BAR「MONDE BAR」で 加水Balvenie花開き蝶来たる主水世界

mondebar.jpg処は銀座八丁目。 そうはいっても昭和通りも近い、 三井ガーデンホテルの裏手辺り。 日比谷寄りの中央通り~電通通り界隈と違って、ひと通り少なく、夜道を誘うネオンの煌めきもありません。 その一角の雑居ビル。 通路の脇に地下へと降りる階段があって、 その壁の上に暗がりを照らすサインがあります。 雨垂れが馴染んだそのサインが示すのは、 「MONDE BAR」の在り処です。
ビルの前でくにちゃんを待っていると、タクシーがその前にすっと停まる。 降りてきた御仁は、トレンチにソフト帽を決めた井出達。 濃いめのモスグリーンにみえる中折れ帽は、ボルサリーノか。mondebar01.jpgそのまま、ビルの階段を地下へと降りてゆく後ろ姿を目で追います。 その姿が消えた階段の踊り場の壁には、「MONDE BAR」のエンブレム。 昨日一昨日からの店ではない風格が色濃く滲んで、いい。 ネクタイを少し絞ってから、ゆっくりと扉を開きます。

店内でまず目を惹くのが、 フロア中央に鎮座するブラックジャック用のテーブルとそのフェルトの緑色。mondebar02.jpgそして、その上に置かれたかすみ草のふくらみだ。 カウンターに正対して腰を下ろした椅子は、 バーの椅子にしてはおよそ珍しい片肘置きのスツール。 そして、泰然とした笑顔で迎えてくれたのが、master長谷川さんです。 まずは、ちょっぴり変わったハイボールをと、 スペイサイドのシングルモルト「Glenfiddich(グレンフィディック)」12年でハイボール。mondebar03.jpgいつもの角ハイボールに対して、ぐっとコクのある仕立て。 でも後口に残る香りはフルーティで円いものだ。 mondebar04.jpg「MONDE BAR」では、お酒は勿論のこと、 酒肴や食事メニューの彩りが憎らしい(笑)。 バーにして、自家製の品が幾つかあって、その筆頭が「自家製ハム」。 マスタードソースをたらりとしていただけば、微かな薫香と一緒に黒豚の脂の甘さをすっきりと愉しめる逸品です。mondebar05.jpg「自家製ハム」は、沖縄の黒豚を使っているそうで、 四谷「北島亭」の自家製ハムをひとくち食べたのがその契機。 「北島亭」で二日の修行。 でもたった二日指導を受けただけでは、思うように出来上がる訳もなく、 それから一年ほど試行錯誤が続いたそう。 そして今ではもう、北島亭では作ってないらしい。 一部の店には卸していて、その隠れた人気からネットで商売したらどうかと云うひともいるけど、そもそもそんなに量は作れない、とはご尤もなお話だね。 mondebar07.jpg 続いていただくグラスは、 「Balvenie(バルヴェニー)」15年をトゥワイスアップで。mondebar06.jpgバルヴェニーの蒸溜所は、 「グレンフィディック」と同じ敷地内にあるという姉妹蒸溜所。 年次以上にも思わせる熟成感がどこかとろんとした香りで迫ります。 隣り合っている蒸溜所でも、テイストが違うのが面白い。 こんな洒落た味あるバーだもの、撮影に使われたことがないのかなぁと訊ねると、 女優・高橋惠子のスチールのロケ現場になったことがあるとマスター。 その場に立ち会ったマスターは、その艶やかさにどぎまぎして、 ホントに居ていいのかととっても戸惑ったそう(笑)。 らーめん店主も一目置きそうなのが、黒板メニュー「名古屋コーチン味付玉子」。mondebar08.jpg白身までもがとろんとしたコクがあって、 バーのカウンターにもよく似合う上等なる玉子料理だ。

終業時間を設けていない「MOMDE BAR」では、 最後の客の最高滞在時間記録は、翌昼の11:30ですよーと笑う長谷川さん。 日付が変わる頃から訪れる客筋や飲食店関係者たちは、夜中にがっつりを所望することが多いのか、「自家製ハム」以外にもお肉メニューが充実し切っているも特筆なところ。 「カツサンド」は、バーでは割と定番ながら、ここでは「白金豚のカツサンド」。mondebar09.jpg甘く軽い豚の脂と旨みをソースの風味が引き立てて、プランタン地下のビゴの店で焼いたパンの香ばしさと渾然となる、その美味しさといったら。 うんうん、やっぱり、ズルい。 そして、肉業界の専門家がそれがここにあることをまず疑うというのが、 「菊紋神戸牛ステーキ」。 黒毛和牛の品種「きく」は、ご推察の通り、宮内庁御用達モノのレアな逸品らしい。 子牛登記証明には、 指紋ならぬ鼻紋(牛の個体を証明するための鼻の地紋)まで押してある。 ああ、何故いただかなかったのでしょう(笑)。 もう一杯は、くにちゃんと一緒に「AUCHENTOSHAN(オーヘントッシャン)」を。mondebar10.jpg片や、ローランドを代表するモルト。 3回蒸留がローランド地方の伝統で、名門らしくその伝統をしっかと守った滴は、 なるほどどこか甘く昇華したような風情で誘う。 そういえばくにちゃんは、スコットランドの著名蒸溜所とならんで、 この「オーヘントッシャン」の当地蒸溜所にも訪れている。 それもまた、いいなぁズルイなぁ行きたいなぁ(笑)。 マスター長谷川さんも勿論、彼の地を訪れていて、 ほかのスタッフともお揃いのベストの柄はセントアンドリュース家のタータンだそう。 mondebar11.jpgそこへ、ふわんとカレーの匂いが漂ってきた。 添えたバゲットをハムの骨でとったという「スープカレー」をいただけば、 なんだかすっと一区切り。 まだまだ呑めそうな気になります(笑)。


ここで、おずおずと、よろしければと、 長谷川さんに一本の丸いボトルを差し出しました。 それは、ザルツブルクで仕込んできた「モーツァルト」のクリアなボトル。 大変失礼ながらも、長谷川さんだったら、「MONDE BAR」だったら、 この「Dry」をどんなカクテルに仕立ててくれるかお願いしてみたかったのです。 この、クリアな色をしてるのにチョコレートのフレーバー!っていうサプライズを活かしたいよね、と長谷川さん。 まさに、仰る通りです。 例えば、こふいふのはどうだろうと、グラスにコワントローを1ダッシュ、2ダッシュ。 そしてそのグラスをカウンターの上にそっと寝かせて、リンス。 そこへ「Dry」を注ぎ、オレンジでピール。 mondebar12.jpgmondebar13.jpg mondebar14.jpg 鼻先を寄せれば、オレンジなトップノート。 そのままグラスを傾ければ、なるほど、ビターなオレンジとカカオの好相性だ。 こんなのはどうでしょうと、近々「MONDE BAR」を巣立つという山根さんが冷えたミキシンググラスにGordon’s Ginを注ぎます。 そして、ベルモットの代わりに「Dry」を注いで、ステア。 mondebar15.jpgmondebar16.jpgmondebar17.jpg mondebar18.jpg そう、つまりは、これぞ「チョコレート・マティーニ」。 見映えからもジン×ベルモットと思わせておいて、ジン×カカオの味わいに驚かす感じ。 いいね、いいね。 食事もしっかりの「MONDE BAR」では、〆系のメニューも当然のようにラインナップ。 トマトソースのペンネやペペロンチーニもいいけど、特筆すべきは「さぬきうどん」。mondebar19.jpgこの呑ん兵衛心の判り具合は伊達じゃない。 思い付きとは違う、毎日毎夜を積み重ねてきたからこその器と思う。 きっと深夜のとろろ昆布に泣いたひともいるに違いありません(笑)。 奥の壁に掲げた額には、「主水」と画いた書がある。mondebar20.jpg“主水(もんど)”=”酒の主は水”。 華厳宗東大寺の長老、故清水公照(こうしょう)さんが続いて標したのは、「花開蝶来」。 「主水 花開蝶来」。 モンドが花のように咲いていれば、お客様が蝶のように来てくださる、の意だ。

銀座八丁目のオーセンティック・バー「MONDE BAR」のオープンは、 1985年9月26日のこと。mondebar21.jpg mondebar22.jpgmondebar23.jpgmondebar24.jpg 25周年を過ぎても銀座ではまだ真ん中くらいですよ、と微笑む「MONDE BAR」マスターの長谷川さんは、トレンチとソフト帽で決めていた御仁そのひとだ。 ン、のつく店がいい。 名前が長いのは、ダメ。 マ行の音は、柔らかい。 世界(モンド)のお酒がある店。 そんな発想から名づけられた「MONDE BAR」。 バーを加熱したらみなさんはどんなモンド、世界を作るか。 エンブレムがフラスコを描いているのは、そんなことも語っています。 アトレ品川の「MONDE BAR」にも近く行ってみよっと。 口 関連サイト:   SUNTORY BAR-NAVI くにの”この店に行きたい” モンドバー 銀座


「MONDE BAR」 中央区銀座8-11-12正金ビルB1[Map] 03-3574-7004
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Spirituosen「SPORER」で 色々SchnäpseにPunschを角打ち

sporer.jpgミュンヘン中央駅からDBで一路、 ザルツブルクへとやってきました。 ミュンヘンと同じく、薄っすらと雪が残ってきりっと冷えるものの、風がないのが印象的。 翌日は、綺麗に晴れて穏やかな日だったのだけど、 こうして晴れるのは珍しいことらしい。 そんな陽光の中、ザルツブルクの旧市街へ。 モーツァルト生家の黄色い建物があることでも有名な通り、ゲトライデガッセを歩きます。
sporer12.jpg 手の込んだディスプレイを魅せるショーウインドウが、 両サイドに連なる目抜き通り。sporer01.jpg通りのずっと向こうには、岩盤聳えるメンヒスべルクの丘がちらっと窺えます。 通りを散策するも、 ゲトライデガッセの、”馬の水飲み場”寄りにある、此処「SPORER」が目的地のひとつ。sporer02.jpgsporer03.jpg店頭のショーケースには、 見慣れない酒瓶が整然と並んでいます。

扉を押し開けると、バックバーにカウンター。 そこに何人ものひと達が立ち呑みカウンターよろしく、グラスを手に並んでいます。 まさに一見バーのようですが、「SPORER」は、1903年創業の酒店なのです。

バックバー、つまりは商品の陳列棚には、同じフォルムの酒瓶が、見るからに強そうな無色透明なものから、茶褐色、黒褐色、といったバラエティーで並んでる。sporer04.jpgそれらが「SPORER」のメインコンテンツ、Schnäpse(シュナップス)、ブランデーたちだ。 そこのあれ!とか、こんなやつ!とかをニコニコ笑顔のおっちゃんに伝えると、 素早くショットグラスに注いで、どぞーと出してくれる。 つまり、カウンターでみんな立ち呑みの図は、みんなであれこれ試飲の図、でもあるのです。 林檎と梨とのものがシュナップスの基本形か。 如何にも強そうな蒸留酒に色んなハーブの香り匂いが利いている。 例えば「ENZIAN」は、高山植物(りんどう科のゲンチアナという植物)の根っこのリキュールということらしい。 「Wacholder」は、ジュニパーベリー、つまりはジンの苦いヤツ。 「HOLLER Brand」は、ニワトコの実を使ったブランデー。 19種類のハーブから作ったという茶褐色の苦い食後酒は、 「SPORER」のハウスミックス「Hausmischung」。 「Kirsch Likör」は、熟したサクランボでつくるリキュールだ。sporer11.jpg思わず買って帰りたいと、これとこれとそれとあれをBitte!とお願いしてしまいます(笑)。 sporer14.jpg じゃぁ、みんな試飲しているだけ?と云えば、そうではなくて、 粋なバーとしてグラスの提供もしてくれる。 カウンター一列目が埋まり、背後の樽の前の二列目から声を掛けて、 樽のワインやラムを呑るのもよろし。 日本の酒屋で云うところの”角打ち”だ。 sporer10.jpg そして、あいよ!ってな感じでとお湯割りにしてくれるのが、 「SPORER」の顔、オリジナルの「Orangen Punsch(オレンジ・プンシュ)」。sporer15.jpgきりっと寒い冬に、湯気から如何にもオレンジなほの甘い香りがして、気分からも温い感じにしてくれるヤツなのだ。

ゲトライデガッセの銘酒屋&バー、といえば1903年創業の「SPORER」。sporer05.jpgsporer06.jpgsporer07.jpgsporer08.jpgもしもザルツブルクを訪れたなら、シュナップスは勿論のこと、樽のワインやラムにプンシュの待つ、ザルツブルクの”角打ち”へぜひどうぞ。 ひと懐っこい笑顔も待っています。


「SPORER」 Getreidegasse 39 Salzburg[Map] +43(0662)845431 http://www.sporer.at/
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うどん房「むさしのエン座」で 久々再会霙糧うどんセンスある手練

enza.jpg富士街道沿いにあった「エン座」にお邪魔してからもう、三年が過ぎてしまいました。 再び訪れて、温かい田舎うどんなんかも所望したいなぁなどと思いながら、駅から遠いこともあって、なかなか果たせずにおりました。 そうこうしているうちに、 石神井公園の脇に移転したと聞く。 未だ駅からは微妙な距離なれど、 足を延ばして寄ってみましょう。
移転して、「むさしのエン座」となったお店は、「ふるさと文化館」なる施設の中にあるという。 石神井公園の池をふたつに分けるように新青梅街道へと抜ける通り沿い。 三宝寺池前信号の先に「ふるさと文化館」はありました。 今は、暖簾を分けた「エン座 長谷川」となっている以前の店の雰囲気から一転、 長く延びた庇が印象的なややモダンの建物の中。 「ふるさと文化館」は、区のWebページによると、練馬区で育まれてきた伝統文化の継承・発展および新たな地域文化の創造、観光振興を図る拠点として整備されたもの、だという。 明るい入口を入ると、ジオラマなんかが展示されたフロア。enza01.jpgそこに面して二種類の暖簾を掲げているのが、「むさしの エン座」だ。 ゆったりとテーブルを配した店内は満席で、人数を告げて待つことに。 ややあって、本棚(糧文庫)の前のテーブルへと案内されました。enza02.jpgふと、店の奥よりの扉の先をみると、建物の裏手にもテーブルがあって、真冬というのにそこでうどんを啜っているひともある。 暖かくなった頃には気持ちいいかもね。 「おうどん」をお願いして、合わせて”武蔵野本流”と謳う「お団子」を。enza03.jpgしっかりと焦げ目を魅せる4粒の焼きだんごは、如何にも丁寧に丸められた歪みのない球形。 香ばしくいただくだんごの肌理も、如何にも細やかだ。 焼きだんごは、所沢の隠れた名物なのだけど、 ここまで精緻な仕立てのものではありません。 enza04.jpg そこへ、おまちどうさまでしたーとご主人が、 「霙糧うどん」のお膳を届けてくれました。 いつぞやにも目を瞠らせてくれた、藤色と草色とを捩じったうどんがアクセント。enza05.jpg芸術的にも映るうどんの捩じれとうねるような量感。 じっくり炊いた印象の野菜根菜に刻んだ豚肉の浮かぶつゆに、 その量感を箸の先に感じながら浸して、啜ります。enza06.jpg enza07.jpgenza08.jpg うんうん、歯応えのコシというよりも噛む中にコクがあるという感じが素晴らしい。 全粒粉の茶色いつぶつぶが、より風味を運んでくれているようだ。 ふと厨房の中を覗くと、「地場産農林61号」と標した幟が横向きに掲げてある。 いま啜っているうどんも農林61号の粉によるものなのだろね。 茹で置き御法度、注文を受けてから釜入れする、つまりは茹で立てを信条とすることが、 ただただ旨いうどんのための心意気。 enza09.jpg 追っ掛けやってきた天ぷらは、「地野菜かき揚げ」。 “とうきょう特産食材使用店”を謳う「エン座」ならではの、 何気に滋味あるかき揚げです。 本日のうどん、81.8点。 暖簾の脇に吊るした日捲りカレンダーには、その日のうどんの自己採点を表明しています。 点数のあとに小さく書いた、”(笑)”が店主の心持ちを示しているような。

練馬の地にしっかり根を張った、本手打ち糧うどんの店「むさしの エン座」。enza10.jpg所謂武蔵野うどんとは違うキャラクターのうどんに思うも、 それはまさしくセンスある手練のなせる技。 お皿のあれこれ、店内のあちこちに店主の気持ちが顕れていて頼もしい。 店名「エン座」の由来は、車座の様に円く座る「円」、ひととひととのつながりの「縁」、 とふたつの「エン」。 enza11.jpgそこには、武蔵野台地の一角、練馬の土地との縁も含んでいそうです。 「生うどん」を買って帰りましょう。
口 関連記事:  武蔵野本手打うどん房「エン座」で むほほーの季節の霙糧もり(07年10月)


「むさしのエン座」 練馬区石神井町5-12-16石神井公園ふるさと文化館内[Map] 03-3995-1577 http://www.udon-enza.com/
column/03076

魚の旨い店「和楽」で 昼尚入れ込み居酒屋のかきフライ定食

waraku.jpgそれぞれは、なんの会合からの流れだったかぁ。 夜の部には二度ほどお邪魔したことのある、 新橋の居酒屋「和楽」。 〆鯖なんかの酒肴の佳さを憶えつつ、 がやがやとした中で聞こえるように話そうと次第に大声になり、それがまた周囲の大声を呼ぶという状況の印象もまた強く残ってる。 そんな「和楽」へ、お昼のカキフライをいただきにやってきました。
waraku01.jpg扉を引こうとすると、すかさず扉を開けて招き入れてくれる姐さん。 促がされるまま一番奥のテーブルの隅に腰掛けます。 棚に吊るしたお品書きには、昼の定食があれこれ。 やっぱり「かきフライ定食」をお願いしてからほぼ満席の店内を見回すと、サラリーマンオヤジをメインとするオトコ率95%。 その中には、熱燗やビールをやっつけてるオトーサンも混じるので、なんだかもう宵の口の居酒屋にいるような錯覚が過ぎります。 姐さんたちが奥へ手前へ右へ左へと行き交い、声を張り上げて厨房に注文を通し、済んだお皿をひっ込めに客の背中と背中の間をすり抜けては、次の客を大声で呼び込んで。 おまけに、テーブルの幅が狭いのでお向かいのオヤジさんとの距離が微妙に近い(笑)。 入れ込みとはこういうもんだと思いながら、それでももうちょっと落ちついて食事したいかもなぁとそう思う。 と、そこへ揚げ立ての「かきフライ」のお皿がやってきました。waraku02.jpg飾り気不要の盛り付けで、ぷっくりフォルムの牡蠣フライ5つ。 檸檬をさっと搾り、やおら噛り付くと、はふほふ、危うく火傷しそうになる。 あくまでカリッとした衣の中から、滋味ある牡蠣の身が解け出る。waraku04.jpgwaraku03.jpgちょっと油の温度が高すぎたきらいもあるものの、うん、悪くない。
そうそう、店頭に貼紙してあるのは、「かきランチ」。 こちらは、牡蠣フライ3個に刺身の皿がつく定食だ。waraku06.jpgwaraku07.jpgお刺身は日替わりのようだけど、鮪のことも多いみたい。 脂ののったマグロ刺しの厚切りも勿論魅力的。 でも牡蠣フライ5つの方が、ボクはいいなぁ(笑)。

新橋のオジサマたち御用達の魚の旨い店「和楽」。waraku08.jpg今度はやっぱり一杯呑りに伺いたい。 出来れば御隠居様よろしく、きっとまだ落ち着いた様子であろう開店時間にね。


「和楽」 港区新橋2-9-14 三浦ビル1F[Map] 03-3595-2187
column/03075

KOREAN CUISINE「五湯道」で 石焼きピビンパ熱辛チゲラーメン

otandon.jpg何度も何度もその前を通りながら、 一度も訪ねたことのないお店って意外と多いよね。 新大橋通り沿いに板張りのファサードをみせている韓国料理のお店もそのひとつ。 店頭の写真メニューたちが、どうもちょっとあざとく映ったせいなのかもしれません。 それでもこう、昼なお冷える日が続くとなると、 “石焼き”なんて言葉の響きの誘惑にふらふらと扉を開いてしまいます。
店内は、湯気の上がる厨房をフロアの真ん中に据えて、 その周りをカウンターがぐるっと囲むレイアウト。 奥にはテーブル席もあるようです。 窓側のカウンター席に案内されて、改めメニューを眺めます。 ぐつぐつチゲも勿論気になるものの、まずはここからと「石焼ピビンパ」。 やや油に汚れた硝子越しの厨房では、忙しなく鍋を揺すったり、 石焼きの器をコンロにかけたりしている。 大変だろうけど、硝子周りやそのすぐ内側は一番目に留まり易いので、 できれば日々磨いて欲しいなぁなんて思います。 otandon01.jpg 器は熱いのでお気をつけください。 そうちゃんと注意を受けていたのに、思わず掌の隅が触れて、あちち、となる。 いや、ほんとに熱々です。otandon02.jpg なので、タイミングを逃しちゃいけないと、早速スプーンを取り出して、具材とご飯を混ぜ合わせます。otandon03.jpgジュジジと鳴るのを確かめ確かめ、器の肌にやや押し付けるように、ね。 混ぜていると口の中にだんだん涎が溜まってくる(笑)。 ちょっと慌てて、いただきましょう。 コチュジャンかテンジャンか、おこげを交えたご飯は赤味を帯びているのだけれど、辛さよりも甘さが味わいの芯にあって、それを辛さが引き立てている感じ。otandon04.jpgそれが、嫌味なく旨い、という印象に真っ直ぐ結びつく。 うん、いいね。 これまたよくよく掻き混ぜ掻き混ぜいただく「石焼きユッケピビンパ」の他にも、「石焼き明太子ピビンパ」や「石焼きカルビピビンパ」なんてメニューもある。otandon05.jpg「ピビンパ」、「ビビンバ」、「ピビンバ」……。 店によりちょっとづつ違う表記に出くわしている気もするのだけど、どれが正しいのだろう。 原音に近く「混ぜ飯」をカタカナで書くと、「ピビムパプ」になる、らしい。

今日も冷えてるなぁという、別のお昼どき。 思い切り温まってしまおうと、気になっていたチゲのランチを。 「五湯道」冬のランチメニューに双璧として並んでいるのが、 「プデチゲ」と「熱辛チゲラーメン」。 訊けば、「プデチゲ」というのは、具材にソーセージやスパムを使い、麺がインスタントラーメンであるところが特徴だという。 「チゲラーメン」の方は、生麺で、辛さはやや抑え目だ。 スゲー辛くても困る(笑)ので、「熱辛チゲラーメン」をお願いしましょう。 otandon06.jpg 周囲のオーダーを何気に聞いていると、「熱辛チゲラーメン」の人気が高い。 コンロにどんどん載せられる石焼き器の多くがそれ用みたいだ。 湯気を立ててやってきた黒々石焼きの器では、スープが激しく沸き立っている。otandon07.jpgそれを構わず、箸の先を突っ込んで掻き回すと、解れる玉子の黄身白身と一緒に縮れた麺が顔を出す。 取り皿に受けて、スープを注いで、ふーふーして、湯気に顔を浸すように啜ります。 ああ、「ピビンパ」の時と同じ、甘さと辛さの主従バランスがここにもある。 辛いけれど、ささくれ立ったような厭な辛さでなく、円い辛さ。 そしてやっぱり旨さの真ん中にどこかとろんとしたよな甘さがある。 どうやら、自慢の特製薬味「ヤンニョム」、っていう合わせ調味料がキモらしい。 ちょっと感心したのは、ぐつぐつの灼熱中にあった生の麺。 otandon08.jpgotandon09.jpg 溶けたり弛んだり伸びたりすることなく、平気な顔して歯応えを主張する。 ぐつぐつの中でやっとちょうどいい具合の硬さになってるような気もするけど、どういう配合でどうやって仕立てりゃ、こんな麺つくれるのだろうね。 otandon10.jpgランチのサービスでつけてくれる小ライスを残りのスープに投入するのはもう、お約束。 その頃にはもう、あちこちから汗が滴って、大変なことになっている。 洟水が出てないのが辛うじての救いだ(笑)。 「チゲラーメン」は、ピビンパやクッパなんかとの「ハーフ&ハーフ」なんてこともできるみたいですよ。

美医食同源を謳う、韓国料理の「五湯道(おたんどん)」。otandon11.jpg韓国宮廷料理として食された「五湯十二蝶」のスープ、というのがその名の由来らしい。 丸の内のPCPビルや品川港南のNTTデータビル、広尾の駒沢通り沿いとかにも店舗がある模様。 八丁堀の焼肉「梨の家」とも同系列なのだね。 口関連記事:  KOREAN CUISINE「梨の家」で 藻塩ちょんのもち豚カルビランチ(07年08月)


「五湯道」八丁堀店 中央区新富1-17-4[Map] 03-3552-5219 http://www.a-team.co.jp/otandon/
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