Aloha!!「Hukilau Cafe」で ロコモコ的カレーにコナコーヒー

hukilaucafe.jpgこの夏の週末、洗足池の脇に建つ大田区の図書館に通っていました。 この辺りでちょっとランチでもと考えてまず脳裡に浮かぶのが、洗足池池畔のレストランとしてよく知られた「テラス ジュレ」。 カジュアルなレストランではあるけれど、 毎度ふらっと寄る店とはちょと違う気もする。 そんな時に目に留るのが、東急バスが方向転換するための操車場に面した赤い建具のお店です。
店先を囲む植栽の先には、夏の陽光に向けて潔く開け放った扉。 がっしりした木板のサインには、「Hukilau Cafe」とある。 ハワイアンテイストのカフェみたいですね。 ランチいいですかと訊ねつつ入り込むと、どうぞどうぞとテーブル席へ。hukilaucafe01.jpg遠くでハワイアンが流れる店内はなるほど、 大好きなハワイの匂いを気負わずに鏤めたという雰囲気だ。 ある日のランチは、 「特製豚ひき肉と緑黄色野菜のドライカレーとサラダ」。hukilaucafe02.jpgロコモコよろしく、目玉焼きがのっているのが微笑ましい(笑)。 その黄身をぐっちゃり崩して、意外とカレー粉をスパイシーに利かせたドライカレーに玉子のコクを添えつついただきます。hukilaucafe03.jpgボリューム可愛くて、 ちょうどよいと贔屓にしている女性陣が少なくないのじゃないかな。 別の日のランチは、 「韓国風胡麻の風味の春雨と豚肉と野菜の炒めチャプチエ」。hukilaucafe04.jpg如何にもハワイアンな、という色彩のものではないけれど、 もしかしたら今の向こうの家庭料理はこんなラインナップもあるンですよなんてことだったりしてと、穿って考えてみたりして(笑)。 食後には、強い日差しの射す中原街道を行き交う車をぼんやりと眺めながら、 コナコーヒーの香りに浸るのもゆるゆるとしていい気分です。hukilaucafe05.jpg カウンターの幕板を飾っているカラフルで多彩な意匠のタイルが気になって訊けば、意外やABCストアで売っているものなんだそう。hukilaucafe06.jpg裏面を見れば、スタンドがついていて、なるほどハワイ土産のひとつなんだと知る。 ハワイに行くたびにお気に入りのデザインのものを買って帰って時間を掛けて揃えた色々なものが今、店内を飾っているンだね。

洗足池の池畔に夏の陽射しもよく似合い、 ゆったり過ごせるハワイアンな「Hukilau Cafe(フキラウ・カフェ)」がある。hukilaucafe07.jpg“Hukilau”というのは、ハワイの伝統的な地引き網漁のことを指すらしく、 また「The Hukilau Song」というハワイアンもメジャーな曲らしい。 でもきっと、ハワイのどこか小さな町で「Hukilau Cafe」という小さなカフェを見つけてお気に入りになって、その名前をそのままいただいちゃったンじゃないかな、なんて考えるけど、その辺りはまた寄り道して訊ねてみたい。 そうそう、随分とご無沙汰しちゃってるハワイにもまた行きたいな。 口関連記事:  Restaurant Cafe「テラスジュレ」 で少し切ないお花見コース(08年03月)


「Hukilau Cafe」 大田区南千束2-1-2 ファミール洗足池101[Map] 03-3728-8128 http://hukilau-cafe.com/
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RESTAURANT「KAIRADA」で マデイラの鶉バジルのソルベ

kairada.jpg今はちょっと遠くなっちゃったみたいだけど、 のむちゃんのランチテリトリーにすっぽり収まっていたレストランの一軒「KAIRADA」。 木挽町通りの筋をずっと京橋方向へ向かって、マロニエ通りの先左手に赤いサインが見えてくる。 何度も店の前を通っているはずなのに、どうもその存在が認識できていなかったのだけど、改めてその前まで来てみると、あ、そうそうと膝を打つよな勝手な既視感があったりして(笑)。
Dinner Menuは、プリフィクスのAかB。 そして、シェフおかませフルコースのC。 魚か肉か悩んで、肉料理と決めて、カワユく、コースのAとします。 小皿にそっと置かれたのは、可愛いピクルスたち。kairada01.jpgそれをカリっとしては、グラスのBeerをすーっとすいっと呑み干します。 グラスの白に早速切り替えて、一緒盛りしたオードブルあれこれに正対します。kairada02.jpg kairada03.jpgkairada04.jpg ホタテのテリーヌ、サーモンのマリネ、グリエールチーズのタルト、鶏肉のガランティーヌや野菜たち。 ガランティーヌというのは、鶏肉や子牛肉なんかの冷製料理で、肉で詰め物を巻いて円筒形に整えてから煮るか蒸し焼きにしたもの云うらしい。 オードブルで時折見かける、輪切りにしてコイン状になったヤツもその仲間なんだね。 kairada05.jpg ガスパッチョの涼味に現を抜かしていたら、そろそろメインがやってくる気配。 ならばと赤のグラスに切り替えて、当のお皿を受け取ります。 お願いしていたのは、「うずらのファルシィ マディラ酒ソース」。kairada06.jpg網脂に包んだ風のつるんとした照りの向こうを覗き込んで、その断面を窺うと、挽肉主体の詰め物がぎっしりと顔を出して、ナイフの動きを急かせます。 ジビエの気配も漂わせつつ、鶉の身が放つ滋味を真っ直ぐに愉しませてくれる。 kairada07.jpgkairada08.jpg マデイラ酒のやや甘く、独特の風味のソースがその滋味を引き立て、味わいの輪郭を浮かび上がらせています。 うん、いいね。 デザートの盛り合わせには、 パイナップルのタルトやキウイ、白桃のコンポート。 そして、印象深いのが翡翠色したバジルのソルベ。kairada09.jpgフレッシュなバジルの香気が鮮やかに広がって、ああ、爽やかに。 厨房の下がり壁のところに、これまた印象的な木板が掲げられています。 コキアージュを象ったシンボルに二行半の文。kairada10.jpg落ち着いたところで厨房から離れて、雑談に応じてくれたシェフに訊けば、そこにはこう刻まれているそう。 「ひともの自然、すべてのものに感謝せよ。」

裏銀座に灯りを燈し、丸二年を迎えようとしているRESTAURANT「KAIRADA」。kairada11.jpg店名の「KAIRADA」ってどんな意味なのだろうと思えば大概、フレンチだもんきっとフランス語でいうところのなにかなのでしょと考えるところ。 でも、そうではなくって、それはとっても真っ直ぐで素直な由来です。 だって、有楽町「アピシウス」、神田・六本木の「パ・マル」を経て独立したシェフのお名前が”皆良田”なンだもの。 予約・段取りしてくれたしずりんさん、久々ご一緒のabuyasuさんも、ありがとー。


「KAIRADA」 中央区銀座2-14-6 第2松岡ビル1F[Map] 03-3248-3355 http://mm.visia.jp/kairada/
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タイ国屋台料理「ラックタイ ペンロイ」で 朗らか応えるタイ大好き

rakthai.jpg今でも数人の空席待ちを擁していることの少なくない「一風堂」を横目に歩む大崎広小路の交差点辺り。 そこに気になりつつもお邪魔したことのない、エスニックのお店がありました。 タイ料理のお店「ラックタイ ペンロイ」はいつもお客さんが入っている地元の人気店だ。
象のマークの硝子越しに、席あるかなぁと店内を覗き込むと、 不意に扉が開いて、「どぞっ」と招かれる。rakthai01.jpgそのまま扉を開け放って、ぷちオープンエアのタイ屋台料理となりました。 rakthai02.jpg 入口すぐの小さなテーブルで、まずはやっぱり「シンハーSingha」を。 そのお相手に何がいいかなと選んでみたのが、 自家製タイ風さつま揚げ「トンマープラー」。rakthai03.jpgrakthai04.jpgrakthai05.jpg まさにその通りのさつま揚げなのだけど、みっしりとした量感があって、甘くて辛くてちょっと酸っぱい独特のタレに浸していただくと、途端にタイ屋台にいる気分満開になる(笑)。 腹拵えは、「ゲンキョウワン」で。 「ゲンキョウワン」は唐辛子マーク2つのピリ辛グリーンカレーだ。rakthai06.jpg茄子や鶏肉の具を満載した緑のカレーを月桂樹の葉を避けながらそっと啜ってみる。 うんうん、辛さ程よく、さらっとしたなかにたっぷりのコクがあって、 なかなかうんまい。 ココナツミルクの濃度加減がいいのだね。 別の夜に同じ席(笑)。 やっぱりのシンハーにこれまたよく合うのが「ナンガイトー」。rakthai07.jpg「ナンガイトー」はつまりは、鶏皮の唐揚げ。 パリパリのサクサクを例の甘い辛いとろみタレでイケば、 なははは、シンハーが旨い。 ご飯ものの中から選んだのが、、「カオパッペンロイ」。rakthai08.jpgrakthai09.jpgrakthai10.jpg 「カオパッペンロイ」は、 ピリ辛にしたチャーハンに目玉焼きをのっけたシンプルなお皿。 タイ米はやっぱりチャーハンによく合うねぇと思いつつ、その山を崩していくと中から包丁を入れたイカなんかの具材で出てきた。 意外と芸が細かいんでないの(笑)。 三度訪れた同じ席(笑)。 おススメボードメニューの筆頭にあるのが気になって、「えびトースト」。 なるほど、海老の身を叩いたペーストを耳をおとした食パンに挟んで揚げた感じ。rakthai11.jpg展ばした蜂蜜のような不思議に甘いタレをつけていただけば、これもなかなかイケるヤツ。 今宵は、あっさりスープの麺が食べたいな、と思えば「センレックグワイテオガイ」。rakthai12.jpgrakthai13.jpgrakthai14.jpg 透明感たっぷりの鶏がらスープには、砕いたガーリックチップが浮かんでる。 実にあっさりした味わいを想像しながらそのスープを啜ってみると、意外やしっかりの旨みあり。 つまりは、”フォー”的米粉ヌードルなんだけど、煮込んだ大根なんかがごろごろ入っていて、麺のボリュームもたっぷり。 想定以上の満腹満足であります。

地元で人気のタイ料理屋台「ラックタイ ペンロイ」は、大崎広小路駅近く。rakthai15.jpg“ペンロイ”は”屋台”という意味。 じゃぁ”ラックタイ”はどういう意味かなと訊いたらば、 タイ人の小さなおネエさんが明るく朗らかに、こう答えてくれました。 “タイ、大好き!”というイミだよー! なるほど、そうだね(笑)。 高輪、品川、田町にも店舗があるようです。


「ラックタイ ペンロイ(RAK THAI)」西五反田店 品川区西五反田1-24-1タキゲンビル1F[Map] 03-3493-3644  http://www.rakthai.jp/
column/03030

九州お取り寄せダイニング「ちかっぱ」で 九州うまかもんぷち旅行

chikappa.jpg“九州”と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、 かつて一度は訪れたいと思い続けて、願い叶って潜入した屋台連なる博多・長浜のあの光景。 そして、中州へと渡る春吉橋近くの豚骨の匂い。 博多のそれとは結構違うのだなぁと感慨深かった久留米のらーめん店。 熊本では、「桂花」の本店や「こむらさき」にわざわざ足を運んだっけ。 あれ?ラーメンに纏わる想い出しかないのかいなと苦笑いしながら向かったのは、ミッドタウンもほど近い六本木の裏通り。 ラーメンのみならず、九州の食材あれこれを取り寄せて、愉しませてくれるという「ちかっぱ」六本木にお邪魔しました。
chikappa01.jpg8名収容のスペースを強引にふたつに区切った、 フロア最奥の個室が不思議なこじんまり。 口開きの麦酒は、一番搾りもあるけれど、 やっぱりこれでしょと「長崎ビール恋のオランダ坂」(笑)。 長崎の大島醸造という地場メーカーが醸す地ビールは、 デュンケルタイプでしょうか。 すっきりとした香ばしさには、地ビールらしからぬ奥行きがあります。 まずのお通し的器は、「炙り鶏皮のゆずマリネ」。chikappa02.jpgベビーリーフなんぞに隠れているのが、鶏皮をカリっと素揚げ状にしたもの。 九州の居酒屋では定番だという「皮酢」から派生させた酒肴だ。 なるほど、柚子風味の酸味がよく似合う。 できれば、もっとたっぷし鶏皮が欲しいな(笑)。 おおっと目を惹いたのが、熊本産「赤牛のレバー刺し」の紅。chikappa03.jpg「草牛」とも呼ばれる「赤牛」は、阿蘇の大草原で牧草を食み、 悠々と育つ熊本の伝統和牛だそう。 みるからに鮮度の良さそうなのが、九州に特化したお取り寄せ手腕の見せ所。 ひたひたと張り付くように艶めかしく、それがすっきりと臭みない滋味に至る。 おろし生姜も大蒜も使わず、塩胡麻油だけでいくのがいいかもしれません。 九州お取り寄せ「ちかっぱ」の、 これもひとつのウリなのだろうなと思わせたのが、「旬野菜のまるかじり」。chikappa04.jpg九州直送だという野菜たちは、例えば、 大根的歯応えの福岡産赤瓜や熊本の赤茄子肥後むらさき、 赤オクラに島オクラ。 対馬の藻塩をちょんづけして、パキパキとシャクシャクと。 縦に裂いてひょろっと長い甘辛ピーマンは、 獅子唐よろしく”当たり”に当たるとなかなかに辛い。 でもその先にその名の通り、甘さを含んでいるのが面白い。 またまた艶々したテクスチャがやってきた。 あ、あの白いのはきっとタテガミに違いない。 ってことは、お馬さんの刺身ってことになるね。chikappa05.jpg訊けば、これまた阿蘇は産山(うぶやま)という村から、 チルド輸送で持ち込んだ「馬刺し」だそう。 紅白のツートンになっているのが「ふたごえ」と呼ぶ部位で、 馬のあばら肉あたりを指すらしい。 どれがといえば、「赤身」が旨い。 融点の低い脂がつるつるとした独特の口触り。 やや甘めの九州醤油でいただけば、 その脂の向こうにある赤身肉の澄んだ旨みが、 大脳皮質に真っ直ぐ伝わってくる感じ(笑)。 chikappa06.jpg九州お取り寄せとあらば、 焼酎のラインナップも期待に違わぬものでしょうと訊ねると、 メニューのリストは意外や、その辺りはまだまだこれからという模様。 そんな中から面白そうと選んだのが、 シェリー樽フィニッシュだという「樽いきいき」。 球磨の米焼酎に仄かにシェリーの香りをつけた、 どちらかというと上品な仕立ての呑み口だ。 熊本に負けちゃぁおれんと(笑)、登場したのが大分名物の「とり天」。chikappa07.jpgどうも鶏の天ぷらというと、 うどんのトッピングのかしわ天、というイメージなンだけど、 大分ではこの「とり天」がめちゃめちゃスタンダードなお惣菜らしい。 カボス醤油でイクのが大分の本場スタイルなのです、 ということで揚げ立てをちょっと浸してハフハフすればもう、 不味かろうはずもないところ。 chikappa08.jpg同じ大分特産のカボスを使った辛味調味料に「KABOSCOかぼすこ」なんてシャレたネーミングのものもあって、これがなかなかヒリヒリのチリ。 チリなカボス醤油でヤル「とり天」もまた乙なもの。 そういや戸越銀座で人気の唐揚げ屋さんは確か、「大分唐揚げ」。 さしずめ、大分の鶏の揚げモノ兄弟、といったところでしょうか。 恭しく運ばれてきたのが、アゴを浮かべた打ち出しの鍋。chikappa09.jpgいまかいまかとその湯殿への投入を待っているのが、 これまた熊本産のプレミアムポーク「肥皇(ひおう)豚」。 chikappa10.jpgchikappa11.jpg ハナビラタケや空芯菜、ふりふりレタスなんかと一緒に、 出汁タレに浸していただくスタイル。 脂の甘さが呼ぶ旨みを素直に愉しめる、そんな鍋であります。 と、もういっちょとばかりに別の鍋がやってくる。 今度の鍋の中はすっかりと白濁して、如何にも”博多な”風情(笑)。chikappa12.jpgでもそこに浮かんでいるのは忽ちラーメンではなくて、餃子かワンタンか。 これがどうやら、このところ福岡の一部で人気沸騰中だという「炊き餃子」。 博多の屋台ではラーメンを焼いてしまったり、餃子を炊いてしまったりとイタズラ心が生みの親のような料理が輩出してきて面白い。 餃子を浮かべて炊いている白濁スープは、 豚骨一本やりかと思ったらそうではなくて、 はかた地鶏のガラをじっくり煮込んだスープがベースで、 豚骨は一割程度なのだという。 しっかりとボリューム感のある餃子をべったりした豚骨スープでやっつけるのは流石にちょっとというところかな。 chikappa14.jpgchikappa15.jpg なるほど鶏出汁の、見た目の濃厚さをほどよく裏切る、 さらっとしたコク味スープだ。 タピオカ入りもっちり皮の餃子を平らげたら、 然るべくやってくるのが”博多な”細ストレート麺。chikappa16.jpg硬めに下茹でした麺を鍋のスープにささっと潜らすようにして、 スープと一緒に取り鉢によそり、浅葱をちらして啜る。 ズ、ズズズズ。 うむむ、キメキメだった塩っ気が煮詰まってきちゃったかもねと割スープ。 ふむふむ、あとはすぐ軟くなってしまう繊細な細麺を好みの硬さのまま上手にいただくため、一心に啜るだけです(笑)。


新宿・銀座に引き続き、六本木にも登場した”九州お取り寄せ”の店「ちかっぱ」。chikappa18.jpgchikappa17.jpg大宰府名物の梅ヶ枝餅の温かいところを頬張りながら、鶏皮の歯触りや赤牛レバーの艶めかしさ、野菜を齧る妙音、馬刺し赤身の旨み、とり天の素朴な滋味、肥皇豚の甘さなんかを振り返る。 さしずめ、うまかもんを辿る、九州喰い道楽ぷち旅行、だね。


「ちかっぱ」六本木 港区六本木4-6-7 六本木4丁目ビルB1[Map] 03-5775-6571 http://www.chikappa.co.jp/
column/03029

本格焼酎屋「羅無櫓」で おまかせ吟味役小あじ唐揚げ蒸野菜鍋

ramuro.jpgいっそ住んでしまいたいと思う場所のひとつ、 四谷荒木町。 大井町や武蔵小山のディープゾーンとはまた違う、花街名残りの風情がちょっとオトナな路地路地がいいンだよね。 でも、そうは云っても、訪れる機会は多くない。 今夜はいっちょ、旧交温めに参りましょうか。 どこに潜もうかと選んだのが、 焼酎の店「羅無櫓」です。
味のある小料理屋、バー、エスニックに妖しいスナックなんかの看板を横目に路地を往く。 杉大門通りと車力門通りとの間を平行して走る柳新道通りという筋の暗がりを進むと、路傍の縁台に将棋盤が置かれ、駒が綺麗に並んでる。ramuro01.jpg小粋だねぇと思ったその場所が、目的地「羅無櫓」の店先でありました。 「羅無櫓」は、カウンターの店。 バックバーにも背中の棚にも、焼酎の瓶がずらりと並んでいるけれど、不思議と閉塞感なく、ゆったりと感じます。ramuro02.jpgそしてそのカウンターの中央で半袈裟のような井出達で迎えてくれるのが、 ご主人の官兵衛さん。 名刺には、「初代焼酎吟味役」の肩書きがあり、 柔和かつ含蓄のありそうな佇まいのオヤジさんだ。 一杯だけ麦酒を所望と、官兵衛さんに。 「羅無櫓」の「ギョーザ」は、具沢山のワンタンを焼いたような、 ちょっと異形のフォルム。ramuro03.jpg皮の魅力をまず全面に、かりかりと歯触りよろしく、香ばしく。 焼酎にも、勿論麦酒にもぴたりと寄り添う仕立てになってます。 焼酎はもう、官兵衛さんにおまかせで。 一杯目のグラスは、屋久島の「三岳(みたけ)」。ramuro04.jpgやっぱり、あっさりと軽めのところから、でもしっかりと風味のあるグラスだ。 ramuro05.jpg続く一杯は、甑島の塩田酒造の「六代目百合」。 ルイベ状態の「馬刺し」の解けるのを待つうちに、近況報告。 そこへ、扉を開けて入ってきたオッチャンの手には、 ナイロン弦のギター。 一曲演ってくれという声は掛からずに、見せる背中がちょと寂しい。 そうこうしている裡にグラスが空いて、お代わり所望。 「神座」は、黒麹仕込みのしっかり芋焼酎。ramuro06.jpg軽めタッチのものからグラデーションをかけるようにボディと風味の強いものへと変遷していく、官兵衛チョイス。 ちょっぴり加水でいただいております。 そこへ迎えたのが「小あじ唐揚げ」。ramuro07.jpgこれが、想定外に旨いのなんの! 炙り立ての干物に脂が滲んで、齧れば香ばしくも弾ける旨み。 皮と骨のぱりぱりした食感がまたその魅力を助長する。 あああ、うまい、焼酎に寸分のズレなく寄り添う也。 フクロウさんの彫刻が、そうそう素直に酔ってよいのだぞ、と静かに見守ってくれているようにも見えて心強い。ramuro08.jpgなんてことで、お代わりの手づくり本甕仕込みの芋「玉露」を舐めます(笑)。 バックバーの棚の上に、ピッケルや古びたごつい靴なんかが飾られているのは、 登山愛好家の印。 そう云えば、扉の脇に掲げた看板には、 ザイルを繋いで急斜面を登坂するシルエットが描かれているのです。 ramuro09.jpg 次からは温かいのでいただきたいですと官兵衛さんにお願いして登場したのが、じょかの一種でサーブされた黄金千貫仕込み「桜島」。 芋のボディが丸いふくよかさに整った呑み口になっていて、いい。

お隣さんのオーダーが気になって便乗したのが、「蒸し野菜鍋」。 ちょっと前より話題のタジン鍋を使った、野菜鍋なのだ。 ramuro10.jpgでっかい徳利のようなフォルムの蓋をぱかりと外すと、 湯気とともに一面のキャベツ畑が現れる。ramuro11.jpg 菜箸で底の方を起こすようにすると、トマトや人参、薩摩芋、鶏肉なんかの具材が顔を出す。ramuro12.jpgまだ口にしていないのに、具材それぞれの持つ旨みが活き活きとぎゅーっとその組織に沁み込んでいそうにみえる。 えへへ顔で箸を伸ばせば、キャベツの甘さがしゃくっと弾け、鶏の滋味がしみじみとし、ほの酸っぱいトマトの甘さが色を注す。 いいね、旨いね、美味しいね。 聞けば、アボカドオイルを垂らしているくらいで、出汁を入れるどころか、塩もしてないそう。 ふと、てんこ盛りに味わいの層を重ねるような料理に疑問が沸いてくる。 ramuro13.jpg素材が悪くなけりゃ、こんな調理でいいんじゃない?みたいな、ね。 具材たちのエキスを鍋の底まで綺麗に平らげる。 既に定番となりつつあるタジン鍋料理だけど、それが焼酎の素朴さと絶妙にマッチしているのだね。 最後の一杯を佐多宗二商店の定番「晴耕雨讀」でいただいて、うん、満足の夜でありました。

荒木町柳新道通りで縁台将棋が目印の、本格焼酎屋「羅無櫓(らむろ)」。ramuro14.jpgramuro15.jpg店名「羅無櫓」は、ネパール語でベリーグットとか、美味しいとか、素晴らしいとかを意味する”らむろっつぁ”の音から名付けたそう。 官兵衛さんがヒマラヤ山地の言葉に想いを馳せるのは、岳人ならではか。 ゆるゆると焼酎とそれに似合う酒肴がいただけるカウンターは、12年目を迎えたところだそうです。 帰りがけにやっと、以前何度か寄ったことのあるマジックバー「八時」の斜向かいであることに気がつきました。 口関連記事:  マジックバー「銀座 八時」で 水割り舐め舐め愉しむマジックサロン(06年03月)


「羅無櫓」 新宿区荒木町七番地[Map] 03-3358-9515
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