洋食「Ginza Candle」で 牡蠣フライ新嘗祭と牡蠣の日と

candle.jpg霜月の23日祝日は、ご存知の通り、勤労感謝の日。 でもそれ以外にも色々な事柄についての記念日として特定されている。 お赤飯の日とか小ねぎの日、珍味の日であり、外食の日であったりもするらしい。 記念日にありがちな語呂合わせも勿論あるけれど、食べることに関連した記念日が割と多く並んでいるのは、古くは新嘗祭(にいなめさい)として収穫に感謝する日であったことが由来となっているからなんだね。 そして、全国漁業協同組合連合会(全漁連)が2003年に制定したというのが「牡蠣の日」。 そう、11月23日は日本全国牡蠣食べなくちゃ!の日なのだ。
ということで(笑)、やってきました自由が丘。 お久し振りの踏み切り脇「トレインチ」を抜けて、学園通りへ出る。 そのまま餃子の「泰興楼」のある通りの右手を行って、立ち止まる雑居ビル。 そのビル二階の一角にあるのが「Candle」だ。 入口廻りの静かな様子にすんなりテーブルに収まれそうだとドアを引く。 すると意外にも、満席なのですとオネエさん。 著名人のサイン色紙が多数貼られた壁に寄りかかって、暫く待つことにしました。 あとからやってきた客にどのくらい待つことになりそうか訊かれたオネエさんは、えーっと30分かそれ以上か、そんなにかからないか…、とよく判らないお応え。 じゃあいいや、と言い残して踵を返した背中を見送りつつ、え?そんなに待つの?と複雑な心持ちにさせられます。 まぁのんびり待とうと読書タイム。 ややあって、テーブルに案内されました。 テーブルについてちょっとびっくりしたのは、あれだけ待っていたのに廻りのテーブルにあまり料理のお皿が出ていないこと。 そこで思い出したのは、銀座「Candle」で体験した特異な状況と厭な想い。 時間に制約のあるランチ時だというのに、料理の出が兎に角遅い。 店全体にイライラが蔓延する異様な雰囲気で、急かし文句を云う声がそこここで噴出してた。 今厨房造ってます的冗談が冗談にならない事態だったのでした。 もしかしたらそんな体質がここ自由が丘の店にも引き継がれているのかしらん。 まぁ急いでいる訳でもないのでゆっくり待とうと本を開いたところに、お願いしていたハーフサイズのポタージュスープが届きました。candle01.jpg 隣のテーブルではソーダ水を随分待っていた様子なのがなんだか可笑しいぞ(笑)。 そして、お待ちかねの「牡蠣フライ」がやってきた。 やや平べったい、でも今年の出来の中ではやや大振りな牡蠣の身のフライが4片並んでいます。candle02.jpg檸檬を搾って早速、そのうちのひとつに齧り付く。 さくさくと軽妙な衣の歯触りの向こうに牡蠣の身のやや凝縮した風味が弾けます。 衣には不思議な甘さがあって、粉そのものにもなんらかの調味がしてあるような、そんな気がいたします。 たっぷり用意されたタルタルをのっけてふたたびガブリ。 candle03.jpgcandle04.jpgcandle05.jpgcandle06.jpg ああ、いいね。 「三州屋」のカキフライの旨さとはどこかジャンルの違う美味しさだ。 三陸産となっているけど、三陸はどこの牡蠣なんだろう。


自由が丘で古くから知られた洋食の店、「Ginza Candle」。candle07.jpg何組の界隈の若きカップルがデート場所に選んだことでしょう。 でも、その著名さに胡坐を掻いた姿勢がどこかにあるとしたらいずれ淘汰されちゃうかもなと思う「牡蠣の日」の昼下がりでありました。


「Ginza Candle」東京自由が丘 世田谷区奥沢6-33-14 もみの木ビル[Map] 03-3705-1191  http://www.ginza-candle.com/
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西八丁堀「八眞茂登」で あのオヤジさんのあのシュウマイと今

yamamoto.jpg新富の「青森の店」からの帰り道。 ロジスキーの性分は例によって、わざわざ細い路地へと足を運ばせます。 辿る足は、もつ鍋「一慶」のある筋へ。 その「一慶」のちょうど斜向かいあたりで、 装い新しきお店の前を通り過ぎたことに気がつきました。 看板を見上げるとそこには、 端正な筆致で「八眞茂登」の文字。 あれ、これには見覚えがあるぞと立ち止まって振り返ると、お店の入口に置いた丸椅子に座るオヤジさんと目が合いました。
あ、この方はもしや、あの店のあの方では! 気がついたらこう訊いていました。 「八眞茂登って、銀座にあった、あの八眞茂登ですか?」。yamamoto01.jpgするとその御仁はニヤっと微笑んで、「そうですよ、ご存知ですか」と。 「ヴェトナム麺」で話題だった「八眞茂登」が「東東居」と相前後して店を閉めてしまったことは、ヒロキエさんの記事で知って、残念に思っていたところ。 いま目の前にいるオヤジさんは、ヒロキエさんの四コマでもキャラの立っていた、あのオヤジさんに違いないではないか。 僥倖という言葉を脳裏に浮かべつつ訊くと、今月(11月)から居酒屋として営業を始めていて、近くランチもはじめるのですよ、仰る。 「しゅうまいもやるかも、ね」。

早速、ランチにお邪魔しました。 気持ちのよい花柄の暖簾を払って、引き戸を引く。 合板を駆使したシンプルなデザインの店内で、左手に壁に向かうカウンターが据え付けてあって、右手にテーブルが並んでいます。 yamamoto02.jpg新生「八眞茂登」のランチはふた品。 まずは「東東居」にも連想の飛ぶ、 「自家製しゅうまい定食」をいただきましょう。 女将さんが二階に向けて声を掛けると、オヤジさんのものらしき応答がある。 二階には10数名用の座敷があって、厨房も二階に設けているのだそう。 おちどうさまです、としゅうまいを届けてくれたオニイちゃんがどうやら二代目らしく、再びすたすたと階段を上がっていきます。 yamamoto03.jpg なるほど、以前「ヴェトナム麺」に添えてもらったものと同じ量感のシュウマイが5つ、ごろごろっと。yamamoto04.jpgyamamoto05.jpg醤油を注そうと小皿をひっくり返して思わず、ニヤリとしてしまったのは、小皿の底にあの渦巻きマークがあったから(笑)。 はふはふしながらシュウマイを齧ってふと、そうかあの「八眞茂登」も「東東居」ももうないのかと改めて思ったりする。 あの時、もっと熱々だったらと思ったシュウマイにこんな形で再会するとはね。

その翌日、もうひとつの定食をいただきに。 テーブル席から正面にみる合板の壁には、筆文字になる夜の居酒屋メニューが貼られています。yamamoto06.jpg実に気取りのない居酒屋メニューのそのバリエーションにまたニヤリ。 夜のラインナップにもある「大山鶏唐揚げ」をお昼の定食に仕立てた「大山どりからあげ定食」。yamamoto07.jpg揚げ立てを齧って滴る大山鶏の脂と旨みに、夜はこれで麦酒!と想いを描く(笑)。 もちっとご飯が上手に炊けてたらいいな。

「八眞茂登」を始めたのは、昭和23年のことでしたのよーと女将さん。 初めから銀座にあった訳ではないらしい。 そこで、やっぱり気になることを訊ねてみました。 「もう、ヴェトナム麺はやらないのですか?」。 そうよねーと、でも柔らかな表情で説明してくれたところでは、継ごうとする息子さんにとっては地下に籠った油や匂いや湿気やなんやで決していいとはいえない厨房の環境が子供心にトラウマで、同じ厨房に立つことは難しかったのだそう。 そうこうするうちに、家賃の負担が圧しかかってくるようになって、両店を閉めることにしたンですよー、と。 自宅を改装したものだという今の店舗二階の厨房はそんなこともあって、中華料理仕様にはなっていないのです。

居酒屋として新生なった西八丁堀「八眞茂登」は、こっそり佇む路地の中。yamamoto08.jpg居酒屋「八眞茂登」には「ヴェトナム麺」は、ありません。 ちょっと寂しいような、でも屈託なく話すオヤジさんや女将さんの表情と快活に動く二代目の姿をみているとそれでいいのだ、とも思うのでありました。 口関連記事:  中華そば「東東居」で迎えるお多福面ニンニクゴロっヴェトナム麺(07年02月)


「八眞茂登」 中央区八丁堀3-15-10[Map] 03-3551-4456 http://8t-yamamoto.com/
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居酒屋「かんかん」で 夜かんかんへの冒険カキフライとナポと

kankan.jpgひるどきのロメスパ「かんかん」とか、 がっつりカレー「かんかん」のことは、 ちょっとは知っている。 でも夜の「かんかん」のことはまったく知らない。 いつぞやランチの清算時に「かんかん」のその名の由来を訊ねた時には、暗に「夜にいらっしゃい」とでもいうようなオヤジさんの口調が印象に残る。 やはり、「かんかん」が何故に「かんかん」なのかが気に掛かる。 その答えを得るには、「夜かんかん」へ冒険が必要なのです。
夜の新川停留所前。 いよいよ「夜かんかん」の扉を開くときがきました。 ご一緒をお願いしたのは、帝王ナポちんとその兄にして父のGingerちん、そしてカントクことグヤさんという強力布陣。 こんな後ろ盾があれば、「かんかん」と「夜かんかん」の謎になんとか挑めるかもしれません。 勢いよく扉を引いて、店内に足を踏み入れると、意外なことにほぼ満席状態。 念のために席だけでもと予約を入れといてよかったーと安堵と驚きの一瞬です。 ナポちんの流儀に倣って、ここはやっぱしウーロンハイで乾杯だ。 如何にもちょっとしたお通しな感じの板わさをぺろんと平らげて、忘れないうちにと早速「カキフライ!」と声を掛けると、いやあのだから~という戸惑うような遣る瀬ないような不思議な表情で黙殺するオヤジさん。 むむむ、夜になってもオヤジさんのハードルは高いのか。 向かいのテーブルに届いたデカいメンチみたいなヤツはなんだろねと品書きを見上げていたら、同じものがこちらのテーブルにもやってきた。 おおお。kankan01.jpgケチャップをたっぷし添えてくれたポテコロがどーんと。 え?これもお通しというかセットみたいなもの? 結構食べであるけどなぁー、でも案外イケるかもなぁーと喋繰りながら、ウーロンハイ(笑)。 そろそろいいだろうと改めて「カキフライ!」と叫ぶと、いやいやそうでなくてとぷち苦笑いの表情で厨房の方へ引っ込んでしまうオヤジさん。 むむむ、「夜かんかん」は注文の通らない居酒屋か。 すると今度は、回りのテーブルにひとり用土鍋が並び出す。 もしかしてあれも来るの?と顔を見合わせていると、案の定それは湯気を燻らせてやってきた。 おおお。kankan02.jpg溢れんばかりにバラ肉が踊り、大きめ豆腐もゴロゴロとして、 これもある意味「かんかん」らしい量感で訴える。 ね?なんかこれ食べたら一丁あがりな感じになったりしなくない? そう云いつつ蓮華を動かすと、大鍋でごった煮した訳ではなく、土鍋ひとつづつを丁寧に炊いた風で、これがなかなかイケる口。 ハフハフしながら一気呵成に平らげると、なんだか不思議な温もりに包まれた心持ち。 ここで御馳走さましちゃっても全然いいのだけれど……。 もうほんとにそろそろいいよね、と「注文いいですか?」と恐る恐る訊ねると、 はい、いいですよ。 あー、よかったー(笑)。 kankan10.jpgランチのロメスパと格闘している時でもちらちら見上げてずっと気になっていたのが、壁に貼られて黄ばんだ「かんかん特選お酒のメニュー」。 その中に「カキフライ」もあるのです。 ややあって到着、「かんかん」の「カキフライ」。kankan03.jpgちょい揚げ色の濃いのは、油の温度というよりは油の鮮度に由来していそうだけれど、そんなことは噯にも出さずに齧りつく。 タルタルでなくて、直球マヨネーズというあたりも、つまりは「かんかん」らしい。 kankan04.jpgkankan05.jpg もしかしたら冷凍牡蠣かもねと思いつつ、齧った断面をじっとみる。 もうひとつ齧ってはふむふむ、もうひとつ齧ってはふむふむ。

そして、いい加減満腹なのだけど、それを注文まない訳にはいかないぞと「ナポリタン」。 するとどうゆうことかオヤジさん、「大盛りで?」と訊くではないか! 思わず、「じゃーそれで」と応じるナポ帝王。kankan07.jpg満腹のところへ大盛りがやってきちゃいました(笑)。 小食を自負するGingerちんは、ちょと口にして後はよろしくの体。 残り3名がナポ帝王を筆頭に敢然と大盛りクリアに挑みます。kankan08.jpgお昼どきの印象と比べて少々、炒めが足りないような気がするけど、間違うことなき「かんかん」の「ナポリタン」。 帝王も認める、シャツに飛ばない系のナポが密度と重量感で迫ります。 うー、満腹ーっ。

さてここで、満を持してのオヤジさんヒアリングタイム。 kankan11.jpgお会計は、妙にキリのいい12,000円也。 ざっくりひとり3千円だよと暗に告げているような。 そこでGingerちんが口を開く、「最初の三品のところはおいくらですか?」。 するとオヤジさん、こう応えてくれた「千円くらいかなぁ~」。 くらいかなぁ~、って~(笑)。 あ、領収書には「SNACKかんかん」となってるね。 そして、肝心の店名の由来を訊いてみる。 するとオヤジさん、遠くを見るような目になって語ってくれる。 かんかんのマスターは当時、二軒の雀荘を営んでいたそう。 さらに現「かんかん」を設けるにあたってどんな店名にするか辞書引き引き考えた。 まず思ったのは、最後に「ん」のつく名前がいい、ということ。 そして、その頃日本にやってきて大人気のパンダの「カンカン」は、漢字で書くと「康康」であり、それはマスターの名前「康三」に繋がる。 麻雀の「かん(桿)」と同じ音でもあるしね、と。 「カレースパ」啜りながら、やっぱりパンダかなぁでもちょっと可愛らしいよなぁと考えたのは、素直な発想だったのですね。

夜なお隠れた人気の新川のシンボル、居酒屋「かんかん」。kankan09.jpg 中国からパンダの「カンカン(康康)」と「ランラン(蘭蘭)」がやってきたのは、1972年のこと。 つまりはそれからもう、40年。 そうすると居酒屋「かんかん」ももうすぐ40周年を迎えようとしているところなのかも。 “雀荘のマスター”な感じ、のオヤジさん。 今度は、しょうが焼きもお願いします。 口関連記事:  洋風居酒屋「かんかん」で 太目の麺とほどよい辛さカレースパ(03年05月)  居酒屋「かんかん」で ナポリタン誘う膨満感とピーマンほの苦味(08年08月)  居酒屋「かんかん」で ドライカレーにカレーライスにカレースパ(10年05月)


「かんかん」 中央区新川2-7-11 仮谷ビル[Map] 03-1234-4567
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沖縄宮古そば「くち福」で あの島を想う宮古そば麺にスープに

kuchifuku.jpg都内で沖縄そばを出す店は、 沖縄料理店の数だけあると考えてしまうのが単純だけど、きっとおよそ間違いじゃない。 そうすると、かなりの数の店で沖縄そばを啜れるということになるね。 でも、八重山そばや宮古そばを出す店となると途端に稀になる。 そんな、珍しくも宮古そばを出すお店が学芸大学にあると知ったのは、まだ残暑がしつこく居座る頃でした。
西口から商店街を真っ直ぐ進んで、 「餃子の王将」の行列を横目に過ぎたところにあるのが宮古そば「くち福」だ。 狭い間口の引き戸の硝子越しに、5脚ほどの丸椅子が窺えます。 kuchifuku01.jpgこんばんはと鼻先を店内に入れると、 豚出汁と鰹の合わさったどこか懐かしい匂いが擽る。 真ん中の丸椅子に座り込んで眺めるメニューは、シンプルに3種類。 「ソーキそば」に「宮古そば」、そして「野菜のせそば」。 まずは「宮古そば」をいただこうかな。 角煮二枚にかまぼこもふた切れ、そして紅生姜と刻み葱が彩り。kuchifuku02.jpg澄んだスープは、素朴にすっきりとした旨みとコクを湛えていて、いい。 なるほど、ややつるんとした表情のちょい平打ちの麺は、 沖縄すばのそれでも八重山そばのそれとも違う。kuchifuku03.jpg訊けば、その麺を始め、ほとんどの材料を宮古島から空輸しているのだという。 かまぼこなんかは足が早いので、島のものとは少し違う仕立てにしているそうだけど、なんちゃってではない島のそば風情がちゃんとある。 当地のそばは、老舗の「大和食堂」と池間島方面のお食事処「すむばり」の二軒しか知らないけど、ね(笑)。

日を変えて今度は、「野菜のせそば」をいただきました。 キャベツ、人参、玉葱にソーキやソーセージの端っこをフライパンで炒めてのせた、これまたシンプルなどんぶり。kuchifuku04.jpgあくまであっさりしながら、ちゃっかりと深みのあるスープは、 そんな野菜炒めにもすんなり馴染みます。 kuchifuku05.jpg卓上の「ヒバーチ」に竹富島の「竹乃子」を思い出しつつ、 少し振れば、またちょっと違う風味が愉しめます。

敢然と宮古そばを供してくれる稀な店、学芸大学「くち福」。kuchifuku06.jpgもう最近は潜ってないと仰る大将だけど、カウンターには宮古島のダイビングスポットを紹介する冊子が置いてある。 ああ、そう云えば、宮古島では有名ポイント「通り池」にも潜れていない。 あの島にもまた行かなくちゃ、だ。 口関連記事:  そば・軽食「大和食堂」で 麺の下の具宮古そばの原風景(09年07月)  お食事処「すむばり」で 島蛸柔らか磯風味のすむばりそば(09年07月)  そば処「竹乃子」で 啜る三枚肉そば南の島の風雅(08年07月)


「くち福」 目黒区鷹番3-18-21[Map] TEL非公開
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中国料理「皇蘭」で お裾分け富貴鶏とかきつゆそばと

ohoran.jpg実家からの帰り掛け。 四面道から青梅街道を斜めに離れて、 中杉通りへ。 そのまま早稲田通りを越えたあたりは、 ひっそりとした住宅地だ。 灯りの少ない通りに、 路上の黄色い看板が目に留まる。 台風の余波を思わせる雨と風が止んできた中向かったのは、中国料理「皇蘭」です。
どんな雰囲気なのかなぁとドアを押し開けるすぐ目に飛び込んできたのは、 フロア中央で賑わう様子。 あれ?貸切の宴会かなにか?と窺うような構えになると、 どうぞどうぞと招き入れてくれる。 訊けば、最近、日テレ「ぶらり途中下車の旅」で紹介されたという「富貴鶏」という料理をちょうど”開腹”しているところだったみたい。 「わー!」という歓声はそのためだったのですね。 思わずどれどれと覗き込むと、外側の土状の覆いを除けて、包丁を入れつつ大きな葉っぱを剥がすようにしている。ohoran01.jpgそしてその中から、なるほど、鶏の身が顔を出した。 そこでまた、「わー!」と歓声を上げるオジサマオバサマ方(笑)。 おー、なるほど、手間の掛かった、そうそうお目にかかれそうもない料理だね。 ohoran07.jpgここ「皇蘭」の名物という「富貴鶏」は、鳥の内臓部分に雪菜や香草なんかを詰めて、土を捏ねて粘土状にし、塩や小麦粉を混ぜたものと一緒に蓮の葉で覆って、オーブンで5時間程かけて蒸し焼きにした料理だそう。 包んでからじっくり寝かせるために、4日前からの予約が要るらしい。 メニューには、”幻の乞食鶏”という解説ページがあって、「教化全鶏」の物語が綴られています。 35,000円だって(笑)。 お目当ての「かきつゆそば」はお願いするとして、あとなにを注文もうかなぁとメニューを睨んでいると、「どうぞ、お裾分けです」と、お皿がテーブルに。 「富貴鶏」のご相伴に与る幸運に恵まれたのです。ohoran02.jpg柔くなった朴葉のような蓮の葉に載せられた鶏の身の薫りを、 くんくんしながらいただきます。 蓮の葉の香りが生薬というか薬膳ちっくなハーブとして利いていて、 ああ、それが心地いい。 鶏自身の旨みがぎゅっと閉じ込め凝縮しているような印象で、 なんだかありがたい(笑)。 ご馳走さまです。 ohoran03.jpg 蓮華からはふはふしたのは、 滴るスープともちっとした皮が美味な「ショウロンパウ」。 そして、お待ちかねの「皇蘭」特製湯麺のひとつ「かきつゆそば」がやってきた。ohoran04.jpg軽く片栗を叩いてさっと揚げた風情の牡蠣の身もひと際ミネラルな旨みが凝縮して、むほほ。ohoran05.jpg何気なくもひたひたと迫るスープの出来もなかなかであります。 うん、いいね。 こうなると、13,000円の「特選皇蘭ラーメン」も気掛かりだ(笑)。

中杉通り沿いの住宅地にそっとある中国料理「皇蘭(おうらん)」。ohoran06.jpg壁には、自らを”超わがままな店主”として、 「当店は調理に時間をかけますので、お急ぎのお客様わがままなお客様、御容赦ください」と貼紙がある。 時間と気持ちに余裕があるときにお邪魔するのが、 美味しくいただくコツのようです。


「皇蘭」 杉並区下井草1-13-14[Map] 03-3330-2300
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