らあめん「九州じゃんがら」銀座で 赤いじゃんがらとお帰りなさい

jyangarag.jpg嘗て7丁目にあった「じゃんがら」の銀座店。 秋葉原の本店、そのあとできた原宿店と並んで、ちょくちょくお世話になっていた。 表側から入ってコの字のカウンターの奥に陣取り、満席の店内を離れるときは、店裏手のビル通用口側から店を出る、というパターンが多かったっけ。 そんな銀座店が一時閉店すると知ったのは、たしか07年の桜咲く頃でありました。

ビル取り壊しによる移転のための休業と聞いて、 なるほど随分草臥れたビルだったものなぁと納得したことを想い出す。 遠からず近所に開店してくれるのだろうと、 駐車場になった取り壊し後の敷地を眺めたりしたものでした。 ところが、物件探しが難航しているのか、なかなか開店の吉報が聞けず終いのまま月日が流れて3年あまり。 ロレンスさんの記事で、10年七夕の再開店を知りました。

ところは、三原通りの木挽橋信号近く。 そういえば、何度か寄ってた神田のお店に閉店の貼り紙があったのは、スタッフが銀座店へ移行するという事情もあってのことかなと思いながら、久々の暖簾を潜ります。 いつもの定番、「じゃんがらみそ全部入り」あたりかなぁとレジに正対するも、今まであまり触手の動かなかったメニューに目を奪われました。 あのこってり「ぼんしゃん」の辛い版「からぼん」。 久々なのだけど、そんなのもいいかもと威勢のいい兄さんにそう告げます。jyangarag01.jpg 浅め小振りの「ぼんしゃん」どんぶりに、表面張力を活かしたかのようになみなみとしたスープは赤々として、みるからにトロミを想わせます。jyangarag02.jpg溢さないように気をつけながら麺を引き揚げると、たっぷりとその細麺に纏う赤いスープ。 とぷとぷっと口元を滑らせながら味わう深い旨みと柔らかくもパンチのある辛み。 いいね、うん。

日を改めて、もうひとつの辛いじゃんがらをいただきに参上しました。 それは「レッドじゃんがら」。 場合によってはこっちの方が辛かったりするのかしらん、 などと心配(笑)しながら、レジに向かいます。 如何にも赤かった「からぼん」と違って、 そういえば赤味が注している、という感じのどんぶり湖面。jyangarag03.jpgマイルド「じゃんがら」にトマトベースの辛味アンを投入するという仕立てらしい。 「太陽のトマト麺」は辛いのだったけかなぁと考えつつ、蓮華のスープを啜ります。 へー、そんなに辛くない。 jyangarag04.jpg辛味が加減よく味わいの輪郭をつくりながら、 トマトの酸味の方が活躍してくれる感じ。 調子に乗って細麺を啜って気がつくと、スープの色が赤くなっていている。 いや、結構~辛い(笑)。 でも、女性受けのいいメニューなのかもね。

そして、やっぱり定番も外せない、と「じゃんがらみそ角玉」。jyangarag05.jpg安定と信頼の味わいに、足繁く通っていた頃のわくわく感を想い出して、懐かしさに遠くを見渡す気分になる。 ずっとそこにあって欲しいものです。

3年強のインターバルを経た後の、復活嬉しい「九州じゃんがら」銀座店。jyangarag06.jpg(11年01月の外観) 従前からの独特な筆致のイラストがここでも明るく朗らかに迎えてくれる。 お帰りなさい。 浮かぶ雲には、「じゃんがら」を生んだ「ブルカン塾」の表記もあるね。 口 関連記事:   九州とんこつ「じゃんがら」銀座店で かくたまみそ揺るぎなきNO,1(02年10月)


「九州じゃんがら」銀座店 中央区銀座6-12-17 銀座片桐ビル1F[Map] 03-3572-3025
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あぶらそば「CHABUYA Zutto Branch」で 牡蠣エキスあぶらそば

zuttobranch.jpg06年、表参道ヒルズの開業に合わせて、「ちゃぶ屋」の森脇康二さんが勇んで出店した「MIST」。 「MIST」は10年01月には香港に海外初出店し、 11年版「MICHELIN HONG KONG」で一つ星を獲得したらしい。 ますます順風満帆かと思いきや、この01月早々にヒルズの店を閉めてしまったという。 移転のためということだけど、間違いなく高いであろうテナント料にいい加減嫌気が差した、というところではないのかな。 そんな森脇さんが、路線の違う新店を繰り出した。 それが、四谷三丁目の「CHABUYA Zutto Branch」だ。
ところは、外苑東通りが曙町に向かって右へ曲がる辺り。 「エリマキらーめん」が懐かしい「一心らーめん」の斜向かいといえば、 分るひとには判るはず。 節電モードの店頭だけど、硝子越しに「あぶら」と示す赤い提灯がみえる。 店内は、奇を衒ったようにまで思った「MIST」との連関は窺えず、嘗てのレストラン・バーを居抜きでテナントしたもののようにも映る。 zuttobranch02.jpgラーメン・つけ麺の店としては、十分にゆったりとした居心地。 壁には、「MICHELIN HONG KONG」一つ星を顕す額が飾られています。


ご注文はやっぱり、「特 牡蠣あぶらそば 正油味かつお風味」。 オリーブオイルと白胡麻油との”あぶら”に対して、 牡蠣エキスを織り込んでいるというのも気になるところ(笑)。 大盛りに、「温玉」をのせてもらいましょう。zuttobranch03.jpg 塩味グリルのチャーシューに支那竹、青葱、刻み海苔、刻みナッツのトッピング。zuttobranch04.jpg覗き込む麺の表情は、ぬらっとしつつも決してオイリーではない感じ。 さてさて牡蠣エキスはどんな活躍をみせてくれているかな、なんて考えつつ、自家製と聞く量感のある麺をズ、ズッと、啜ります。zuttobranch05.jpgん?お?うん? 確かに、今までの味わいの枠組みとは違うベクトルをもつ味わいだ。 丁寧に仕立てて、間違ってもジャンクな方向へ転ばないようにしているのがよく判る。 ただ、その分だけ、おおお!といった判り易いトキメキを齎すものではない模様。 ただのオイスターソース和え麺とも勿論違う。zuttobranch06.jpg 森脇さんが謳う、第六の旨み「油味」というのは、なんだか難しい、というのが正直なところ。 “牡蠣エキス”はどうやって抽出しているのかな。 温玉を崩して黄身のとろみを纏わせたり、卓上の意外と辛い唐辛子オイルを垂らしたりして、味の変化を愉しみつつ、完食です。

zuttobranch07.jpgお会計の際に、「TAP 2011」という青いロゴ・マークをあしらった箱を見つけた。 「TAP 2011」というのは、げんさんも応援しているプロジェクトだ。 元々は、世界の子供たちが「清潔で安全な水」を手に入れられるよう、ユニセフの活動を支援するものだったのだけど、巨大震災を受けて、ユニセフの「東日本大震災緊急募金」に協力するものとなったそう。 ここでも、ささやかな協力をいたしましょう。


「ちゃぶ屋」の森脇さんが繰り出した新基軸は、あぶらそば「CHABUYA Zutto Branch」。zuttobranch08.jpg「ちゃぶ屋が “ずっと” 続くように」、そして、「油そばを “ズッと” すすって明るく元気になってもらいたい」というのが、”Zutto”と名付けた意図らしい。 口 関連記事:   創作麺工房「MIST」で スタイリッシュに巻き麺偽寿司柳麺らぁ麺(06年03月)


「CHABUYA Zutto Branch」 新宿区舟町7 ポワロービルディング1F[Map] 03-5919-0752 http://www.chabuya.com/
column/03108

焼肉の名門「天壇」で ロースと筍×ひかり味噌カツのミルフィーユ

tendan.jpgデュープレックス銀座タワー5/13。 建物名の最後についた不思議な採番は、 どうやら丁目番地を示すものらしい。 三原橋交差点に面してすっくと屹立する佇まいは、 歌舞伎座が取り壊された今では、 界隈のちょっとしたランドマークになっています。 ソソる肉が喰いたい、そう想った時には、 このビルのエレベーターの10Fボタンをポチとする。 混雑してなきゃいいのだけど、 と心配になる「天壇」へとまっしぐら。
出足の良かった所為か、まだなんとか窓際のカウンター席に空きがある。 席に着いたら早速、席を離れて(笑)、バイキングのテーブルへ。 tendan01.jpg tendan02.jpgtendan03.jpg チヂミ数種やスジ煮込み、ナムルあれこれ、チャプチエにサラダたちが並んでいます。 お皿にとって席に戻ると、既に「天壇カルビランチ」が準備万端。 さぁ、いただきましょう。

tendan04.jpgロースターに載せた肉を横目にしながらチヂミやナムルをいただく。 焼き過ぎないように、手にしたトングでさっとカルビを挟んでタレの小皿へ。 恥ずかしながらちょっと気が急いたように口に運びます。 なはははは、やっぱり旨い。 tendan05.jpg脂が甘く解けて、嫌味のない旨みが口腔に迸ってはすっと消える。 焼肉の本懐は赤身にあるだなんて今は決して思えない(笑)。 そのままでも十分イケる肉をさらに昇華させてくれているのが、「天壇」特製のつけダレ。 それは、コンソメ色したタレのベースは牛骨から摂ったフォン。 折角もみダレが利いたお肉を汁の類に浸けてしまうなんて、NGでしょって思うところを裏切るように巧いこと肉の魅力をもう一段高いところへ誘ってくれるンだ。

天井に張ったミラーパネルに逆さまに映る交差点の様子を眺めながら、 食後のコーヒーを啜ります。tendan06.jpg


そんなランチも魅惑の「天壇」の、夜の部へお邪魔しました。 やっぱり、麦酒を生を!と云ってしまうステレオタイプに自省しつつ、でもいいじゃん!と開き直ってグラスを傾けます。

tendan07.jpg月島「凛」を思い出しながらお願いしたのは、「厚切りタン」。 器には、十分厚切りの、丁寧にひと皮剥いたような印象のタンが鎮座。 「凛」の牛タンの厚さそのものには到底及ばないけど、まぁ兎に角厚けりゃいい、ってもんでもないしね。 そこへ、それなりによーく焼かないと噛み切れなくなります、と店長の的確なアドバイス。 焼きが足りずに噛み切れなかった「凛」での失敗が蘇ります(汗)。 そこそこしっかり両面を焼いた厚切りのタン に薬味をのっけて、いざ。tendan08.jpgむほほほほー。 すっと噛み切れる柔らかな歯応えの後から、真っ直ぐな旨みが訴える。 確かに薄切りでは味わえない、魅力の領域なのですね。

tendan09.jpg 「ハイボール」をお願いすると、 そのグラスには「山崎 京都ハイボール」の花札マーク。 そうだ、そもそも「天壇」は、肉の都、京都・祇園、南座の裏手に本店を構える店だものな。

続くお肉は、「天壇」が看板メニューと謳うロースを使った「ミルフィーユロース」。tendan10.jpgもみタレに浮かんだサシの入った肉は、 例えば単なるしゃぶしゃぶ肉とも、機械でスライスした肉とも違うご様子。 一枚焼きますね、と加減をみて炙るように焼いてくれた店長は、 その肉をくるくるんとして、例のつけタレに浸してくれます。tendan11.jpgだはははははー。 こいつぁー、旨いや、文句なし(笑)。 しゃぶしゃぶ肉をただ焼いたんじゃ、こんな風に美味しいシグナルが脳裏を駆け巡ることはきっとない。 ズルい、とだけ申し上げておきましょう。


そろそろお出ししましょうか、ということでやってきたのが、茶碗蒸しに始まる四品の器。 「天壇」の厨房の面々が、ひかり味噌謹製の「有機味噌」と旬を迎えようとしている筍とを駆使したレシピを考案してくれたのです。

ひかり味噌」というのは、 長野の諏訪に本社工場を構える味噌メーカーで業界三位だそう。 自然のおいしさを堪能できる有機JAS認定の味噌で、スーパーマーケットの陳列棚でも ㊒マークを白抜きした青や赤のパッケージなどの「ひかり味噌」ブランドが見つかるそうだ。 ご存知でした?

木の芽を彩りに頂いた、筍のスライスが浮かぶ茶碗蒸し。tendan12.jpg匙からつるんと口元から吸い込むと、ふわっと味噌の風味のする。 お出汁と玉子の掛け算を愉しむ茶碗蒸しを味噌の風味が包む感じ。 少しだけ味噌を控えめにしたらば、 三位のバランスが揃って、より小粋だったかもしれません。

カリッと唐揚げにした筍にも、ふむふむ、味噌の風味がよく似合う。tendan13.jpgカレー粉や胡椒などのスパイスや大蒜・生姜といった香味野菜を利かすのとはまた違う。 ほんのりと品よく、でもしっかりと風味を挿すような真似もできるのも調味料としての味噌の使い勝手のよさなのかもね。

味噌と揚げ物の相性についてそんなことを考えながら、もうひとつの揚げ物を覗き込みます。 筍とバラ肉の重なりが魅惑的な歯触りを予感させる。tendan14.jpg何もつけずにそのまま、せーのと齧る。 うほほほほー。 予想に違わぬ筍のシャクっとした歯触りにサクっとした衣。 そこへ豚の脂の甘みとどんぴしゃの加減で味噌の風味が一体となる。 うんうん、うん。 例えば、トンカツ屋や洋食屋で残念な光景に出くわすことがある。 揚げ物が塩辛かろうが、サックサクの衣であろうが、兎に角取り合えずとんかつソースやウスターをどっぷりと廻しかけて、ソース味一色にしちゃってる御仁のテーブル。 本人の嗜好だから他人がとやかく云うことでもないのかもしれないけれど、そんなひとにこそおススメしたいのがこの、「たけのこのミルフィーユ味噌カツ」だ。 レシピをいただいたので、週末あたりにLe’s cook、いかがでしょ。 ご想像通り、ビールのお供にもよろしからずや。 あ、ひかり味噌では、「一品入魂!」と呼ぶサイトで味噌を楽しむレシピを紹介しているそうですよ。

別に名古屋の味噌カツを否定している訳じゃないのヨと呟きながら(笑)、 筍ご飯を口に含んだら思わずニヤリ。tendan15.jpg決して過ぎない、塩梅のいい味噌風味が味蕾をふわっと撫でてゆく。 味噌仕立ての筍ごはんというのもあり、だね。

以上の「ひかり味噌」を使った「天壇」考案の四品は、いまのところメニューにないのでひょっこり「天壇」を訪ねても、食べられない。 うーむ、それは残念だ(笑)。
tendan16.jpgそうそう、「天壇」のグランドメニューには、 「チゲ味噌汁」という”味噌”メニューがある。 石焼きグツグツ熱々のピリ辛スープの味噌汁は、魚介あれこれに豆腐や肉に野菜たちと具沢山だゾ。

京都・祇園発の焼肉の名門、「天壇」銀座店。tendan17.jpgtendan18.jpg三原橋の上空から眺める銀座の風景を借景に、 焼き肉、そして本格韓国料理が堪能できる。 そして今日、仕立てよく和食もこなすと知りました(笑)。 帰り際に「アメちゃんです」と薄荷の飴を渡してくれる瞬間に、京都のお店であることを想うのです。


「天壇」銀座店 中央区銀座5-13-19 DUPLEX GINZA TOWER 5/13 10F [Map] http://www.tendan.co.jp/
column/03107

「GRAND CENTRAL OYSTER BAR」で 昼下がりのオイスターバー

grandcentral.jpg思えば週末の丸の内に赴くことって、ほとんどない。 だって、丸の内でお買い物ってな発想にはなかなかなれないンだもの。 そんなことを考えながら地下通路から丸ビルを通り抜け、地上に上がる。 低気圧の悪戯かビル風か、冷たく強い風が吹き付ける仲通り。 コートの襟を立てて向かったのは、つい先月にもお邪魔した明治生命館の地階。 会議に出席するために「グランド・セントラル・オイスター・バー」を訪れるなんて、ちょっと妙な気分です。
時間はランチタイムが落ち着く頃。 会議の方ですか?とお店のスタッフに声をかけられて、案内された別室には、 「東日本カキ産地救援復興対策会議」の第一回会合の面々が既に集結していました。 協会の代表理事女史を議長に協会創設者・ジャージ佐藤氏の進行で、今考えうる被災地救援策とこれから継続すべき方策・方針などなどについて意見を交わす。 情勢の変化と段階によって取り組み内容は、きっと変化変遷していく。 壊滅的な状況からの”牡蠣復興”を思えば、息の長い継続的な取り組みが自ずと必要になってくる。 日々変化していくであろう、日本オイスター協会の「東日本カキ産地救援復興対策会議」の取り組み内容は、コチラをご覧ください。 カキ産地に光を!募金復興牡蠣オーナー制度でカキ産地支援も始まっています。


ひと通りの会議ののち移行したのは、 「グランド・セントラル・オイスター・バー」ご協力による、 謂わば、”昼下がりのチャリティ・オイスターバー in 丸の内”。 生牡蠣ひとつ500円、ワインも一杯500円がそのままチャリティに。 何個にします?と訊かれ一瞬戸惑うも、お皿への収まりをイメージすると、三っつくらいかなと指を出します。 例によってギンガムチェックの映えるクロスの上に届けられたのは、 先日もマイスター特典でいただいた長崎「九十九島(くじゅうくしま)」に広島「大黒神島(おおぐろかみしま)」、そして「アイリッシュプレミアム」。grandcentral01.jpg grandcentral02.jpggrandcentral03.jpgすっとした殻に載った「アイリッシュプレミアム」には、 やっぱりアイリッシュウイスキーが合うのかしらん、などと思ったり。 それとは逆に、日本の牡蠣をサントリー「山崎」あたりとセットでアイルランドやスコットランドに届けたらどうだろう、なんて思ったり。 フランス人は、白く太った牡蠣を嫌い、硝子のように透き通った牡蠣が好むようだと、 当代の牡蠣の父、畠山さんは著述している。 そうすると、例えばこれら「九十九島」や「大黒神島」は、フランス人は、ヨーロッパの人々はどう評価するのだろう。 フランスの牡蠣に宮城種の牡蠣のDNAが息づいているであろうことを思うと、日本の牡蠣が欧州ウケしないはずはないと思うのだけど、どうだろね。

白ワインのグラスをお代わりして、やっぱり牡蠣のお皿もお代わりしたいと所望する。 今度は、並べてしまうと大振りに見える兵庫「赤穂(あこう)」にカナダの「クッシ オイスター」、そして「クマモト」?とも思わせる丸く小さなワシントン州産「オイスターベイ」。 添えてくれる三つのソースのうちではやっぱり、刻んだホースラディッシュ、がお気に入り。 grandcentral05.jpg grandcentral04.jpggrandcentral06.jpg そうだ、「クマモト」には有明海から米国西海岸に渡った日本の牡蠣のDNAが受け継がれているンだっけ。 日本の牡蠣がかつてフランスの牡蠣の危機を救い、かつてアメリカに渡った種苗が評価され養殖されていることを僕ら日本人がよく知らないってのも妙な話だよね。

Grand Oyster Meisterのいる店、 「GRAND CENTRAL OYSTER BAR & RESTAURANT」丸の内。grandcentral07.jpgきっと牡蠣復興に手を替え品を替え関与し続けてくれるであろう牡蠣の店のひとつです。 口 関連記事:   「GRAND CENTRAL OYSTER BAR」で 九十九島二つの牡蠣フライ(11年02月)


「GRAND CENTRAL OYSTER BAR & RESTAURANT」丸の内店 千代田区 丸の内2-1-1丸の内MY PLAZA 明治生命館 B1F[Map] 03-6212-6650  http://www.oysterbartokyo.com/
column/03106

津軽の味「みぢゃげど」で 煮なます黒豆じゃっぱ汁石場家の味

mijyagedo.jpgtakapuと行こう青森料理の店! 大井町の「なか村」に引き続き、その第二弾としてやってきたのは、所謂谷根千エリアのど真ん中。 うねうねと続く、俗にいう”へびみち”のとば口にあるのが、在京の津軽料理の店として夙に知られた「みぢゃげど」だ。 既に電話でのやりとりでも和ませてくれた女将さん。 お逢いできるのが愉しみです。
谷中の一隅にすっとある藍の暖簾。mijyagedo01.jpg気をつけてみていなければ通り過ぎてしまいそうな、そんな飾らない佇まいの「みじゃげど」。 鄙びた風情が早くも郷愁を誘います。

左手の階段から上がる二階にも座敷があるようだけど、今はもう暖簾を払ってすぐの座敷が「みぢゃげど」の客間。 実質的に一日ふた組、ということになりそうです。

福福しい笑顔で迎えてくれた女将さんと朴訥とした雰囲気が愛らしい旦那さん。 今夜はよろしくお願いします。 mijyagedo02.jpgすると、丁寧に認めた「御献立」が手渡されます。 「御献立」には、日付や予約者の名前が入り、落款まで署してある。 なんだかこれだけで、有難い気分になってきます(笑)。

名家の品ある女将さんは、津軽で十九代続く旧家、御用商人「石場家」のご長女。 弘前城の亀ノ甲門近くにある屋敷は、重要文化財に指定され、観光スポットのひとつになっている。 「しまや」を訪ねる前、takapuの車で雪の弘前城の回りを廻った時に車窓から眺めたのが石場家だったと思い出します。 幼い頃から、津軽伝統の節句料理の手ほどきを受けたという女将さんは、包丁さばき、味付けなどなど、津軽の伝統をそのままに、津軽の風土文化を多くのひとびとに伝えたいと今も奮闘中なのであります。 なにかふと、琉球の宮廷料理をいまに伝えようと頑張ってくれている「山本彩香」の彩香おかぁさんとダブってくるね。

mijyagedo03.jpg口取りの角皿を受け取って、ちょっとだけ麦酒をいただきます。 紅白蒲鉾、伊達巻、みかん、新巻鮭、昆布巻、菜の花。 お正月にお祖母ちゃんちへよばれたような錯覚が一瞬過ぎります。

皆で囲んでいるのは、長方形に設えた囲炉裏端。 その囲炉裏を借景に映えるのが、「煮なます」のグラスです。mijyagedo04.jpg一般に「なます」といえば、大根や人参の千切りを塩もみした酸っぱいヤツって感じですが、女将さんが仕立てくれたのは、「煮なます」。 新巻鮭のアラを出汁にひくのも要諦で、シャクっとした歯触りとともに丸く、優しいお味です。

胡麻を振られた「黒豆」の小鉢。mijyagedo05.jpg一見何気ない黒豆なのだけど、これが感嘆するほどの美味しさ。 今までお惣菜でいただいていた黒豆はなんだったのだろうとも思っちゃう、鮮やかで小粋な味わいだ。

そして、青みを帯びた表情を晒しているのが、「黒生子」。mijyagedo06.jpgコリコリシコとした歯応えと磯の風味が醍醐味。 なんていままで特段意識したことがなかったけど、 海鼠には、赤か、青か、黒かなど色々あるのだね。

こうなるともう、麦酒呑んでる場合じゃないねと(笑)、女将さんに日本酒を所望する。 やっぱり「豊盃」だよねと呟きつつ、takapuが目聡く「くらぶあるですか!」と声を発した。 takapuが云う”くらぶ”とは、限定醸造「豊盃 倶楽部」のこと。mijyagedo07.jpg「豊盃米」を50%まで精米して仕込んで、その1つのタンクから春夏秋冬の年4回に分けて絞るというものらしい。 碧く澄んだグラスでいただいたのは、その「豊盃 倶楽部」の春の生酒。 すっきりした豊穣さが心地いい。

そこへまた、お酒にぴったりの酒肴が届く。 「真だらの子のしょう油づけ」。mijyagedo08.jpg滑らかなぷつぷつと沁みる滋味に、嗚呼なんてお酒を呼ぶのだろうと膝を打つ(笑)。 一般的に思う”タラコ”はつまり、スケトウダラの子、助そ子のことだけど、こちとら真鱈の子。 どーんとボリュームのある腹子を抱えた真鱈が冬の青森で、北の海で揚がるンだ。 青森で云う”子”のつく魚卵・珍味、七子八珍のひとつでもあるンだね。

mijyagedo09.jpg羨ましいことに、つい先週青森を回ってきたというのむちゃんのお土産が、 やっぱり「豊盃」。 「倶楽部」に続いてお願いした、同じ特別純米「豊盃」の一升瓶と並べてみたりしちゃいます(笑)。

新雪をいただいたようにも見映えるのは、「鮭の押しずし」。mijyagedo10.jpg所謂、飯寿司で、女将さんは、一ヶ月漬けるのよと丁寧に解説してくれる。 「豊盃」の蔵元、三浦酒造から大吟醸の麹を分けてもらって仕込みに使っているそう。 「豊盃」と相性ぴったりな筈だよね。

澄んだ白が清らかな「青森やりいかの刺身」。mijyagedo11.jpgりんご酢でも知られた津軽のカネショウの醤油をちょんづけしていただきます。 ひと噛みすれば炸裂する、烏賊の甘み。 あははは、思わず笑ってしまいます(笑)。

そして、囲む囲炉裏が間違いなく似合う料理が運ばれてきました。 ご存知、「真鱈のじゃっぱ汁」!mijyagedo12.jpg“じゃっぱ”というのは、津軽で云う魚のアラのこと。 鱈の頭や骨、胃袋やあぶらと呼ぶ肝臓なんかを煮込んだ鉄鍋だ。 けー、とひと声、女将さん。 “け”というのは、津軽弁で”食べなさい”。 はい、早速いただきます。 勿論のこと、白子もたっぷり。 大きな鍋の中身がどんどん減ってゆく(笑)。 当地の山本製麺から取り寄せるみじゃげど専用の蒸しそばもあるからね、と女将さん。 mijyagedo14.jpgmijyagedo15.jpg なにより、アラのあっちこっちから滲み出た出汁がしみじみとはふほふと旨い。 あー、身体も気持ちも温まるとは、このことを云うのだね。 そうそう、こうして真鱈を一匹まるまる使うからこそ、「みじゃげど」へはそこそこの人数で参じなければいけなのであります。

mijyagedo16.jpg 皆で水を所望すると、彫刻のある渋くて粋な薬缶を傾けてくれる旦那さん。 随分呑んじゃったこともあってか、なんだかお水も旨い(笑)。

デザートのりんご、サン富士。mijyagedo17.jpg自然な優しく豊かな蜜な甘さが沁み入ります。

津軽郷土料理「みぢゃげど」、ここに在り。mijyagedo18.jpg「みじゃげど」は、商号登記のみならず、商標登録も済ませているそう。 お店の名前の由来について、Webサイトに示されているので引用します。 “みじゃげど”は、今は干拓されてございませんが、その昔は弘前市民に馴染み深い沼の名でございました。 つがることばで「みぢゃ」は水屋(台所)、「げど」は街道でございますから、如何に住む人々にとって馴染み深く、役に立っていたものかが分かります。 この名をいただく谷中「みぢゃげど」は、皆さまの心と体のお台所として、お役に立ちたいものと存じております。 津軽郷土を味わいに、女将さんと旦那さんに逢いに一度、行かれませんか。 口 関連記事:   青森料理・割烹「なか村」で 田酒呑る素焼みずしゃこほや亀の手(10年08月)   郷土料理「しまや」でゴロ味噌和え津軽そば若生にぎりと女将さん(10年01月)   琉球料理「山本彩香」で 豆腐よう豚飯どぅるわかしー魅力に再び(10年07月)


「みぢゃげど」 台東区谷中2-5-10[Map] 03-3823-6227 http://www.k2.dion.ne.jp/~yumeko/mijagedo/
column/03105