手打生そば「かぎもとや」本店で 安い燗酒と野趣のそばゆるゆる

kagimotoya.jpg台風余波の雨がやっとこ上がった軽井沢。 しなの鉄道にひと駅だけ乗って中軽井沢へと思うも、 次の電車まで30分弱ほど間があるタイミング。 タクシーを駆って中軽井沢駅前へとやってきました。 お目当ては、久し振りの「かぎもとや」のゆるゆるお昼時なのであります。
中軽井沢の駅はすっかり取り壊されてしまっていて、今は仮駅舎のプレハブ仕立て。 以前の駅舎の表情の記憶は朧げながら、ちょっと寂しい光景。 長野新幹線の開業が駅周辺を閑散とさせたことは想像に難くありません。 今は鬼押し出しへと至る千ヶ滝通りを一躍脚光を浴びるエリアにした星野リゾートが中軽井沢駅の窓口業務の委託を受けているようです。 「かぎもとや」本店は、そんな中軽井沢駅前、中軽井沢交差点脇にある。 ちょうど八年振りの「かぎもとや」本店は変わらぬ風情でそこにありました。

八割の入りの店内は、今もって軽井沢定番のお昼処であることを印象づける。kagimotoya01.jpgテーブルから見上げる、厨房の上の写真には、例えば若かりし頃の裕次郎がいる。 隣では、昼にしてすっかり出来上がっちゃた兄ちゃんが新幹線の時間なんか気にせずに呑むんだと駄々を捏ねている(笑)。 お銚子をいただきましょう。

安っぽい燗酒にはワサビを添えたきつねのお皿。 甘く煮立てた油揚げに忽ち、ゆるゆるとした気分になってきます。kagimotoya02.jpgkagimotoya03.jpg 野沢菜あたりだと気が利いた感じになるのだけどとも思うお新香は、 キャベツの浅漬け。 でもこれがずっと「かぎもとや」のスタイル。 これだけで、お銚子を何本もお代わりしちゃうヒトも少なくないかもしれません。

今日は蕎麦打つ様子は見られないかなぁと厨房の方を眺めつつ、 ざるそばに天ぷら、けんちん汁のつく「もみじセット」をお願いしました。 笊に載るやや幅広のそばは、変わらぬ黒っぽい色合いの。kagimotoya05.jpg 繊細かつ洗練の蕎麦とはやっぱり対極にありそうな蕎麦だと思わせるその表情は、 惹きぐるみのそば粉を大胆に繋いでいる様子に映る。kagimotoya06.jpg丸抜きの蕎麦の仄かな甘さみたいなものではなくて、 外皮が齎すであろう日向くさい野趣が「かぎもとや」のおそばの個性なのであります。

宿場町沓掛(くつかけ)に「かぎもとや」が創業したのは、明治三年のこと。kagimotoya08.jpg「かぎもとや」は、”鍵本屋”。 Webサイトには、「鍵本の名は、本陣の鍵を預かっていたことから由来し、如何に、お上に信用があったかが伺われる。」とある。 往時の宿場町としての賑わいの残り香に唯一触れられるお店なのかもしれません。

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「かぎもとや」中軽井沢本店 長野県北佐久郡軽井沢町長倉3041-1 [Map] 0267-45-5208 http://www.kagimotoya.co.jp/
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