamoto02.jpg酷暑の中やってきたのは、ご存知、居酒屋「河本」。 待ち合わせたのは、此処にずっとずーーっと来たかったの!と云う、laraさんだ。

信号の向かい側に佇んで、ほんの暫く、味わい深き「河本」の佇まいを眺めていると、 定時よりもちょっと早く、女将さんが暖簾を手に登場された。kawamoto03.jpgああ、すぐさますっとお手伝いするには距離がある。 店のすぐ前で、”シャッター”していれば良かったね。

ふと気がつけば、暖簾の左手にあった「河本」の文字が右手に動いて、 ちょっと凛々しい感じになっている。 以前の「河本」のアップリケ風文字は、ブログタイトルでずっとお世話になってます。

早速、暖簾から中を覗き込んで、久し振りのカウンターに腰掛ける。kawamoto05.jpg面取りしたところがさらに擦れて丸みを増したカウンターや、 修繕の跡も微笑ましい丸椅子が迎えてくれる。

ああ、くにちゃんたちとお邪魔した時も熱い日だったなぁ。kawamoto04.jpg冷房設備なんてないところが、これまたオツなのだと思ったことを思い出しました。

「河本」でいただく麦酒にはやっぱり、キリンラガーが良く似合う。kawamoto06.jpgとうとう来ちゃいましたね~(笑)、と祝杯のグラス。 汗ばんだ額と乾いた喉に、瓶のラガーが涼風を運んでくれます。
kawamoto17.jpg 左手の壁に掛った品札の文字を愉しく眺めてから、 まずはやっぱりここからと「にこみ」を女将さんに所望します。kawamoto07.jpgkawamoto08.jpg目の前の鍋から小鉢に取り分けてくれる女将さん。 ああ、あっさりしながら味が滲みて、ホルモンのふるふるが上手にいただける。 やっぱり、旨いです。

「にこみ」の隣に掲げられている札は、 「さらしくじら」とチョークの文字で。kawamoto09.jpgさらした鯨は、一種不思議な美しさ。 酸味抑え目の酢味噌との相性や、絶妙で、 味のないようにも思えるくじらが風味の表情を明るくしてくれます。
kawamoto10.jpg こんな肴たちには、 麦酒からホッピーに切り替えるのが自然な流れ。 ツー、シャコン!と焼酎を注ぐ女将さんの所作がいい。kawamoto11.jpgずっとずーーっと来たかったんです!と訴えるlaraさんの話に、 うんうんとにこやかに頷き返してくれる女将さんの笑顔と、 どこか飄々とした雰囲気がやっぱりチャーミング。 え!そんなに遠くから!と云ったときの表情なんか、特にね(笑)。

「かけじょうゆ」は、その脇に「マグロぶつ」と括弧書きが添えられて。kawamoto13.jpgkawamoto14.jpglaraさんが「やっこさん」の大200円也を女将さんに注文した時、 カウンターがほんの少しざわついたのは、 大のサイズがまるまるお豆腐一丁であるのを皆さんご存じだから(笑)。 「もろきゅう」もお供に、朗らかにゆっくりゆっくりホッピーを呑み干します。

kawamoto12.jpgふと、壁の額装を覗き込むと、どなたが認ためたのでしょう、 「居酒屋猫」と題した、「河本」を詠う素敵な書がある。 一節には、「女将は何のてらいもなく、只にこやかに客に対している」と。

戦前からの残り香がいまも心地よく漂う、老舗酒場、木場「河本」。kawamoto16.jpgkawamoto15.jpg若くして店に立つことになった頃の顛末も、 まさに衒いなくにこやかに話してくれる女将さん。 半世紀にも亘って店に立ち続ける間には、 いろんな苦労や難儀なことが幾つもあったことでしょう。 でも、そんなことは笑い飛ばしてしまうような気風も秘めている。 お元気でと願うのは、それが訪れる客自身のためでもあるから。 寒さが凍みる頃におでんの湯気に包まれるのもまたよいのでしょうね。 laraさん、初「河本」、どうだったかな。

口 関連記事:   居酒屋「河本」で ホッピーにこみにアジす漬仕舞た屋風情の倖せ(07年08月)


「河本」 江東区木場1-3-3 [Map] 03-3644-8738
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おかみ丼々「和田」で京仕込みの出汁でいただく親子ぶた他人丼

wada.jpgまだ夏真っ盛りの八月下旬。 1ヶ月程先に念願のお店を開くのよと聞いたのは、 某ピアニストのご自宅のお庭でのことでした。 お店の場所を訊ねると、築地だという。 市場通りと晴海通りが交叉する四丁目の信号近くだというので、当てずっぽうに「ばらくーだ」のある路地辺りかなと云うと、なんで判るのよと逆に迫られた(笑)。 「ふじむら」の跡地だったりして、なぁーんて付け加えたら、なんとビンゴでありました。

そんなこんなでオープンが愉しみなお店へと、 造作の進捗具合を確かめに寄ったりしてみる。wada01.jpg決して広いとはいえないスペースの中央に、三角形に突き出た骨組みが見える。 そのままの位置でカウンターの立ち上がりの下地になるのだとすると、 ちょっと面白い配置のL型カウンターが出来上がることになるね。

その後二度程様子眺めに足を向けるも、 一見あまり進展がないようにも見えて心配だったりして(笑)。 wada11.jpgファサードに硝子が収まり、両脇にパネルが立つのを眺めて安心したのはもう、 開店日の一週間程前のことでした。

いよいよ開店の日。 街角の花屋さんに寄ってから、件の路地へと向かいます。wada02.jpgああ、丸い刳り貫きはなんだろうと思っていたら、 店の名を掲げる場所だったのですね。 路地に向け、開店を祝う花たちが覗いています。

横引きの硝子戸を開けると、正面にカウンターの角がくる。 造作の最中に眺めた場所そのままにカウンターが配置されています。wada03.jpg天板では、籐を編んだよなランチョンマットが涼しげに。

カウンターの両翼にそれぞれ4脚。wada04.jpgそして、入って左手コーナーとで都合12名が最大収容人数のこじんまり感がいい。

wada05.jpg 見上げる札は三枚だけど、 開店初日の品はひと品、「親子丼」のみ。 円で描くお店のロゴを内側に刷り込んだオリジナルのどんぶりで「親子丼」の登場です。wada06.jpgたっぷりの玉子にたっぷりの九条葱が第一印象。 そして、その間にコロコロと鶏の身が覗く。 そっと箸の上に載せていただけば、 玉子の風味や葱の甘さの下から顔を出す出汁の旨みに、嗚呼、しみじみ。

「和田」の女将さんは、 京都・七条通り堀川の「大阪屋」(京都だけど大阪屋)ご夫婦の薫陶を受けていて、 女将さんがひく出汁は、その「大阪屋」が錦市場で仕入れる昆布や大阪屋向けに仕立てた節ブレンドと同じものを使っているそう。 鶏は、築地でご存じ「宮川」で捌き立ての新鮮な鶏肉だ。

裏をかえして、築地の路地へ。 「ぶた丼」「他人丼」の提供も始めました、と女将。 然らばと「ぶた丼」を所望します。wada08.jpg鶏に代わって豚の脂の甘さと玉子とのコンビが品よく迫る。 そして、女将さんのどんぶりは、ぎりぎりのところまで火を通すのも特徴だ。 とろとろ半熟玉子のコクで食べさせるドンブリが少なくない中で、 下地で何気に利いている出汁ですすすっといただけるのがこのどんぶりの魅力。 玉子は、徳島・阿波からの玉子を使っているそうです。

間を空けず、またまた築地の路地にやってきて、 今度は「他人丼」をいただくことにいたします。wada09.jpg京都では、牛肉を使うドンブリの方が鶏に次いでメジャーなのだろなぁと想いつつ、 お願いして出してもらった匙を動かします。 うん、豚に比べて断然とはんなりした気分になる、この不思議(笑)。 そして、食べ終わってもまだ胃が軽くて、お代りできてしまいそうに思うのは、 甘く仕立てず、出汁でいただくドンブリならではのことなのでしょうね。


築地の路地に生まれた、 京仕込み出汁の丼と家庭料理の店、おかみ丼々「和田」。wada10.jpg今度は、おばんざいな料理たちと女将さんの笑顔を肴に一杯呑りに、 夜にゆっくりお邪魔します。


「和田」 中央区築地2-14-14 [Map] 03-5565-0035 http://www.okamidon.jp/
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