蕎麦「永盛」で 町場蕎麦いつものお店の刻み海苔添え牡蠣そば

nagamori.jpg八丁堀の裏通りにひっそりとある、町の蕎麦屋。 八丁堀で蕎麦屋といえば、手打ちな「如月」「和月」や茶そばな「あさだ」に最近できた「茂助」とかもある。 立ち食いともなれば、グヤ兄さんオススメの「ゆで太郎」や定番「小諸そば」も控えてる。 そんな中にあって、気張らず、構えず、どこか訥々とした風情で佇んでいるのが「永盛」だ。
いつもは、力のおそばとか「ざる」とか、の何気ないメニューが多いのだけど、 この日硝子越しに見つけた貼り紙にはこうあった。 nagamori01.jpg「牡蠣そば800円」。 はじめました!とか、季節の!とか書かないのが、またよろしい(笑)。
覗く厨房では湯気が立っている。 同じような湯気を湛えてやってきた「牡蠣そば」。nagamori02.jpg三つ葉に白髪葱を散らし、柚子をちょん。 刻んだ海苔と一緒に牡蠣を頬張れば、いつもの濃いめのツユに浸った牡蠣の身のぷっくりと。nagamori03.jpg意外とツユがよく沁みていて、 海苔の磯っぽさと牡蠣との相性のよさに今更ながら驚いたりして。 そばそのものはいつもの蕎麦だけど、ツユには牡蠣の出汁も滲んでいい感じだ。 nagamori04.jpgnagamori05.jpg お稲荷さんをひとつだけ、いただきましょう。 下町っくに濃い味のお揚げがらしくて、いい。

八丁堀のいつもの町場蕎麦、「永盛(ながもり)」。nagamori06.jpgなかなか蕎麦屋の暖簾らしい店名だと思っていたので、壁に掛かった額の調理師免許証を意外な面持ちで見上げました。 「永盛」というのはご主人のお名前だったのですね。 口 関連記事:   蕎麦「如月」 で五色納豆ごはんと薄緑のせいろ(07年10月)


「永盛」 中央区八丁堀3-14-2 東八重洲シティービル1F[Map] 03-3551-8072
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Risoppa!「Gotsubo UNETTO」で 五坪でいただくイケるリゾッパ!

gotsubo.jpgすずらん通りは、 ちょうどラーメン「昭和」の向かい辺り。 トリッパづかいのイタリアン「UNETTO」が2号店をオープンしていました。 そうは云ってもその場所は、以前弁当屋さんがあった狭いスペース。 開店当初はテイクアウトだけのご様子。 ランチ時のイートインを始めたと知って飛び込んだのは、1月下旬のことでした。
寒いね~と両手を擦り合わせながら、1歩、2歩、3歩半。 それで、奥の小さなテーブルに辿り着きました。 なるほど、五坪のウネットだ。 五坪ウネットのランチは、 “トリッペリアのヘルシーランチ”と謳う、「Risoppa(リゾッパ)!」のみ。 早速お願いすると、保温ジャーからライスをよそり、スープジャーからスープを掬う所作。 リゾ(ライス)とトリッパ(モツ)入りの野菜スープの組み合わせだから、”リゾッパ!”ということらしい。

ライスは、ヘルシーそうな五穀米。 トリッパの店本領発揮のスープのベースは、 新鮮な豚ハラミをたっぷりの野菜と豆で煮込んだもの。gotsubo01.jpgうんうん、しっかりと旨みが煮出されていて、なかなかイケる。 五穀米、スープ、五穀米、スープ(笑)。gotsubo02.jpggotsubo03.jpgそして、脇に添えた野菜は、「UNETTO」のシェフが鎌倉から取り寄せる鎌倉野菜。 マヨネーズソースたっぷりが嬉しいカリフラワーを齧りながら、この大きな蕪のような野菜はなんだろうと訊くと、紅芯大根という。 へーと云いながら、恥ずかしいほどあっという間にぺろっと食べ終えちゃった(笑)。

今日はさっとお手軽に、ちょっと軽めなランチにしたいなぁと思ったお昼どき。 再び五坪のお店を訪れました。 過日と同じでもいいのだけどと思っていると、その日は塩かトマトかのスープが選べるという。 それじゃぁとトマトをお願いすると、例によって、ジャーから手早くお皿に器に盛り付ける。gotsubo04.jpggotsubo05.jpggotsubo06.jpgあ、今日は五穀米でなくてターメリックライスだね。 そして、トマト仕立てのスープも素直に美味しいのだ、うんうん。 ちょい残念なのは、スープもライスも熱々ではないこと。 それは、このスペースでは調理すること適わず、電気的な保温に頼らざるを得ない事情によるものだけど、どうにかもう少し工夫できないかな。

茅場町のトリッペリア「UNETTO」が繰り出した、狭小出店「Gotsubo UNETTO」。gotsubo07.jpgこんな小さなお店だけど、ご近所「UNETTO」本丸から出前スタイルで届くワインのあて達で酔っぱらえるらしい。 別室を近くに作らせたのはきっと、本丸にお客さんが収まり切れない事態が頻発しているからのことなのだろうね。 口 関連記事:   Osteria「UNETTO」で 白のラグー赤のラグーふたつのパスタ(10年07月)   ラーメン「昭和」で 真好味の素材で昭和のどんぶりあの店はもう(11年02月)


「Gotsubo UNETTO」 中央区日本橋茅場町3-3-5[Map] 03-6206-2129(本店と共通)  http://unetto.com/
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とんかつ「やまいち」で 魅力たっぷりな大振りかきフライ四つ並び

yamaichi.jpg須田町のとんかつ「万平」で、 牡蠣料理をいただいた帰り道。 神田駅へと向かう道すがら。 そういえば、「やまいち」はこの辺りだったよなぁと思いついたところがその目の前でした。 当時、とんかつ「勝慢」からのご近所独立で話題となった「やまいち」。 いまはもう、わざわざ「勝慢」との関係性を考えることもないでしょう。
「かきフライ」を横目に「特ロース」をいただいたことを思い出す。 そうだ、「やまいち」のカキフライもいただかねばなりません。 ということで改め出掛けた神田・淡路町駅。 「やまいち」の所在は、靖国通りを跨いでいても、「万平」や「いせ源」なぞと同じ須田町になるのだね。 深緋の暖簾を払って、ビールをやっつけているテーブル席を眺めながら、 カウンターの隅へと進みます。 yamaichi01.jpg「特ヒレ」「特ロース」と並ぶお品書きから選ぶは、最後尾の「かきフライ」。 お皿の到着まで、やや眉間に皺を寄せた面持ちで手元の所作を続ける大将の動きを目で追って過ごします。 大将から直接手渡されたお皿には、どどんと大振りな牡蠣フライが四つ。yamaichi02.jpg全般に小振り傾向だった今季にあっては、殊更に大きさが印象的に映ります。 大きめパン粉の衣に檸檬を搾って、皿の脇に添えてくれているタルタルをちょんとのせて、 大口開けて(笑)喰らいつく。yamaichi03.jpg箸に載る重量感と歯応えの重量感が一致して、口中に牡蠣の甘さが広がります。 前後して、衣の軽快なサクサクがテンポを生んでくる。 「銀座 三州屋」の「カキフライ」の絶佳な魅力とは少々ベクトルが違うものの、この「かきフライ」もそれに伍して引けをとらない感じ。 たっぷり感がありつつ厭な臭み一切なく、ストレートにその魅力を弾けさせる。yamaichi04.jpg一見、岩牡蠣のフライでもあるかのようなサイズの牡蠣だけど、どこの牡蠣なのだろうね。 二丁づけかもなぁと齧った断面を覗くも、その気配はないし。 でも眉間の皺が気になって、どこの牡蠣なのか大将に訊ねることができませんでした(笑)。

「車エビフライ」や「貝柱コロッケ」に「海老しんじょう揚げ」。 ロースやヒレのとんかつの美味しさはもとより、魚介のフライも気になるとんかつ「やまいち」。yamaichi05.jpgこふいふお店の「ポテトサラダ」はきっと旨いに違いない。 今度は、「かつ煮」「純レバ」「生ハム」「肉よせ」「豆腐」といった夜のおつまみメニューで、 一杯やっつけるのも一興かもね。 口 関連記事:   とんかつ「やまいち」 で塩と檸檬柚子胡椒で特ロース(08年03月)   とんかつ「万平」で カキフライ定食カキバター焼き定食ああ堪らん(11年02月)


「やまいち」 千代田区神田須田町1-8-4 玉井ビル1F[Map] 03-3253-3335
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atelie bar「tin」で MARTINIの茜色とJägermeisterの渋い紅と

tin.jpgそれは、まだ正月気分の残る頃。 大繁盛の「魚仁」を堪能して、 後から訪れたひと達に席を譲る。 頭上の壁に貼られた横断幕に、 以前はこんなのなかったよねと見上げつつ話す。 歩道を歩きながら、もうちょっといきますか、 って時に真っ先に候補に浮かんだのが、 佃の「ティン」。 そう云えば、つきじろうさんの音頭による「ほていさん」宴会のあとの二軒目にお邪魔したのがちょうど一年前のことだ。

ドアを開けると、カウンターにおひとりの客があるだけのタイミング。 一年前と同じ一番奥のソファーに落ち着きます。 グリューワインをイメージしていると、 季節のおすすめドリンクの中に「ホットワイン」を見つけました。tin01.jpgそれは、柔らかに沁みるような赤ワインのコクとシナモンの風味。 ああ、いいね、温まるね。 与太話をしていると、カウンターに座っていたお客さんがトイレから戻ってきた。 ん?どこかで見覚えがあるような気がするものの、別人のような気もする。 違うかなぁカウンターの方を眺めていると、カウンターの女性と喋る声が聞こえた。 あ、やっぱり、ワシ・ブロだ! といことで、酔っ払ったので帰る~という友人を見送って、カウンターに合流します。 ちょっとふっくらしたような気もするけど(笑)、元気そうなワシ・ブロちん。 近況を話つつ、バックバーで目に留まった「余市」をトワイスアップで。tin02.jpg なにかリキュールをもらおうかなぁとキョロキョロして、「MARTINI」のボトルに目を留める。 「MARTINI Bitter」のボトルは、深く透明な茜色。tin03.jpgソーダに割ると、明るい緋色に変わります。 ビターオレンジの風味にゆるゆると和みます。 そう云えば、ザルツブルクの酒場で空き瓶のオブジェは眺めたけど、 中身を呑んでなかったなと「Jägermeister」をお願いします。 どうやって呑むのがいいのだろうと相談しつつ、結局トニック割りに。tin04.jpgちょっと渋い紅は、アニスの赤か、甘草の赤か。 少々香草系の風味を漂わせつつ、オレンジな予感のほの苦味とほの甘さのバランスが優しい呑み口だ。 鹿と十字架が描かれたグリーンのボトルは実に印象的な面構えだよね。 「Jägermeister(イェーガーマイスター)」というのは、猟師の守護聖人的な意味らしい。
そろそろ終電も気になる時間。 這ってでも帰れるワシ・ブロちんにまた逢おうねと告げてカウンターを離れます。

ゆったりとアットホームなひとときが過ごせる、アトリエ・バー「tin(てぃん)」佃。tin05.jpg月島1丁目に”tin 月島”、勝どき4丁目に”deep tin 勝どき”があるらしい。 如何にも工房とか芸術家の作業場とかの雰囲気でもないので、”アトリエ”には、そんなアットホームな店でありたい想いが表現されているのかもしれないな。 それとも、時に展示会場のようなサロンになるのかな。 そうすると、”tin”はどんな意味なのだろう。またお邪魔して訊いてみなくっちゃ。 口 関連記事:   居酒屋「魚仁」で 木箱の雲丹と湯呑の熱燗と自家製チャーシュー(11年01月)   Gassenverkauf「Steirische Weinstuben」で シャンピニオンフライ(11年02月)


「tin」佃 中央区佃3-2-10 オーケンビル1F[Map] 03-6220-0808 http://tin.hiciao.com/
column/03089

とんかつ「万平」で カキフライ定食カキバター焼き定食ああ堪らん

manpei.jpg戦災の炎火から逃れた神田須田町。 手打ちそばの「まつや」や「神田やぶそば」。 鳥すき焼きの「ぼたん」やあんこう鍋の「いせ源」。 ちょっと行けば、洋食の「松栄亭」。 下町風情を残してくれている飲食店があって、ずっと気に掛かる界隈だ。
そんな須田町の一角。 「まつや」のところを万世橋の方へ斜めに入り、ちょうどカレー「トプカ」辺りで左手の路地を覗くと、暗がりを照らす灯りがある。manpei01.jpgその灯りの主が、とんかつ「万平」です。 manpei02.jpg左手の壁のタイルにこんな貼り紙をみつけました。 「カキの季節になりました、岩手県広田湾米崎産」。 おお、この暖簾の向こうで、広田の牡蠣が待ってくれているようです。

店内は、4人が腰掛けられるベンチ椅子形式のテーブルが4卓。 テーブルも椅子も白木の造作で、それが柔らかな印象を与えてくれています。 まずはやっぱり(笑)、「カキフライ定食」。 厨房からの揚げ音が、じゃーぴちぴちっと聞こえてくる。 そしてその音は、ゆるやかに調子を上げていくます。 懐かしの洋食屋さん的にステンレスの楕円皿でそれは届く。 フライの数は、二の四の六個。manpei04.jpg檸檬をささっと搾り、ふふっとしてからやおら、齧りつきます。 ああ、いい。 衣細やかなタイプで、牡蠣エキスの封じ込めに適ってる。 manpei05.jpgmanpei06.jpg ほんのもう少し、迸るような旨みの弾けがあればと過度な求めをしてしまうけど、 それは過剰な期待というものでしょう。

そして、「万平」の牡蠣料理のもう一方の雄が、「カキバター焼き定食」。manpei07.jpgつやつやと飴色にも思う、そそる景色に仕立てられた牡蠣のつぶ。 むほっと齧りつけば、ミネラルが昇華したような牡蠣の旨みとバター醤油の風味が渾然一体となって、堪らん感じ。 ご飯は勿論、いろんなお酒にぴたっと合ってしまう、きっと。 manpei08.jpgmanpei09.jpg 例えば、「新富 煉瓦亭」がそうであるように、 「カキフライ」にするかはたまた「カキバター焼き」にするかは、 今後も悩むことになりそうです(笑)。

神田須田町の路地裏にひっそり佇む、とんかつ・洋食の店「万平(まんぺい)」。manpei11.jpgmanpei10.jpg「ハンバーグ定食」などなど他のメニューも気になるので、 温かくなったらまた足を運んでみなくっちゃ。 オバちゃんに、なんで「万平」という店の名前なのか訊ねたら、 「あ、あのね、お店の誰かの名前となじゃなくってね、昔誰かがそうつけてくれたの」という意外と素っ気なくも不思議なお応え。 もしかしたら、語るに語れない物語があるのかもしれません。 口 関連記事:   洋食元祖「新富 煉瓦亭」で 超揚げ立てカキフライあぁ至福の時(11年02月)


「万平」 千代田区神田須田町1-11[Map] 03-3251-4996
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