自家製麺 「嗟哉」で 和出汁つけ麺と濃厚魚出汁ラーメンと嗚呼

anaya.jpg京王新線を初台で降りると、そこは東京オペラシティ。 そう云えば、コンサートホールどころか建物の中にすら入ったことがなかったことに気づいたり。 タワーの展望レストランフロアに上がってランチというのもいいかもと考えつつ、一階に出てから新国立劇場との間のガレリアを進みます。
ガレリアの高い高いアーチの天窓から陽射しが洩れて明るく、 なんだかゆったり気分。anaya01.jpgひと気少なく静かな空気がちょっと勿体ないくらいだ。 階段を登り切り、そのまま真っ直ぐ裏手に抜ける。 その先の水道道路沿いにある白い暖簾が、この日のお昼処です。

anaya02.jpg店先のホワイトボードを覗き込むとそこには、「つけ麺(中太麺260g)750円」。 麺類全種類、中盛り1.5倍、中盛り少なめ1.25倍、増量無料、とも手書き文字が躍っています。 券売機で「和出汁つけ麺」のボタンをポチとします。

自家製麺を謳う「嗟哉」の麺は、パスタのようなつるんとした見映えのする。anaya03.jpg 割り箸で掴んだ感じも円い断面を思わせて、 京橋「恵み屋」の蕎麦のように押し出して作るのかもと一瞬考えたりして。

魚粉のっけのつけ汁は、バランスのいい安定感。anaya04.jpg つるつるとした口元の感触と粉の旨みにとろみのある汁が意外なほど絡んで渾然となる。 いいんじゃないでしょか。 麺箱には「ラーメン創房 玄」の文字。 平打ち麺も選べるようです。

別の日の昼下がりには、「濃厚魚出汁ラーメン」200g。 海苔をのっけてもらいます。anaya05.jpganaya06.jpg 乳化したスープはどこか懐かしい。 意外と肌理の細やかなテクスチャのスープは、そう思わせておいて、ぐぐぐと濃度を増してくる。 鶏の風味と脂とを魚介スープで整えた按配。 ここでもつるんとした自家製麺が個性を発揮してくれてます。

無化調「ラーメン創房 玄」の流れを汲むという、自家製麺「嗟哉(あなや)」。anaya07.jpg“嗟哉”は、漢文で嗚呼(ああ)等と同じ感嘆詞。 その店名に含ませた含蓄や意図を訊ねたいところだけれど、 それ相応の応答が期待できない雰囲気なのがなにより残念であります。

口 関連記事:   立食い立呑み十割そば「京橋 恵み屋」で 押し出しそばこんもり(06年05月)


「嗟哉」 渋谷区本町2-4-3 [Map] 03-3375-8117
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Beisl「huth」で 蒼穹とアスパラスープとヴィーナー・シュニッツェル

huth.jpgウィーンの旧市街を環状に取り囲む外周道路が、 通称リンク、リンクシュトラーセringstrasse。 リンクの周りには、ウィーンを代表する世紀末建築のあれこれが並んでいます。 とある方がハンドルを握って、そんなリンクを突っ走る真夜中ぷちツアーを敢行してくれました。 ウィーン大学、市庁舎、国会議事堂、自然史博物館に美術史美術館。 郵便貯金局、旧陸軍省合同庁舎、ブルグ劇場、フォティーフ教会などなど。 車窓に現れる深夜の建築物を眺めること次々と。 ありがとうございました。

翌朝、アンナ小路annagasseの小さなホテルをあとにして、 快晴の旧市街散策へと出掛けました。

アウグスティナー教会を横目にしてからヨーゼフ広場にしばし佇み、 ミヒャエル広場のローマ遺跡を見降ろして、 英雄広場に抜けて見上げるはカール大公の騎馬像。 フォルクス庭園の緑に降り注ぐ陽射しにたっぷり和んだり。huth01.jpgアム・ホーフ教会で一休みして、イエズス会教会経由して、またカフェでひと休み(笑)。 泊っていたアンナ小路の方向へとSchellinggasseをゆっくりと歩きます。

通りの両側は、古くからのビジネス街のようにも映る街並み。huth02.jpgそろそろランチと洒落込みましょうか。

心地いい空気のテラス席に落ち着いて、見上げる蒼穹の気持ちよさ。huth04.jpgやっぱり欲しいジョッキの一杯(笑)。

ころんとしたフォルムの可愛らしいジョッキに注がれてやってきたビールは、 ムーラウMurauの古の醸造所の地ビール「Murauer Steirergold」。huth05.jpgムーラウというのは、シュタイアーマルク州の南寄り辺りにある町らしい。 すっきりとした飲み口がさらっとした街角の空気に似合って旨い。

日替わりスープと謳いながら連日同じメニューなのも然も当然なのが、 「アスパラガスのクリームスープSpargelcreamsuppe」。 huth06.jpghuth07.jpg だってとっても美味しいのだもの(笑)。 秘かに沈んだ小口に刻んだチャイブ。 さらっとしたクリーム仕立ての中にアスパラガスの風味旨みをくくくっと含んでいて、 うんうんと頷かせます。 とろんとさせたジャガイモの上に載って鮮やかな葉の色を魅せているのは、 Cafe「Amacord」でもいただいたVogerlsalat でしょか。

そしてお願いしていたクラッシクなオーストリア料理のひとつ、 ウィーンと云えばの「ヴィーナー・シュニッツェルWienner Schneitzel」が届きました。huth08.jpgvon kalbとあるのは、仔牛肉の。 もっとでっかくて真ん円のせんべいのようなカツレツで驚かす有名店もあるようだけど、 こちらのはふとチャウチャウの顔を思い出すようなでこぼこフォルム。 早速、檸檬をたっぷり搾って、粒子細かな衣にナイフを挿し入れます。 あっけなくすっと切れたカツレツの断面は、なるほど叩き伸ばした肉が衣と同じような厚さ。 どれどれと口に運ぶとこれが、意外なほどの軽妙さ。 飽くまでさくっとした歯触りの衣の間から仔牛肉の香りと旨みが滲む感じ。 huth09.jpghuth10.jpg 見た目のボリューム感の割にはすっすと食べれる、ってのが魅力の一端なのでしょう。 小さな紅い実preiselbeereのジャムをのっけて、甘酸っぱさを添えていただくのも一興だ。

クラックなオーストリア料理からスタンダードなお皿たちまでが気軽にいただける、 バイスルBeisl「huthフース」。huth13.jpg実は通りを隔てた向かい側には、「GASTWIRTSCHAFT huth」があり、 並びには「huth moritz」がある。 バイスルBeislは、居酒屋的なニュアンスで、 GASTWIRTSCHAFTはそれよりはちょっと格上のレストランといったところか。 moritzにはpizza-pasta-grillと補足があって、 その3店舗が寄り添うように配置されていることになる。 およそ似たような店を重ねて競合しちゃわないか、少々心配だ(笑)。


「huth Beisl」 Schellinggasse 6 A-1010 Vienna [Map] +43.1.512 81 28 http://www.zum-huth.at/beisl/index.php
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手打生そば「かぎもとや」本店で 安い燗酒と野趣のそばゆるゆる

kagimotoya.jpg台風余波の雨がやっとこ上がった軽井沢。 しなの鉄道にひと駅だけ乗って中軽井沢へと思うも、 次の電車まで30分弱ほど間があるタイミング。 タクシーを駆って中軽井沢駅前へとやってきました。 お目当ては、久し振りの「かぎもとや」のゆるゆるお昼時なのであります。
中軽井沢の駅はすっかり取り壊されてしまっていて、今は仮駅舎のプレハブ仕立て。 以前の駅舎の表情の記憶は朧げながら、ちょっと寂しい光景。 長野新幹線の開業が駅周辺を閑散とさせたことは想像に難くありません。 今は鬼押し出しへと至る千ヶ滝通りを一躍脚光を浴びるエリアにした星野リゾートが中軽井沢駅の窓口業務の委託を受けているようです。 「かぎもとや」本店は、そんな中軽井沢駅前、中軽井沢交差点脇にある。 ちょうど八年振りの「かぎもとや」本店は変わらぬ風情でそこにありました。

八割の入りの店内は、今もって軽井沢定番のお昼処であることを印象づける。kagimotoya01.jpgテーブルから見上げる、厨房の上の写真には、例えば若かりし頃の裕次郎がいる。 隣では、昼にしてすっかり出来上がっちゃた兄ちゃんが新幹線の時間なんか気にせずに呑むんだと駄々を捏ねている(笑)。 お銚子をいただきましょう。

安っぽい燗酒にはワサビを添えたきつねのお皿。 甘く煮立てた油揚げに忽ち、ゆるゆるとした気分になってきます。kagimotoya02.jpgkagimotoya03.jpg 野沢菜あたりだと気が利いた感じになるのだけどとも思うお新香は、 キャベツの浅漬け。 でもこれがずっと「かぎもとや」のスタイル。 これだけで、お銚子を何本もお代わりしちゃうヒトも少なくないかもしれません。

今日は蕎麦打つ様子は見られないかなぁと厨房の方を眺めつつ、 ざるそばに天ぷら、けんちん汁のつく「もみじセット」をお願いしました。 笊に載るやや幅広のそばは、変わらぬ黒っぽい色合いの。kagimotoya05.jpg 繊細かつ洗練の蕎麦とはやっぱり対極にありそうな蕎麦だと思わせるその表情は、 惹きぐるみのそば粉を大胆に繋いでいる様子に映る。kagimotoya06.jpg丸抜きの蕎麦の仄かな甘さみたいなものではなくて、 外皮が齎すであろう日向くさい野趣が「かぎもとや」のおそばの個性なのであります。

宿場町沓掛(くつかけ)に「かぎもとや」が創業したのは、明治三年のこと。kagimotoya08.jpg「かぎもとや」は、”鍵本屋”。 Webサイトには、「鍵本の名は、本陣の鍵を預かっていたことから由来し、如何に、お上に信用があったかが伺われる。」とある。 往時の宿場町としての賑わいの残り香に唯一触れられるお店なのかもしれません。

口 関連記事:   生蕎麦「かぎもとや」本店で 素朴かつ野趣あるとろろ大天ざる(03年09月)   手打生そば「かぎもとや」バイパス塩沢店で 天ざる山うどの香り(04年05月)


「かぎもとや」中軽井沢本店 長野県北佐久郡軽井沢町長倉3041-1 [Map] 0267-45-5208 http://www.kagimotoya.co.jp/
column/03178

Bar「カエサリオン」で ミント・ジュレップ駅前にして隠れ家バー

caesarean.jpgじわっと暑い初夏の頃、 薪釜ピザ「enboca」を訪ねた以来の代々木上原へ。 駅の高架沿いの和食「笹吟」へお邪魔した道すがら、もう一軒寄り道しようと同じ通りをふらふらと。 目星をつけていたバーの所在が判らず電話を架けて訊ねると、なんとその店の真ん前にいました(笑)。
雑居ビルの外階段のすぐ下の暗がりにある扉は、 そうと知らなければ、ビルの通用口か倉庫のようでもあり、 駅前にしてひっそりとした隠れ家のようです。

硝子越しに中が少し覗けるのに安堵して、その扉を引き開けます。 頭をポリポリ掻く感じで、ちょうど空いていたカウンターの隙間に止まり木します。 どうも、今し方は、ポリポリ。caesarean01.jpg黒が基調のカウンターやバックバー。 無彩色のステージに棚のボトルや卓上のグラスが主役として浮かび上がる感じ。 熟達を思うバーテンダーのバーコートもきりっと映える設え。 こじんまり感がちょうどよく、店の中にも程良い隠れ家感を想います。

ほんの少し身を乗り出して覗いたマスターの手元にはミントの葉。 そうとなれば、「モヒート」か「ミント・ジュレップ」か。 「ミント・ジュレップ」をいただきましょう。caesarean02.jpg時季には、何杯となくそのグラスを作っているらしい手際を眺めるひと時も愉しくて。 ミントの翠鮮やかなモヒートがすっとカウンターに置かれました。 caesarean03.jpgcaesarean04.jpg 用いるバーボンは、FOUR ROSES。 バーボンのコクとすっきりした甘さとのバランスよろしく、 ミントの風味が心地よく涼風を運んでくれます。 うん、美味しい。

caesarean05.jpgもう一杯だけと、 バックバーからモーツァルトでもブラントンでもない、 球形のボトルに目をつけました。caesarean06.jpgどうやらゴルフボールを模したボトルらしく、ラベルにはOLD ST.ANDREWS、とある。 彼のゴルフの聖地との関係は判然としないまま、なるほどと傾けるグラス。 ゴルフコンペでの景品に持て囃された時期もあるのでしょうね。

駅前にして隠れ家のバー、代々木上原「カエサリオンCaesarean」。caesarean07.jpg通うほど通うにつれ、より深く心地いいバーのひと時を提供してくれそうな、 そんな予感がいたします。


「カエサリオン」 東京都渋谷区上原1-33-16 第一オーツカビル1F [Map] 03-3485-2907
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中華「健楽」で 素朴旨い自家製麺ラーメンとチャーハンと餃子と

kenraku.jpgもんじゃのお店を横目に歩みを進める月島界隈。 装い改まった焼肉「凛」の店先の様子や夏場の「ほていさん」はどうんだろうと路地を巡ってみたりして。 そして、ふらっと寄り道した感じで立ち寄りたい一軒の前に辿り着きます。 酔っ払いに蹴っ飛ばされたのか、割れたアクリルをセロテープで丁寧に貼りとめているのは、中華「健楽」のスタンドサインです。
渦巻き紋様、雷門で周囲を囲んだ暖簾を払って店内へ。 kenraku01.jpgカウンターの隅っこに陣取って、眺めるお品書き。 およそ馴染み深いラインナップが並んでいます。
ゆっくりしちゃおうと、瓶の麦酒に6ヶの「餃子」。kenraku02.jpgたっぷりとあんの詰まってころんとした餃子をふーふーはふっとしては、 瓶の麦酒をつつっといただく。 小さめ餃子が好みではあるけれど、このくらいの量感も嬉しいところ。 わざわざ云うこともない定番の組み合わせだけれど、やっぱりイイモンです。

そしてこれまた黄金の組み合わせ、「ラーメン」と「チャーハン」をお願いします。kenraku03.jpgこれぞ素朴なる「中華そば」の表情をみせるどんぶりがなかなかに旨い。 澄んでかつ厚み十分なコク味は、脂由来の甘さに留まらない奥行きがある。

そのスープに揺らぐストレート麺をじっと見詰めると、絶妙なアルデンテであることが判る。kenraku04.jpgそしてこの麺、自家製なのであります。

豪快に煽った様子がところどころの焦げにも窺える「チャーハン」。kenraku05.jpg飾らないパラパラ具合に、安心するのは何故でしょう(笑)。

別の夜には、町場の中華屋さんでやっぱり気になる、「タンメン」。kenraku06.jpg品書きに(塩味)とわざわざ括弧書きされているのを微笑ましく眺めつ受け取ったドンブリは、期待通りのお姿。 やや強めの塩味スープは、化調の加減もそこそこに、じわじわと気持ちを温める。 古川橋「大宝」みたいに攻める「タンメン」もたまにはいいけど、普段使いにはこんな「タンメン」でありますね。

お品書きの中で少々異なる光を放っていたのが「担々飯(たんたんはん)」。kenraku07.jpgkenraku08.jpgやっぱりというか、案の定というか(笑)、担々麺のスープをご飯にかけちゃったドンブリ。 常連のどなたかのリクエストにお応えしちゃった結果ではとも推察しつつ蓮華を動かせば、 これはまぁご想像通りの食べ口でございます。

町場の中華「健楽」の所在は、月島のおヘソの辺り。kenraku09.jpg今度は、「やわらかい焼そば」で麦酒して、「焼肉ライス(豚の生姜焼き)」かな。


「健楽」 中央区月島3-7-8 [Map] 03-3531-1387
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