洋食「ぱいち」で 厚切トーストとタンシチュー生姜焼きは二階建て

paichi03.jpgつくばエクスプレス沿線からの帰り道。 終着駅の秋葉原に着くちょっと前に、 そう云えばつくばエキスプレスは確か、 浅草を通るンだったなぁと思い出す。 国際通りの浅草ビューホテルのあたりに駅があって、いつもの浅草線や銀座線とは違う方向からのアプローチになるはず。 浅草駅に滑り込んだ車両から急遽、飛び降りるように途中下車しました。
ふらふらと当て所もなく、国際通りから仲見世方向へと徘徊するように(笑)、入り込んでいく。 純レバ丼の「あづま」は定休日だなぁとか、奮発して蒲焼「小柳」に寄ってしまおうかなぁとか、青森煮干し中華そばの「つし馬」はずっと向こうだなぁなどと考えながら、ふらふらと。 と、とある路地の前に佇んでは、 この奥の「ゆたか」でとんかつをいただいたことがあったなぁと思い出す。paichi01.jpgそしてそこは、洋食「ぱいち」の目の前でもありました。 膝をパンと打つように(笑)、以前から気になっていた洋食屋さんに早速突入を試みます。

促がされるまま座ったカウンターから振り返ると、 店の中には小上がりを覆うようにさらに屋根がある。paichi02.jpg長押には千社札仕様の弓張り提灯が並べられて、 浅草に似合う”江戸”な雰囲気が存分に漂います。

paichi04.jpg あれこれ悩んで結局、「シチューとサラダの店」と看板にあったものなぁということで、「タンシチュー」をお願いします。 幾つもの手鍋に準備されたデミソース。 目の前の厨房の五徳には、鉄鍋が載せられて、ぐつぐつに向けた加熱が始まりました。

鼻先を擽りはじめた匂いからしてもう、鉄鍋の到着が待ちどうしい(笑)。 熱いのでお気をつけください、とお待ち兼ねの鉄鍋がやってきました。 うん、みるからに旨そう。paichi05.jpg 杓文字で鍋の蓋に取り分けて早速、どれどれとそのソースを舌に載せれば、 うんうん、動物系と野菜系の旨みがベタつくことなく真っ直ぐに沁み入るように迫ります。paichi06.jpgいいね、いいね。 paichi07.jpg ライスではなくと、なんとなく選んだ「トースト」がヒット。 しっかり厚切りを香ばしくフライパンで焼いたトーストは、中がもっちり。 そのトーストとシチューとを交互に口に運ぶ、嗚呼、至福のひと時(笑)。

もう「カキフライ」の時季は過ぎてしまったけれどと思いながら、ふたたび浅草一丁目。 paichi08.jpg佇まいは小料理・居酒屋風なれど、コック帽のお三人が居並ぶ光景は正しく、洋食屋さんのそれであります。 paichi09.jpg SuperDryしかないのが残念なものの、「ポテトサラダ」あたりで瓶ビールをやっつけつつ、ひと心地。 続いて、「生姜焼き」をセットでお願いしました。paichi10.jpgオカアさんが届けてくれたのは、バラ肉系の生姜焼きとは明らかに違う端正な表情のお皿であります。 特筆するべきは、その盛り付けにもあり。 横から見て気がついた、生姜焼きロースが二階建てになっているのです。paichi11.jpg仕立ては、生姜の風味やや抑え目のあっさり系。 リングイネのケッチャップ麺もしっかり添えられています。 勿論、ジンさんナポさんも実食済だ。

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昭和11年総創業、浅草平和横町の老舗洋食「ぱいち」。paichi12.jpgオカアさんに、何故に「ぱいち」なの?と訊くと、 言い終わるか否かの即答で、「一杯の逆さま、ね」。 それを聞いていた当代のご主人は、お祖父さんの時にとんかつなどの揚げモノやオムライスなんかの洋食屋にしたらしいです、と補足してくれた。 元々は、一杯呑み屋だったようです、とも。 その頃から俗に、一杯呑みに行こうぜというのを”パイチ”と業界用語チックな用い方をしていたらしい。 浅草が古くからの芸人の町であることも関係していそうで興味深いね。 「杯一」という呑み屋はあっても、「ぱいち」と表記する店は恐らくここだけだ。 口 関連記事:   柳麺・餃子「あづま」で ほろ酔いで啜るDXラーメンDXの謎純の謎(06年05月)   中華そば「つし馬」で 青森煮干の中華そばと特濃バリ煮干し旨し(09年11月)   蒲焼「小柳」で 極薄い外周とふんわり身が解ける鰻重の旨さ(07年08月)   とんかつ「ゆたか」で 牡蠣フライ的フォルムのひれかつ定食(07年05月)


「ぱいち」 台東区浅草1-15-1 [Map] 03-3844-1363
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歌舞伎座厨房「歌舞伎そば」兜町で ここでも旨いかき揚げそば

kabuki.jpg歌舞伎座の幕を一旦閉じる「歌舞伎座さよなら公演」が催されたのが10年4月のことでした。 歌舞伎座=そばとも連想させてくれていた「歌舞伎そは」はその後、歌舞伎座の敷地裏手の路地へと移転して営業してくれていています。 そんな「歌舞伎そば」が初めての支店を出したと知ったのは確か、年が明けた頃。 兜町店と聞いて、東京証券取引所の近辺なのだろうなと思い込んでいました。

ところがある日、平成通りの交差点で信号を待っていると、 その斜向かいに「歌舞伎そば」と謳う暖簾を見つける。 ああ、なぁんだ、こんなに近くにあったのね、ここも住所は兜町なんだと気がついて、 早速その暖簾を潜ります。 歌舞伎座の店と同じく、券売機でポチとするのは、「ざるかき揚げそば」。 ぐわぐわと沸く湯殿のすぐ脇に陣取ります。kabuki01.jpgここ兜町店でも、一家言ありそうな風格のオトーサンたちが賄ってくれているのだけれど、麺を湯から上げたり、かき揚げを揚げたり、載せたりする所作に”あの”リズムは感じられません。 至極当然のことであるのにちょっと残念にも想ったり。 歌舞伎座のオヤジさんが膝でつくるリズムは、「歌舞伎そば」そのものと一体のものになっているのが改めて判ります。 「かき揚げ」追加トッピング&大盛りの「ざるかき揚げそば」が目の前に届きました。kabuki02.jpg割った掻き揚げを綺麗に蕎麦の廻りに配した様子は、歌舞伎座の店に負けぬ壮観さ。 辛汁につつっと浸してずずずと啜る。kabuki03.jpg掻き揚げも辛汁につつっと浸してサクカリっと齧る。 うん、うまい。 辛汁の加減も甘過ぎず辛過ぎず、そば自身の風味旨みを上手に盛上げてくれている感じ。kabuki04.jpgそこへ掻き揚げされた野菜の甘さと油のコクが追い討ちを掛けて喜ばすのであります。

歌舞伎座のお店ではいただいたことのなかった、 温かい汁の「かき揚げそば」もいただいてみました。kabuki05.jpgそうか、どんぶりに載せるのだったら掻き揚げを割らなくっていいンだよね、とそんなことを考える自分が可笑しい(笑)。 かえしを妙に主張させず、素直に出汁を活かそうとする、意外と丁寧な甘汁。kabuki06.jpg kabuki07.jpgkabuki08.jpgkabuki09.jpg そこらの立ち喰いと並べて考えてはいけません。

11年の年明けに開店した「歌舞伎そば」の兜町店。kabuki10.jpg歌舞伎座の大将が刻むリズムはないけれど、 此処でも変わらぬ「もりかき揚げそば」がいただけます。 口 関連記事:   そば「歌舞伎そば」で ざるかき揚げ場所は変われどあの芸な所作(10年12月)


「歌舞伎そば」兜町店 中央区日本橋兜町16-4 島田ビル 1F [Map] 03-5695-3701 [閉店]
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café「wernbacher」で パフェ仕様半熟玉子老舗カフェ朝ごはん

wernbacher.jpg線路を潜り、五叉路のロータリーを経たライナー通りRainerstraßeがミラベル宮殿に差し掛かる。 会議場の建物とその先の小さな緑の丘を右に見ながら、左に折れたゆったりした通りがFranz-Josef-Straße。 今朝は、新緑の並木揺れるこの通り沿いのカフェで朝ごはんと洒落込みましょう。
まだ気温の上がらない外テーブルにひとの姿はないけれど、ちょうど開店時間を迎えた頃。wernbacher01.jpg趣のありそうな店の中へと、おはようございます。 もう既に先客さんのあるテーブルたち。 にこやかに迎えてくれるKellnerin。wernbacher02.jpgノスタルジックに落ち着いたワインレッドの絨毯と調度の張り布。 木軸で組んだ格子に銅板を嵌め込んだような天井が何気ない情緒を生んでいます。 煙草エリアを離れて、右手奥のテーブルに席を得ました。

伝統的なスタイルのヤツがいいなとコージーな朝食gemütlich frühstückenとあるメニューから選んだのは、klassisches古典的なWiener ウイーン風Frühstück朝ごはん。 オレンジジュースとお冷の小さなグラスとカプチーノのカップが小さなステンレスのトレーに一緒に載せられてくるのが可愛らしくも面白い。wernbacher03.jpg 定番テーブルパンのハムサンドSchinkenSemmerl。wernbacher04.jpg ハムや胡瓜、トマト、サニーレタス、チーズを挟んだカイザーセンメルが素朴に美味しい。

2 eier im Glasとは、口の広いグラスかなんかに入った玉子ふたつってことなンだろなぁとなんとなく考えていると、届いたそれはまるでパフェ仕様(笑)。wernbacher05.jpg たっぷりかかった粗挽きの胡椒越しにパフェスプーンで崩すと半熟玉子が待ってましたとばかりに崩れて、とろんとした黄身が顔を出す。wernbacher06.jpgどれどれと早速スプーンの先を口に運べば、麗しき見た目通りに素直に美味しい。 云ってしまえばただの半熟玉子が、妙に新鮮に映るのは、半熟玉子とか味付玉子は箸や蓮華に載った状態でいただく機会が圧倒的に多い所為かも(笑)。

1953年創業の街角の老舗café「wernbacher(ヴェルンバッハー)」。wernbacher07.jpg 二次大戦前にCafé Großglocknerという名でオープンし、家具マイスターたちの集会所や保育所、ザルツブルク最初のディスコScotch Clubなどといった変遷を経て、ファミリー「wernbacher」の名で1953年にふたたびカフェとして生まれ変わったということのようです。 歴史のあるカフェ、一朝一夕では培えないものをもっているようで、いいね。


「wernbacher」 Franz-Josef-Straße 5 5020 Salzburg [Map] +43(0)662 88 10 99 http://www.cafewernbacher.at/
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洋食亭「いし井」で 週末ののんびりランチは名残りのかきフライ

ishii.jpgまたまた、村っちゃん「Again」ライブへと武蔵小山を訪れたのは3月末の日曜日。 真っ昼間にしてなお、漫ろ歩くのがなんだか愉しい武蔵小山駅前に広がるディープゾーンへと自然と足が向いてしまいます。 ふたたび、窮屈という名のレストラン「L’ Etroit」にお邪魔しようか、不思議なチゲつけ麺の店「慶次」はやってないかな、などと考えながら路地を往く。 と、正面にみえてきたのは、武蔵小山を代表する洋食店のひとつ、「いし井」。 そうだ、此処で名残りのカキフライをいただかなければ。

早速、ドアを開くといつもと同じ、照度を抑えたカウンターが迎えてくれます。 週末の、ちょっと遅い時間のランチを愉しむひと達で、いい具合に席が占められています。 10月~3月と季節を示して、「かきフライ」のメニューが載っている。 そういふ風に決めてしまっている店は少なくないものなぁとちょっぴり残念に思いつつ、 オーダーを厨房へと通してもらいます。 ishii01.jpg どろんと濃度のあるポタージュを舐めながら、あまり時間も気にせずのんびり待てるのも週末ランチのいいところ。 ややあってから「かきフライ」のお皿が届きました。ishii02.jpg お皿全面に敷いてしまいそうなぐらいの勢いでタルタルが添えられているのがいい。ishii03.jpg卓上には、「横浜ソース」なる中濃ソースを用意されているけれど、 どうやらそのお世話にならなくても済みそうです。 多い派に属する、フライ6つ盛り。 使っている牡蠣のサイズ、衣の揚げ色や厚み、火の入具合など、 至極真っ当な洋食屋さんの牡蠣フライであります。ishii04.jpgタルタルをたっぷしのせて、口を閉じ咀嚼するときの喜びは、勿論ここにもあるのでした。

日本オイスター協会では、復興牡蠣オーナー制度によるカキ産地支援を応援しています。

武蔵小山を代表する洋食店のひとつ、洋食亭「いし井」。ishii05.jpgポークジンジャーならぬ「ビーフジンジャー」をいただいたのがもう3年も前のことと振り返って、ちょっと吃驚。 次回は遠からず、「ナポリタン」か「オムライス」かな。 口 関連記事:   洋食亭「いし井」 でご飯の友ビーフジンジャーぶわんと生姜風味(08年03月)   Restaurant「L’Etroit」で 讃岐牛ちからこぶワイン煮満足な窮屈(11年03月)


「いし井」 品川区小山3-20-11 [Map] 03-3785-0143
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和食「しら田」で具沢山とん汁と鯖みそ銀だらみそ漬かれい煮付

shirata.jpg毎年、桜の花が満開に近づく頃になると人通りが多くなる通りが茅場町にあります。 桜並木が両側を飾る通りなのだけど、その通りの名前は判らない。 鈴らん通りと交差する、鳥「宮川」のある通りと云えば判りやすいかもしれません。 今年もその桜の咲きっぷりや通りの景色を眺めつつ、桜色のアーチを潜り抜けました。 平成通りに至る手前で、その日のおひる処を見つけました。久々に、和食「しら田」へお邪魔です。

随分前にランチを止めていたらしきことがあって、それ以来訪れることがなかったのだけど、 今は鋭意営業中なのが店頭のお品書きからも判ります。shirata01.jpg 既にほぼ満員の店内は、 右手にテーブル席、左手に窓に向かうカウンター席。 壁でなく、路地に面した窓があるだけで、 おひとりさまにも居心地のいいカウンターになっています。 shirata02.jpg 「焼魚ととん汁」にはじまるお品書きは、「あじたたき」などの魚料理ととん汁もしくはお造りとの組み合わせで構成されている。

まずは、「さばみそ煮とん汁」をいただきましょう。shirata03.jpg お盆に載ってやってきた定食は、茶碗のご飯にそれよりも若干大きめのとん汁の碗、漬物の小皿にさば味噌煮の長皿。 おお、実にたっぷりとした豚汁だなぁと感心しながらごろごろと入った大根や人参牛蒡などなどの根菜や豚バラ肉に誘われます。shirata04.jpg強過ぎない味つけに整えてあって、 はふほふとどんどん食べてもまだ出てくる大根が嬉しいぞ。 とん汁との組み合わせでない定食は、みそ汁がついてのるのだけど、 その味噌汁をとん汁に変更したい場合は、なんと+350円也。 それほどの具沢山たっぷりなお碗なのであります。 さて、もうひとつの主役、「さばみそ煮」。shirata05.jpg鯖の切り身を包んでいるのは、 八丁味噌を思わせる、やや赤っぽくてとろみの強い味噌だれだ。 shirata06.jpg甘くなく、生姜をキッと利かせるよりも真っ直ぐな味噌の風味でいただく仕立ても乙なもの。 特Aこしひかりを使っているというご飯がどんどこいただけてしまいます。

ああ、ギンダラが食べたいなぁと思う時にはまさしく、「銀だらみそ漬ととん汁」を。shirata08.jpgshirata07.jpg西京漬けとはやや趣の違う、みそ風味のしっかりした切り身。 ほろほろと脂が多いイメージのギンダラとも違うけれど、これはこれで悪くない。

醤油で煮付けたお魚が食べたいなぁと思うときには、 「かれい煮付ととん汁」なんて手もある。shirata10.jpgshirata09.jpgこれまた意外な、黒っぽい装いに一瞬戸惑うも、 決して煮詰まって黒ずんでいるのではない、と思う(笑)。 塩辛いのかなぁと試すように口にすると、そんなこともなく、これまたご飯をどこどこ進ませるオカズであります。 ふと、厨房の主は、名古屋方面の方かしらんなどと思ったりして。 番外には、なかなか人気の「とり唐揚げと小とん汁」なんてのも御座います。

おひるどきはいつも満席、茅場町の和食「しら田」。shirata11.jpgきっと夜にも気の利いた酒肴と食事がいただけるのではないかな。 次の春には、花見酒と洒落込もう。


「しら田」 中央区日本橋茅場町2-3-8 [Map] 03-3661-8714
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