スパゲッティ「とすかーな」で 室津生かきと牡蠣ベーコン醤油スパ

toscana.jpgほぼ毎月恒例、武蔵小山「Again」での村田和人ワンマン・ライブ〈村田の実験室〉。 駅前のロータリーに面したペットサウンズ・レコードのビル地階が「Again」の在り処。 そしてその入口を背にして正面に見えるのが、 スパゲッティ「とすかーな」。 ライブの熱気冷めやらぬまま、目の前の店でお腹も満たします。

冬場の「とすかーな」は、牡蠣の店でもある。toscana01.jpg冬季限定と謳う看板では、牡蠣のパスタあれこれを紹介しています。

狭い店内のカウンターに陣取って、まずは生牡蠣を所望する。 ここでは、兵庫・室津の一年牡蠣を提供してくれています。 そうとなれば、白ワインも欲しいところ。 オススメのイタリアのシャルドネをグラスで添えてもらいます。

一年で立派に育った室津の牡蠣。toscana02.jpg後味に含む仄かな甘さの余韻がすっと消える感じがいい。 先日の「第一回 かき日本一決定戦」で第3位に評したのが、”室津かき”だったものな。 ライムは不要かもしれません。

そして、牡蠣パスタのあれこれの中から「牡蠣とベーコンとキノコ醤油生クリーム」を。toscana03.jpgtoscana04.jpgゴロゴロとしたベーコンの香気と醤油の風味が基調で、 そこへ御本尊の旨味エキスが滲むように全体に伝播する。 クリームソースのパスタかと勘違いしていたけど、 生クリームはコク出し程度に加えているのもまたいいね。

toscana05.jpgメニューには、同じノリらしき「牡蠣とベーコンとキノコのリゾット」や 「牡蠣のクラムチャウダー」なんてのもある。 そして、「アラビアータ」など、 冬の定番になってるであろう牡蠣パスタがトリオでスタンバイ。 そんな牡蠣料理達、メニューには5月まで予定としています。

代々木、吉祥寺、経堂、六本木、神谷町に武蔵小山。 都内六処に味の発信拠点を構える「とすかーな」は、武蔵小山が総本店。toscana06.jpgsince 1992とフラッグにも示すように創業20年となる乾麺スパゲティの老舗格だ。 そういえば、八丁堀「マイヨール」の出自でもある「ハシヤ」の本店は今どうなっているのかな。

口 関連記事:   スパゲティー「マイヨール」 で冬期限定カキスパ4種制覇(08年02月)


「とすかーな」武蔵小山総本店 品川区小山3-26-9 ハイツ武蔵小山1F [Map] 03-3788-4257  http://www.toscana-pasta.jp/
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おそば「あさだ」で 蕎麦前の在り処探るも愉し熱燗と翠の蕎麦と

asada.jpg八丁堀は、鍛治橋通り沿い。 市場通りとの交差点近くにずっとある蕎麦屋が、 「あさだ」。 笹の葉が揺れる脇に品書きの行燈が点り、 丈の短い白い暖簾の中央に”おそば”とある。 引き戸をサッシに直してから多少薄れたものの、 格子の表情なんかに積年の情緒を漂わせてくれています。
お昼をいただいたことは数しれないけれど、夜に訪れたことは最近までありませんでした。asada01.jpg それは、”蕎麦屋で一杯”したいものの、 蕎麦前の酒肴らしきものがに品書きに見当たらないことに起因していました。

asada02.jpg 冷えひえの寒風に背中を窄めつ、暖簾を払う。 卓上の”お伺い”裏面を改めて確認するも、「御酒」「ビール」はあるものの、 やはり所謂蕎麦前のアテは見当たらない。asada12.jpgこんな枯れた蕎麦屋の一隅で、 蕎麦屋定番の蕎麦味噌や出汁巻玉子、焼き海苔、揚げ蕎麦辺りで、 ちょいと一杯呑りたいところ。

「熱燗」を頼んで訊ねると、「板わさ」ならできるという。asada03.jpgではではとお願いすると、「富翁」の翠色の硝子の徳利と一緒に届く、 あられを添えたシンプルな角皿。 頭上のテレビのニュースなんかをぼんやり見上げながら、つつつっとして、 山葵を載せた蒲鉾を齧る。 なはは、こふいふのも悪くない。

お銚子一本が空いたら、「花まきそば」をお願いします。asada04.jpgasada05.jpgたっぷりの刻み海苔と温かい茶そばの取り合わせに、 なんの文句が御座いましょう。

別の晩には、突き出しの白菜のお新香で麦酒。 「天ざる」の天ぷらで麦酒をやっつけようと目論むも、 そうだそうでした、「あさだ」の天ぷらは上品なボリュームなのでした。asada06.jpgasada07.jpgそれはそうと、綺麗な翠色の蕎麦であることよ。

たまたま架かってきた電話口でオヤジさんは、明日の晩は吞み会だからさ云々と話してる。 お品書きに酒肴メニューの記載はないけれど、呑めない訳ではなさそうだ(笑)。

asada08.jpgさらに別の宵には、「熱燗」と合わせてこう訊いてみた。 「親子南蛮のアタマというか、ヌキ、できませんか」。 するとオヤジさん、はいよ親子のヌキねと云いながら厨房へ。asada09.jpg濃いめの汁に浸った玉子とじがアテにならない理由は御座いません。

もっとじっくり温まって寒風の中に帰ろうと、「力うどん」を所望する。asada10.jpg「鍋焼きうどん」じゃないのかよ!と自分にツッコミつつ(笑)、 こうして普通な感じに安らぐ夜もあるのです。

八丁堀一番歴史を抱えたであろう、そば「あさだ」の創業は、明治25年。asada11.jpg浅田さん一家ゆえの「あさだ」だとばかり思っていたら、そうではないようで、 創業当時、世話になった粉屋さんの名前をいただいた、とかそんなような経緯のものだそう。 店主の苗字を冠したであろう店名には、すぐそのまんまの由来なのだろうと思いがちだけど、 また別のストーリーがあることもあるのだね。 今のご主人で四代目。 厨房を切り盛りしている方が五代目ということになるようです。 今度は勇気を出して(笑)、「小判焼きできませんか?」と訊いてみよう。


「あさだ」 中央区八丁堀3-21-6 [Map] 03-3551-5284
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鉄板焼ダイニング「Haru dining」で ハンバーグと桜のシフォン

haru.jpgこの時季になるとどうしても足を向けたくなるのが、 茅場町の通称さくら通り。 角の焼鳥「宮川」は今日も行列をつくっているかしらんと考えながらすずらん通りからアプローチ。 個性派パンの店「ベニヤ」の前の桜の木だけ枯れてしまっているンだねーと横目にしながら進み、鋭意ランチ営業中の和食「しら田」の向かい側でしばし通りを振り返る。 そのまま平成通りとの交叉点でちょっと驚いた。 何時の間にか「歌舞伎そば」が店を閉めてしまってる。

昼間の人気だけでは立ち行かなかったのかなぁ、 それとも高齢のオヤジさん達のどなたかが体調崩したりしたのかなぁなどと考えながら、 そのままさら昭和通り方向へ。haru01.jpgharu02.jpgそこで小綺麗なランチ処を見つけました。

ドアを開くと目に留まるカウンターで囲む鉄板。haru03.jpgカウンターの角にちょんと止まり木して通りへと振り向くと、 横長に切り取った額縁のような窓の向こうで桜の花びらが舞うのが見えたりして。

ふと、「プティ・ボワ」にはご無沙汰してるなぁと思い出しつつ、 「鉄板焼きハンバーグステーキ」。 鉄板の上には、定番の丸カバーが活躍しています。

サラダとポテトを添えたお皿には、おろし大根とキノコのポン酢ソースが広がってる。haru04.jpgharu05.jpg細い箸の先でハンバーグに切り込みを入れようとすると、 意外としっかりしたパテ。 これ見よがしに脂を滴らせることなく、かといってパサつくこともなく、 肉の旨味を素直に内包した感じ。 コロっとした挽肉に和風ソースの柔らかい酸味はすんなりとマッチしています。

今度は鉄板正面に陣取ると、目の前に並べた豚バラ肉に粗めの塩が振られたところ。haru06.jpgそれが如何にも鉄板使いメニュー「鉄板焼き 豚バラ”丼”」になるらしい。 温玉添えでお願いしましょう。

たっぷりと敷き詰めたキャベツに焼き立てバラ肉がオン。haru07.jpgまさに載っけただけのドンブリ。 でも、適度な塩のミネラルがバラ肉の甘さを引き立てて、なかなかイケる。 新富町「ぶーみんヴィノム」の玉葱ソースに感心した記憶も新しいのに、 シンプルに塩もイイぞ、と(笑)。

この時季らしい自家製のランチスイーツは、「桜のシフォン」。haru08.jpg仄かピンクは、まさに桜色のスポンジ。 処々に桜の葉らしき色合いが透けています。

さくら通りの鉄板焼きダイニング「Haru dining」。haru09.jpg鉄板の前で切り盛りしているコックコートの人がきっと”ハルさん”なのでしょうと訊ねれば、 まさしくその通り。 ヤスハルさんが、ハルさんと呼ばれずにヤス!と呼ばれていたら、 店名はどうなっていたのかな(笑)。

口 関連記事:   鳥「宮川」で桜の下でもいつもの行列から揚げ定食もつ丼もいい(11年04月)   HAND MADE BREAD「ベニヤ」でぐっちょりして旨い惣菜パンの道(11年07月)   歌舞伎座厨房「歌舞伎そば」兜町で ここでも旨いかき揚げそば(11年05月)   和食「しら田」で具沢山とん汁と鯖みそ銀だらみそ漬かれい煮付(11年05月)   Cuisine「プティ・ボワ」で おトクな鉄板和牛ハンバーグ癒しのステーキ(09年08月)   ワインと豚と世界のお料理「ぶーみんヴィノム」で ぶた焼きランチ(12年03月)


「Haru dining」 中央区日本橋兜町17-1 日本橋ロイヤルプラザ1F [Map] 03-6231-1720
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かつれつ「四谷 たけだ」で 軽やかカツレツと軽やかカキフライ

takeda.jpg四谷しんみち通り入口の洋食店といえば、 誰もが知ってる洋食「エリーゼ」。 オムライスにカツカレー、大きなハンバーグに大きなポークジンジャー。 エビフライにカニコロッケ、「ぽてころ」まで。 「メンチカツ定食」「ビーフトマト定食」もお気に入り。 いつも混んでいるのが玉に瑕。

そんな「エリーゼ」は、黒地のテントに大きく描いた筆文字のロゴが印象的なファサード。takeda01.jpgニュー新橋ビルにも登場したかと思っていたら、意外と間もない閉店を知る。 そして、相前後して、本丸の四谷のお店も閉めたと聞きました。

本丸の事情が新橋と違うのは、閉店した翌日に引き継ぐように揚げ物の店を開店させたこと。 店名とテントとメニューは変わっても、装いは大筋そのまま。 かつれつ「四谷 たけだ」は、間違うことなき「エリーゼ」の継承店だ。

極寒の中、行列してたら敵わんなぁと案じつつ、しんみち通り。takeda03.jpgひとり待ちなら許容しましょとしばし待つ。

案内された店内は勿論、およそ「エリーゼ」のまま。 悴んだ指先を温めながらカウンターの一席に落ち着きます。

takeda04.jpg新生「たけだ」のメニューは、豚ロース、豚ヒレ系カツの定食に鶏肉カツ、 牛肉カツにメンチカツ定食。 別掲のカキ料理を含めた魚介系のフライにカレーあれこれ。 オムライスやハンバーグ、ポークジンジャーといったフライパンメニューは割愛中だ。

ご注文はやはりここからとお願いしたのが、「ポークカツレツ定食」。 明るい色合いに揚げた衣のカツにデミグラスソースがたっぷり。takeda05.jpgどれどれとやおら齧りつくとこれが、意外なくらいにさくーーーーってな歯触り。

軽やかさこの上ない衣がソースを纏って持ち上げてもなお、さくーーっとしてる。takeda06.jpgこんなに軽やかなカツレツは初体験かもしれません。


こんな衣でカキフライしちゃったら、どうなるのだろうと改めてのしんみち通り。 またまた、ちょうど満席のしばし待ち。

やや粗めのパン粉がおよそ均一に牡蠣の身を包んでる。takeda07.jpg箸でそっと優しく掴んで、そっと歯を立てる。

ああ、期待通りの軽やかさ。takeda08.jpgこんな軽やかなカキフライもまた初めてだ。 香ばしさのための胡麻油とかコクを添えるラードなどを使わず、 コーン油100%で揚げているらしい。 酸化し劣化した油じゃこうはいかないとすると、 上等な天麩羅店よろしく油を頻繁に交換しているのでしょう。

洋食「エリーゼ」が昇華して揚げ物に特化した、かつれつ「たけだ」。takeda09.jpg2代目店主が自らの姓を店の名に掲げたその覚悟にふと思い至ります。


「四谷 たけだ」 新宿区四谷1-4-2 峯村ビル1F [Map] 03-3357-6004
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ひな鳥から揚げ「とよ田」で 砂肝もも手羽カラっとしたテクスチャ

toyoda.jpg自由が丘の緑道沿い、自由通り近くの雑居ビルに唐揚げで知られた店がありました。 店先に提げた円形の洗濯物干しに何本ものかす揚げが吊るされている光景をよく覚えています。 その人気振りから結局訪れたのは一度きり。 そうこうしている裡に、奥に並んだ店が退去し始める。 随分粘っていましたが、古びたビルの建替えのため店を閉め、移転した「とよ田」にやっとこお邪魔できました。
toyoda01.jpg 移転先は、ヤマダ電機のお隣。 移転からもう2年が過ぎちゃった。

何度か覗いてみても、いつも大入り満員。 カウンターやテーブルのニコニコ顔を恨めしそうに眺めたものです(笑)。 この夜もダメ元で引き戸をちょと開けると、やはり賑やかなご様子。 でも、テーブルに相席でよければと招き入れてくれました。

瓶の麦酒をいただいて、ご注文はやはり、セットで。 びしっと木札で極めたお品書きは、都合22枚。 ただ、鶏料理となれば例によって、「砂肝」「手羽」「もも」の三点のみ。 そこに、「お新香」と「焼きおにぎり」「焼きおにぎり茶漬け」が加わっています。

晒した玉葱スライスと鰹節のお通しで麦酒をちびちびしていると、 お待たせ~とばかりに「砂肝」の揚げ上がり。toyoda03.jpg唐揚げというよりは、まさに素揚げな表情。 味付けは塩のみ。 硬そうでいて、さくーーっと歯の先を受け止めて、 そうかと思った途端ぎゅぎゅっと旨味をたっぷり滲ませる。 うん、イケる。

と、カウンターが空いたとのことで移動して、角ハイボール。 じゅわわわーという音に誘われて厨房を覗き込むと、広東鍋になみなみの油が活躍中。toyoda04.jpg大将が手にしている団扇はどうやら撥ねる油の飛沫を避けるためみたい。

じっくーり揚げ上げた「もも」がやってきた。 見るからにカラっとしているのが信条さ!とばかりのテクスチャー。toyoda05.jpgtoyoda06.jpgtoyoda07.jpg 檸檬をじゅじゅっと絞って、熱々のところへ齧りつきます。 見た目の期待を上回るパリッとした感触。 そんな皮目で閉じ込めた中の身からは澄んだエキスが溢れ出す。 ああ、角ハイがゴキュゴキュ呑めてしまいます(笑)。

角ハイをお代わりしたと同時にやってきた「手羽」の笊。 衣というか、カラッと揚げきった皮のクリスピーさは、ももを上回る。toyoda08.jpgそんな皮目と身を一緒に齧ると甘さにすら思う魅力が弾けます。 骨もポリポリ。 なんだか、ああ、満足。

これで、「焼きおにぎり茶漬け」をいただけば、大団円ではあるまいか、と。toyoda09.jpg豪勢に鏤めたあられの隙間から、少々のコゲの気配をみせるおにぎり片。 杓文字でざくざくと解して、ズズっといただけば、焼いたおにぎりの香ばしさと出汁の旨み、刻み海苔の風味が渾然と攻めてくる。 うん、さらに満足(笑)。

自由が丘で唐揚げの店といえばまず筆頭に挙がる、ひな鳥から揚げ「とよ田」。toyoda10.jpgいっつも混んでいるのが足枷だけど、それは勿論人気の証左。 挫けず繰り返し、暖簾の隙間から覗いてみようと思います(開店直後の時間帯は予約できるようです)。


「とよ田」 目黒区緑ヶ丘2-17-12 [Map] 03-3723-7683
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