うどん処「松郷庵 甚五郎」で 肉汁うどんは香麦麺の武蔵野うどん

matsugoan.jpg此処に来るのは、もの凄く久し振り。 浦所バイパスから松郷の畑の中に折れ入ったところにあって、 最寄りの東所沢駅からでも歩いて20分くらいかかりそうな立地なので、足がないと行けないのです。 道路が新しくなっている部分があって戸惑いつつも到着した「松郷庵 甚五郎」の駐車場。 そう云えば、「神明庵 甚五郎」も駅からとっても遠いところにあるんだよね。
紺瑠璃の暖簾の右手の硝子越しに麺打ち場がある。matsugoan01.jpgmatsugoan02.jpg覗いた作業は、寝かせた生地を延ばしているところかな。
案内されたのは、真ん中の大テーブル。matsugoan03.jpg見上げた梁の上には、木の車輪が載っていたりして、ちょっと大きな農家のお宅に遊びに寄ったような気分にさせてくれます。 お願いしたのは勿論、「肉汁うどん」。 温盛りにもできるようですが、冷たいのでよろしくとオカアサンに伝えます。 matsugoan04.jpg 一品料理のところで目に留まった「山芋唐揚」を目にすると、ああ、ビールが欲しいと強く思う。 さくっと軽やかでいて、山芋独特の粘つく食感も一瞬あって、愉しいんだ。 お盆に載って、つけ汁と笊のうどんがやってきました。matsugoan05.jpgうどんには、明らかに小麦の外皮のような粒々が透けてみえる。 例えば、京都「ろぉじ」の全粒粉のつけ麺にみるような景色。matsugoan06.jpgそのまま麺だけ啜れば、どこか遠くで甘いような小麦の香りがほんのりとする。 レジのところの貼り紙をみると、最近うどんの仕立てを変えたらしく、「香麦麺(こうばくめん)」と呼んでいるらしい。 うむ、なるほど。 つけ汁はというと、お約束の豚バラ肉をメインに長葱、茄子やシメジが浮かんでる。matsugoan07.jpgバラ肉が極薄切りに過ぎる感じもするものの、武蔵野のうどんはこんな汁でなくっちゃな!って頷くに十分だ。 うんうん、うん。 お会計の際に、どこのどんな粉を使っているのだろうと尋ねてみた。 わざわざ厨房の方に声を掛けてくれた応えは、武蔵野エリアの地粉ではなくて、北海道産の、かもめという粉をメインにブレンドした粉で打ったうどんだそう。 小麦の香るうどんでへの工夫が嬉しいけれど、土着な武蔵野うどんとはちょっと毛色が違う麺であることもまた確か。 ふと、昔ながらの機械でゆっくり製粉しないと旧来からの武蔵野うどんの風味が出し難いんだよ、というようなことを説いてくれた、八丁堀のうどん処「福福」のオヤジさんの顔を思い出したりして。

所沢の田園風景の中に佇む「松郷庵 甚五郎」。matsugoan08.jpgひと通りのない畑道の有名店へと、あちこちから入れ替わり立ち替わり車がやってくる。 25年もの歴史を抱いているってことは、「甚五郎」の系譜の高いところにいるのではないかと思うのだけど、そのあたりどうなんだろうね、Con Brio!!さん。 「のらうどん」も気になります。 □関連記事:  うどんそば「神明庵 甚五郎」でくたくた煮込み肉汁うどんの透明感(10年02月)  地粉つけうどん「福福」で 肉つけうどん粉の味わいと豚ばら肉(05年06月)  つけ麺や「ろぉじ」 で挽きぐるみ的つけ麺と鯛ぶぶ京の路地(08年05月)


「松郷庵 甚五郎」 所沢市松郷272-2[Map] 04-2944-9168
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竹岡らーめん「梅乃家」で 竹岡式らーめん甘いタレ味と玉葱細麺

umenoya.jpg掛かりつけの病院で診察を受けた後、桜田通りまで戻った高輪台の交差点で立ち止まる。 さて、どこでおひるしようかな。 と、五反田寄りの通りの向こうのやや遠く、目に留った文字がありました。 それは、「梅乃家」と縦書きの文字。 随分と久々だけれど、偶には竹岡式のラーメンもいいぞと早速点滅し始めた信号をダッシュで渡ります。
硝子越しに覗くおひるどきの「梅乃家」のカウンターは、落ち着いた空気。 近所のおっちゃん風の背中が、昼ビールをやっつけています。 華奢でスリムな券売機でぽちとしたのは、竹岡式にきっと真っ直ぐな「ラーメン」に「のり」のトッピング。 メニューを改めてみると、以前からあったのか「塩」や「味噌」、さらには「担々麺」なんてものまである。 それも”竹岡式”なのかなぁ。 お母さんにチケットを渡すと、ビール注文している訳でもないのに、しらたきや千切りの昆布、チャーシューの欠片を煮たお通しの小皿をどうぞどうぞと返してくれる。どうもどうも。 お待ちどーさまと目の前に置かれたドンブリには、黒い、と表現しても間違いじゃないスープと一面に浮かぶざっくり刻み玉葱。umenoya01.jpgその玉葱と一緒に蓮華で掬ったスープをズズと啜れば、なはは、そうそう、チャーシュータレの風味。 ご存知の通り、竹岡ラーメンのスープは、いわゆる動物系野菜系などを炊いたスープをとらず、チャーシューの煮汁をお湯で割っただけのもの。 それじゃ味気ないんでしょうと思うのも尤もだけど、それがどうして侮れない。umenoya02.jpg若干甘い風味におや?とする瞬間もあるものの、加減のいいコクと旨みに次第に合点がいってくる。 そんなスープにきゅきゅとした極細い麺という取り合わせ。umenoya03.jpgなーんか、いいんだなぁ。 夜にも寄り道して、今度は「チャーシュー麺」に「チャーシュー」と「玉ねぎ」をさらに載せ。umenoya04.jpg普通の玉葱を普通に刻んだものだったら、結構辛いことになっても不思議はないけれど、こんなたっぷりの玉葱を蓮華一杯に啜っても、まったくもって辛くない。 辛くないどころか、甘くさえある。 水に晒したりすればこふいふ薬味にできるのかなぁ。 umenoya05.jpgそして、チャーシューを煮たタレがスープになるのだから、そのチャーシューとスープとの親和性がばっちりなのは間違いがないところ。

都内で竹岡式らーめんが愉しめる稀少なお店、高輪台「梅乃家」。umenoya06.jpg柔和な表情のお父さんに訊けば、内房線「上総湊」最寄りの竹岡「梅乃家」とは、竹岡の店のおばあさんと高輪台の店のママが一緒に習った(?)関係だという。 あっちは漁師町だからちょっとしょっぱいのに対して、こっちはどっちかというと甘い味付けだというところと、なにより竹岡「梅乃家」では、生麺でなくて乾麺を使っているところが違いであるそう。 なかなか内房へと足を伸ばす機会もないけれど、いつか竹岡の「梅乃家」も訪ねてみたいな。


「梅乃家」 港区白金台2-26-13[Map] 03-3447-5727
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寿し「いづう」で 鯖寿司小鯛鮨の盛合せ守る伝統と愛想のなさと

iduu.jpgところは祇園の切り通し。 ロジウラーとしては、賑やかな花見小路などよりも、断然気になる筋であります。 例えば、うどん・親子丼「ぎをん権兵衛」やバー「コペルニクス的転回」も切り通し沿いのお店。 そして、八坂神社前の「いづ重」初代の奉公先だという、同じく切り通し沿いのお店「いづう」にもいつか寄ってみたいと思っていました。 白川を渡る巽橋方向からアプローチするのが風情であります。
真っ白な暖簾を払って入り込んだ店内は、妙な飾り気のない、質実な佇まい。iduu01.jpgたたきに置かれた畳敷きの椅子に腰を下ろします。 テーブルの低さが、どこか峠のお茶屋風な居心地を連想させたりして。 開くお品書きも、質実な匂いのする。 「鯖姿寿司」「小鯛の雀寿司」「鯛寿司」「鱧寿司」から巻き寿司4種に「箱寿司」「京ちらし寿司」「蒸し寿司」。 「御台所寿司」「弥次喜多寿司」とはどんなのだろうと思いつつ、目線を「盛合せ寿司」に移して、お願いしたのが「鯖寿司小鯛寿司盛合せ」。 折角なので(?)、冷たいお酒もいただきましょう。 伏見の酒「一滴」をつつつと舐めながら待つこと数分。 iduu02.jpg艶々とした昆布で包んだ鯖寿司、そして小鯛鮨が三切れづつでやってきました。 iduu04.jpg 昆布はどうしたらよいの?と尋ねたら、外して召し上がりください、と云う。勿論食べられますので、お好みで。iduu03.jpg鯖や小鯛の身と酢飯が分かれてしまわないように細心の注意を払って、くるりと昆布を剥がしていただきます。 脂の載った鯖の旨みを想像しながら口にしてしまった所為か、あっさりし過ぎて物足りないなぁというのが、正直なところ。iduu05.jpg小鯛は、その名の通り小さめの鯛で、若いがゆえに皮目を残せるのだそう。 なるほど鯛らしい風味が仄かにする、とても淡白なお味です。

天明元年(1781年)の創業という、寿し「いづう」。iduu06.jpg帰り際にいただいた小さなリーフレットには、初代である「いづみや卯兵衛」の名をとって屋号を「いづう」とした、とある。 京の鯖寿司は古来、若狭湾から洛中へのいわゆる鯖街道で運ばれ、お祭りなどの御目出度い「晴れの日」にいただく風習のものであった、とも。 「いづう」の鯖寿司をいただくに、二百余年の伝統を守ることは、なにものにも迎合せず頑なに変えないことなのです、と語っているように思ったりする。 それは、なんとはなしに寂しくも感じる愛想のなさと、裏腹なことなのかもしれません。 □関連記事:  蕎麦うどん「ぎをん権兵衛」で そば汁利かせた親子丼底まで旨い(08年09月)  Bar「コペルニクス的転回」で ボウモア京都発ボトラーズの甘さ(08年06月)  京寿司「祇園いづ重」で鯖姿寿司と鱧そぼろの箱寿司鯖の肝旨煮(09年10月)


「いづう」 京都市東山区八坂新地清本町367[Map] 075-561-0751
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すたんど割烹「躍金樓」で鰈煮おろし豚角煮天丼膳やはり天麩羅

tekkinrou.jpg蕎麦處「更科丸屋」の角から喫茶「バロン」へと至る裏道を往くと、五月晴れの日差しに青々とした柳が飾る黒塀が見えてきます。 看板に読むは、「割烹 躍金樓」。 明治初期創業の風格がオーラとして滲み出ていて、周囲をちょっと乙な空気にしています。
向かって左手の入口がおそらく、広間や座敷へと至る、割烹正規の玄関で、向かって右手にあるのが「すたんど」と呼ぶカウンターやテーブル・小あがりのフロア。 会席料理が中心となる座敷とカジュアル版「すたんど」フロアを入口から区分しているあたりにも一種の歴史性を感じます。tekkinrou01.jpg お邪魔するのは勿論、「すたんど」の方(笑)。 お母さんに「てんぷら?」と訊かれて頷けば、そのまま自動的にカウンターへどうぞ、となる。 tekkinrou02.jpg ちょっとヘソ曲がりして「煮おろしを」と応えると、あらそ~ぉ的にほんのちょっぴり意外そうな面持ちで、二人掛けのテーブルへと案内してくれます。 「かれい揚げおろし」や「かれい煮」だったら銀座「唐井筒」だよなぁなどと考えつつ、カウンターの中から響く天ぷらの揚げ音を聞きながら待つひととき。 tekkinrou03.jpg 「鰈の煮おろし膳」のお皿たちがやってきました。 こんもりたっぷりと盛られた細やかな大根おろし。tekkinrou04.jpg「唐井筒」の「揚げおろし」のイメージのまま、その大根おろしの山に箸を挿し込むと、なんと空振り(笑)。 あれあれ?っと思って箸の先で探るようにすると、とても上品なサイズの鰈の身が見つかりました。tekkinrou05.jpg出汁の感じや味付けはいい感じなので、ぜひぜひそこそこなボリュームにしてほしいいなぁと、そう思います。 ヘソ曲がりオーダーその2は、「豚角煮膳」。 今度はダイジョウブ、と自らに言い聞かせるように開いたお椀の中には、図らずもこれまた上品なサイズのふた切れほどの角煮に茄子と大根。tekkinrou06.jpgtekkinrou07.jpgそうか、そうだよ。 会席のお店だということをすっかり忘れておりました。 「膳」として、定食仕様にしてくれてはいるものの、そのまんま酒肴にしちゃっていいですよという風情は譲れない、といったところでしょうか。 性懲りもなく、「天麩羅膳」以外のヘソ曲がりオーダーその3にと、「天丼膳」。 三度とも同じテーブルの同じ席。 返すどんぶりの蓋の先は、およそ想定した通り。tekkinrou08.jpg海老、茄子、南瓜なぞが、あっさり目のタレを纏って、あくまで品良く佇んでいます。 tekkinrou09.jpg やっぱり「すたんど」では、素直にカウンターに座って「天麩羅膳」をいただくのがいいのだねとやっとこ判った梅雨前の頃でありました。

創業明治六年(1873年)の割烹「躍金樓(てっきんろう)」。tekkinrou10.jpg吉原に移転する前の花街の名残りがあるとすれば、唯一この店か。 店先のリーフレットにその名の由来が示してある。 “「躍金楼」という珍しい名前は、中国・北宋の詩人、范仲淹の「岳陽楼記」の一節、「長煙一空 皓月千里 浮光躍金 静影沈壁」から名付けられました。 光で照らされ輝く波と魚の鱗が金色に躍る様子を、当店から見えた築地の海になぞらえて、活のいい魚料理を出すお店であれ、との思いを託したと伝えられております。” 海が間近まで迫っていた往時の光景を思い浮かべてみたりして。 そうだ、築地はそもそも埋立地、だもんね。 「新富芸者とお座敷遊びの会」、なんて催しもあるみたいですよ。 □関連記事:  蕎麦處「更科丸屋」で 海苔に浮かべた牡蠣そばにゆるゆる(09年02月)  喫茶「バロン」でケチャップ官能ナポリタンとナポリタンなグラタン(09年11月)  割烹「唐井筒」で かれい揚げおろし衣の香ばしさと汁の旨味(05年06月)


「躍金樓」 中央区新富1-10-4[Map] 03-3553-0365 http://www.tekkinro.com/
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小麦香る極み麺と野菜の旨み「宮田麺児」でNB50つけ汁と魚粉

miyatamenji00.jpg吉本の芸人コンビ「シャンプーハット」って知ってる? そう訊かれて、残念ながら知らなかったのだけど、その片割れ「てつじ」が心斎橋につけ麺の店を出して評判なんだという。 然らば、大阪に赴いた折には寄ってみようと頭の隅に置いていました。
遅く着いた新大阪からそのまま地下鉄で心斎橋へ。 御堂筋沿いの大丸本館と北館との間を抜けていって、玉屋町筋を左に折れた繁華街の一角にあるのが「宮田麺児」だ。 23時の閉店も近い時間だというのに、7、8人ほどが店前で席が空くのを待っています。 miyatamenji01.jpg店先の販売機で示すは、大きく三つのメニューカテゴリー。 てつじオリジナル麺「T2G」に、内麦平打ち麺「JF100」、そして麦芽香太麺「NB50」。 メニューからも、”麺が命なんや”と謳うだけある、麺に、そしてその元となる小麦に対するこだわりが十二分に伝わってきます。 二杯いっぺんに喰うとかいう融通が利かないお腹ゆえ、どれにしようかなと悩んで、粉の風味が一番感じられそうな「NB50」のボタンをぽちとしました。 仲のイイふたりで来れば「別盛り」の麺を追加することで三種類の麺が全部試せるよ、と知らせるポスターを横目に暖簾の奥へ。 通路の壁に掲げたイラストが主てつじ、その人か。miyatamenji02.jpg促されるまま、入ってすぐの小さなカウンターに座り込む。 開店を祝う花の贈り主は、西川きよし&ヘレンだったり、ハイ・ヒールのリンゴだったり。 届いたどんぶりには、その内縁に沿うようにステンレスのリングが廻ってる。miyatamenji03.jpgつまりは笊なのだけど、こんな笊、特注したのでしょうか、既製のものなのでしょうか。 麺に振り掛けられた、擂り胡麻?と思う粉末は、ローストした麦芽。miyatamenji04.jpg切り歯の番手16番という太く量感ある麺が誘います。 miyatamenji07.jpg「つけ麺のお召し上がり方」に示してある通り、まず麺に鼻先を近づけてくんくんしてから、徐に麺の2、3本を摘まみ上げ、啜ってみます。 うわー、なるほど小麦が香るねー、ってはっきり判るほどのことではなくて、湯掻いて水で〆たあとの水っぽさが先に立って、その後からじわじわと風味を愉しむ感じ。 生麺の匂いを嗅いでみたいかも。 つけ汁の赤い椀の中身はというと、それは随分とどろっとしたヤツ。miyatamenji05.jpgちょぼちょぼと麺を浸して、啜るというよりは手繰るように麺を口に収めます。 野菜類あれこれのペーストに動物系のエキス、脂を渾然とさせたような風情の汁。 ニンニク風味のようで、そうではないようでもあって、なんだか不思議な味わいだ。 どろっとして過剰に強そうにもみえる汁より、むにむに食感の麺の主張の方がなるほど強い。miyatamenji06.jpgんー、新機軸ではあるよなーと思いつつ、むにむにする目線の先に魚粉の入った器が目に留りました。 終盤になったところで、その魚粉をつけ汁に振り入れてみる。 あはははは。 急に、味わい風味旨みに一本芯が通って、一瞬にして視界が開けた感じ。 魚粉がどれだけ魔法の粉で、ある種ズルい粉であるのかを如実にされた瞬間だ。 「てつじ」氏本人もこれをカウンターに置くのを潔しとしていないというような趣旨のことを聞いたので、もしかしたらそのうちカウンターから消えるかもしれません。 でもね、魚粉の風味、嫌いじゃないンだよねー(笑)。 化調を否定しきれないことと似た感じでもあるよね。

吉本芸人「シャンプーハット/てつじ」の店「宮田麺児」は、 “有名人のナンチャッテな店”では、ない。miyatamenji08.jpg真摯で執拗なまでの麺へのこだわりは、玄人はだしの意気込みに映る。 また機会を得て、未食の「T2G」「JF100」も啜ってみたいな。


「宮田麺児」 大阪市中央区東心斎橋1-13-5[Map] 06-6243-1024 http://www.miyatamenji.com/
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