手打うどん「涼太郎」で 定番の武蔵野うどん肉増しにダブル汁

ryotaro.jpg所沢駅の東口を降りて、 小さなロータリーの隅に立つ。 なんとも地味な西武鉄道の本社ビルやホールを持つ関連施設が囲むロータリーだ。 駅やその周辺施設のデザインや設計には、もうひと越え垢抜けたセンスが欲しいものだと時々思う。 沿線のイメージづくりにも大きく関わるところなので、ぜひ本気で発想の切り替えと改革に挑み続けて欲しいものであります。

そんなことはさて置き(笑)。 街路樹の花を見上げつつ、そのままくすのき台の信号を通り抜けます。 所沢陸橋に通じる街道の手前で左手の脇道を覗くとやっぱり、 忽然とちょっとした行列がある。ryotaro01.jpg今日は久々に、「涼太郎」を啜っちゃおうという魂胆なのです。

排気ファンを避けて列に並び、程なく。 暖簾の中のひととなります。

覗き込んだ厨房は、湯気の白。ryotaro02.jpgデカい鍋にたっぷりのお湯がコンコンと湧いていて、 きっとうどんが上手に踊っているだろう様子が容易に想像できる。 でも、そんな厨房での仕事は大変なのに違いありません。

ご注文は勿論、「肉汁うどん」! 悩ましいのは、”なんエルでイクか”であります。 知ってる人は当然のように知っている”Lエル”とは、うどんの盛りの単位。 簡単に云うと追加のうどん玉1玉分が1L相当。 5玉の3Lが一人前相当とされていて、基準となる。 1玉増しの4Lくらいを「のり」増しでお願いしましょうか。ryotaro03.jpg

竹を輪切りした器が、ここ「涼太郎」の肉汁の表情のひとつ。ryotaro04.jpg豚バラ肉の脂の輪っかがしっかり浮かんでいるのを確認してニンマリ(笑)。

漆塗り風うどん鉢に収まったうどんは、やや幅広なタイプ。ryotaro05.jpg噛めばそのまま粉の旨味風味がズリズリブリと押し寄せる。 やっぱりいいなぁ。

「涼太郎」には、”ダブル”という注文もできる。 ってことでまた、別の昼下がり(笑)。

“ダブル”というのはつまり、肉汁とミニカレー汁のダブルつけ汁ってこと。ryotaro06.jpgお盆にみっしりとうどん鉢とふたつのつけ汁の器が盛り込まれてやってきます。

試しにと訊いてみて実現したのが、肉汁への”肉増し”。ryotaro07.jpgワイルドな豚バラがたんまりと濃いぃめの醤油ツユに浮かんでいて、嬉しいのだ(笑)。

そんなバラ肉をたっぷり添えて、ひと頻り粉の風味を啜ったら、 今度はカレー汁の出番となる。 隣でこんなカレー汁を啜られようものなら、その衝動抑え難し。 濃度から十二分にうどんに載っかって、滴るカレー汁。ryotaro08.jpgそれに負けず寄り添ううどんの地力にも唸る瞬間であります。 「でら打ち」の「ころセット」とはまた違う魅力の、 醤油ツユ&カレーツユの連食仕様だね。

武蔵野うどん「きくや」直営、手打ちうどん「涼太郎」。ryotaro09.jpg茹で置きするのも武蔵野うどんの特徴のひとつと捉えているので、 茹で置きになんの文句もないけれど、 ここ「涼太郎」では大概茹で立て〆立ての武蔵野うどんが味わえる。 武蔵野うどんの表情を直球で表してくれている定番の店のひとつてして、 憶えておいて損はないと思います。

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「涼太郎」 所沢市くすのき台3-14-4 04-2993-8877
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Pizzeria「Amalfi DELLA SERA」で しらすのピッツァは七里ガ浜

amarfi.jpgアルバム「ずーーっと夏。」シリーズ3部作を完成させた、我等が村っちゃんこと村田和人。 晴れてデビュー30周年を迎えるところで、オリジナルアルバムを三連発するなんて、なんて素晴らしいことでしょう。 そんな、盛夏がニッカニカに大好きな村っちゃんが届けてくれるご機嫌な夏の曲たちには、鎌倉や湘南の情景がそこここに登場しています。

例えば、紫陽花の後の頃の鎌倉を舞台にした「鎌倉散歩」。 鶴岡八幡宮の屋根瓦を雨が叩く「Here Come The Thunder」。 派手な柄のTシャツの下から濡れたままの水着が透けている、の「134号ストーリー」。 夜明けの相模湾を直撃する台風との連想でドキドキの「颱風少年」。 藤沢で乗り換え電車で海に行こう、海側に広がるあの景色は「絵日記の夏」。 この渚を歩き君の微笑みを探そう、と「湘南ドリーミング」。

そんな楽曲たちを抱いて、ちょうど二年振りの鎌倉駅。 江の電に乗り換えて向かうは、七里ヶ浜。 改札を抜ければ、すぐに海の匂い。 渋滞が定番の134号線に出て、左手に波間を眺めながら進めば江の島が見えてくる。 レストラン「珊瑚礁」の前を通り過ぎて見つかるテラスがレストラン「アマルフィイAmalfi」だ。

でも目的地はそこではなくて、 階段を登り、空席を待つ人や満席のテラスを横目に店の脇を裏手へと抜けていきます。 するとさっき乗ってきた江の電の線路脇に出る。amarfi01.jpgamarfi02.jpgamarfi03.jpg 線路の向こう側に「注意」の表示と急な階段がある。 やおらレールと敷石を跨いで、階段を登ります。

amarfi04.jpgえっちらおっちら(笑)。 白いポストを確認して、両脇を鬱蒼と樹々が繁る階段を辿れば、 突然階段の途中に佇むひと影に出会します。amarfi05.jpg「Amalfi」の姉妹店「DELLA SERA」も週末ともなれば行列必至な人気店なのであります。

時季を過ぎた紫陽花を眺めつつ、藪から聴こえる鶯の小粋な歌声を耳にしつつ、 席へのご案内を待つひと時。 下方からは踏切の警報音やレールの軋む音が遠く聞こえます。

紅い大きなパラソルが並び開くテラス席。 強い風を受けて、揺れるパラソル。amarfi06-01.jpg白波の向こうに江の島を望みます。

ここで思わず口遊む、♪風のアマルフィイ〜は、新譜収録の「指切りもしない約束」の一節。 村っちゃんが唄う情景は松明の炎揺れる夜のことだけど、同じテラスで風に吹かれる感じは、 ほんの少し恥ずかしくも心地いい。 ふと、レストラン「ドルフィン」を訪ねた遠い昔を思い出したりして(笑)。

眼下には、さっきその脇を抜けてきた「アマルフィイAmalfi」と七里ヶ浜の海。amarfi07.jpgamarfi08.jpgスプマンテのグラスを海と空に翳して、乾杯です。

前菜をちょっとと「帆立貝とスポルト小麦、アボカドのタルタル」。amarfi09.jpgちょっと濃いめのバルサミコ酢を回しかけてある。 ザックリとペーストにしたアボカドの中に帆立や小麦を探す感じ。 すっきりとした味付けで、なかなか美味しい。

そして、10数種のピッツァから選んだのが、 その名もズバリ「七里ガ浜」だ。
ピッツァ「七里ガ浜」は、湘南らしくシラスが主題。amarfi10.jpgamarfi11.jpgとろーん系チーズを控え、パルミジャーノを脇役に回し、 長葱やアンチョビ、フライドオニオン、 そして彩りよろしくトマトや刻んだロマネスコカリフラワーがパラパラと載ってる。 シラスの塩っ気にローマピッツァを思う薄い生地の軽やかさがよく似合って、いいね。

七里ガ浜のパノラマ臨む高台のピッツェリア「Amalfi DELLA SERAデラ セーラ」。amarfi12.jpg湘南の風物詩と想い出彩るテラスへとこれからも沢山のひと達が階段を登ることでしょう、 えっちらおっちらと(笑)。 七里ガ浜の海岸線は、ナポリの南、アマルフィ海岸とやっぱり似ているのかな。

amarfi13.jpg風のアマルフィイを離れて向かったのは、 八幡宮の先、いつぞやの「歐林洞」。 海の日恒例の村ちゃんライブは、題して「夏一番!村っちゃんと友成くん」。amarfi14.jpg奏でるは勿論、夏の曲たち。 心地いい村っちゃんの歌声とベースの利いたギターに、 友成の粋なオカズが重なって味わいを深める。 ああ、夏が来た。

口 関連記事:   手打そば「段葛 こ寿々」で だし巻きで麦酒ざるそばとこ寿々そば(10年08月)   フレンチレストラン「DolPhin」で やっぱりソーダ水の向こうに(02年08月)


「Amalfi DELLA SERA」 鎌倉市七里ガ浜1-5-10 [Map] 0467-32-2001  http://www.be-value.co.jp/index.files/amalfiDELLASERA.htm
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鳥から揚げ「うえ山」で 素揚げで堪能砂肝首手羽皮ムネにモモ

ueyama.jpg蒲田駅西口のロータリーにしばし佇む。 右手斜めに進んで「鳥万 本店」の暖簾を払うもよし、 その先の「鈴文」で揚げ立てとんかつを喰らうもよし。 池上線の高架脇の道を辿って、久々に「上弦の月」のドンブリを啜るもよし。 でも今夜は、約束がある。 ロータリーを入口にデデンと構えるアーケード、 「SunRise KAMATA」をずいずいと進みます。

アーケードには「山田うどん」があったんだねーと懐かしいものをみるように眺めつつ、 そのままアーケードの傘を抜け、蒙古タンメン「中本」の前を通り過ぎる。 すると、大井町の狭い店「のスた」にみる「凛」の文字が此処にも。 ああ、蒲田ってやっぱりいろいろ徘徊し甲斐があるなぁと感心しつつ、さらに真っ直ぐに。

その先はもう、大きく右にカーブして池上駅方向へ向かう池上線。 と、その手前で揺れる白い暖簾。ueyama01.jpg 鳥から揚げの店「うえ山」に到着です。

元喫茶店か、もしかしたら床屋だったのかもなんて思わせる外観が、いい。 暖簾には、娘さんが描いた可愛い鳥の画が和ませて、いい。

カウンター横並びでの待ち合わせは、蒲田の女王ことkimimatsuさん今日はケンタ食い放題の記念すべき日なんやでぇとのっけから仰るグヤ兄さん。 そうなんだ、知らなかった~。 そこへ、どうやら明後日の方向へ突き進んじゃったらしい(笑)、唐揚げといえばの油ちゃんが汗掻きやってきて、全員集合です。

まずは、お通し選びから。 目の前に繰り広げられているお惣菜のあれこれから三品を選ぶのが「うえ山」の習わし。ueyama02.jpg女将さん手作りのお皿たちへ目線きょろきょろと、ちょっぴり迷いつつ。

見つけりゃ外せない茄子のお皿は、茄子とピーマンを味噌で炒め煮したやつ。 そして、鶏屋さんでは是非いただきたいレバーの煮物に定番のポテサラ。ueyama03.jpgどれもがそうといえばそうだけど、どうしても酒のあて的選び方になっちゃうね(笑)。

ビールの後はやっぱり、これで呑りたい「コダマサワー」。ueyama04.jpg豪快に注ぐ、焼酎濃いめが似合います(笑)。

ueyama05.jpg ご主人がまず届けてくれたのが、「砂肝」。 それは麗しき素揚げの照り。ueyama06.jpg噛めば絶妙な歯応えと溢るる旨味。

続いてやってきたのはなんと、「首」。ueyama07.jpg見ようによってはグロテスクだけれど、食べ尽くしてあげるのが、 殺生することで生きながらえている者の務めだなんて思ったりなんかして。 じっくり火を通しているがゆえ、意外と解れ易く、 よく動き活躍している部位の胆力をポキポキいただく感じでございます。

さて、セットでお願いしていた「から揚げ」のお皿がご主人から手渡されました。 セットというのは、じっくり素揚げしたムネとモモ。

半裁した熱々のモモ肉に慌てて噛り付く。ueyama09.jpg綺麗な脂がそそる滋味と相乗して唸らせる。

順番としたらムネからでしょ、とKimimatsuさんにツッコまれ、 そっかそうだねーと応えつつ、今度はそのムネ肉の素揚げに挑みます。

香ばしさに包まれた柔らかでかつしっかりとした繊維質。ueyama08.jpg歯の先を受け止める度に溢れる、正直な旨味。 いいね。

ueyama10.jpg 手羽先に続いて届いたのが、 素揚げの「皮」。ueyama11.jpg齧れば期待以上の軽妙さのパリパリが愉しめる。 鶏が苦手なヒトは、このトリハダがまず厭なのかもしれないけど、 この愉しさが味わえないなんて、残念かも。

そして、鶏のあれこれをひと通りを楽しんだ後の仕上げが、 囓ってしゃぶってした骨を集めて炊いたスープ。ueyama12.jpgシンプルな鶏骨スープの有り難味。 共に味わう仲間に嫌いな奴がもしも混じっていたなら、 こんな素直にしみじみとは啜れないかもしれません(笑)。

鶏を素のまま味わいつくす実直な魅力溢るる、から揚げの店「うえ山」。ueyama13.jpg魅せられ通った、今はなき「那珂川」の味を失いたくないと一念発起したご主人の想いと、 それをそっと支える女将さんの醸す雰囲気もまた魅力的です。 そして、びば☆蒲田!

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「うえ山」 大田区西蒲田7-59-1 [Map] 090-3572-8700
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煮干ラーメン「凪 煮干王」渋谷店で もりもり麺の煮干しラーメン

naginiboshi.jpgラーメン「凪」といえば、 渋谷から六本木通りを上がった渋谷二丁目信号近くのかつての本店か、 狭い狭い階段を上がり狭い狭いカウンターで煮干しの香りに包まれるゴールデン街のあの店か。 特級煮干し中華そばと謳っていた西新宿のお店が今は、「凪 煮干王」となっている。 そんな「煮干王」に渋谷店ができたというので、渋谷の東口に降り立ちました。

渋谷警察署方向に歩道橋を渡りながら、 12年04月に商業スペースを開業したという「渋谷ヒカリエ」の外観を見上げます。naginiboshi01.jpg気になるのは、泡盛と琉球料理の「うりずん」くらいかなぁ(笑)。 お世話になるのは、意外と少なそうな、そんな予感がいたします。

さて、件の「煮干王」がどこにあるかというと、それはつまりは「すずらん」のある裏道。 「すずらん」に行こうとしていた巷のラーメンフリーク達が、 その手前で網に掛かるという、そんな立地であります(笑)。

電球が回りを囲む、クラシックなスタイルの看板越しに見上げるのは、 ずっとずっと屋上にまで続く煙突。naginiboshi02.jpg煙と香りと匂いと湯気を出す商売には、今や求められてしまうアイテムなのかもしれません。

GLからはちょっと高い場所にある扉を引き開けば、券売機の前。 「煮干王ラーメン」のボタンをポチッとします。

naginiboshi03.jpg 天井を見上げれば、さっきのダクトが赤く塗られた存在感。 壁には、「凪」らしいイラストが描かれてる。naginiboshi04.jpg青木さんの手になるものなのかなぁ。

チケットを渡すと、麺の硬さ、味の濃さ、油の加減を訊かれます。 まずはすべて、普通、オリジナルでお願いしましょう。

naginiboshi05.jpg 手元へと降ろしたドンブリには、厚目のチャーシューが4枚載っていて、 微塵切りとは違う、独特の形に刻んだ長葱の薬味。naginiboshi06.jpgnaginiboshi10.jpg右隅に覗いているのは、麺のお刺身的、ワンタンの皮的アイテム。 ゴールデン街で初めて出逢ったことを思い出します。

啜るスープは、なるほどの煮干し醤油スープ。 当然の煮干したっぷしのスープに鶏でコクを添えている。naginiboshi07.jpg幕板の解説によると、小豆島の杉樽醤油をベースに、 アゴの煮干しや昆布、そして牡蠣を煮出して、熟成させた醤油タレを用いているそう。

立川から電車で運ぶ自家製麺は、 もっちりもりもりつるつるの太めにしてしっかり縮れた個性派。naginiboshi08.jpgストレート細麺が似合うストイックな煮干し中華も好みだけれど、 こうしてパワフルな麺も魅力的。 タレや醤油を強くしたり、辛味噌をドンブリの底に潜ませたりするのも、 力強い自家製麺とのバランスを考えてのことなんだね。

素朴系仕立てで「煮干王」を愉しんだらどうかなぁと再び渋谷警察署裏。 ポチッとしたのは、「煮干王ラーメン」ではなくて、「ラーメン」。 麺を硬め、味を薄め、油を少なめでお願いします。 さらに、辛味噌汁をなしとするのもポイントだ。

あれ、これでただの「ラーメン」?って思う具沢山。naginiboshi09.jpgnaginiboshi11.jpgでも、スープは煮干しの旨味風味の輪郭が引き立って、 こっちの方が断然いい感じ。 後半戦にキレを与えてくれていた辛味噌も、 敢えて外した方が素直に煮干しスープを愉しめる。 お試しあれ。

ゴールデン街の煮干「凪」のDNAをしっかり携えた、 煮干ラーメン「凪 煮干王」渋谷店。naginiboshi13.jpgひょっとして「塩ラーメン」もイケるんじゃないかと秘かに次の機会を窺っています(笑)。

食べ終えて渋谷駅への歩道橋を渡ると、 正面に東横線のホームが見えてくる。naginiboshi12.jpg副都心線と東横線が繋がるとこの光景もいずれ観れなくなってしまうのですね。

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「凪 煮干王」渋谷店 渋谷区渋谷3-7-2 [Map] 03-6427-4558
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ENOTECA「THE LOUNGE」で未来へのシークレットオイスターバー

lounge.jpg丸の内の仲通り。 おそらく開店直後のことだったんじゃないかと思い出すのは、富士ビルの角にあった、 「LES CAVES TAILLEVENT」。 「タイユヴァン」と「エノテカ」とが組んで開いたワインショップにBAR & LOUNGEが併設されていて、 一度だけランチしたことがありました。 その後「タイユヴァン」とのコラボは解消されたらしく、 今はワインショップ「ENOTECA」の「THE LOUNGE」となっています。
そんな丸の内の「THE LOUNGE」を久し振りに訪ねることとなったのは、 殻付き生牡蠣の伝導師氏からのお誘いがあってのこと。 静かに落ち着いた日曜日の仲通りを参ります。

いつぞやの富士ビルの角。 Closedの札が掛かる木目の扉。lounge01.jpg閉じた扉の中で繰り広げられようとしているのは、題して「シークレットオイスターバー」。 真っ昼間から怪しいでしょ(笑)。

見憶えのあるコの字に配した硝子のカウンター。lounge02.jpglounge03.jpg壁には、エチケットを中心に用いたデッサンの額。

lounge04.jpgと、サーブされたシャンパンのグラスの向こうに、 ひとが集まり始めてるのに気がついた。

みんなの目線を集めていたのが、この秘密の会の主役たち。lounge05.jpg小粒で端正な殻付き牡蠣が寄り添っているのに早速、好感です。

さて、真昼のSecret Oyster Barは、 「THE LOUNGE」のオーナーソムリエである濱岡さんが、 殻付き生牡蠣の伝導師こと佐藤Gen氏とタッグして、こっそり催すもの。

主の濱岡さんが選んだ乾杯のシャンパンは、 「ANDRE ROBERT CUVÉE DE RESERVE BRUT」。 白葡萄のみで作るすっきり系のシャンパンが牡蠣に一番合うのではとの思いから選んだ、 シャルドネのblanc de blancだ。

そこへ早速やってくるのは当然殻付き牡蠣かと思いきや、 それは意外なショットグラス。lounge06.jpg lounge07.jpgグラスの底に潜んでいるのは、 4ヶ月から半年ほどの、謂わば真牡蠣の幼稚園児「ヴァージンオイスター」。 小さな小さな牡蠣を殻から丁寧に外してくれている。lounge08.jpg幼生ゆえに未熟な味わいなのだろうかと思案げにグラスを逆さに傾ける。 ところがこれが、吃驚の美味しさ。 牡蠣の味わいと旨味の宇宙をとっくに内包していらっしゃる。 小さい分だけ焦点がブレず、よりヴィヴィッドに感じられる。 伝導師は、これを美味しい牡蠣の味の基準にと仰る。 うん、なるほどだー。

と、厨房から大きな銀のトレーを手にしたお兄さんがやってきた。 トレーには、どどんとデッカイ牡蠣が鎮座坐している。lounge09.jpgこれが大分豊後水道から届いた、1キロオーバーの岩牡蠣「弁天プレミアム」だ。

支えたままのお兄さんの両手が微妙にぷるぷるし始めるほどの重量感。lounge10.jpg当然ひと口で食べられる訳もなく、小分けにしていただくことになり。 すると当然、部位がバラけて配られることになり。 正直云って、大味な想いをすることになる。 ふと、築地共栄会ビルの「地下の粋」で特大の牡蠣を無理して頬張って、 目を白黒させたことを思い出したりなんかして(笑)。

ま、極端な例ではあるけれど、 大きな牡蠣は、楽しい牡蠣。 そして、ひと口ですっと食べられるのが美味しい牡蠣。

牡蠣が、貝柱や内臓やヒラヒラに海水を交えた構成のバランスが絶妙にとれた、 殻をお皿にしたひとつの完成された料理であるには、 ひと口で味わえるサイズであることが必須なのであります。

フランスでは、法律で牡蠣の大きさについて6段階の規定があるそうだけど、 日本にはまだそれがない。 サイズの規定規制がないのだから、オイスターバーで日本の殻付き牡蠣をオーダーして、 テーブルに届く牡蠣の大きさにバラツキがあっても現状では仕方のないこと。 いつか、好みの大きさで日本の殻付き生牡蠣をオーダーできる日が来るのかなぁ。


ワイングラスがパスカル・ジョリヴェがなすロワールの「SANCERRE」に。 ソーヴィニヨン・ブラン100%であることも、濱岡さんのリコメンド。 極小の牡蠣、特大の牡蠣に続くサプライズが、 白い蓮華的スプーンに載ってやってきた。

それは、岩牡蠣のヴァージンオイスター「岩牡蠣SS」。lounge11.jpg日本固有の岩牡蠣の、幼稚園児のものを供することは今までなかったことから、 一般の食べ手としては、世界で初めて口にするものになるという。

これがまた、旨い。 牡蠣の味わいの宇宙が凝集しつつ、歯応えも加減良く含んでいる。lounge12.jpgこれを食べると、ますます小さい牡蠣を選んで食べたくなってくるよね。

さて、ここでクエスチョン。 日本のオイスターバーでは、殻を開けた生牡蠣の身を”洗う”なんてことをしているかどうか。 答えは、保健所の指導があって、水やナノバブル水なんかでなんらかの洗浄をしなければならないことになっているらしい。 安心安全にいただくための指導そのものには異議はないけれど、そのために失っているものもちょっとあるよな気がします。

目に前にふたつ用意されたのは、 広島の大黒神島からやってきた若牡蠣「大黒神」。lounge13.jpg星形にも見える牡蠣の、ひとつは洗ったもの、もうひとつは洗っていないもの。 ちゃんと管理された牡蠣ゆえ、自己責任で心配なく食べ比べてみます。 ポイントは、洗うことにより牡蠣の身が水でコーティングされて、 それが生臭ささや味わいの素っ気なさに繋がっていないか、どうか。 正直なところ、食べ比べての差異はあまり感じなかったのだけれど、 例えば水に晒した刺身が美味しいかと考えると、 洗ってない方が滋味をそのまま味わえる気がするよね。

ただ、そのためには、雑菌やウィルスが混入することのない、 混入していない牡蠣を養殖する必要がある。 牡蠣を塊りで垂下していると殻の洗浄がし難いので、 結果、殻に付着物があるまま流通に乗せてしまうことになる。 シングルシード方式なんかは、その答えとしての一面もあるのだろうね。

そしてなにより、海の環境、そこへ流れ込む川とその流域の環境が問われるは当然のこと。 ああ、清浄なる日本の海よ。


ワインが変わって、今度はニュージーランドのシャルドネの。 シレーニSILENI社が供する「CELLER SELECTION CHARDONNAY」。 今度は一転、シアトルからやってきた牡蠣「至極オイスター」。 今や世界的なブランドとなっている「クマモト」に憧れてつくったという、 新しい種類の真牡蠣だ。lounge14.jpglounge15.jpg小粒でカップが深くて、味わいは濃いめ。 これも日本の牡蠣のDNAが為すものでもあると思うと、 なんだか不思議な気分になる。 シングルシードで作っていて、ひっくり返して眺める殻が綺麗だ。

殻付き生牡蠣の伝導師は、 “産地100点の法則”というキーワードも繰り返し説いてくれている。 産地まで足を運んで、そこで採れて間もない牡蠣をいただくのがやっぱり100点で、 そこから流通に乗り運ばれしていくうちに残念ながら劣化していってしまうもの、と。 それは、石巻の牡蠣小屋「渡波」で実感したこととも符合する。 牡蠣小屋では焼き牡蠣だけどね(笑)。

同じ、大黒神島からやってきた「かき小町」は、3倍体の牡蠣。 卵を作らず産卵しないので、養分やグリコーゲンを失わず、 それゆえ四季を通じて美味しくいただける。

その「かき小町」に添えられたワインが意外や!赤ワイン。lounge16.jpg8割のメルローにカベルネ・フランのボルドー、「レ・ロゾーLES ROSEAUX」。 さらに小皿には輪切りしたチョリソーが載っている。 ちょっと悪戯っ子な表情で(笑)、濱岡さんが説明するのは、 生牡蠣好きの多いボルドーでは、ダース単位で牡蠣をパクついて白ワインを合わせる。 ただ白ばかりでもと途中から赤に切り替えるンだそう。 その時に登場するのが、チョリソーだというのだ。

炙ったチョリソーを齧って、牡蠣を食べ、赤ワインを傾ける。lounge17.jpg牡蠣に赤ワインを合わせると、生っぽさや鉄っぽさが鼻につく感じになっちゃうけど、 こうして油脂、動物性脂肪を補ってやることで、意外やイケてしまうというね。 うーん、面白ーい(笑)。

〆は、牡蠣でちょっと冷えた体を温め、欲する脂を含んだリゾットで。lounge18.jpg牡蠣と浅蜊で採った出汁で玄米を炊いたもの、山菜のフリットを添えて。 牡蠣をいただくと体が油脂を欲しがる感じを明快に感じつつ、 ぺろっといただいてしまいます(笑)。

産地100点の法則がより叶う牡蠣を丸の内で愉しめる「THE LOUNGE」。lounge20.jpgワインショップのラウンジでありつつ、牡蠣の提供にも秀でているとは刮目に値するところ。 盛夏には、シャンパンと生牡蠣のイベントも開くそうだから、予約してぜひ出掛けよう。

口 関連記事:   BAR & LOUNGE「LES CAVES TAILLEVENT」で 軽いランチ(05年03月)   築地仲卸・築地三代直営「地下の粋」で 夏の真牡蠣に岩牡蠣に(10年08月)   かき小屋「渡波」で 万石浦採れ立て焼き牡蠣の衝撃的な旨さ(12年03月)


「THE LOUNGE」 千代田区丸の内3-2-3 富士ビル1F [Map] 03-3216-9118
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